1: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/30(土) 23:38:08.03 ID:HpiU34XMo

引用元: セーラ「白糸台の麻雀部を引退したで」

2: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/30(土) 23:41:57.60 ID:HpiU34XMo
数日後、放課後、教室に二人


ガラッ

バタン


照「…ごめん、待った?」

セーラ「ううん、全然。大丈夫やで」

照「そっか、よかった」

セーラ「…俺が考えたこと、聞いてくれるか?」

照「うん、それを聞きにきた」

セーラ「せやんな…うん」

照「覚悟は出来てるからね」

セーラ「…じゃあ単刀直入に言うわ」

照「…どうぞ」


セーラ「俺は、照をそういう風には見られへん」

セーラ「照は一番大切な…親友やから」

4: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/30(土) 23:43:47.25 ID:HpiU34XMo
照「…親友か」

セーラ「照が勇気振り絞って伝えてくれたのは嬉しかったんやで」

セーラ「…でも」

照「でも?」

セーラ「…気付いてしもたんよ、俺には好きな人がいるって」

照「どういう意味?」

セーラ「意識なんかしてなかった、恋愛なんか縁遠いって思ってた」

セーラ「けど、怜に言われて…俺は…あぁ、こいつのこと好きやったんやなって
    そう思える人が…いることに気付いたんや」

照「それが誰か、聞いてもいいの?」

セーラ「うん……弘世…なんよ」

照「…そう、なんだ」ボーッ

セーラ「ごめん、俺もびっくりしてるんや。なんで弘世なんやって思ってる」

セーラ「でも1回意識したらもうあいつのことばっかり考えてしまうんや…」

セーラ「ごめん、ごめんな照…ごめん」


セーラ「(何回謝ったか知らんけど、俺は照と向き合いながら、何度も謝った)」

5: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/30(土) 23:44:51.94 ID:HpiU34XMo
照「…菫か。意外すぎて悲しいとか悔しいとか浮かばないよ…」

セーラ「一番驚いてるんは俺やで」

照「じゃ、私が告白しなきゃ…セーラはその気持ちに気付かなかったわけだ」

セーラ「かもな…」

照「なら、しなきゃよかった…かな」ハハッ

セーラ「無理して笑うなや」

照「だけどさ、」

セーラ「ん?」

照「…笑ってないと、泣きそうだから」

セーラ「そうか」

照「今ここで泣きたくない」

セーラ「…わかった」

6: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/30(土) 23:46:07.91 ID:HpiU34XMo
照「…後悔はしてないから」

セーラ「うん」

照「…そうだ、私がセーラに言ったこと覚えてる?」

セーラ「んー?」

照「私のそばから離れないでって言ったやつ…今思うと恥ずかしいけど」

セーラ「ん、覚えてる。嬉しかったもん」

照「…こういうことになったらセーラは私から離れちゃうのかな」

セーラ「そんなわけない。さっきも言ったけど、照は大事な親友や」

照「嬉しいけど、ちょっと切ないって言うか、悲しいね」

セーラ「…ごめん」

照「でもやっぱり…少し、嬉しいかな…いや…よくわからない」

7: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/30(土) 23:47:36.18 ID:HpiU34XMo
照「ねぇ、菫に告白するの?」

セーラ「さぁな…わからん」

照「そっか…今ね、応援するって言おうとしたんだけどさ」

セーラ「なに?」

照「やっぱ無理。私は応援なんかしない」

セーラ「ふふっ、そのほうが照っぽいな」

照「だよね」

セーラ「こんなん俺が言うのは変やし思い上がりかもしれんけどさ、」

照「なに?」

セーラ「…弘世を責めんといたってな」

照「当たり前でしょ…菫は私の一番理解者だったんだから」

セーラ「でも、…そういう感情とか」

照「ない、感謝しても責めるなんて…ない、たぶん…たぶん」ウツムキ

セーラ「ならええねん…あいつはなんも悪くないから…」

8: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/30(土) 23:49:27.94 ID:HpiU34XMo
セーラ「俺が勝手に好きって思ってしまっただけやから
    そのことで照と弘世の仲がどうにかなってしもたら」

セーラ「俺は弘世になんて詫びたらいいかわからんし…」

照「…セーラはほんとに菫のことが好きなんだね」ハァ

セーラ「ほんまは今でもいわゆる好きって気持ちなんかわかってないねん」

照「そう…」

セーラ「けど、この気持ちをどう言えばいいかって考えたらな、
    それはもう、好き、しかないって…まあ、思ったんよ」

セーラ「…友達としての感情やなくて、そ、その、恋愛感情的なことで…」

セーラ「(恥ずかしいけど胸が痛いなぁ…)」

照「そっか…私、セーラのこと困らせてばかりだったよね」

セーラ「そんな風に考えんな、俺は嬉しかったんやから」

照「…そう言ってくれるならちょっとは救われる、かな」

9: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/30(土) 23:50:46.57 ID:HpiU34XMo
セーラ「(その時に少し笑った照の顔見てたらなんか泣きそうになった)」

セーラ「(照は全然泣いてへんのに、俺の方が泣きそうになった)」


セーラ「(しばらく二人で黙ったまんま、教室の中にいた)」

セーラ「(何か言いたいことがあるはずやのに何を言えばいいんか
     わからんくて、黙ったまま)」

セーラ「(沈黙は重くて、苦しくて。でも、黙ったまま。
      照も俺も、どこか、遠くを見つめたまま、じっとその場にいた)」

10: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/30(土) 23:53:27.46 ID:HpiU34XMo
照「…先に帰るよ」

セーラ「ん、わかった」

照「あのさ、」

セーラ「んー?」

照「…やっぱり、私は菫のこと責めちゃうかも」

セーラ「そうか」

照「菫は何も悪くないよね、わかってるけど」

セーラ「けど?」

照「けど、菫がいなければって、きっと思うから」

照「私はそういう自分を否定できないよ」

セーラ「…やっぱ、照は感情むき出しの方がええな」

照「ただ不器用なだけだよ、…それだけ」

11: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/30(土) 23:56:09.26 ID:HpiU34XMo
セーラ「…なんか、なんか、難しいなぁ」

照「そう、だよね」

セーラ「なんで弘世なんやろ」

照「そんなこと私に聞かないでよ」

セーラ「そらそうやな、すまん…あ、これあいつには内緒やで?」

照「わかってるよ、私はおしゃべりじゃないし」

セーラ「ありがとう」

照「じゃあ、また明日」

セーラ「うん、また明日」

照「あのね、セーラ、今日はありがと」

セーラ「…あぁ」

12: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/31(日) 00:02:27.75 ID:PvSgt7kuo
次の日、朝、虎姫部室


菫「おはよう、江口」

セーラ「おう、おはよ」

セーラ「(朝の部室に二人きりか…いいシュチエーションなんやろうけど)」

セーラ「(最近は顔見ただけでドキドキすることはなくなったけど
     でもやっぱり、ちょっと意識してしまうで)」

セーラ「(そやけど、昨日のことがあるし…話が億劫やわ)」

菫「すまない、こんな早くに…」

セーラ「いやええよ、気にすんな」

菫「照が…照に昨日のことを聞こうとしたら江口に聞けって
  それしか言わないものだから…気になって」

セーラ「照、どんな感じやった?」

菫「ん~…機嫌が悪いというかつんけんした感じで…」

セーラ「なるほど」

菫「…どういう意味だ?」

13: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/31(日) 00:07:02.47 ID:PvSgt7kuo
セーラ「弘世の考えどおりちゃうんかな」

菫「…断った、のか?」

セーラ「ん、せやで」

菫「どうして?」

セーラ「どうして?ん~…」

菫「傷つけるようなことはしてないだろうな?」

セーラ「多分、したんちゃうかな」

菫「なんだと?お前私があれだけ言ったのに!」

セーラ「…しゃーないやん、俺ウソつくの嫌いやし」

菫「理由はなんだ?…私は、まあそれなりにお似合いだと思っていたんだが」

セーラ「照はあくまで親友や。好きとかそういう感情を持てへんかった」

菫「そうなのか…」

セーラ「あいつのこと大好きやし、そばにいてくれんと困る」

セーラ「けど、…やっぱあくまで親友なんよ」

菫「…なんとなく、断るならその理由だとは思ってたが」

14: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/31(日) 00:09:10.15 ID:PvSgt7kuo
セーラ「そう?ま、そうなったな」

セーラ「お前は照にどんな後押ししてたん?」

菫「これといって何もしてない。ただ話を聞いて、頑張れと言っただけだ」

菫「照は考え込んでしまうところがあるからガス抜き程度というか…」

セーラ「そうなん?照はえらい感謝してたで」

菫「こういうとき、話を聞いてくれる相手がいるだけでも心強いものだからな」

セーラ「なるほど、まあそれもわかる」

菫「で、照を振った理由はそれだけか?」

セーラ「え、なんで?」

菫「いや、お前が照を傷つけるようなこと言ったって言うから、
  その理由で振ったとしたら、」

菫「江口はそれなりに気をつかえるはずだから
  照を傷つけないような言い方をしたんじゃないかなと思ったんだよ」

菫「なら、他にも何かあったのかな、と」

セーラ「鋭いなぁ」

菫「で、他に理由があるのか?」

15: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/31(日) 00:10:25.17 ID:PvSgt7kuo
セーラ「(本当のことを言うべきか?…でも、言うたら弘世はきっと苦しむ
     自分のせいでって思うはずや。そんなん、本意やないで)」

セーラ「(…けど照は…弘世を責めるかもしれんって言うてたし…
     もしそうなったら弘世はわけもわからず照に責められたりする…?)」

セーラ「(それは避けたい…弘世は何も悪くないのに…それはあかん
     ほなもう言うしかないやん…けど、それは告白と同じことや…)」

セーラ「(しかも弘世には好きな人がいるし…玉砕確定の告白て…きっついなぁ)」

セーラ「(てか誰が好きなんやろう?弘世が好きになる人なんか想像もつかへんわ…
     いや、今そんなことはどうでもええんや。問題は、俺の気持ちや)」

16: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/31(日) 00:12:33.31 ID:PvSgt7kuo
セーラ「…理由?まあ、ないことはないで」

セーラ「(…俺は、やっぱりウジウジすんのが嫌いや!)」

セーラ「(言うてやる、言うで、言うで…!!)」

菫「もったぶるなよ…私は、理由によってはお前に手を出すかもしれん」イライラ

セーラ「おー怖い怖い」

セーラ「(落ち着け、落ち着け俺…)」

菫「茶化すな、照はな…お前のことでずっと苦しんでたんだぞ」

菫「言いたくても言えない、この関係を壊したくないって…」

菫「そんな照を傷つけて欲しくないって私はそう頼んだのに…
  一体どんな理由があるって言うんだよ、江口」

セーラ「…俺な、好きな人おるねん」

菫「はっ!?」

セーラ「そやから、あかんねん」

17: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/31(日) 00:13:11.24 ID:PvSgt7kuo
菫「待て待て、なんだよそれ初めて聞いたぞ」

セーラ「んまあ、初めて言うたしな」

菫「とってつけたような言い訳じゃないだろうな?」

セーラ「…ちゃうよ、ほんまの話やから」

菫「…好きな人がいるから照を受け入れられなかったってことか?」

セーラ「そうや、照もびっくりしてたわ…まあ一番驚いてるのは俺やけど」

菫「はぁ?」

セーラ「そう怖い顔すんなや…俺自身、そういうの縁遠かったし
    誰か好きとか嫌いとか考えたこともなかったんや」

菫「だろうな、…だから私は驚いたよ」

セーラ「せやけど、照にまあ、告白されて…いろいろ考えることもあって
    そしたらな、ふっとその人が俺の中に現れたんや」

セーラ「全く予想もしてへん人やったから驚いたし、
    正直今でも自分の中で消化しきれてるかどうか怪しいわ」

菫「…もったぶるのが好きだなお前は」

18: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/31(日) 00:15:05.79 ID:PvSgt7kuo
セーラ「まあ、聞いてーや。ほんで、これほんまに好意なんかな?って
    思ったんよ、好きってことであってんのかな?って」

セーラ「けど、…あ、これは照にも言うたんやけどさ
    この気持ちを『好き』以外で表せへんのや」

セーラ「それはもちろん、友達として好きとか、そういうんやなくて…
    そ、その、えっと…恋愛とかそういうことで…やな//」

セーラ「(うぅ、何一人で喋って一人で恥ずかしがってるんや俺は…アホかいな)」

菫「で?」

セーラ「…だから、照の気持ちには応えらへんかった」

菫「待て待て…確かに驚いたよ、お前に好きな人がいるとは衝撃的だよ…でも、」

菫「親友としか思えない、好きな人がいる…
  その程度の理由なら照を傷つけずに済む断り方はあっただろ?」

セーラ「まあ、あったかもな」

菫「いい加減その奥歯に何か挟まったような言い方をやめろ。
  ハッキリ言えよ、イライラする」

セーラ「弘世、短気は損気ってな」

菫「うるさい」

19: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/31(日) 00:15:36.57 ID:PvSgt7kuo
セーラ「(ほんまにイラっとしとんな…)」

セーラ「はぁ(よっしゃ…)」

菫「ため息は私がつきたいんだが」

セーラ「俺の好きな人なぁ…」

菫「誰だよ」イライラ

セーラ「…お前やで、弘世」

菫「……は?」キョトン

セーラ「せやから、俺の好きな人は、弘世菫や」

菫「……は?」

セーラ「何回も言わせんなやー恥ずかしいねんで//」

菫「い、いやいやいや!!!」アワアワ

セーラ「ん?」

菫「ないない、ありえない…冗談なら怒るぞ」

セーラ「…冗談ならよかったんやけどな」

20: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/31(日) 00:16:44.28 ID:PvSgt7kuo
セーラ「だってお前好きな人いるんやろ?完全脈なしやし、
    俺ら3人の関係グッチャグチャになってしもた」 

菫「うそ…だろ…」

セーラ「お前のどこが好きとか、こういうとこを好きになったとか
    正直自分でもようわからんけど、…」

セーラ「でも、お前と一緒やとドキドキするし、
    顔見るんもちょっと恥ずかしいし、…あぁ、これが好きってことかなって」

セーラ「…ガキじゃあるまいしって感じやけど、まあ素直な気持ちや」スッキリ

菫「じゃ、じゃあ…照が傷ついたって…それ…私のせいじゃないか!」

セーラ「ち、違う、違うで弘世!それは違う!」

菫「何が違うんだよ!?わ、私のせいで…!」

セーラ「お前は何も悪くないで!俺が勝手にお前を好きになっただけや!」

菫「でも…でも」グス

セーラ「な、何で泣くねん…」

菫「私が…わ、私が…グスン」

セーラ「あぁもう…まだ朝の7時半やで…」ナデナデ

菫「う、うるさい…」ズズ

21: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/31(日) 00:17:41.76 ID:PvSgt7kuo
菫「私の存在が照を傷つけたんだな…」

セーラ「せやからちゃうって…」

菫「でも、私のせいじゃないか!」

セーラ「せいってなんやねん!俺がお前を好きになったのが悪いんか!?」

菫「い、いや…そうじゃない…けど」

菫「わ、私はずっと照の話を聞いてきたんだ…照の幸せを願っていたんだよ…」

菫「自分の気持ちを殺してまで…私は…」ブツブツ

セーラ「…うん(ん?弘世今なんて言うた?)」

菫「なのに私はいない方がよかったということなのか…」

セーラ「そんなわけあるか!アホなこと言うな」

菫「照は何か言っていたか?」

セーラ「弘世のことを責めてしまうかもって言うてた」

菫「…やっぱりそうか」

22: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/31(日) 00:18:27.13 ID:PvSgt7kuo
セーラ「…照がそう思うのはわかるし、仕方ない」

セーラ「けど、それはお前のせいやない。絶対そんな風に考えんな」

菫「無理な相談だろ…それは」

セーラ「…とにかく、俺は弘世、お前が好きやから」

菫「……」

セーラ「そやから俺はお前に謝らなあかんねん」

セーラ「お前は何にも悪くないのに俺のせいで迷惑をかける。
    許して欲しい、…ほんまにごめん」

菫「謝られてもどうしたらいいかわからないだろ…」

セーラ「好きな人がいるなんて言わんでもよかったんや
    その相手が弘世やなんて黙っててもよかった」

セーラ「優しいウソとかつけへん俺が悪いんや
    全部ありのまま話してしまう俺が悪い」

菫「……」

23: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/31(日) 00:20:15.11 ID:PvSgt7kuo
セーラ「俺ら3人がこんな風になるんは辛いけど、悲しいけど…
    でも、しょうがないやろ?そもそも、照が俺に言うたのが始まりやし…」

菫「…私はどうしたらいいんだよ、照にどんな顔して会えば…」

セーラ「距離置く…?いや、あいつから置いてくるか」

セーラ「俺とも、お前とも」

菫「…あぁもう頭が痛い」ハァ




セーラ「…今、こんなことを言うても意味ないかもしれんけど」

菫「…なんだよ」

セーラ「お前に好きな人がいるのは知ってるから玉砕覚悟やし
    脈ないのもわかってるけど…今じゃなくていいから、」

セーラ「いや、今は言うて欲しくないからまたいつか…返事聞かせてな」

菫「そ、そんなの…」

セーラ「あ、涙止まったか?赤くなるし、こすったらアカンで
    まだ授業も始まってへんねんから」

24: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/31(日) 00:21:31.63 ID:PvSgt7kuo
菫「優しくするなよ…」

セーラ「…弘世?」

菫「私に優しくするな!私は…私は…!!」

セーラ「ど、どうしたん?」

菫「なんでもない!」

セーラ「な、なんやねんもう…」



セーラ「(弘世は最後、なんか怒り出した…何か言いたげやったけど
     結局何も言うことなく、自分の教室へ向かった)」

セーラ「(照のことを傷つけたくなかったし、
     弘世のことも傷つけたくなかったのに)」

セーラ「(俺は結局どっちのことも傷つけてしまったんや)」

セーラ「(…弘世を好きになったから…好き、なんて思ったから…)」

セーラ「(でも、好きになることは悪いこととちゃうやんな?)」



セーラ「(…好きになったタイミングが、その相手が
     今のこの状況で最悪やっただけ…やんな?)」

32: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/01(月) 23:29:05.73 ID:N7qnA3eNo
同じ日、放課後、部室


淡「おっはよ~あれ?」


ガラッ


セーラ「おう、淡、今日は遅刻なしかー。ってどした?」

淡「あれ?ね、照と菫は?」

セーラ「知らん」

淡「知らんって」

尭深「お休みですか?」

セーラ「いや、学校には来てるやろ。けど部室には来るつもりないんちゃう?」

淡「えぇ、なんで?引退しても毎日来るって言ってたのにー!」

33: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/01(月) 23:29:51.82 ID:N7qnA3eNo
ガラッ



誠子「おはようございまーすって、あれ、江口先輩だけですか」

セーラ「おー誠子やん!虎姫入りか~おめでとう」

誠子「おかげさまで、やっと入れてもらえました」

誠子「あ、で、弘世先輩に用があったんですけど…まだ来られてないんですか?」

セーラ「まだみたいやけど、来るかどうかわからん」

淡「だから、セーラがわかんないっておかしいよー友達でしょー?」

セーラ「うっさいなぁ、淡は…じゃあ俺は帰るかな」

淡「あ、だ、だめだめ!せっかく来たんだから打とうよー」

セーラ「んまあ…ええよ」

淡「やったぁ♪準備するね~!」ゴソゴソ

34: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/01(月) 23:30:32.98 ID:N7qnA3eNo
尭深「あの…何かあったんですか?」

セーラ「なんで?」

尭深「…なんだか、インハイが終わってから先輩方はどこかおかしいです」

セーラ「そんなわけないやん」

尭深「いえ、変です」

セーラ「変か…。俺は変わってないつもりやけど、そうはいかんか」

尭深「やっぱり何か?」

セーラ「…また今度な」

尭深「先輩、でも、」

淡「準備完了っ!」

セーラ「おーし、やるで~。ほら、尭深も誠子も」

尭深「…はい」

誠子「江口先輩と打つの久しぶりだなぁ」

セーラ「容赦せんでー」

誠子「アハハ、頑張ります」

35: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/01(月) 23:31:08.35 ID:N7qnA3eNo
ガラッ


菫「すまない、遅くなった…江口だけか」

セーラ「まあな」

淡「ねぇ、照はー?」

セーラ「さあな」

淡「えぇ、菫は知らないの?」

菫「私は…知らない」

淡「ふうん、そっかぁ。どしたんだろー」

尭深「あの、先輩方」

菫「ん?」

セーラ「なんや?」

尭深「あの、こんなことは言いたくないんですけど…
   でも、えっと、私は一応部長になったので言います」

セーラ「ん、どーぞ」

菫「あ、あぁ」

36: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/01(月) 23:31:56.71 ID:N7qnA3eNo
尭深「何があったか知りませんけど、…そういうの、
   部活に持ち込むのは止めてもらえないですか?」

尭深「先輩方が練習に参加してくださるのは助かりますし、嬉しいです。
   だけど、なんていうか…こういうのってよくないって思います」

淡「え?え、なになに?」

誠子「尭深?」

セーラ「……」

菫「……」

尭深「生意気言ってすいません、だけど、」

菫「あぁ、渋谷は何も間違っていないよ。なぁ、江口」

セーラ「うん、せやなぁ。ごめん、尭深」

尭深「い、いえ…」

37: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/01(月) 23:32:30.82 ID:N7qnA3eNo
淡「えぇ、なに?なんのこと?ねぇ、セーラ」

セーラ「ごめん、じゃあやっぱり今日は帰る」

セーラ「(正直、ここで弘世と麻雀やる気にはならへんし…)」

淡「なんで?おかしいよセーラ、来たばっかりなのに!」

セーラ「ごめんなぁ、淡」

菫「帰るのか」

セーラ「あぁ」

菫「私のせいか」

セーラ「いや、…さぁな」

菫「…すまない、今朝は取り乱したよ」

セーラ「いや、ええんよ。俺が悪い…じゃあな」

淡「ちょ、セーラ!」タッタッタ

38: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/01(月) 23:33:16.80 ID:N7qnA3eNo
バタバタッ


淡「待ってよ、セーラ」ハァハァ

セーラ「戻れ、淡」

淡「…なんで?」

セーラ「え?」

淡「どうして何も言ってくれないの?」

セーラ「どうしてって…」

淡「セーラ変だよ。こんなの私の知ってるセーラじゃない」

セーラ「…そう言われてもなぁ」

淡「どうしちゃったの?菫や照と何かあったの?」

セーラ「別に…何もないで」

淡「ウソだ」

セーラ「ウソちゃうって」

39: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/01(月) 23:34:04.74 ID:N7qnA3eNo
淡「…もういい!セーラのバカ!」

セーラ「怒らんといて、淡」

淡「……」

セーラ「ごめん、でも、今は言えへん…」ナデナデ

セーラ「淡はわかってくれるやろ?な?」ヨシヨシ

淡「…ほんっとずるい」

セーラ「え?」

淡「セーラっていっつもずるいよ、ひどい、グス」

セーラ「は?え?なんで泣くん!?」アワワ

淡「優しすぎる!バカ!」


タッタッタッ

40: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/01(月) 23:34:38.15 ID:N7qnA3eNo
セーラ「はぁ…?あれなんやねん?」

セーラ「優しすぎる?誰が?」

セーラ「(俺が?優しすぎる?…どこがやねん)」

セーラ「(照のことも、弘世のことも傷つけてしまったっちゅうに)」

セーラ「(…優しくなんか、ないって、なぁ、淡)」



セーラ「…はぁ」

44: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/03(水) 23:29:07.31 ID:cyyMWOy2o
1週間後、放課後、虎姫部室


尭深「…ということでお願いします」

菫「あぁ、…わかった」

セーラ「うん、まあ、尭深には難しいよな」

尭深「はい…やはりこれはお二人からの方がいいと思うので…」

菫「だろうな、大丈夫だ」

セーラ「任せとけ、うん」

尭深「では、お願いします、ちょっと失礼します」

45: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/03(水) 23:29:44.42 ID:cyyMWOy2o
菫「…さて、どうしたものか」

セーラ「そやなぁ」

菫「後輩の頼み故に大丈夫と言ってしまったが…」

セーラ「あぁ…とりあえず、あいつのクラスでも行くか?」

菫「いや、きっともう帰ったよ。明日にしよう」

セーラ「わかった、じゃあ明日は授業終わったら照のクラスで」

菫「あぁ、了解だ…はぁ、気が重いな」

セーラ「だからお前は何も悪くないんやって」

菫「…いや、そんな風には思えない」

セーラ「悪いのは俺だけや」

菫「………だが、照はそうは思っていないだろ」

46: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/03(水) 23:30:13.01 ID:cyyMWOy2o
セーラ「それはそうかもしれへんけど、でも俺は、」

菫「照はあれから一度も練習に顔を出していないんだぞ」

セーラ「俺に会いたくないだけやろ、気まずいだけや」

菫「お前に会いたくないだけじゃない、私にだって会いたくないんだよ」

セーラ「…そら照がそう思うのは仕方ない、でも、
    お前にそんな風に思って欲しくないんやって」

菫「だからそれは何度言われても無理なんだよ」

セーラ「…まあ、ええわ。明日やな」

菫「あぁ、明日だ」

47: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/03(水) 23:31:27.42 ID:cyyMWOy2o
セーラ「(あれから一度も練習に来なくなった照)」

セーラ「(学校の中で見かけてもすぐにいなくなってしまう照)」

セーラ「(結局はいつも部室に来てしまう俺と弘世)」

セーラ「(こうして普通に話すことが出来る俺と弘世)」

セーラ「(…違いはなんやろ)」

セーラ「(振った側と振られた側?それだけ?いや、他に何か?
     そんな風に思えて仕方がない…勘違いかな)」

48: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/03(水) 23:31:56.07 ID:cyyMWOy2o
次の日、放課後、照のクラス前


照「…セーラ、菫」

セーラ「よっ」

菫「久しぶり、だな」

照「うん…そうだね。そろそろ来ると思った」

セーラ「え?なんで?」

菫「どうしてそう思った?」

照「あれの話、聞いたから」

セーラ「あれ?」

照「うん、…それより、話をするんなら場所変えようよ」

菫「どこがいい?」

照「どこでもいいよ、あ、セーラの部屋行ってみたいな」

セーラ「え?寮の?」

49: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/03(水) 23:32:33.41 ID:cyyMWOy2o
照「うん、そういえば行ったことないし」

菫「あぁ、確かにないな」

セーラ「や、止めといたほうがええんちゃうかなぁ」アセッ

照「なに?なにかまずいものでも置いてるの?」

セーラ「そ、そんなんちゃうし!」

菫「これは何かありそうだぞ、照」

照「だね、菫。決まり、行こう」

セーラ「え、ちょ、ほんまに来るん?」

照「行っちゃダメなら、私帰る」

菫「江口、観念しろ」

セーラ「…うぅ、わかった」

照「楽しみ」

セーラ「面白いもんなんかないって…」

セーラ「(くぅ、こんなことになるとは…でもまあ…
     照が普通に話してくれてよかった)」

セーラ「(弘世と普通に話して笑顔になってる…
     少し気持ちが軽くなるわ、…多分、弘世も、な?)」

50: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/03(水) 23:33:11.09 ID:cyyMWOy2o
通学路、3人


照「ね、菫はセーラの告白を聞いたの?」

菫「あ…まあな」

照「返事は?」

菫「してない、今はしなくていいって江口が」

照「どうして?セーラ」

セーラ「…まだその時じゃない気がして」

照「言っておいてその時じゃないなんて、変」

セーラ「かも、やけど」

51: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/03(水) 23:33:37.10 ID:cyyMWOy2o

照「いいなぁ、…菫が羨ましい」

セーラ「…(…ごめん、照)」

菫「…すまない」

照「ふふ、どうして菫が謝るの」

菫「だって…」

照「私が菫に怒ってると思うの?」

菫「いや、それは」

照「怒ってるか、怒ってないか、セーラはどっちだと思う?」

セーラ「…そんなんわからへん」

照「そっか、うん、まあいいけど」

55: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/05(金) 22:11:18.97 ID:F8j6HMFyo
寮、セーラの部屋


セーラ「まあ、そこら辺に座って」

照「セーラ、これは座る場所がないよ」クスクス

菫「想像通りの汚さだなぁ、江口」

セーラ「え、そこら辺に…あぁ、もうわかったわかった」


ガサガサゴソゴソ

ザザザザトントン


セーラ「はい、これで座れるやろ?」

照「フフ、まあ、なんとかね」クスッ

菫「ギリギリな」ハァ

56: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/05(金) 22:11:44.35 ID:F8j6HMFyo
照「寮の人に怒られないの?こんなに散らかして」

セーラ「いつも怒られてるでー」

菫「じゃあ片付けろ、バカ」

セーラ「めんどいねんもーん」

照「セーラらしい…全くもう」

菫「まあな、整理整頓されている方が不自然だ」

セーラ「なんやとこらー」

照「まあまあ、じゃれ合いはその辺にしといて…」

菫「え、あ…あぁ」

セーラ「うん…(じゃれ合いなぁ、照に言われるとなんかなぁ)」

57: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/05(金) 22:12:21.48 ID:F8j6HMFyo
照「で、セーラ…今日は何の話?」

セーラ「何の話ちゅうか…その、」

菫「照、練習には来ないのか」

照「…多分、行かない」

セーラ「照はコクマ(国民麻雀大会)の東京都代表に選ばれたんやで」

照「知ってる、監督に聞いた。セーラと淡もでしょ」

菫「知っていたのか」

照「うん、だから、練習に来いって話をしに来ると思った」

セーラ「そうか、それやったら話は早い。照、練習に来い」

菫「渋谷が監督に、『新部長として宮永を絶対に連れて来い』と、まあ、
  頼まれたらしくてな…先輩としては放っておけないんだ」

照「そう…そっか」

58: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/05(金) 22:13:03.91 ID:F8j6HMFyo
セーラ「それに4年に1度のあれも今年あるし…そこでも照は当然代表やろうし」

菫「コクマにも、その、4年に1度の世界ジュニアにも照は欠かせないんだよ。
  お前が私たちに言いたいことがあるのは分かってる」

照「……」

菫「でも、一度それを切り離して考えてはもらえないだろうか。
  勝手なお願いなのはわかっているつもりだが、」

菫「だが、照には代表として戦って欲しい。
  そのために、練習に出てきて欲しい。照、お願いだ」

セーラ「…俺らと会いたくないとかやったら時間変えたり部屋変えたりするし
    そやから、練習に出て、ちゃんと調整して、代表に…」

照「会いたくないなんて思ってない…そんなこと思うはずない」

セーラ「でもずっと避けてたやろ」

59: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/05(金) 22:13:34.86 ID:F8j6HMFyo
照「それは、気まずくて、だから…だけど、会いたくなかったわけじゃない」

菫「…だけど、お前は私のことを、」

照「そりゃ、いろいろ思うことはあるよ、振られて辛かったし悲しかった。
  菫のこともすぐには割り切れない…だから、」

照「会ってどういう顔をすればいいのか分からなくて…
  何を言えばいいのか分からなくて…それで、部室に行く気がしなくて」

セーラ「怒ってないん?」

照「…複雑だけど、でも怒ってないよ、だって、だってさ、私たち…親友でしょ?」

セーラ「…ああ、そやな」

照「私不器用だから、…ごめんね」

セーラ「ありがとう、照」

照「ううん、少し、気が楽になったかな」

菫「照っ…グス」

60: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/05(金) 22:14:13.79 ID:F8j6HMFyo
照「正直、菫を責める気持ちがないわけじゃない、
  でも、菫が悪いわけじゃないから。誰も悪くなんてないよね」

照「ちゃんとわかってる…大丈夫だよ、菫、ごめんね」

菫「わ、私は、グス、だって、お前がっ」

セーラ「この、泣き虫」

菫「うるさい…」

照「だけど、1つ」

セーラ「ん?」

照「私、コクマも世界ジュニアも辞退するつもり。プロにも行かない」

セーラ「は?」

菫「は?」

61: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/05(金) 22:14:51.94 ID:F8j6HMFyo
セーラ「いやいやいや!おかしいおかしい」

照「きっともっとふさわしい人がいると思うんだ」

セーラ「お前以上にふさわしい人なんかおらへんやん」

照「そういうことじゃなくて、気持ちの問題で」

菫「グズ、それ、どういう意味なんだ?」

照「私にとっての麻雀はもう終わったんだよ、インターハイがゴールだった」

セーラ「もうちょっとわかりやすいように言うてくれ」

菫「終わってなんかない、むしろこれからだろ?」

照「ううん、終わった。この先はもうないんだ、そう思う」

62: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/05(金) 22:15:41.45 ID:F8j6HMFyo
セーラ「なんでそう思う?」

照「あ、私が監督にスカウトされた時の話ってしたことあったっけ?」

セーラ「いや、ないな…って急にどしたん?」

菫「あぁ、私も知らない」

照「じゃあその話をするね、あ、大丈夫だよ。
  私が辞退したい理由にちゃんと繋がるから」

セーラ「…よし、聞くわ」

菫「あぁ、話してくれ」

照「うん、…私は」

68: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/07(日) 22:41:25.23 ID:VkQs3MKLo
照「私ね、前も言ったけど高校に入るまで公式戦には
  出たことがなかったんだよね、家族麻雀しかしたことなくて」

照「しかも中学の途中にこっちへ転校してきてからは牌には一度も
  触っていなかったの。こっちではお母さんと私の二人暮らしだったから」

セーラ「(確か両親が別居やったっけ…)」

照「それでね、中学3年の夏休みだったかな、地域で小さな麻雀大会があったの。
  偶然通りかかったらやってて、麻雀が懐かしくなって会場に入ったんだ」

照「団体戦をやってたみたいなんだけど牌の音が心地よくて、しばらく見てた。
  そしたら、クラスメイトが出場してたことに気付いてさ、向こうも気付いて、」

照「手を振ったら深刻そうな顔で寄って来て『宮永さん、麻雀できる?』って聞かれた。
  よく聞けばメンバーの一人が体調不良で出られなくなったって」

照「もうすぐ決勝が始まるって。棄権したくないから代打で出てくれって頼まれて
  渋々『いいよ』って言っちゃったんだ。でも、本当は怖かったよ」

69: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/07(日) 22:42:07.91 ID:VkQs3MKLo
菫「怖い?お前が?」

照「麻雀って家族以外と打ったことがなかったし牌にもずっと触ってなかったし
  だいたい自分の力量もよくわかっていなかったから、怖かった」

菫「あぁ、そうだったな」

照「でもさ、いざ打ったら…」

セーラ「まさかとは思うけど、トバしたか」

照「先鋒って言葉もよくわからなかったけど、
  とりあえず早く終わる1番最初にしてくれて頼み込んでさ。
  それで、ラス親で連荘して、気付いたら終わってた」

菫「…やはりそうか」

照「だけど、相手がどれくらい強いのかも知らないし、
  自分よりずっと初心者の大会だったのかもと思うと
  私が全然空気読めてない感じだし、勝った時は複雑だったよ」

照「でもクラスメイトは喜んでくれたし商品のお菓子くれたし
  まあいいかって思ってたら、ここの監督に声をかけられたんだ」

セーラ「このお菓子好きがー」

70: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/07(日) 22:42:55.84 ID:VkQs3MKLo
照「美味しかったなぁ、あ、でね、
 『白糸台の監督をやっているんだけど、一度練習を見に来ませんか』って。
  最初はなんの冗談かと思った」

菫「それで、その大会のレベルはどうだったんだ?」

照「地域の中学がインターミドルで好成績だったらしくて、
  その祝勝会を兼ねた地域住民との交流大会だったみたい」

セーラ「そら声もかかるわな」

照「まあそれを知ったのはもっとあとなんだけど…」

菫「なるほどな、お前らしい」

照「え、それどういう意味…それで、お母さんに話したら
  まあ一度くらい行けば?って言うし、練習を見に来たんだ、それが最初」

照「…その日から、私は一度も負けてない」

セーラ「この、天才め」

照「天才って…違うよって言っても嫌味になるんだっけ」

71: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/07(日) 22:43:28.00 ID:VkQs3MKLo
セーラ「あぁ、そやな。ま、肯定されても嫌味やけど」クスクス

照「もう…」

菫「まあ、そういうところが照らしさだな」

セーラ「うん、せやせや」

照「あ、それでね、麻雀部で打つようになって私って強かったんだ
  って気付いたの。しかも、すごく強いのかもしれないって」

照「だけど当時は違和感あったよ、私が強いなんてさ。
  だって私は咲に、妹にまともに勝った事なんてなかったんだから」

セーラ「恐ろしい姉妹やで」

菫「全くだ」

照「だから、変な感じだった。でも、勝てば勝つほど自信がついたよ。
  目の前から去っていく人も多かったけど、だけど、」

照「1年のときの部長とか、監督はいつも褒めてくれたし
  それは素直に嬉しかったかな。必要とされてるって感じられた」

72: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/07(日) 22:44:10.70 ID:VkQs3MKLo
照「だけどね、麻雀で高校に進学して麻雀漬けの生活になることに対して
  『ほんとにそれでいいのか』って思いも少なからずあったよ」

照「可愛い制服の学校とか、進学率のいい学校とか、
  学食が充実してる学校とか、候補はたくさんあったから、だから」

照「麻雀に高校生活を捧げることは本当に私が望むことなのかな、って
  ずっと悩んでた。でも、気付いた時には後に引けなくなってて」

照「監督に言われるままに練習に参加して、
  『うちに来てくれるだろ』って言われてハイって言っちゃってたよ」

照「言ってから後悔したけど、もう遅かった。でも、しばらくしたら菫が来て
  同い年で強くて、最初はいろいろあったけど仲良くなって、」

照「あぁ、まあ、これも悪くないかな…って思ってた。
  それで、春にはセーラに出会えて、麻雀がすごく楽しくなった」

73: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/07(日) 22:44:45.09 ID:VkQs3MKLo
セーラ「楽しい?」

照「うん、それまでの私はどこか惰性的だったけどセーラのおかげで
  学校生活は一気に楽しくなったよ。セーラと菫がいなかったら私は
  ここまで強くなれなかったろうし、楽しめなかったと思う」

照「思い返せば私は昔から特別に麻雀が好きだったわけじゃないんだ。
  家族で打っていたときも、菫やセーラに出会う前も、
  やろうと言われるから、誘われるから打ってただけなの」

照「だけど、高校のこの2年半で麻雀をとても好きになった。
  受動的に打ってたときとは違う、自分からやりたいって
  そう思って麻雀を打ってきたよ。この2年半はずっとそうだった」

照「だから、漠然とこの先もずっと麻雀を続けていくと思ってた。
  卒業したらプロになってタイトルを獲ってみたい、なんて
  密かにそんなことすら考えたりしてさ…」

74: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/07(日) 22:45:11.92 ID:VkQs3MKLo
セーラ「照ならそれもできるやろ、それくらい、お前は実力がある」

菫「そうだ、きっとすぐにトッププロの仲間入りだ」

照「それも楽しそうだね。みんな別々のチームに入って、
  いつかはタイトルを賭けて同じ卓について…それもいいね」

セーラ「俺はちょっと時間かかるかなぁ、タイトル戦」

菫「私も時間がかかりそうだ。でも、いつかそうなったらいいな」

照「…いいよね、でも、でもね、私はさっきも言ったけど
  プロには行かない。大学へ行って就職でもするよ」

セーラ「…はあ、なんでそんなこと言うんや」

照「漠然と、プロに行くんだって私の目標はそこだって思い込んでた。
  でも、それはきっと思い込んでただけなんだって、
  セーラに振られてから、そのことに気付いたんだ」

75: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/07(日) 22:46:04.52 ID:VkQs3MKLo
セーラ「……え?」

照「あ、違うの、別に振られたことがどうとかじゃなくて…
  一人になってゆっくり考える時間が多かったから、
  自分を見つめ直す?的な?…それで、気付いたんだよ」

照「私が麻雀を好きだと思ったのは楽しいと思ったのは
  セーラや菫、先輩達や後輩達のおかげなんだよ」

菫「お前それ、…やっぱり麻雀そのものが好きなわけじゃない
  ってそう言いたいのか」

セーラ「え!?やっぱそういうこと?」

照「…まあ、うん、そんなところ」

セーラ「みんなと打つことが楽しいんであって
    麻雀自体をこれからも続けたいわけじゃないって…?」

照「そう、だから、白糸台じゃない代表には興味が持てないんだ。
  私は白糸台の麻雀部が好き、だから白糸台としての戦った
  あのインターハイが私にとってゴールなの」

76: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/07(日) 22:47:12.14 ID:VkQs3MKLo
照「去年も一昨年もコクマには出たけど
  いつも言い表せない違和感があった。それがよくわからなかった」

照「でもその正体はこれなんだよ、麻雀がしたいわけじゃないんだ、私は。
  私にとっての麻雀はここに、白糸台にしかないんだ」

照「白糸台でいられない、何かを代表して戦わなきゃいないような麻雀は
  私にとっては麻雀じゃない、だから、もうしない。もう打たない」

照「コクマにも世界ジュニアにも出ない。プロにもならない。
  ……卒業したら、麻雀はもう辞める。私が打つ意味はもうない」

照「麻雀をしない人生も生きてみたいんだ、好きな本を読んだり
  一日をダラダラと過ごしたり、なにか目標や夢を見つけたり、」

照「今まで麻雀が覆い隠してて見えなかったことやできなかったことを
  してみたいんだ。これって、いけないことかな?」

77: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/07(日) 22:47:58.52 ID:VkQs3MKLo
菫「いけないっていうか…」

照「麻雀をしなくなったらきっといろんなこと言われるだろうけど
  でもきっと、白糸台を背負わなくなった私なんて、弱いよ」

照「だからさっき言ったみたいに、もっとふさわしい人が代表になるべきなんだよ。
  どうしても代表でやりたい、もっと上に行きたいって思う人なんかがね」 

セーラ「(照はこれまでの溜め込んだ気持ちを一気に吐き出した)」

セーラ「(言い終えてからの清々しそうな顔を見ていたら、
     もう何も言えなくなった)」

セーラ「(だから、こんなことを言ってしまった)」

セーラ「照、それもお前の人生やんな」

82: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/08(月) 22:29:52.87 ID:A2A8pFGAo
セーラ「照、それもお前の人生やんな」

菫「おい江口!」

セーラ「だって、こんなこと言われて、続けろって言えるか?」

菫「私は言える、照の気持ちも言いたいことも分かるが
  だからって辞めるなんて…そんなことは許さないぞ」

照「…ごめんね、菫」

菫「謝られたって仕方がないだろ」

照「…セーラはわかってくれたんだよね」

セーラ「わかったちゅうか、何を言うても無駄な気がするし」

照「もう決めたことだからね。監督が尭深になんとかしろって言ったのは
  私が『辞める』って言ったからだと思う」

照「尭深にも、悪いことしちゃったなぁ」

83: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/08(月) 22:31:00.34 ID:A2A8pFGAo
菫「お前は何も分かってないな、照」

照「それはどういう意味?」

菫「お前の好きな、白糸台の麻雀は白糸台を卒業したらなくなるのか?」

照「え?」

菫「白糸台の代表じゃなきゃ、白糸台の麻雀は出来ないのか?
  それは違うと思う、私はな」

照「…どういう意味なの?」

菫「お前の中にある麻雀というものが、白糸台あっての麻雀なんだって
  そう言いたいのはよくわかったよ、でもな、」

菫「白糸台を代表していなければその、照にとっての『麻雀』は出来ないのか?
  去年や一昨年のコクマ、お前は違和感があったって言うけど」

菫「それはお前がその『麻雀』じゃないことに固執しすぎてただけなんじゃないか?
  白糸台の代表じゃなくたって、お前の好きな『麻雀』はなくなったりしない」

84: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/08(月) 22:31:35.02 ID:A2A8pFGAo
セーラ「…なるほどな」

セーラ「(沸々と湧き上がってくる。このままでいいのか、いや、よくない)」

セーラ「(それも照の人生、でも、でも、やっぱり…
     俺は、麻雀をやめて欲しくはない…なんて、な)」

照「わからないよ、菫。何が言いたいの」

菫「だから、その、卒業したって、都の代表でだって、国の代表でだって
  お前が白糸台の麻雀を好きと言うならそれを打てばいいだろ」

菫「背負うものが変わるだけでお前の好きな麻雀はなくなるのか?
  いつでも、どんなときでもお前は白糸台麻雀部の宮永照じゃないか」

菫「何故分けようとするんだよ。いつでも一人のお前でいいじゃないか。
  下手に気負うな、自然体で、いつもどおりでいいんだよ」

85: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/08(月) 22:32:15.86 ID:A2A8pFGAo
菫「むしろよく考えてくれ、照」

照「なにを?」

菫「2年半一緒に積み上げてきたものが、白糸台じゃないからとか
  卒業したら終わるとかそんなことで否定されてしまうのは悲しいじゃないか」

菫「少なくとも私は、2年半で培ってきた数多くのことを
  この先も生かしていきたいと思っている」

菫「白糸台がベースになっているのはお前も私と一緒なんだよ
  ただ、その捉え方が違うだけなんだ。わかってくれ、照」

照「…はぁ」

セーラ「…弘世の言うこと、俺わかる」

照「どうして?」

セーラ「去年も一昨年もコクマの時の照っていつもと違った。
    こう、それこそ気負って空回りしてたんちゃう?」

セーラ「それでも負けへんのがすごいとこやけど」

86: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/08(月) 22:33:08.61 ID:A2A8pFGAo
照「…いつもと違う、何が違うんだ、何でこんなに不安なんだろう
  って思いながら打ってたよ」

セーラ「不安になることないんや。お前はいつでもお前らしくやればいい。
     プロになることが全てじゃないのは理解できるし、」

セーラ「他のこともやってみたいとか、違う人生もあるって
     照がそう思うのも今の話を聞いててよくわかったで。でも、」

セーラ「白糸台じゃない麻雀は好きじゃないってのは考え直せ。
     照が麻雀そのものが好きだったわけじゃないなんて、俺は思いたくない」

セーラ「それはお前がそう思ってしまってるだけやって思いたい。
     照と過ごした2年半を考えてみても、」

セーラ「お前が麻雀のことを好きじゃなかったなんて、そんなん思えへん」

照「…そうかなぁ」

87: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/08(月) 22:33:44.16 ID:A2A8pFGAo
セーラ「そうや。この際、コクマとか世界ジュニアに出ろとは言わん」

菫「江口、それは、」

セーラ「でも、白糸台じゃない麻雀なんていうツマラン括りを捨てろ」

セーラ「お前が好きな、白糸台の麻雀部の麻雀を
    いつでもどこでもやればいいだけなんや、弘世、そうやろ?」

菫「まあ、そんなところだな」

照「……」

セーラ「要はお前の気の持ちようやで、照。
    あと、お前がそれだけ白糸台を好きでいてくれることが俺は嬉しい」

セーラ「俺も白糸台の麻雀部のことが大好きやし、
    ここで楽しかったことも辛かったことも全部糧にして、」

セーラ「俺にしかできない麻雀をしたいって思ってるで。
    だから、照もそう思ってくれたら嬉しい、かも」

88: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/08(月) 22:34:20.15 ID:A2A8pFGAo
照「…ずるいなあ、セーラ」

セーラ「え?」

照「はぁ、…二人ともどうしてそういうこと言うかな」

照「私が麻雀をやめるのがそんなにいけないこと?」

セーラ「いや、そうは思わへん。だって結局お前の人生や。
    でも、お前が言った理由で辞めるっていうのは納得でけん」

照「さっきはそれでいい、それも私の人生だって言ってくれたじゃん」

セーラ「ん、そう思ったのも事実やけど、でも、弘世の話を聞いてたら
    やっぱ、納得できひんって思えてきて」

照「そう、そうか…」

菫「…まあ、そういう理由でやめると言われると、私や江口は悲しいんだよ」

セーラ「照はこの2年半が全てやったって思うかもしれへんけど
    そう思うなら、思うからこそ、これからの麻雀人生の」

セーラ「基礎にして欲しいって思うで、この2年半をな」

89: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/08(月) 22:34:55.30 ID:A2A8pFGAo
菫「まあ、それでもどうしてもやりたくないと言うなら止めないよ」

照「……そこまで言われて、じゃあやっぱり
  麻雀を辞めるって言えると思うの?」

セーラ「さあな~」

菫「それはお前がよく考えればいいことだ、というか私たちも
  その、好き勝手言ってすまなかった」

菫「引き止めたいあまりにおかしなことを言ってしまったかもしれない」

セーラ「ん…俺もすまんかった」

照「…もう、謝られても困るじゃんか」ハァ

菫「フフ、確かに」

照「もう…二人ともさ、ほんと、バカみたいに優しいよね」

セーラ「そうか?ただ俺は…寂しいっていうか悲しいっていうか…」

照「ごめん、でも、辞めたいって思ったのも事実だから。
  白糸台でなくなるのなら、麻雀なんてもういいって思ったのは」

90: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/08(月) 22:35:45.99 ID:A2A8pFGAo
菫「白糸台でなくなるからこそ、白糸台の麻雀をするんだよ。
  自分のルーツは、自分の基礎はそこにあるんだと証明する為にな」

照「…そういうことは2人に言われなきゃ考えもしなかったよ」

菫「なら、まあそんなことも頭に入れつつ、
  これから自分がどうして行きたいかを考えて欲しい」

セーラ「コクマも世界ジュニアもすぐに結論出さんでええから。
    そんな直近のことよりも、将来を考えてや?」

照「ありがとう菫、セーラ。大好きだよ」

セーラ「なっ//恥ずかしいこと言うなー」

菫「お、お前なぁ//」

照「もう、照れちゃって…可愛いなぁ2人とも」

セーラ「あ、アホ!」

セーラ「(…アホ…アホか…照のアホ)」

91: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/08(月) 22:36:11.29 ID:A2A8pFGAo
菫「ま、まあ…そ、そういうことだから…」

照「わかったよ、ちゃんと考える。2人に話してよかった」

セーラ「…親友、やし?」

照「…うん、そう…だね」

菫「私も、その、お前とちゃんと話せてよかったよ」

照「あぁ…うん」

セーラ「……なんか、その、すまん」

照「プッ」

セーラ「な、なんで笑うねん」

照「もう、謝ることないじゃんか。言ったでしょ?
  誰も悪くなんてない。ちゃんとわかってる、大丈夫だよ」

セーラ「…ん」

菫「あぁ…そうだな」

92: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/08(月) 22:37:33.12 ID:A2A8pFGAo
照「だからさ、セーラは早く菫に返事を聞かなきゃ」

セーラ「えっ、いや、それは」

照「怖いの?」

セーラ「…まあ」

照「だってさ、菫」

菫「……どう返事すればいいんだよ」

照「菫がセーラの気持ちを受け入れるかどうか、でしょ」

セーラ「て、照!もうええから、その、今はええねん」

照「…そう?まあ、いいけど」

菫「私は…今は言わない」

照「じゃあいつか、私にも聞かせてね」

菫「いつか、な」

セーラ「…いつかな?」

菫「私に聞くな、お前が考えろ」

セーラ「そ、そやけど…うぅ」

93: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/08(月) 22:38:05.88 ID:A2A8pFGAo
照「私の告白を断ったときの凛々しいセーラはどこ行ったの?」

セーラ「…あれは、勢いとかあって…」

菫「なぁ、江口」

セーラ「え、な、なに!?」

菫「帰るよ、そろそろ」

セーラ「あ、え、お、おぉ」

照「動揺しすぎだよー」クスクス

セーラ「じゃ、じゃあ気をつけてな」

菫「あぁ、邪魔したな」

セーラ「いや、ええよ」

照「セーラ、今日はありがとう」

セーラ「ゆっくり考えろ。練習に出るんはそれからでええし」

照「うん、そうするね。じゃあ、また明日」

セーラ「またな」

94: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/08(月) 22:38:42.02 ID:A2A8pFGAo
セーラ「(弘世と照を見送って部屋に戻り、ため息をついた)」

セーラ「(まさか照が麻雀をやめたいなんて考えてたとはな…
     全くの予想外っていうか拍子抜けというか…)」

セーラ「(でも、3人でまた話ができるようになってよかった
     …これで弘世の気持ちも軽くなるやろうし、本当によかった)」

セーラ「(やけど、でも、弘世の答えはまだ聞きたくない…
     弘世には好きな人がいてきっと振られてしまうって分かってるのに、)」

セーラ「(でもその答えを聞くのが怖い、怯えてる。
     望みを繋ぎ止めたいなんていう自分勝手な考えで、先延ばしや)」

セーラ「(照の結論と、俺の決心はどっちが先になるんかなぁ…)」

セーラ「はぁ…ってため息ばっかやなぁ、最近」

98: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/09(火) 22:29:14.99 ID:3NCevWwbo
約1ヵ月半後、大阪、国民麻雀大会、高校生の部会場


セーラ「きーたーでー!おーおーさーかー!」

菫「うるさい、黙れ」

照「テンション高いね、セーラ」

淡「セーラー!おおさか!おおさか!」

セーラ「おう!大阪やで淡!」

菫「…いや、聞けよ」

照「まあ、仕方ないね」

菫「頭が痛い…」

智葉「さっさと静かにさせろ」

菫「…おい、いい加減にしろよ、お前ら」

99: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/09(火) 22:29:44.23 ID:3NCevWwbo
淡「えーっていうか菫は何しに来たの?代表じゃないでしょ?」

菫「私は補欠だって言ってるだろ、この!」グリグリ

淡「い、痛い!暴力はんたーい!セーラ助けてー!」キャッキャ

智葉「おいお前、騒ぐな」ドン!

淡「…は、はい」シュン

セーラ「ふはは!さっすが辻垣内組」

智葉「あぁ?」

セーラ「すまんすまん、帰郷にテンション上がってもーた」

智葉「お前は大阪代表で出ろ、ぺちゃくちゃうるさいんだよ」

セーラ「えー!俺東京都内在住やしー」

智葉「じゃあ出て行け」

セーラ「え、ひどっ!辻垣内さんひどっ!」

智葉「……」

100: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/09(火) 22:30:21.16 ID:3NCevWwbo
セーラ「ちょぉ無視せんといてー!なぁ、辻垣内さーん!」

智葉「ちったぁ静かにしろ!」

セーラ「おーこわっ!なぁ、淡怖いなぁ」

淡「怖い!怖い!」キャッキャ

智葉「……もう帰りたい」ボソッ

101: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/09(火) 22:30:47.87 ID:3NCevWwbo
照「菫、ここは辻垣内さんに任せよ…」

菫「それが懸命だな…今回は補欠だし、静かにいさせてくれ…
  って待った!多治比どこいったー!!?」

照「…ご苦労様だね、菫」

菫「探してくるか…照は絶対ここから動くなよ」

照「むっ、わかってるよー」

菫「なぜこうも問題児だらけなのか…」

照「だから菫が補欠なんだね、保護者的な」

菫「…褒め…てはいないな、お前」

照「さぁ?」

菫「行ってくる…」

照「頑張って~」ヒラヒラ

102: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/09(火) 22:31:28.82 ID:3NCevWwbo
組み合わせ抽選会


セーラ「さて、頼むでキャプテーン!」

照「はいはい」

菫「照がキャプテンというのも面白いものだ」

智葉「確かに」

淡「まったくもって!」

真佑子「が、頑張ってください」

淡「声が小さーい!」

真佑子「ひぃっ!」

セーラ「こら淡!ビビらせてどーすんねん!味方やで!」

淡「ごめんねぇ」

真佑子「い、いえ…」

セーラ「ま、気にせんと楽しもな」

真佑子「はい、頑張ります…」

照「じゃあ、行ってきます」

103: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/09(火) 22:33:04.39 ID:3NCevWwbo
アナ『続いて東京都、代表は宮永照』

ワーワー
キャーキャー

セーラ「おぉ、さすがの注目度」

菫「チャンピオンだからな、あいつは」

セーラ「…ま、そやな」


アナ『第一シードの東京都、入るブロックはこちらっ!』

107: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/11(木) 22:30:26.48 ID:KITRcSR2o
抽選終了後、ロビー


智葉「私たち東京は二回戦からだが、ここが厄介そうだ」

菫「岩手か、次鋒以外は宮守女子だな」

照「咲がすごく強かったって言ってたよ」

セーラ「岩手岩手…あぁ、あのノッポとチビがおるとこやな」

淡「のっぽ?」

セーラ「めっちゃでっかいとか末原さんが言うてた」

淡「へー!!って末原さんって誰だっけ?」

セーラ「姫松の大将の、ほら、あの!ってお前対局してるやん!」

淡「あー!!」

智葉「こら話をそらすな、大阪人」

セーラ「はーい、すんません」

108: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/11(木) 22:31:01.88 ID:KITRcSR2o
洋榎「おいそこの男みたいなやつ!」

セーラ「あぁ?なんやねん、タレ目」

怜「セーラっ!」

セーラ「と、怜ぃぃぃ!!」ギュウ

怜「あ、ちょ、も、は、恥ずかしいやろ//」

竜華「こらセーラ、怜になにしてんの!」

セーラ「あぁ、すまん!竜華ぁぁぁぁ!」ギュウ

竜華「は、も、やめてーや!//」

セーラ「夏休み以来やなぁ、元気やった?」ナデナデ

怜「幸い病気もなく頑張ってんで」ニコニコ

竜華「うんうん、そやし大阪代表になったんやで」

セーラ「大阪はタレ目と怜と竜華と…」

109: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/11(木) 22:31:28.07 ID:KITRcSR2o
恭子「どーも、江口さん」

セーラ「おぉ!末原さんや!今日はスパッツはいてへんの!?」

恭子「え?久しぶりに会ってそこに突っ込みいれます?」

憩「あははーうちもいますぅー」

セーラ「おぉそらいるわな、大阪最強」

憩「ふふ~ん♪」

洋榎「あ、あかん、恭子うちは悔しい…!」

恭子「主将、いや、洋榎、今回荒川憩は味方なんで!」

憩「仲良くしてくださいねーキャプテンさん」

洋榎「ま、まあ、今回だけやで!」

110: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/11(木) 22:32:21.08 ID:KITRcSR2o
セーラ「今回は東京代表として大阪なんか捻ったるし覚悟しとけや!」

洋榎「は?捻られるんは東京モンやろ!優勝は大阪で間違いなしや!」

怜「せやで~ここはうちらのホームやしなぁ」

セーラ「そっち、二回戦からやんな、確か、」

竜華「こっちのブロックは鹿児島がおるで、神代さん怖いわぁ」

恭子「姫松はインハイで当たってるんで対策しやすいと思いますよ」

セーラ「ま、頑張ってな。インハイと一緒で決勝まで戦えへんし」

怜「当たり前や、セーラもな」

セーラ「おう、じゃあな」



智葉「……弘世、あいつを外してお前がメンバーに入れ」

菫「そうしたい気持ちは十分伝わっているが…さすがにそれは」

照「セーラは自由だなぁ、もう」クスクス

淡「……いいなぁ、楽しそう」ジー

真佑子「あの、ミーティングは…そ、その、いえ、なんでも…」ハァ

111: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/11(木) 22:33:28.25 ID:KITRcSR2o
穏乃「あ、大星さんだ!」

淡「あー!穏乃ー!」

憧「もう、はしゃがないの」

淡「えへへ、久しぶりだねー」

穏乃「うん、今度は絶対負けないよ!」

淡「あ、穏乃って大将なの?」

穏乃「そうだけど…え、大星さん大将じゃないの?」

憧「あんたはなんで各県のオーダーを確認しないかなぁ」アキレ

穏乃「だってめんどくさいし…」

淡「残念でしたー。私は先鋒でーす!エースだよ!」ドヤァ

穏乃「え、先鋒なの!?ほんと!?」

憧「そうよ、今大会の東京の大将はチャンピオン」

穏乃「えぇぇ!?」アセッ

112: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/11(木) 22:33:55.53 ID:KITRcSR2o
淡「ま、頑張ってねぇ~穏乃~」

穏乃「ちゃ、チャンピオン…うぅ、憧どうしよう!?」

憧「これから対策考えんのよ」

淡「それってー、2回勝ってからでいいんじゃない?」フフーン

憧「そうね、2回勝てば、東京と当たるわよ、シズ」

穏乃「うおぉ!じゃあ是が非でも2回は勝たなきゃ!」


淡「ま、頑張ってね~♪」

穏乃「うん、大星さんもね!」

淡「頑張っちゃうよ~♪」

113: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/11(木) 22:34:43.88 ID:KITRcSR2o
咲「あ、お姉ちゃん!」

和「どうも、お姉さん」

照「咲!久しぶりだね…と、原村さんも」

咲「大会に出てきてくれて嬉しい、だって、あのときは麻雀辞めるって…」

和「そうですよ、もう。咲さんすごく動揺して…」

照「まあ、いろいろ考えた結果だから。心配かけてごめん」

咲「逆ブロックだから決勝まで戦えないけど、でも、…絶対勝つから」

照「うん、今回私は大将だから…楽しみだよ咲」

咲「負けないでね、お姉ちゃん」

照「当然、負けない」キリッ

咲「じゃあ、決勝戦で」

和「決勝でお会いしましょう、お姉さん」

照「うん、じゃあね」

114: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/11(木) 22:35:29.62 ID:KITRcSR2o
智葉「…白糸台は一体どうなっている」

菫「面目ない」

淡「私はマジメだよね~♪」ヒョッコリ

智葉「黙れ、この、1年坊」グニグニ

淡「い、痛いよぉ、私は実力から言えば高校100年生だよ!」

智葉「この、まだ言うか」グリグリ

淡「うぅ、菫ぇ~」

菫「当然の報いだな、淡」

淡「えぇ~」

真佑子「…もういいや」

118: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/13(土) 22:16:15.03 ID:7P2bqiKGo
その日の夜、ホテル、セーラ淡の部屋


菫「おい誰だ!この部屋に集まろうと言ったのは!」

照「セーラだっけ」

セーラ「え?何か問題あった?」

智葉「…昼にここに着いてまだ数時間だと言うのに…」

照「セーラ、さすがに散らかしすぎ」

セーラ「え?普通やんな?な?淡?」

淡「うん、そだよ。え、なんで?」

真佑子「さすがにもう少し片付けた方が…」

セーラ「あぁー!そういえばインハイのときは
    照がせっせと片付けてくれてた気がするで!」

照「そうだよ、もう」

菫「よし、私と照の部屋にしよう、移動だ移動」

セーラ・淡「えぇ~」

119: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/13(土) 22:17:07.82 ID:7P2bqiKGo
移動後、照と菫の部屋


淡「おー、部屋に物が落ちてない!」

照「…当たり前だと思うけど」

智葉「さて、簡単に岩手対策だ」パンッ!

セーラ「けどそこ、ほんまに上がってくるんか?強いのはわかるけど」

菫「可能性の話ならば、ほぼ100%上がってくる。
  岩手と当たるのはいずれもそんなに強くないからな」

淡「他は強くないって言っていいの~?」

菫「まあ、可能性の話だ。可能性」

照「岩手の宮守女子は清澄や姫松ともほぼ互角だったよ」

真佑子「そうでしたね、全体的に穴のないオーダーです」

セーラ「ふーむ」

120: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/13(土) 22:17:33.66 ID:7P2bqiKGo
淡「へー!全然知らなかった!」

智葉「高校100年生なんだったらもっと勉強しろ」

淡「うぅ」シュン

菫「しかしまあ、岩手のウィークポイントは次鋒だろうな」

淡「え、なんで?」

照「岩手、宮守女子の次鋒は留学生。留学生は、この大会に出られない」

淡「なるほどなるほど!」

菫「次鋒には別の高校の選手がエントリーされているが、
  おそらくあの留学生ほどではないだろう」

セーラ「あ、そうか。留学生は出られへんのか」

121: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/13(土) 22:18:31.33 ID:7P2bqiKGo
智葉「留学生がOKならお前は東京代表には選ばれてない」

セーラ「なんやとこら!さすがに補欠にくらい入るわ!」

照「セーラ、それは言い返せてることになるの?」クスクス

菫「どうだか」クスクス

セーラ「あ、あれ?」

真佑子「私が真っ先に外れるんじゃないかと」ボソッ

122: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/13(土) 22:19:14.88 ID:7P2bqiKGo
セーラ「(ふざけ合いながらも、少しずつ、少しずつ…)」

セーラ「(どこか浮ついていた空気が引き締まっていくのを感じる)」

セーラ「(そう、ここへは遊びに来たわけじゃない。里帰りでもない。)」

セーラ「(目標はあくまで優勝や。わかってはいたけど
     でもどうしようもなく興奮してしまってた。うん、反省や)」

セーラ「(ほんで、…気を入れなおして、…やってるでー!!)」

123: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/13(土) 22:19:46.63 ID:7P2bqiKGo
その日の夜、セーラと淡の部屋


淡「ね、セーラは私が先鋒なのどう思う?」

セーラ「どうって…嫌か?」

淡「ううん、そんなことない。嬉しいよ」

セーラ「ならそれでええやん」

淡「うんそっか…」

セーラ「どした?」

淡「エースなんだなぁってそれだけ」

セーラ「そやな、監督もこのチームのエースは大星って言うてたしな」

淡「でもでも照が後ろにいるから多少下手しても平気だよね?」

124: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/13(土) 22:20:12.18 ID:7P2bqiKGo
セーラ「あかんで、それは」

淡「なんで?」

セーラ「もちろん照が後ろに控えてるのは心強いけど、
    そんな風に考えてると足元すくわれるで」

淡「…そっか」

セーラ「それに、照に頼るばっかりじゃお前が成長できひん。
    白糸台新チームのエースは?」

淡「私!」

セーラ「そや、せやから頑張れ。な?」

淡「うん、…がんばる!」

125: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/13(土) 22:20:46.76 ID:7P2bqiKGo
淡「あ、そうだ…ねーセーラ~」

セーラ「ん~?なんや~?」

淡「セーラって世界ジュニアの代表に入るよね?」

セーラ「いや、それはないんちゃう?」

淡「なんで?」

セーラ「あれは補欠入れても7人か8人しか選ばれへんねんで。
    お前は入るやろうけど、俺がそこに入れるわけないやんか」

淡「じゃあ、これが最後の大会?」

セーラ「ま、そうなるかな」

淡「そっかぁ」

126: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/13(土) 22:21:12.49 ID:7P2bqiKGo
セーラ「インハイで一応区切りって感じやったけど、
    でも、やっぱここがほんまの最後やから、しっかりやるで」

淡「最後かー…そうかぁ」

セーラ「ん、どしたん?」

淡「ううん、ただ最後なんだなぁってそれだけ」

セーラ「寂しいん?」ニヤニヤ

淡「うん、……寂しいよ」ボソッ

セーラ「お、おう…(素直やん、びっくりした)」

淡「もういいや、ごめんおやすみ」

セーラ「うん、おやすみ」ナデナデ

淡「それ、気持ちいい」

127: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/13(土) 22:21:48.09 ID:7P2bqiKGo
セーラ「そうかそうか、ほなもっとな」ワシャワシャ

淡「ちょ、それ激しいから!」

セーラ「ふふ、お前はおもろいなー」クスクス

淡「バーカ、セーラのバーカ」

セーラ「はいはい、ほら、はよ寝るで」

淡「はーい。おやすみー」

セーラ「おやすみー」


セーラ「(頑張れ淡、お前ならできる)」

131: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/14(日) 21:03:22.05 ID:kxF2vbzSo
次の日の朝、ホテル、レストラン


淡「うぅ、眠い…」フワァー

セーラ「お前さっさと寝たやん」ビシッ

淡「えぇ…そうだっけ?」

照「淡、体調管理はちゃんとしなさい」

淡「わかってるよーだ」

照「淡は先鋒、その意味が分かってるの?」

淡「東京のエース!」ドヤァ

菫「わかっているなら、自覚を持て」

智葉「生半可なことしたら…覚悟しとけよ、大星」

淡「うぅ、智葉怖すぎ!」キャッキャ

セーラ「怖がってるようには見えへんけどな」

132: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/14(日) 21:03:51.59 ID:kxF2vbzSo
智葉「ってめぇ!呼び捨てにすんなこら!」

淡「セーラ助けてー!」

セーラ「はいはい、どっちも落ち着けー」ドードー

菫「ところで多治比、君は何故そんなに無口なんだ」

真佑子「え、そんなつもりは…」

セーラ「弘世が怖いからビビってんちゃう?」ニヤニヤ

菫「なっ!お前はそうやっていつもいつも!」

照「ほら、そこじゃれないの」

菫「じゃれてなどいない!」

淡「セーラ私とじゃれようよ!」

セーラ「えー遠慮するー」

淡「なんで!?」

133: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/14(日) 21:04:28.64 ID:kxF2vbzSo
智葉「あーあー白糸台うっせーなぁ」

照「…ごめんね、うるさくて」

真佑子「いえ、楽しいです……多分」

照「いや、なんていうか、ごめんね。でも、まあ…頑張ろうよ」

真佑子「は、はい!宮永さんに言って頂いて嬉しいです」

照「ま、そんな固くならないで。チームメイトなんだしね」

セーラ「そやで~?あ、弘世と辻垣内が怖いときは俺に言いや?」

菫・智葉「「あぁ!?」」

真佑子「…はい、そうします」

134: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/14(日) 21:04:56.77 ID:kxF2vbzSo
同日午前、ホテル、菫と照の部屋



セーラ「お邪魔しまーす」

照「いらっしゃい、セーラ」

菫「大星は?」

セーラ「ちょっと寝るって」

菫「ったくあいつはもう…」

セーラ「昨日はさっさと寝たと思ってたんやけど、違うみたいや」

照「え?」

セーラ「なんか様子がな、ちょい変っていうか」

菫「何かあったか?」

セーラ「俺らが思ってる以上に、あいつはいろいろ抱え込むみたいやな」

照「…オーダーのこと?」

セーラ「そうや。先鋒は秋の大会で慣れたかと思ってたんやけどなぁ」

135: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/14(日) 21:05:42.96 ID:kxF2vbzSo
菫「秋季大会はエースだったからな、あいつ」

照「でも、この大会には私がいる…から?」

セーラ「白糸台の新しいエースとして、照に恥ずかしいとこは見せられへん
    という感じで結構思いつめてるみたいや」

菫「いつもより騒がしいのはそういうことか。
  まあどうせ悩むならうるさいよりも静かにする方向の方が助かるんだけどな」

セーラ「でな、昨日も『私が先鋒なのってどう思う?』とか言うてたし」

照「そう…でも、でもきっと、それって淡には必要なことだよ」

セーラ「そやな、俺もそう思う」

照「エースの自覚を芽生えさせるには絶好の機会だと思う。
  この場を使って、というのは辻垣内さんたちにはいい迷惑かもしれないけど」

菫「あぁ、そうだな。まあ本来ならちゃんと言葉で伝えてやるべきなのかもしれないが
  ああいうやつだからなぁ。麻雀を直に通した方が早いだろう」

照「いつまでもあの淡なら、きっとつまづくと思うから」

136: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/14(日) 21:06:10.05 ID:kxF2vbzSo
セーラ「…ま、あれもあいつの良さやで?」

照「そうやってセーラはまた淡を甘やかす…」

セーラ「そういうんちゃうって。ただ、あいつらしさは失って欲しくないなぁと」

照「らしさも必要だけど、白糸台のエースはそんなに簡単じゃないよ」

セーラ「お前って相変わらず淡には手厳しいよなぁ」

照「そんなことない、淡はもっとよくなると思うから
  このまま立ち止まって欲しくないだけだよ。むしろ優しさだし」

セーラ「…わかった、その気持ちは俺も一緒やし」

菫「エースの自覚か…私には縁遠い話だな」

照「そんなことない、エースはただ強いだけじゃだめ」

菫「え?」

137: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/14(日) 21:06:37.68 ID:kxF2vbzSo
照「前にも言ったけど色んな人の力を借りて助けてもらって
  だからこそ精神的にも技術的にも強くなれる。
  エースは一人で勝手に出来上がるものじゃないってこと」

菫「そうか、そうだったな。すまない」

セーラ「照は淡にも、そうなって欲しいってことやろ」

照「うん、淡は人に甘えて楽をしすぎるところがある。
  甘えることは悪いことじゃないけどでも、それで楽してちゃだめ」

照「そういう意味で淡が変わってくれれば、
  この大会で先鋒を務めることで何かのきっかけにしてくれたらって」

照「私はそう思って、監督に淡を先鋒にって推薦した」

菫「そういうことだったのか、お前そういうことは言えよ」

照「淡には知られたくなかったから、ごめん」

セーラ「なんでや?」

照「それこそ余計な負担をかけるような気がして」

菫「まあ、それもそうか」

138: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/14(日) 21:07:03.80 ID:kxF2vbzSo
照「私は淡の変化に期待してるし、眠れないほど悩むのも
  そんなに悪いことじゃないように思うな」

菫「試合に影響が出ない範囲ならな」

照「何かしら淡が考え、思っていてくれるなら
  先鋒に据えた意味もある。淡にとっては迷惑なことだろうけど」

セーラ「いや、それはないで」

照「どうして?」

セーラ「あいつあれでめちゃめちゃ喜んでるんやで、エース」

セーラ「抱え込んでるみたいやけど、でも、決して辛そうではないんや
    この与えられた状況を楽しんでるっていうか…淡らしいやろ?」

照「フフ、確かにね」

セーラ「俺は淡らしい、そんなエースが誕生することに期待する」

照「じゃあ、私もそう思っておく」

菫「だな、うん」

139: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/14(日) 21:07:29.92 ID:kxF2vbzSo
菫「…なあ、私たちは先輩の鑑だとは思わないか?」クスクス

照「思うね。だってこんなに後輩思いなんだもの」クスクス

セーラ「あはは、そやな」クスクス

セーラ「ってそういえば俺エースやったことあるやん!!」

菫「バカか、あれは先鋒だっただけでエースはずっと照だろ」

照「あぁ、1年生や2年生のときはセーラが先鋒だったよね」

セーラ「そう、エースというのはな…」

菫「白糸台の方針がエース=先鋒に変わったのは2年の秋からだろ」

セーラ「えぇ、そやっけ~?」

照「それまでは結構ばらつきがあって、まあ大将が多かったみたいだけどね」

セーラ「くぅ、ただの先鋒か…」

140: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/14(日) 21:07:58.08 ID:kxF2vbzSo
照「けどセーラの先鋒経験は火力と打ちまわしに生かされてる。無駄じゃなかったよ」

菫「…まあ確かに」

セーラ「へいへいそやな~、ありがと。ま、後ろに照や弘世や先輩らが
    いてくれるっていうのが強かったなぁ、俺は」

照「もちろん、その安心感はあるよね。けど、その考えが過ぎると…」

菫「油断に繋がる、だな」

照「そう、だから、先鋒をエースとする戦いをしていくんだったら
  ここで終わらせてやる、くらいの気持ちじゃなきゃね」

照「そんなことほとんど不可能っていうか、難しいけど
  その気概は必要だって思ってるよ」

セーラ「おぉ、さすがエース!」

照「もう、やめてよ…恥ずかしい//」

144: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/15(月) 20:20:29.91 ID:O7GG5EVHo
同日午後、セーラと淡の部屋


セーラ「淡起きてるかー」

淡「…あっ、セーラおかえり」

セーラ「今起きたとこ?」

淡「ううん、ちょっと前。よく寝れた」

セーラ「そらよかった、…あんま、無理すんな?」ナデナデ

淡「うん、ありがとセーラ…えへへ、それ好き」

セーラ「じゃあ、ちょっと着替えて昼ごはん食べに行こか」

淡「うん!みんな一緒?」

145: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/15(月) 20:20:56.22 ID:O7GG5EVHo
セーラ「いや、照と弘世は部屋で開幕試合見てるし、
    辻垣内と多治比ちゃんは部屋におらへんみたいやねん」

淡「じゃあ、セーラと2人?」

セーラ「嫌か~?」

淡「う、ううん!嬉しい!デートだね!」

セーラ「お前って2人でどこか行くって言うたらデートデートて」

淡「えへへー、すぐに準備するね!」

セーラ「おう、はよせーよー」

146: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/15(月) 20:21:30.01 ID:O7GG5EVHo
セーラ「(淡とデート…ではなく、ランチへ出かけた)」

セーラ「(いつもより饒舌で、嬉しそうでやたらひっついてくる淡は
     可愛い後輩で、変わって欲しくないと思ってしまう)」

セーラ「(このままずっと無邪気に笑っていてくれれば
     それが淡にとってのベストなんちゃうかなって思いたくなる)」

セーラ「(けど、照の言うように淡は白糸台を背負っていくエースで
     このまま立ち止まってしまうことはできない)」

セーラ「(さらなる変化を、成長をして欲しい。
     でも、らしさを失って欲しくはない)」

セーラ「(そんなことは難しいのかも知れへん、でも、
     隣で屈託なく笑う淡を見ていると、そう願わざるをえない)」

セーラ「(なんて、一日が過ぎていく)」

147: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/15(月) 20:22:42.66 ID:O7GG5EVHo
セーラ「(一回戦が終わり、大会は二回戦へと進んでいた)」

セーラ「(我らが東京チームの初戦である二回戦、
     対戦相手には弘世の予想通り岩手が勝ち上がってきた)」

セーラ「(俺らの、コクマがはじまる!)」

148: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/15(月) 20:23:17.20 ID:O7GG5EVHo
先鋒戦開始前、控え室


セーラ「おい淡、なに緊張してんの」ホッペムニムニ

淡「き、緊張?し、してないし!」

菫「わかりやすく動揺してるな」

智葉「高校100年生にはこんな試合朝飯前だろ」

照「淡、落ち着いて。深呼吸」

淡「う、うん。すぅーーーはぁーーーー」ハァ

真佑子「が、頑張って!」

照「落ち着いた?」

淡「う、うん…ちょっとだけ」

菫「気負うな、いつも通りでいいんだ」

セーラ「頑張れ、淡」ナデナデ

淡「…頑張る!」

150: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/15(月) 20:24:16.88 ID:O7GG5EVHo
智葉「まあ…後ろはみんな先輩なんだから
   細かいことなんか気にせずやってこい!」バシン!

淡「い、痛いから!それ痛い!」

セーラ「気合入ってええやん」

淡「えぇ…」

照「淡、昨日言ったとおり…」

淡「最初から、全力?」

照「そう。出し惜しみしなくていいからね、もう隠す必要がないし」

菫「ダブリー決めて来い」

真佑子「だ、ダブリー…」カタカタ

セーラ「お前らしくな、そんでええし」

淡「行ってくる…!」


ガチャ

バタン

151: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/15(月) 20:24:49.59 ID:O7GG5EVHo
セーラ「大丈夫かーあれ」

照「だいぶ緊張してる。見たことない顔してた」

智葉「ま、1年坊にしては重い責任背負ってるからな」

菫「信じて応援するしかない、大星は大丈夫だよ」

真佑子「あの大星さんがあんな顔…」

セーラ「インハイ予選の時はあいつ怖い顔してたやろ?」クスクス

真佑子「あ、あぁ…まあ」

セーラ「ふふ、やんなぁ」

156: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/18(木) 22:16:37.38 ID:ITfjNZ1Wo
先鋒戦、対局室



淡「うぅ、…だ、大丈夫、できるできる!」

淡「あれ、一番乗りかー」


白望「ダル…」スタスタ

淡「岩手の人だー。え、なにがダルいの?」

白望「歩くのダルい…えっと、……白糸台の人か」

淡「そんなんだと太っちゃうよ!」

白望「それもダルい…」

淡「わけわかんない!」


モブ県A「よろしくです」

モブ県B「よろしくお願いします」


淡「よろしくねー」

白望「どーも」

157: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/18(木) 22:17:13.29 ID:ITfjNZ1Wo
試合開始、控え室


淡『リーチ!』

淡『カン!』

淡『ロン!』


智葉「当然のようにカン裏がのるんだな」

菫「大星らしい、素晴らしい上がりだ」

照「よし、とりあえず大丈夫か」

セーラ「他県の配牌もひっどいもんやで」

智葉「直接対局したことはないが、恐ろしい打ち手だな。大星淡」

真佑子「恐ろしいです、ほんと…」カタカタ


白望『ん、…ちょいタンマ』

158: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/18(木) 22:17:43.77 ID:ITfjNZ1Wo
セーラ「きたか、小瀬川白望」

照「ほんとに言った」

菫「迷うと手が高くなる…ねぇ」

真佑子「マヨヒガでしたっけ」

智葉「マヨヒガ、民話というか伝承だったか」


白望『あぁ、そこにいたんだ…ツモ』


照「小瀬川さんはこうなると淡の支配から抜け出してくるね」

菫「毎回じゃないのが救いか」

セーラ「うん、そやな」


アナ『前半戦終了!東京都代表大星淡、圧倒的です!
   白糸台高校次期エースの実力を存分に見せ付けたー!』

アナ『岩手代表小瀬川白望はなんとか食らいついています!
   他の二県はこの大失点を立て直せるか!?』

159: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/18(木) 22:18:30.74 ID:ITfjNZ1Wo
前半戦終了後、対局室前


淡「ふぅ~」

セーラ「ほい、水分補給やで」

淡「セーラ!えへへ、ありがと」ゴクゴク

セーラ「緊張してた割には圧倒してるやんか」

淡「うん、牌に触れるとね、力が湧いてきたの」

セーラ「そうか、よかった。心配しててんで?」

淡「セーラが?私を?」

セーラ「や、みんなやで。先鋒はそれだけ大事なポジションってことや」

淡「うん…わかってる。照の気持ち、今ならちょっと分かる」

160: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/18(木) 22:19:01.95 ID:ITfjNZ1Wo
セーラ「そうか。うん、じゃあその気持ちをしっかり自分に生かしや」

淡「もちろん!頑張っちゃうよ」

セーラ「うん、頑張れ」

淡「うん!」

セーラ「ふはは、よかったよかった」ワシャワシャ

淡「だから、それ乱れるって!」ニコニコ

161: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/18(木) 22:19:49.08 ID:ITfjNZ1Wo

後半戦開始、控え室


菫「大星はどうだった?」

セーラ「意外と落ち着いてたわ」

智葉「うるさくはないのか」

セーラ「それが全然。…ま、何か感じるところはあったみたいや」

照「そっか、それはよかった」

真佑子「…??」

照「ただ、それが吉と出ればいいけど」

菫「…ん?」

162: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/18(木) 22:20:32.90 ID:ITfjNZ1Wo
モブ県A『それ、ロンです』

淡『えっ…』


モブ県B『ツモ』

淡『…あれ?』


セーラ「これはこれは…照の予想的中か?」

照「かも」

智葉「大星は前半戦に比べて気迫に欠けるな」

菫「支配が弱いのか手を抜いたか、それとも、」

照「いや、相手が対応してきているわけじゃない、と思う
  淡の打ち筋にはそう簡単に対応できない」

セーラ「あぁ、せやな。淡がちょっとおかしいんや、
    他家の配牌も普通やったしな」

163: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/18(木) 22:20:58.88 ID:ITfjNZ1Wo
菫「支配が効いていないということか」

照「多分そうなんだと思う、どうしちゃったかな」

智葉「手を抜いてる可能性はないのか、点差もあるし」

セーラ「いや、それはない。そんなことするやつちゃう」

智葉「おうおうえらく信用しているんだな、1年坊を」

セーラ「何が言いたいねん、おい」

照「やめて、揉めないで」

セーラ「別に揉めてへんわ」

智葉「ふん」

菫「あぁ、もう」

真佑子「…うぅ」カタカタ

166: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/19(金) 23:46:43.61 ID:z4TbCfh/o
菫「江口、もしかして余計なことは言ってないだろうな?」

セーラ「は?言うわけないやん、アホか」

菫「すまん、しかし、こうも急に変わるか?」

照「淡は何を言ってたの?」

セーラ「今なら少しは照の気持ちが分かるって言うてたけど」

照「…そう、なるほど」

菫「何がなるほどなんだ?」

照「淡は、自分で自分にプレッシャーかけすぎているのかな」

智葉「それはどういう意味で?」

セーラ「照みたいにやらなきゃ、って思いすぎ?」

照「私にはそう見える。自分らしさというか、
  淡らしい麻雀が消えちゃってる。もちろん、支配も希薄」

菫「まあ確かに」

167: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/19(金) 23:47:26.56 ID:z4TbCfh/o
照「私と自分を比較して私みたいになろうとしてるのかもしれない。
  点数に余裕があったからかもしれないけど、
  そんなことしてちゃ足元すくわれる、こうなるのは仕方がない」

智葉「空回りしているんだな、大星淡」

照「でも、私は少しうれし…」

智葉「え?」

照「…いや、なんでもない」

セーラ「(淡の変化、エースになろうともがいているその姿…)」

セーラ「(それが嬉しい、ってことやろ?照)」

セーラ「(ま、けどそんなことをここで言えるわけないか)」

セーラ「(…エースと淡らしさの両立は難しいんかなぁ)」

168: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/19(金) 23:47:54.15 ID:z4TbCfh/o
白望『ん~…ちょいタンマで』


白望『それロン』

淡『はい…』


真佑子「大丈夫ですか、これ…」


アナ『どうした大星淡!?前半戦の圧倒的な稼ぎが
   みるみるうちになくなっていくぞー!』

アナ『一方、小瀬川白望は着実に点を積み重ねついに首位浮上!』


白望「(おかしいなぁ、大星さんからこんなに和了れるなんて)」

白望「(そりゃ和了れるにこしたことはないけど…少し違和感)」

白望「(何かの前触れなのかな…ダルいなぁ)」

169: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/19(金) 23:49:12.86 ID:z4TbCfh/o
淡「…(やばやばいやばい)」

淡「(あと2局しかないのに!どうしよう!)」

淡「(なんでみんなそんな普通に和了ってくるの?
   ダブリーだって全然出来ないし…)」

淡「(ってか岩手は和了りすぎ!…どうしよう?ねぇ、誰か教えて…!)」

淡「(いつもみたいに打てればいいだけなのに、なんでそれができないの…)」

淡「(秋季大会では普通にできてたのに、関東大会だって優勝したし
   私は白糸台のエースで…みんなから期待されて、だから、だから!)」

淡「(私はエースなんだ!照みたいなエースにならなきゃいけないんだ…!
   こんなところで躓くわけにはいかないのに…!!)」

淡「(どうして、こんなことに…こんなに頑張ってるのに!)」

淡「(まだ足りないっていうことなの?何が、何が足りないっていうの!?)」

170: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/19(金) 23:49:38.49 ID:z4TbCfh/o
アナ『先鋒戦終了ー!!トップは岩手代表小瀬川白望!
   最終的に大星淡は2位を死守しましたが3、4位とは僅差です!』

アナ『試合前の予想を覆す結果となった先鋒戦、
   東京都代表はどこまで挽回できるか!注目です!』


淡「お疲れ様でした…」ハァ

白望「おつかれさま(あれ、おかしいな…何もなかったな)」

モブ県A「お疲れ様です」スタスタ

モブ県B「おつです」スタスタ

171: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/19(金) 23:50:04.85 ID:z4TbCfh/o
淡「…帰んないの?」

白望「ダルいからおんぶして」

淡「はぁ?やだ」

白望「冷たいね…」

淡「普通しないって」

白望「…ねぇ、前半と後半じゃまるで別人だったんだけど」

淡「……」

白望「余計なお世話だけど、目の前にあることに集中した方がいいんじゃない?」

淡「え?」

白望「じゃあね、また対局できるといいね」スタスタ

淡「は、ちょっと!」


淡「…ダルいんじゃなかったの、バカ」

172: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/19(金) 23:50:30.42 ID:z4TbCfh/o
対局室前


淡「はぁ…戻るのいやだなぁ」

智葉「じゃあずっとそこにいろ」

淡「…智葉」

智葉「だから呼び捨てにすんな…まあいいか…
   とりあえずそんなシケた顔してんじゃない」

淡「でも、…あんな失点…」

智葉「忘れたかお前」

淡「え?」

智葉「私たちは先輩だろ?まあ、見てろ」

淡「…うん!」ニコ

智葉「そうそう、そうやって笑ってろ」ワシャワシャ

淡「み、乱れるって!」

173: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/19(金) 23:51:49.46 ID:z4TbCfh/o
次鋒戦開始前、控え室


セーラ「照、淡に怒るなよ」

照「怒らないよ、むしろ嬉しいんだから」

菫「ったくお前はもう」

真佑子「あの…何が嬉しいんでしょうか?」

照「…いや、なんでもないよ。ごめんね」

真佑子「はぁ…そう、ですか」


ガチャ


淡「ただいま…」

セーラ「テンション低いやっちゃなぁ」

淡「だって…ごめんなさい!」

174: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/19(金) 23:52:27.45 ID:z4TbCfh/o
照「ううん、謝らなくていい。あれでいいから」

淡「でも、あんな失点…」

菫「照がああ言ってるんだ、もういい」

セーラ「そやそや。それによくなかったところは自分でわかってるやろ?」

淡「うん…」

照「ならいいよ、ほら、辻垣内さんを応援しよう」

淡「…照が優しいって珍しいね」

照「そうかな、普通だよ」

セーラ「ま、そういう日もある…けどその意味をちょっとだけ考えてみ」

淡「意味…?」

菫「そう、意味だ。照が優しい意味を少し、考えてみろ」


真佑子「…(いいなぁ、こんなにいい先輩がいて)」

177: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/24(水) 21:41:27.03 ID:kX/0kWLSo
アナ『さて、残すところは大将戦の4局のみ!』

アナ『東京都は次鋒からの大量リードを維持しつつ満を持して…
   インターハイチャンピオンの宮永照が登場だぁぁぁ!!!』


セーラ「アナウンサーの気合の入り方ヤバイな」

菫「まあ、注目度が桁違いというか」

智葉「さすがに宮永なら安心して見ていられる」

セーラ「え、それどういう意味や!」

真佑子「そ、そうですよ!」

智葉「あぁ?そのままの意味だが」キリッ

セーラ「くっそー!」

真佑子「まあ…ですよねー」

178: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/24(水) 21:42:12.90 ID:kX/0kWLSo
大将戦開始前、対局室


照「(このまま流すだけでも勝てる…はず。
   絶対はないけど可能性は高く思える)」

照「(だけど私は…私が麻雀を続けようと思った理由を
   私の大好きな麻雀を体現しなきゃいけない)」

照「(セーラと菫に話した、私の好きな麻雀。
   白糸台の麻雀。いつでも、どこでも、私は、私は、)」


照「私は白糸台高校の宮永照…」ボソ


照「(それを東京都の代表でも見せ付ける)」

照「(そうしたら淡にだって何かを伝えることが出来るかもしれない。
   …何か読み取ってくれたら、私は嬉しいな)」


照「(…だからさ、私は一切を手を抜かない。全力で、当たる!!!)」


豊音「(宮永さんの雰囲気がちょー怖いよー)」ブルブル

豊音「(でもあとでサインもらっちゃうよー!)」キリッ

179: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/24(水) 21:42:39.16 ID:kX/0kWLSo
大将戦開始、控え室


智葉「おう、これはこれは」

真佑子「宮永さんがラス親ですか…これは多分、」

菫「どこかが飛ばされるかな」

セーラ「照は手を抜かへんやろしな」

淡「え、このまま流しちゃっても勝てるのに?」

菫「あぁ、照はそういうやつだよ」

セーラ「うんうん、ま、それ以外にも理由はありそうやけどな」

菫「あぁ、そうだな」

淡「理由ってなに?」

セーラ「よう見とけ、照の麻雀を」

淡「え、うん…??」

180: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/24(水) 21:43:16.20 ID:kX/0kWLSo
智葉「…ったく白糸台だけが代表じゃねーんだぞ」アキレ

菫「すまない。それについては申し訳ないとしか」

淡「どういう意味?」

智葉「ま、それだけの逸材ということか」

淡「いつざい?」

菫「ちょっと黙ってろ」

淡「えー」

セーラ「まあ、そんなとこや。いや、ほんますまん」

智葉「いや、怒ってるというわけじゃないし、
   お前らのやりたいこともわからないわけじゃない」

菫「ありがとう、助かる」

セーラ「ほんまおおきに!」

智葉「だが、ほどほどにしておけよ」

菫「あぁ、もちろんだ」

181: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/24(水) 21:44:29.95 ID:kX/0kWLSo
照『ロン』


淡「あ、は、始まった!照の和了だよ!」

智葉「さて、どこまで続くかな」


セーラ「(照は圧倒的やった。岩手の大将は特殊な打ち手やって
     聞いていたけど、その特殊性を出す間もなく照が他家を飛ばした)」

セーラ「(大将というポジションは2年の夏以来やったけど
     そのせいか、すごく楽しんで打っているように見えた)」

セーラ「(照が好きやって言う白糸台の麻雀。
     あの夏みたいな…先輩がいて、俺らがいて、後輩がいる安心感)」

セーラ「(照はそんな気持ちで闘っているように思えた
     だからあいつはきっといつまでも、ずっと、白糸台高校の宮永照で)」


アナ『国民麻雀大会二回戦第一試合終了ー!!
   宮永照、前半戦東4局で試合を終わらせました!まさに圧倒的!!!』

アナ『宮永照率いる東京都は準決勝へ進出決定!
   そして、2位を堅持し続けた岩手も準決勝へと駒を進めました』

185: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/26(金) 23:35:41.76 ID:xzbhtJ2go
同日夜、セーラと淡の部屋、白糸台の4人


菫「すまん、遅くなった…お、少しは片付いてるな」

セーラ「せやろ~」

淡「片付けたもんねーセーラ」

セーラ「そやそや!」

照「…いや、菫が来る前に私が片付けたんだって」

菫「やっぱりな」

セーラ「そやったかなー」

照「もう、ちゃんとしてよ」

淡「はーい!」

菫「お前らはほんとにもう」

186: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/26(金) 23:36:36.43 ID:xzbhtJ2go
淡「ねーてるー」

照「んー?」

淡「今日の試合ね、」

照「うん」

淡「飛ばさなくても勝てたよね?」

照「まあ、かもしれないね。点差は十分あったし」

菫「辻垣内が淡がつけられた点差をひっくり返して
  かつ他家に大差をつけたからな…」

照「あれで流れが完全にこちらへ来た」

セーラ「アホ、俺や俺!俺の方があいつより稼いだやん!」

菫「そうだったか?照」

照「さぁ、どうだったかな」クスクス

淡「わかんないよねー」キャッキャ

セーラ「くぅ、お前ら!」

187: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/26(金) 23:37:15.87 ID:xzbhtJ2go
照「…まあ、それはいいとして」

淡「どうしてあそこまで…なんていうか、その」

照「本気になったかって?」クスッ

淡「うん、そう。飛ばさなくたってさ」

照「どうしてか自分で考えた?そこが大切だよ」

淡「ううん、だってわからない。…初戦だから?」

照「違う」

菫「淡、私が言ったこと覚えてるか?
  照が、淡の失点に対して怒らなかったのは何故だ?」

淡「それは少し考えた…怒ったら私が萎縮しちゃうから?」

セーラ「ん~…それはちょっとちゃうかな」

照「淡は先鋒、先鋒は?」

淡「えーす?」

照「うん、エースとして試行錯誤しながら頑張っていた淡を
  叱ったりは出来ないし、しても意味がないと思ったの」

照「むしろ、そうやって悩んで落ち込むことにも意味があるから
  だから、私は嬉しかったんだよ」

188: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/26(金) 23:37:54.68 ID:xzbhtJ2go
淡「…わかんない。だって照はずっと強いじゃん、負けたことないでしょ?」

照「まあ…」

淡「私は、気負ってた、頑張らなきゃって思えば思うほど
  支配が効かなくなってた。そんな気持ち、照にはわかんないよ」

淡「…照みたいにならなきゃって、みんなから信頼されるエースに
  ならなきゃってそう思って空回った私の気持ちは、」

淡「きっと誰にもわかんないよ…」

セーラ「アホ、言い過ぎや」

淡「だって!照はいっつもそう!」

菫「こら、興奮するな」

照「ごめん淡、確かに私にはわからないのかもしれない。
  だけど、だけど私は淡には白糸台を背負って欲しい、」

照「白糸台を代表するエースになって欲しいって願ってる。
  だから厳しくもするし、優しくもする」

照「でもね、私は自分と同じ事を淡に求めているわけじゃないんだよ。
  負けるなって言ってるわけじゃないんだ」

淡「…照」

189: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/26(金) 23:38:29.26 ID:xzbhtJ2go
セーラ「同じなんて無理や。ただ、なんていうか
    自覚とか意識は同じになれるんちゃうかなーと」

照「少しと回りくどいのかもしれないけど、私の試合を見て
  何か感じてくれればいいなと思ってたんだ」

セーラ「そしたら淡はもっと強くなるんちゃうかなって、な」

照「私は白糸台のエースとして淡が輝くためには
  この大会でもエースを務めるべきだと思った」

照「自覚ができればもっと成長してくれると思っているし
  今日の失点もそう悪いことじゃないんだよ?」

セーラ「そうそう、まあ一つ学んだってことで。な?」

菫「あぁ、そうだ」

淡「…なんで、なんでそんなに私なんかに」

照「高校100年生だからじゃない?」

淡「バカ、照のバカ」ムッ

190: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/26(金) 23:39:07.69 ID:xzbhtJ2go
照「ごめん、でも、私は淡に期待してるから。
  たとえ迷惑に思われても、エースは淡しかいない」

照「それが重荷だとか、嫌だとか思うならそう言って?」

淡「そういうわけじゃ…エースって言われて嬉しかった…し」

照「なら問題ないね。だからさ、苦しいときは
  誰もわかってくれない、って思うときは先輩に頼っていいんだよ」

照「私もそうだったから。ね?そのための先輩だからさ」

セーラ「そやで、淡」

菫「あぁ」

淡「グスッ…バカじゃないの、ほんと」

照「泣き虫」ナデナデ

淡「うるっ、さい」グス

191: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/26(金) 23:41:41.11 ID:xzbhtJ2go
セーラ「いや、泣き虫は照やんな?」ボソボソ

菫「だな、人に言えた立場じゃないな」ボソボソ

セーラ「…ま、これで少し変わったか」

菫「そうなればいいがな」

セーラ「てか、照が全力やったんはそれだけが理由ちゃうよな」

菫「まあそうだろうな。…白糸台の麻雀、だな」

セーラ「対局中のあいつ、えらいリラックスしてた」

菫「部室で打っているつもりにでもなっていたんだろう」

セーラ「いつでもどんなときでも、白糸台の宮永照…か」

菫「あいつの目指す麻雀はそこにある」

セーラ「…麻雀を続けてくれてよかった、よな?」

菫「あぁ、そうだな。照自身のためにも、淡のためにも、」

セーラ「俺らのためにも、な」

菫「…あぁ」

192: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/26(金) 23:42:06.44 ID:xzbhtJ2go
しばらく経って…


菫「じゃあ、そろそろ部屋に戻るよ」

照「おやすみ、セーラ、淡」

セーラ「おう、おやすみ」

淡「今日はありがと、その、照も菫も…」

菫「なんだ、大星らしくないじゃないか…可愛いもんだ」アタマポンポン

淡「なっ!//」

照「うんうん、淡はそういう素直な方が可愛いね」ナデナデ

淡「う、うるさいなぁ…//」

菫「じゃ、これで」

照「また明日~」


バタン

193: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/26(金) 23:42:57.72 ID:xzbhtJ2go

淡「…ねぇ、セーラ」

セーラ「ん?」

淡「今日は、ありがと…あとごめん」

セーラ「何がありがとうで、何がごめんなん?」

淡「…それは、その、いろいろ」

セーラ「またわかりにくいやっちゃな」

淡「自分でもよくわからないけど、でも、嬉しかった」

セーラ「嬉しかった?」

淡「うん、だからありがとう」

セーラ「ごめんは?」

淡「それは…迷惑かけてごめん、いろいろ」

セーラ「いろいろなぁ。アホ、迷惑なんて思ったことない」

淡「だけど、…セーラも、菫も…照も、優しいもん」

194: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/26(金) 23:43:24.67 ID:xzbhtJ2go
セーラ「優しいのは嫌なん?」

淡「嫌、じゃないけど…けど、迷惑かもしれないのかなって」

セーラ「照が言うてたこともう忘れたんか?」

淡「え?」

セーラ「苦しいときは先輩に頼れって言われたやろ?」

淡「うん…」

セーラ「先輩ってのは後輩を支えるもんや、それが迷惑なはずないやん」

淡「…そっか」

セーラ「世話焼かれてるうちが華やで?」

淡「う、うん!」

セーラ「元気でよろしい、ふはは」

195: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/26(金) 23:44:06.48 ID:xzbhtJ2go
淡「え、えへへ…セーラ、私ね、セーラのこと…」

セーラ「んー?大好きですってかー?知ってるでー」

淡「へっ!?//」カァァ

セーラ「俺も大好きやもん、淡のこと」

淡「は、ちょ、何言ってんの!?//」

セーラ「淡は俺の大事な大事な後輩やしな~
    こんなに懐いてくれる後輩おらんでー」

淡「…そういうことね」ハァ

セーラ「ん?なに?」

淡「ううん…なんでもない、そりゃそうだよね」

セーラ「えーなんやねん」

淡「なんでもないってば!お風呂入ってくる!」

196: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/26(金) 23:45:28.52 ID:xzbhtJ2go
セーラ「おう、ごゆっくり~…さっぱりして、頭切り替えよな」ナデナデ

淡「うん…同じ轍は踏まないから」ボソ

セーラ「おっ!難しい言葉知ってるやん、感心や」

淡「だって高校100年生だからね!」ドヤァ

セーラ「はいはい、ほら、行ってこい」

淡「むー!」ムス

淡「セーラのバーカ!」

セーラ「なんやとこらー」


バタン


セーラ「…ふぅ、元気そうでよかった」ボソッ

200: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/28(日) 22:06:46.25 ID:3jH+bjLTo
数日後、準決勝第一試合、試合開始前、控え室


照「さて、いよいよ準決勝だね」

智葉「前回以上に気合入れないとな、大星」バシッ!

淡「いったーい!」

菫「気合入ったか?」

淡「…うん、入った!!」メラメラ

セーラ「よっしゃ、エースの出陣や」

真佑子「が、頑張ってー!」

淡「うん、頑張る!!」

照「淡、気をつける相手は?」

淡「ぜんぶ!」

照「それでいい、絶対に気を抜かないようにね」

淡「もちろん!」

201: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/28(日) 22:07:26.81 ID:3jH+bjLTo
照「集中力を乱したり気負ってたりすると淡の支配は脆弱になるからね」

淡「う、うん!今日は大丈夫だから…!」メラメラ

菫「いい顔してるよ、お前」

セーラ「前回の緊張顔がウソみたいにええ顔やで」

淡「そ、そうかな…えへへ」

智葉「期待しているからな」

淡「智葉に楽させちゃうよ!」

智葉「あぁ、そうしてくれ」

淡「じゃ、いってきまーす!!」


ガチャリ

バタン

202: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/28(日) 22:08:41.81 ID:3jH+bjLTo
セーラ「今日はこれ、いけるんちゃう?」

菫「だといいがな」

照「相手が強敵ばかりだからね…特に阿知賀」

智葉「お前から直撃とったやつだったな」

照「ドラかき集めちゃうんだからずるいよね」

セーラ「お前が言うなっちゅうの」クスクス

菫「そうだそうだ」

真佑子「確かに…」

照「えぇ」

セーラ「ま、淡の意識の変化がどんなもんか楽しみやな」

智葉「ドラゴンさん相手に大星のカン裏がのるかどうかも気になる」

照「それは大丈夫だとは思うんだけど、安心はできないよね」

菫「さて、そろそろはじまるか…」

203: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/28(日) 22:09:13.43 ID:3jH+bjLTo
対局室


淡「また一番乗りじゃん!」エッヘン


玄「あ、大星さん、今日はよろしくお願いします」

淡「よろしくねードラローさん」

玄「ドラゴンロードかぁ、恥ずかしい名前だよね//」テレ

淡「そ、そうかな(かっこいいと思ってたなんて言えない…)」

白望「…だる」フラフラ

淡「あれー今日もだるいんだ」

白望「あぁ、なんていうか…吹っ切れたみたいだね」ダル…

淡「え?」

204: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/28(日) 22:09:56.65 ID:3jH+bjLTo
白望「大星さん」

淡「…さあね」

白望「ま、なんでもいいけど…眠い…」

玄「あとお一人ですね、兵庫の…」

美幸「遅くなっちゃったよもー」アワワ

玄「いえ、まだ時間じゃないですよ」

美幸「よかったー」

淡「さーて!はじめますか」


アナ『今年の国民麻雀大会もついに準決勝を迎えます!
   準決勝第一試合には前年度王者、東京都が登場!!』

アナ『エースで先鋒を託されたのは白糸台高校1年、大星淡!
   二回戦では後半大失速しましたが、今日はどうなるでしょうか!』

アナ『間もなく試合開始です!』

205: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/28(日) 22:10:34.38 ID:3jH+bjLTo
淡「(エースの自覚…エースの役割、私にしか出来ないこと)」

淡「(照が、あの照がエースは私しかいないって言ってくれた…)」

淡「(すごく嬉しくて、でも、重圧もあって…
   だけど、先輩達が支えてくれるから、)」

淡「(だから、私は闘える。だから、私は色んなものを糧にする。
   昨日の、失点だって糧にしてやる)」

淡「(私らしさは何?エースに必要なものは…!!?)」ゴォォォォッ

206: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/28(日) 22:11:01.03 ID:3jH+bjLTo
玄「(うわぁっ、穏乃ちゃんの言ってた通りすごい迫力…
   でもドラはきてくれてる!それに宮永さんほどじゃない!)」

美幸「(想像通りひっどい手牌だよもー)」

白望「(相変わらずの6向聴か…はぁ、やっかいな子)」

白望「(…でもこの感じ、まずいかもなぁ。前回より、強大な何かを感じる…)」

白望「(大星淡…宮永照の後継者か…。
    ま、二回戦のような調子で終わるわけないということかな)」

白望「(じゃあ…大星さんの本気とやら、見せてもらおうかな…!)」

207: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/28(日) 22:11:41.13 ID:3jH+bjLTo
対局中、控え室


淡『リーチっ!!』


アナ『大星淡のダブルリーチが炸裂!!』


真佑子「やっぱりドラはない…ですね」

智葉「阿知賀は5向聴ながらドラ4か、恐ろしい」

真佑子「だけど、それだけに窮屈な手にもなりそうです」

智葉「ふむ…」

菫「……」

セーラ「……」

照「……」

智葉「どうした、随分静かじゃないか」

真佑子「ですね。大星さんが何か?」

208: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/28(日) 22:12:21.38 ID:3jH+bjLTo
菫「いや…」

セーラ「ん、なんちゅうか…うん」

照「…淡は、すごいなって」

智葉「どういう意味だ?」

菫「私たちの気持ちというか、淡は気負わなくていいということを、」

セーラ「下手に気負わず、苦しいときは先輩を頼れってな」

照「うん、淡にはそういう話をしたんだ」

智葉「それで?」

セーラ「あいつ、さっきええ顔してたやん?
    で、まあいい感じに吹っ切れたかなって」

菫「あぁ、つまり、私たちが淡に言うべきことがないというか」

照「淡に自覚や意識が芽生えたらもう手がつけられないと思う」

セーラ「今のあいつ、多分そんな状態やで」

智葉「…なるほどな」

真佑子「じゃあ、このまま…あ、」

209: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/28(日) 22:13:23.66 ID:3jH+bjLTo
淡『ロン』


真佑子「あ、カン裏乗りましたね」

菫「よし、よかった」

智葉「これが持続することを期待しようか」

照「うん、してあげて」

智葉「…ふん」



アナ『大星淡、完全に一人浮きです!!他家を完全に圧倒しています!』

アナ『これぞまさにエースの風格!二回戦後半戦の失速を全く感じさせません!』

アナ『後半戦、岩手や奈良、兵庫はどこまで東京に迫れるか!』

212: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/30(火) 20:44:16.89 ID:KMEOhhsJo
前半戦終了後、対局室前


照「お疲れ様だね、淡。ハイ、飲み物」

淡「っ!!照!?」

照「あははー、驚きすぎじゃない?」クスクス

淡「だ、だって照が来るとは思わなくて…」

照「セーラの方がよかった?」

淡「う、ううん!そうじゃないけど…嬉しいよ、照が来てくれて」ゴクゴク

照「ほんと?なら、私も嬉しい。だって、淡は私のこと苦手でしょ?」

淡「や、そ、そういうわけじゃないけど……ううん、前は苦手だったかも」

照「だよね」クスクス

淡「入学してすぐのころは照って全然笑わないし、厳しいし…恐かったし…」

照「今は?」

淡「…とっても頼りになるって思ってる。笑顔も、すごく増えたよね」

213: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/30(火) 20:45:30.79 ID:KMEOhhsJo
照「大阪から来た人にさー、辛気臭い顔してないで笑えって言われたんだよね」クスクス

淡「それセーラ?」クスクス

照「そうそう、あのおせっかい……感謝もしてるけどさ」

淡「まあ照が厳しいのは…今でもだけど、それは私のためだってちゃんとわかってるよ」

照「そっか、ありがとう」ニコ

淡「…二回戦の後、照に私の気持ちはわからないって言ったでしょ?」

照「あぁ、うん」

淡「だけど、私にも照の気持ちはわかってなかったんだよ…ごめんね」

照「そんなの、気にしなくていいのに」

淡「うん、でも…二回戦では照のこともエースもわかったつもりになって、
  それで、その重みや役割に押しつぶされて自滅しちゃった」エヘヘ…

照「…そうだったね」

214: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/30(火) 20:46:07.24 ID:KMEOhhsJo
淡「照が言う、自覚とか意識とかいろいろ考えたよ。
  エースとは何か、っていうか…うん」

照「そう、淡はどんどん成長していくんだね、偉いね」ナデナデ

淡「あ、ありがと//」テレ

淡「そ、それでね!私は私らしく頑張ろうと思って。
  照も言ったけど、照と同じことは出来ないから、だから」

淡「自分が出来ることを精一杯、誰かの真似をしたりせずにさ、
  私らしく、エースを務めたいって思ってる」

照「そっか、うん、それでいいよ」

淡「…だけど、照のエースとしての誇りは、自覚は、受け継いでいくからね」

照「ありがとう、淡…うん、嬉しい」

215: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/30(火) 20:47:31.01 ID:KMEOhhsJo
淡「それが、今の私のとって大切なことって考えてるから」

照「頑張れ、淡。私が、菫がセーラが淡を支えるからね」

淡「照…ありがと!」ギュッ

照「え、ちょ、急に抱きつかないでよ//」テレ

淡「しばらく、このまま…ね、安心させて」ギュウ

照「…はい、どうぞ」ナデナデ

淡「照に…甘えちゃった…」ボソ

照「だね」ナデナデ

216: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/30(火) 20:55:44.12 ID:KMEOhhsJo
後半戦終了、控え室


アナ『東京都代表の大星淡、最後は3連続和了で先鋒戦終了!!』

アナ『二回戦での大失速を一切感じさせない一方的な試合展開でした!』

アナ『区間2位は終始安定していた岩手ですが、東京との差は5万点以上開きました』


セーラ「ほら、言うことなし、完璧やろ?」

智葉「まあ…確かに」

真佑子「やっぱり…恐ろしい人ですね」ボソッ

セーラ「それ淡が聞いたら怒るでー」クスッ

真佑子「あ、えっと!内緒ですよ?」アワワ

セーラ「わかってるってー」ケラケラ

菫「他家は最初から最後まで淡の勢いに圧されっぱなしだったな」

217: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/30(火) 20:56:26.30 ID:KMEOhhsJo
智葉「えっと、あれは決勝だったか、インターハイの時の…」

菫「インハイ?」

智葉「最後の役満直撃…あれは強烈だったが、あの時のような気迫を感じるな」

照「…先鋒でも同じように打てたっていうことだと思う」

セーラ「そんだけ自然体っちゅうか淡らしくできたってことなんちゃうかな」

菫「だからこその結果だな」

セーラ「これは褒めたらなあかんなぁ~」

照「甘やかしてあげて、淡はきっと、セーラに褒められたいはずだよ」

セーラ「え?俺に?」

照「そう」

218: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/30(火) 20:57:11.61 ID:KMEOhhsJo
セーラ「照のほうが喜ぶんちゃう?普段厳しいヤツに褒められたら嬉しいやろ」

照「や、まあ…そういう意味でもないんだけど」ボソ

セーラ「え?」

照「いや、なんでもないよ」

菫「……(せっかく忘れていたのに、照のやつ、余計なことを…)」ハァ

智葉「さてと、楽させてもらうかな…行ってくる」

セーラ「おう、頑張ってな~」

菫「あぁ、奈良の次鋒は昨日言ったとおりで…」

智葉「わかってるよ、大丈夫だ」

照「うん、行ってらっしゃい」

真佑子「頑張ってください!」


ガチャリ

バタン

219: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/30(火) 20:57:55.15 ID:KMEOhhsJo
先鋒戦終了後、対局室


淡「…ふぅ」

白望「お手上げだよ、ほんと」

淡「えへへ」

白望「疲れたからおんぶして…」ダル…

淡「え、やだよ!」

玄「…うぅ」グスン

美幸「泣きたいのはこっちだよもー」


玄「おつかれさまでした…」トボトボ

美幸「もうやだ…」トボトボ

220: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/30(火) 20:59:04.13 ID:KMEOhhsJo
白望「ねぇ、何があった?」

淡「え?」

白望「前とはまるで別人っていうか…」

淡「…自覚、かな」

白望「そう…そうなんだ」

淡「ありがとね」

白望「別に何もしてない」

淡「それでも、ありがと」

白望「…うん」

221: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/30(火) 20:59:51.61 ID:KMEOhhsJo
次鋒戦開始前、控え室


淡「大星戻りましたー!」

セーラ「お!淡!おかえり!ようやったなぁ!」ワシャワシャ

淡「ちょ、も、乱れるからっ!」

セーラ「いや、もっと撫でさせろー!」ワシャワシャ

淡「セーラもう、やめてって」キャッキャ

セーラ「今やらないつやんねん!淡、俺はほんまに嬉しいんやで!」

淡「う、うんありがとセーラ!」

セーラ「この調子で次も頑張るんやで!」

淡「まっかせなさい!」エヘン

セーラ「頼もしいエースさんやで!」

淡「えへへ、もっと撫でてー」

セーラ「はいはい」ナデナデ

淡「…ありがと」テレ

セーラ「おつかれさま、淡」

淡「…うん//」

222: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/30(火) 21:01:58.16 ID:KMEOhhsJo
真佑子「大星さんすごく嬉しそうですね、なんだか可愛い」

照「まあ…好きな人に褒められるのは嬉しいよね」ボソッ

真佑子「え?今なんて?」

照「ううん、なんでもないよ」

真佑子「??そうですか…?」

菫「(照のヤツ…)」

照「ね、そうだよね、菫」

菫「なんのことだ」

照「わかってるくせに」

菫「何が言いたいんだ」

照「さぁ、わかんない」

菫「…ならもう何も言うな」

照「わかってるよ、多分ね」

菫「お前なぁ…試合中だぞ」

照「それもわかってる」

菫「…あぁ、もう」


真佑子「…??」

226: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 16:04:28.01 ID:5XCfVYf4o
中堅戦開始前、控え室


セーラ「さーて!俺の出番やな!」

淡「おー!頑張れセーラ!」

照「もしかしたらだけど、この点差なら…」

セーラ「お、トバしてまうか?」

菫「できるか?」

セーラ「兵庫はもう3万点切ってるしなぁ…辻垣内恐るべしや」

真佑子「無理はしないでくださいね」

セーラ「おう、わかってる…ま、実際トバすとなると難しいやろうけども」

菫「岩手と奈良は兵庫が飛ばないように上手く立ち回るだろうな」

照「うん、だから無理する必要はないけどトバせるのに
  様子見でトバさない必要もここまで来ればないと思うから」

セーラ「オッケー、了解した」

227: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 16:05:04.51 ID:5XCfVYf4o
菫「お前の高火力ならできるだろ、…期待している」

セーラ「お?弘世がそんなこと言うん珍しいな、ちょい嬉しいなぁ」エヘヘ

菫「や、別に…そういう意味じゃ…」

セーラ「なんかこう、信頼されてるんかなって思えて嬉しいで」

菫「…そうか、それは、うん、よかった」

照「………」ハァ

淡「照?どしたのー?」

照「え?なんでもないよ」

淡「??そう?」

セーラ「じゃあ、行ってくるで~」

228: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 16:05:39.10 ID:5XCfVYf4o
菫「待て待て」

淡「セーラ、はい諦めてー」

照「時間がないから急いでね」

真佑子「これ、どうぞ」ハイッ

セーラ「…うぅ」ショボン

菫「このやり取り何回目だ、もう思い出せん」

セーラ「…いちいち数えてへんし」

照「20回は超えてるね、毎回面白いからいいけどねー」

淡「セーラ、着替えさせてあげよっか?」ニヤニヤ

セーラ「え、ええし!自分で着替えるし!」

229: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 16:06:04.60 ID:5XCfVYf4o
カーテンザザー

セーラ「だいたいこれ東京都代表なんやし制服やなくても…」

照「白糸台から選ばれたら制服なの、何回も説明したよー」

セーラ「そら聞いたけど…」ガサゴソ

菫「で、お前はいつ慣れるんだよ」アキレ

照「最後の大会なのにね、もう」クスッ

真佑子「今大会で初めてこのやり取りを見ましたけど…毎度ですか?」

菫「あぁ、毎試合の恒例行事さ」

淡「可愛いのにねー」

セーラ「こら、お前らガヤガヤうっさいで」

230: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 16:06:33.74 ID:5XCfVYf4o
カーテンザザー

照「よっ、乙女モード」

淡「おー可愛いー!」

セーラ「う、うっさいわ!//」

真佑子「前回も思いましたけど、似合いますよね、スカート」フムフム

菫「あぁ、もったいない」

セーラ「せやからうっさいぞ!あんま見んな、こら淡!」ポコン!

淡「痛いよー!」


ガチャ

バタン


智葉「戻った…おぉ、女に化けたか」

セーラ「なんやと!?」

智葉「早く行け、マスコミがお待ちだ」

セーラ「くぅ……行って来ます!」

231: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 16:07:07.56 ID:5XCfVYf4o
ガチャ

バタン

タッタッタッ


智葉「似合ってるのにな、何がいやなんだ、あいつ」

照「スカートはひらひらするからだって」

智葉「心底くだらない理由だな…」

菫「江口は3年かかっても慣れなかったな」

淡「でもあれだよあれ!」

真佑子「あれ?」

淡「えーっとなんだっけ、キャップ萌え!」

照「…いや、それ帽子だから」

菫「ギャップ、だろ?」

淡「それだそれ!」

232: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 16:07:35.25 ID:5XCfVYf4o

智葉「バカなのか、いや、バカなんだな、うん」

淡「口悪い!」プンプン

真佑子「なるほど、ギャップですか」フム

淡「セーラって普段はカッコイイからなぁ」デレッ

智葉「気持ち悪い顔してるぞ、大星」

淡「えぇ、ひどっ!」

智葉「先鋒戦のときの引き締まった顔どこいった」

淡「あれは試合限定だからね!」ドヤァ

智葉「…あっそ」

淡「照ー!智葉が冷たいよー!」

照「はいはい」

233: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 16:08:04.59 ID:5XCfVYf4o
中堅戦開始前、対局室前


竜華「よ、乙女モードのセーラ!」

セーラ「あれ、竜華?どしたん?」

竜華「応援やで、怜ー!セーラいるでー」

怜「うん、ちょっと待ってーや!」

セーラ「おぉ、怜や~元気そうやんか」

怜「セーラ頑張ってや、うちらも明日の試合頑張るし」

セーラ「おう、当たり前や。ありがとな」

竜華「ええ顔してるやん、セーラ。これは手ごわいわぁ」

セーラ「やろ?ま、ええことあったからな~調子もええし」

234: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 16:11:18.89 ID:5XCfVYf4o
怜「え?なに?」

セーラ「秘密や」

竜華「え、教えて~や」

セーラ「内緒やって。じゃ、そろそろ始まるし行くわ」

怜「うん、あ、邪魔してごめんな」

竜華「集中力削いでしもた?」

セーラ「いやそんなことないで。…むしろ、気合入ったわ」

怜「え?」

セーラ「……やったるで!(待っとけや大阪!…っちゅうか愛宕洋榎!!)」

237: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/07(火) 21:20:16.10 ID:YtBiU49zo
中堅戦終了、控え室


アナ『決まったぁぁ!国民麻雀大会準決勝第一試合は中堅戦で終了っ!!!』

アナ『東京都代表中堅、江口セーラが連荘4本場で兵庫に倍満直撃!!』

アナ『副将に回すことなく、1位での決勝進出を決めました!
   2位に入ったのは3位の岩手をわずかに上回った奈良県ですっ!』

アナ『東京都と奈良県は○日後の決勝戦に出場します。
   あとの2校は明日の準決勝第二試合の結果で……』


淡「やったぁー!決勝だー!」ワーイ!

智葉「最後まで手を抜かなかったな、江口セーラ」

菫「トバしてしまえと言ってあったからな」

真佑子「でも本当に飛ばしちゃうなんて凄い…」

照「でも、私と多治比さんの出番がないのは少し寂しいね」

真佑子「ですね…勝てて嬉しいけど…うん、難しいですね」クスクス

照「ほんとにね」クスッ

238: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/07(火) 21:20:59.29 ID:YtBiU49zo
試合終了後、対局室


胡桃「…終わっちゃった」ハァ

梢「高校最後の大会が終わってしまいましたね…」フゥ

胡桃「はぁ、強いねぇ東京は」シミジミ

セーラ「おおきに、岩手の分も兵庫の分も頑張るから」グッ

梢「頑張ってください…悔しいですけど」

胡桃「ほんと、悔しいなぁ…」

憧「……最後、か」ボソ

セーラ「お前意外みんな3年生やからなぁ」ウンウン

憧「う、うん…あたしも頑張るから」

239: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/07(火) 21:21:44.64 ID:YtBiU49zo
胡桃「任せたよ、奈良県さん」

梢「同じ関西として、頑張ってください」

憧「任された…2人の分も、精一杯戦います」

セーラ「うんうん、美しい友情やなぁ~」コクコク

憧「あんたがトバしたくせになに言ってんの」

セーラ「ま、それとこれとは別やんか~」

胡桃「ま、確かに別っちゃ別かな」アハハ

梢「ええ、そうですよ」

憧「え、そういうもんかなぁ…」

セーラ「ま、そういうことにしといてくれや」

憧「…あぁ、うん」

240: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/07(火) 21:22:30.85 ID:YtBiU49zo
控え室


照「菫、セーラを迎えに行って来て」コソコソ

菫「はぁ?どうして私が?」

照「いいから早く」グイッ

菫「な、なんだよ?」

照「頑張った時は、…好きな人に褒められたいものだよ」コソコソ

菫「なぁっ!!?」

淡「どしたのー?」

照「いや、菫がトイレに行ってくるって」

淡「そうなの?菫行ってらっしゃ~い」

菫「あ、ちょ、こら照!!」

照「ほら、さっさと行って」グイッ!!

ガチャリ

バタン

241: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/07(火) 21:23:14.19 ID:YtBiU49zo
菫「何なんだあいつ…」

菫「なんで私が行かなくちゃいけないんだ…」

トボトボ

セーラ「ん、弘世?何してんの?」

菫「…トイレだ」

セーラ「そーか、ほな先に戻ってるで~」ヒラヒラ

菫「や、その、えっと!」

セーラ「んー?」

菫「ま、マスコミはもういいのか?」

セーラ「うん、あとで照が記者会見に出るし、俺は早めに解放や」

菫「そうか…」

242: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/07(火) 21:23:51.13 ID:YtBiU49zo
セーラ「弘世?はよトイレ行かへんと漏れるで」

菫「なっ!なんでお前はそうやっていつもデリカシーがないんだよ!!//」ムッ

セーラ「えー?そんなん気にする間柄ちゃうやん、今更やろ?」

菫「お前……バカか、そんなこと言ってるやつなんか好きにならないからな」

セーラ「えっ…いや、それは、えっと、あ、えー」アワワ

菫「何を慌ててるんだ」

セーラ「き、嫌われるんは嫌やし…ごめん」ショボン

菫「わかればよろしい…それと、あの、」

セーラ「な、なに?」

菫「す、素晴らしい試合だった、江口はやっぱり強いな。少し、…感動した」

セーラ「弘世…あ、ありがとう…」ボーゼン

245: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/07(火) 21:25:29.96 ID:YtBiU49zo
菫「な、なんだよ…素直にお礼なんて…恥ずかしいだろ」

セーラ「だって嬉しいねんもん…ありがとう、頑張ったかいがある」ウンウン

菫「お前ってほんと、私なんかのこと…」ハァ

セーラ「ん、…まあな。迷惑?」

菫「いや、そんなことは…」

セーラ「おっと…まだ大会中やし、この話は…」

菫「あぁ、すまない…だって照が…」

セーラ「照?なんかあったんか?」

菫「…いや、まあな」

セーラ「ん?…ってお前はよトイレ行ってこい」

菫「別にトイレは…いや、行ってくるよ。じゃあ、あとで」

セーラ「おう、あとでな」ヒラヒラ

246: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/07(火) 21:26:07.63 ID:YtBiU49zo
控え室


ガチャ

バタン


セーラ「たっだいま~」

淡「セーラっ!遅いよー!」ギュッ

セーラ「おー淡~!マスコミがしつこいねんよー」ナデナデ

淡「セーラやったね!」

セーラ「おう、やったった!」

智葉「見事だったな、鮮やかだったよ」

セーラ「お、おぉ。ありがと」

智葉「ま、決勝ではそうもいかないだろうがな」

セーラ「ん、もちろんわかってるで」

智葉「なら、いい」

247: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/07(火) 21:26:33.33 ID:YtBiU49zo
真佑子「江口さんかっこよかったです!」キラキラ

セーラ「おおきに~、ごめんな、出番なくしてしもた」

真佑子「そんなのいいんです!」

セーラ「そうかー、ま、うん、次頑張ろな」

真佑子「はいっ!」

セーラ「ええ返事やなー」

淡「わ、私も頑張るよ!」

セーラ「おう、頑張れ!」

248: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/07(火) 21:27:42.24 ID:YtBiU49zo
照「おつかれさま、セーラ」

セーラ「うん、照もごめん。出番が」

照「どうして?飛ばしていいって言ったの私だよ」

セーラ「ま、そうやけどさ」

照「で、菫に会った?」

セーラ「あぁ、さっき外で…え、なんで?」

照「出迎えに行ってあげてって言ったから」

セーラ「なんでそんなこと?」

照「…それを私の口から聞きたいの?」

249: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/07(火) 21:28:36.36 ID:YtBiU49zo
セーラ「…おせっかいやなぁ。傷口に塩を塗ってんちゃうの、それ」

照「ううん、そうじゃない。そうじゃなくて、
  どうせなら菫に負けるほうがいいから」

セーラ「え、それどういう意味?」

照「さあね、いつかわかるでしょ」

セーラ「えー、いつかって?」

照「それはあっち次第じゃないかな…でも、きっと近いうちだと思う」

セーラ「…ん??」

250: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/07(火) 21:29:04.95 ID:YtBiU49zo
淡「セーラ!ね、早く試合が終わったし何か食べに行こ?」

セーラ「あぁ、ええけど…っておい照っ」

照「さーて、辻垣内さんと多治比さんは何食べたい?」

智葉「なんでもいい」

真佑子「はい、私も」

照「淡は?」

淡「んー…中華!」

照「はいはい、じゃあ菫が戻ったら行こうか」

淡「やった!」

照「セーラ、この近くにいいお店ある?」

セーラ「えぇ?あぁ、確かあったと思うけど…」

照「じゃ、決まりで」

セーラ「あ、ちょ、もう…なんやねん」ボソ

255: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/08(水) 22:49:53.40 ID:gBTFKN/po
次の日、先鋒戦開始前、対局室前


セーラ「おーい、怜~」

怜「セーラ!?どしたん!?」

セーラ「激励や、激励。昨日、俺は嬉しかったしな!」

怜「そう、ありがと。嬉しいで」エヘヘ

セーラ「結局怜とは、公式戦で戦えへんかったなぁ」

怜「せやな、ちょっと残念や」

セーラ「けど、あの病弱で麻雀も激弱やった怜が大阪の先鋒やもんなぁ」

怜「あはは、まあな。セーラと宮永さんのおかげやな」

セーラ「俺と、照?」

256: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/08(水) 22:51:01.98 ID:gBTFKN/po
ごめん、分かりにくかったかも

>>255は準決勝第二試合の先鋒戦です

257: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/08(水) 22:51:38.78 ID:gBTFKN/po
怜「そうやで、セーラが東京へ行ったからもっと頑張らなあかんって思えたし
  宮永さんっていう強敵と卓を囲んだからもっと高みへ行けたんよ」

セーラ「そうやったか」

怜「っちゅうわけで、頑張ってくるわ」

セーラ「おう、怜らしく頑張れ」

怜「敵さんを応援しあってるんってうちらくらいやろな」クスクス

セーラ「やろなぁ、でもええやん」ケラケラ

怜「うん…ほな、鹿児島と長野と福岡を叩いてくるわ」

セーラ「おぉ、いったれ!」

怜「じゃあ、応援よろしくな、セーラ」

セーラ「おー!行ってらっしゃい、怜」

258: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/08(水) 22:52:16.65 ID:gBTFKN/po
試合会場、東京都代表の観戦室、白糸台4人


セーラ「たっだいま~」

菫「あぁ、おかえり。園城寺さんはどうだ?」

セーラ「いい顔してた。あれは気合の入ったええ顔や」

菫「そうか、インハイで照と対峙したときような
  死闘をされると淡も相当苦労するだろうな」

セーラ「大阪が決勝に行けば、やけどな」

菫「その発言、親友を信じていないのか?」

セーラ「信じてるけど、だからって勝てるわけちゃうやん?」

菫「ほう、お前にしてはまともなことを言う」

セーラ「あぁ?なんやとー?って淡と照は?」

菫「ジュース買ってくるって」

セーラ「またオレンジジュースか、あいつら」

菫「そのあたりは照に影響されてるからな、淡」


セーラ「…さーて、はじまるか」

259: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/08(水) 22:52:54.47 ID:gBTFKN/po
淡「ただいま!セーラ帰ってたんだー」

セーラ「あぁ、うん。もうはじまってるでー」

照「え、うそ。もう、淡がお菓子で悩むから…」

淡「照だって甘いのが足りない!とか言ってたくせに!」

照「あ、いや、だって足りなかったらまた買いに行かなきゃいけないし…」

菫「あぁ、もううるさい。東2局、園城寺さんの親番だ、黙れ」

淡「はぁーい…」

照「ごめん…」

セーラ「淡、よう見とけよ。怜はめっちゃ強い、多分俺より強くなってる」

照「…ん、私もそう思う」

淡「えぇ、セーラより?」

菫「お前、インハイの決勝を忘れたのか」

淡「そりゃ覚えてるし強かったけど…」

セーラ「そんならええ。よく見てればええから」

淡「う、うん…」ジー

260: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/08(水) 22:54:06.15 ID:gBTFKN/po
怜『リーチ!』ドン!


怜『ツモ』バラバラ


照「おー。相変わらずリーチ一発は変わらないねぇ」スゴイ

菫「一巡先を見るものか…」シミジミ

淡「むむっ…」

セーラ「で、次はこっちも注目や。長野の…」

菫「福路美穂子、この選手は観察眼が異常に優れている」

淡「あ!この人はインターハイの個人戦で戦ったよ!」

照「あぁ、そうだっけ。オッドアイなんだよね。咲から聞いた」

淡「そうそう!この閉じてる方の目!」

セーラ「こいつはごっつしたたかやで~ニコニコしてるかと思ったら
    バクっと捕食されてズタズタや。油断禁物」

淡「はい!」

261: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/08(水) 22:54:47.04 ID:gBTFKN/po
照「で、こっちは福岡の、」

セーラ「すばらっ!」

淡「すばらっ!」

照「……」

菫「………」

セーラ「…すまん」

淡「ご、ごめん…」

菫「で、この神代は…」

照「説明するより見たほうがいいね、ほら、これ、寝てる」

淡「え?目は開いてるよ?」

菫「いや、…寝ているな」

セーラ「あぁ、寝てる」

262: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/08(水) 22:56:09.86 ID:gBTFKN/po
淡「え?え??」

照「起きてくれると助かるけど、今は寝てるね」

淡「どーいうこと!?」

照「神代さんは…神様を自分に下ろすんだ、それが今みたいな寝ている状態」

淡「…え、え?か、かみさま??」

照「実際卓に入ると分かりやすいんだけどね、私もてこずったなぁ」

淡「と、とりあえずよく見とくね…」

セーラ「そーしとけ」



アナ『先鋒戦終了っ!!園城寺と神代、福路が叩き合いを演じました!』

アナ『僅差で大阪がリードしましたが、3チームの差はほとんどありません!』

アナ『一方、福岡は先鋒の花田が大失点!次鋒戦以降の巻き返しに期待です!』

266: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/10(金) 16:36:22.01 ID:rmAjgOCCo
次鋒戦開始前、対局室前


セーラ「おっす!りゅ~か、元気かー?」

竜華「セーラ!来てたんやな」

怜「うん、さっき、試合前にうちの応援にも来てくれたんやで」

セーラ「おう、大阪とは是非とも決勝で戦いたいからな」

怜「ふふ、望むところや」

竜華「うん、捻ったるで?」

セーラ「それこっちのセリフやっちゅうの」

竜華「ははは、楽しみや」

怜「そやな」

セーラ「竜華、頑張ってな」

竜華「うん、絶対区間1位狙うで…あ、あんな、セーラ」

セーラ「んー?」

267: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/10(金) 16:37:00.82 ID:rmAjgOCCo
竜華「うちが、その、大阪代表にまでなって頑張れたんは…」

セーラ「俺のおかげ?」クスッ

竜華「え、なんでっ…」

怜「私が頑張れたんはセーラがいたからやで、と、うちがさっき言うたんよ」

竜華「あぁ…そうやったんか」

セーラ「でも、俺もお前らが大阪で頑張ってるの知ってたから
    絶対負けられへんって頑張れたんやで」

竜華「セーラ…」

セーラ「よし、湿っぽいんここまでな!竜華、行って来い!」

竜華「よっしゃ、行って来ます!」

怜「頑張れ竜華!」

268: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/10(金) 16:37:31.86 ID:rmAjgOCCo
アナ『次鋒戦終了っ!2人のドラゴンが熱い競り合いを繰り広げました!』

アナ『福岡と鹿児島は元気がなく、マイナス収支で次鋒戦を終えています!』

アナ『やはり前評判どおり、大阪と長野が頭一つ飛び出してきました!』



次鋒戦終了後、東京都代表観戦室


セーラ「さて、竜華もよかったことやし…俺はホテルに戻るわ」

淡「へっ!?なんで?試合はまだ終わってないんじゃ…」

セーラ「親友2人を直に応援できたし、2人ともよかったし、もうええの」

照「いいの?大阪が勝つとは限らないよ」

セーラ「ええよ、それはわかってる」

菫「次はお前のまあ、ある意味親友が出て来るぞ」

照「そうだよセーラ、愛宕洋榎…だよ」

セーラ「あいつを見るのなんか決勝だけで十分や」

269: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/10(金) 16:38:30.15 ID:rmAjgOCCo
菫「舐めてるとまた負けるぞ」

セーラ「アホか、…俺は負けへん」

照「それってセーラらしいけど、その自信はどこから?」

セーラ「…正直ようわからんけど、負ける気はせん」

淡「頼もしいね、セーラ!」

セーラ「やろ~?」

菫「ったくもう」ハァ

セーラ「照は、…自分の対戦相手、ちゃんと見とかなあかんな」

照「…そうだね、妹だからね」

セーラ「それだけちゃうぞ、関西NO.1におっぱいのオバケもおるで、大将戦」

菫「オバケってなぁ」

淡「確かにおっきい!」

セーラ「じゃ、お先!」


ガチャリ

バタン

270: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/10(金) 16:39:02.68 ID:rmAjgOCCo
淡「あ、セーラ待って!」

菫「淡、行くな」ガシッ

淡「え、なんで?」

照「セーラ、きっと一人で見たいんだよ。中堅戦は」

淡「どうして?」

照「…いろんな思い入れがあるだろうし」

淡「ライ…バル?」

菫「そんなところだろうな、少し大人しかったし」

照「セーラにとっての愛宕洋榎は特別なんだよ」

淡「特別…」

菫「まあ、そっとしておこう」

淡「う、うん…」

照「…ゴホン、ここに私たちしかいないから言うけど…
  セーラにとって愛宕さんはライバル、とは少し違うんだ」

271: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/10(金) 16:40:01.65 ID:rmAjgOCCo
菫「ん?それは私もわからないな、力の拮抗したいいライバルだろ?」

照「ううん、セーラはね…直接戦って愛宕洋榎に勝ったことが一度もないの」

淡「え、そうなの!?」

菫「あ…!そういえば確かにそうかもしれない」

照「いつもいいところまで行くけど、結局勝てないんだって。
  中学の頃からその繰り返しだって」

淡「そうだったんだ…知らなかった」

菫「確かにミドルのとき、大阪には荒川憩という魔物がいたから、
  江口や愛宕の直接的な勝敗を気にする人なんかいなかったかもしれない」

照「うん、セーラも似たようなことを言ってた」

菫「で、高校でもそれは変わらなかったということか」

照「そうみたい。直接戦う機会はほとんどなかったけど、でも
  それでも一度も勝てなかったって。それが悔しいって」

菫「だから、ライバルじゃないということか」

272: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/10(金) 16:40:33.69 ID:rmAjgOCCo
照「ライバルというよりは、きっと、目標だね。
  そんなの、セーラは認めないと思うけど」

菫「あぁ、そうだな。あの愛宕が目標なんて
  口が裂けても絶対に言わないだろうな」

淡「…セーラ、辛いのかな」

照「強がってるけど、相当悔しい思いをしてるはず」

淡「けど、インターハイのとき楽しかったって言ってたよ?」

菫「あいつはウソをつくタイプじゃないし、それは事実だと思うぞ」

照「楽しかったのはほんとだろうね。でも、悔しさもあった。
  楽しいのと同じか、それ以上にね」

淡「だから、絶対中堅を固辞したんだね。
  じゃなきゃ出ない、なんて言って」

菫「最後のチャンスだからか」

273: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/10(金) 16:42:11.99 ID:rmAjgOCCo
照「もちろん、まだまだ戦う機会はあるだろうけど、でも
  セーラは高校生活最後に一矢報いたいんじゃないかな」

菫「なるほどな…」

淡「それでナーバスになっちゃってるんだね、セーラ」

照「エースになって緊張しまくってた淡くらいにね」クスッ

淡「むぅ、照のバカー」ポカポカ

照「だから淡も、自分がセーラにされて嬉しかったことを、
  セーラにしてあげてね。きっと喜ぶよ」イテテ

淡「うん!」

菫「ライバルじゃなくて目標か…」

菫「(…江口、お前ならできるよ。私は、…信じてる)」

274: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/10(金) 16:43:06.98 ID:rmAjgOCCo
試合会場、ロビー、大型スクリーン


アナ『愛宕洋榎、2位を突き放す満貫ツモ!』


洋榎『よっしゃ!!』


セーラ「…ふぅ」

セーラ「(うっさいなぁ、相変わらず)」

セーラ「(…絶対、上がってこいよ、大阪)」

セーラ「(負けへん、絶対…絶対や!!!)」ゴォォォォォ
続き