502: tell you that I love ...(8-1) 2012/10/04(木) 03:03:35.63 ID:eNqBZcmV0
-side 宥- 

-クラス対抗戦 決勝先鋒戦 前半戦 
-南2局 1本場 

東 福路美穂子 120800 
南 宮永咲    81300 
西 松実宥    96100 
北 荒川憩   101800 


まだ荒川さんは爆発していない 
というより、爆発させてもらえない、という方が正しいのかもしれない。それでも原点を維持しているのは流石学年ランク1位なだけはあるのだろう 

客観的には、福路さんが場をコントロールしているように見えるのだろう 
福路さんはほとんどツモあがりせず、私や咲ちゃんからの出上がりに徹していた 

ツモを3回すれば、荒川さんが爆発する 
点数を重ねるためには、荒川さん以外からの出上がりを重ねるよりない 

今のところ、3人がそれぞれ1回ずつツモ。荒川さんからの出上がりは無いので、まだ全員に2回の猶予がある。荒川さんの親はもう回ってこないので、前半戦では荒川さんの爆発は厳しいだろう 

「ロン、3200・・・」 
「はい」 

また咲ちゃんの振り込み・・・ 

この場の異常に気づいているのは、この場では私だけ・・・ 
いや、そんなことはない。少なくとも福路さんは、当たり牌が出たというのに少し顔をしかめた 
本当は、私から出上がりしたいというのが本音なんだろう 

どうして咲ちゃんは、私の捨てようとする牌を先に切るの? 
東場からずっとそうだった。私が切ろうとする牌と同じ牌、もしくは筋牌を切る。福路さんが見逃せば、私が切っても出上がりできない 

朝のミーティングで、他のクラスが3年1組を狙い撃ちにしてくるだろうということは話し合われた 
照ちゃんに回す前に飛ばす、それができなくても極力削っておくというのは、ごくごくありふれた作戦だし、私が他のクラスにいればその作戦に納得する 

3対1になるのは覚悟していた 
いつも3対1の中戦っている照ちゃんの気持ちに、少しでも近づけるのかもしれない。そう前向きに捉えることにした 

けど実際は、席順にも恵まれたのか、咲ちゃんが私の盾になって守ってくれている・・・ 

一体そのことに何の意味があるのか分からない 
これはコンビ打ちじゃなく、自分のクラスの勝利を目指すクラス対抗戦。他のクラスを守る意味は、誰かが飛んだら1位になれないというときくらいしかない 

荒川さんを警戒してのことだろうか 
ひとまず福路さんに差し込んでおけば、荒川さんは爆発しない。それでも、私をかばう必要はない 

多分、私を守る時に咲ちゃんは手を崩してる 
荒川さんを警戒するだけなら、そこまでする必要はない 

やっぱり分からない 

・・・照ちゃんの、お姉ちゃんのいるクラスだから? 

穏乃ちゃんや憧ちゃんからも、咲ちゃんが自分のクラスの勝利を捨てようとしてるなんてことは聞いたことがない 
2年10組には玄ちゃんがいる。けれど、玄ちゃんのために自分のクラスの勝利を捨てるなんてことは、私はしない 

咲ちゃんの気持ちが見えない



引用元: 照「清澄にも麻雀部はあるのか・・・」【咲-saki-】

503: tell you that I love ...(8-1) 2012/10/04(木) 03:05:17.08 ID:eNqBZcmV0
テンパイする 
福路さんの親を続けさせるわけにもいかない 

手牌:一二三四五六七八九⑨⑨中中 

リーチはかけない 
染め手に伸びる可能性はある、もっとも染めて出上がりできるような相手ではないだろうけれど・・・ 
安目の⑨であっても、出れば上がる 

「カン」 

咲ちゃんが②を暗槓する 
ドラ表示は、発 

中が乗った・・・・でも咲ちゃんならリンシャンでツモるはず 

「リーチ」 

けれど、咲ちゃんはツモ切りリーチ 
宣言牌は―― 

「ロ、ロン・・・」 

――中 

「一通・中・ドラ3。12600です」 
「はい」 

まるで予見していたかのように差し出される点棒・・・ 
わざとドラを乗せて差し込んだ? 
そんなこと、できるの・・・ 

照ちゃんも分からないと言っていた、咲ちゃんの打ち筋 
私に理解することはできるんだろうか・・・ 


南2局2本場終了時点 

東 福路美穂子 124000 
南 宮永咲    65500 
西 松実宥   108700 
北 荒川憩   101800

504: tell you that I love ...(8-1) 2012/10/04(木) 03:06:39.85 ID:eNqBZcmV0
-大会3日目 放課後 

照ちゃんの顔が不意に近づいてきた 

後頭部に添えられた温かい手に力が入った 
頭が、ふっと浮き上がる 

ただ流されるまま、その唇を受け止める 

息ができない 
いや、したくない・・・ 
今はただ照ちゃんを感じていたいから 

多分、あっという間 
生まれて初めてのキスは、ゆっくりと顔を上げた照ちゃんの涙に流れた 

「ごめん・・・」 
「どうして謝るの?」 

照ちゃんらしいとは思う 
けれど、謝る必要なんてどこにもないのに 

「女の子同士でキスなんて・・・」 
「照ちゃんとなら、いいんだよ」 

本心を告げる 
また、照ちゃんは大粒の涙を流す 

「宥、私は・・・」 

うまく言葉が継げない照ちゃん 

「体勢、逆になろうか?」 

今はまだ私が膝枕されている状態だった 
涙がぽたぽたと流れ落ちるのを受け止めるのは、ちょっと話しづらかった 
照ちゃんの悲しみは受け止めてあげたいけれど、それは実際の涙でなくてもいい 

照ちゃんは首を振った 
ぎゅっと目をつぶって、しばらくするとなんとか涙をこらえたようだった 

ゆっくりと、照ちゃんの手が私の髪を梳いていく 
髪の毛さわれられるの、気持ちいいな・・・ 

「私は、咲のことがときどき分からなくなる。それでも、宥を通してなら、分かってあげられるのかな?」 
「うーん、私を通すことはないと思うよ。直接分かり合うのが、一番だから」 
「でも・・・・」 
「うん、でも、私がきっかけにはなれるかもしれない。私だって、お姉ちゃんだから」 

ようやく照ちゃんが微笑んでくれた 
うん、笑ってる方が素敵だよ 

「じゃあ、ちょっとお手本見せて。お姉ちゃん」 
「改めてそう言われると、ちょっと恥ずかしいかも」 

照ちゃんが妹、か・・・・ 
それはそれで楽しそうだけど、それでも今の関係の方がいいかな

508: tell you that I love ...(8-1) 2012/10/04(木) 23:53:37.36 ID:eNqBZcmV0
-クラス対抗戦 決勝先鋒戦 前半戦 
-南3局 親:宮永咲 

「ツモ嶺上開花ドラ1。3200オールです」 

4巡目にして嶺上開花 
今までが調整で、この親で連荘するということなのだろうか 

嶺上開花の性質上、大明槓の責任払いでない限りツモが多くなる 
でも早い段階で嶺上開花を多用すれば、荒川さんの爆発がそれだけ早くなる 
だからとにかく場を流すことに徹して、自分の親になった時に連荘して勝負をかけるということだったのだろうか・・・ 

・・・いや、多分違う 
咲ちゃんの表情を伺えば、なんとなく分かった 
もう、咲ちゃんは上がる気がない。そんな気迫はまるでなかった 

「ロンや、3900の1本場」 
「はい」 

次局、咲ちゃんはあっさりと荒川さんに振り込んだ 

やっぱり・・・ 

次はオーラス、私の親 
咲ちゃんの狙いは多分・・・ 

阻止するべき? 
無法に手を染めて、とにかく阻止しようと思えばできるけれど、それはクラスの、3年1組のためにならない・・・ 

まっすぐ上がりを目指して、それで阻止できるならその方がいい 

「ロン、2600」 
「はい」 

また咲ちゃんが振り込んで、前半戦が終了した 
一礼してすぐに対局室を出ていく咲ちゃんを、私は慌てて追いかけた 



先鋒戦 前半戦終了時点 

福路美穂子(3-2) 125000 
宮永咲(1-5)    68300 
松実宥(3-1)   105500 
荒川憩(2-10)  101200

509: tell you that I love ...(8-1) 2012/10/04(木) 23:56:42.63 ID:eNqBZcmV0
「咲ちゃん、待って」 

早歩きする咲ちゃんに声をかけると、咲ちゃんは止まって振り返ってくれた 

「松実さん?」 
「宥でいいよ」 
「じゃあ、宥さんで」 

キョトンとした咲ちゃん 
夢中になって追いかけてきたけど、面と向かって話すのは初めてだったかもしれない 

「呼び止めてごめんね」 
「いえ、それで何でしょうか?」 
「どうして、±0にこだわるの?」 

咲ちゃんはまたキョトンとする 

「私は3万点以上マイナスですよ?」 

そういう返事が返ってくるとは思っていた 
でも、実際に対局していた私が、一番よくわかる 

「じゃあ言い方を変えるね。どうして私の点数を調整したの?」 

私の点数は105500点 
普通の25000点持ち30000点返しだったら30500点だから、±0になっている 

咲ちゃんはわざと私の振り込みを防ぎ、カンドラで支援し、支援しすぎた分をけずってあとは局を消化した 

「・・・私、よく分からないんです」 

咲ちゃんが困惑の表情を浮かべた 

「±0のことは、お姉ちゃんから聞いたんですか?」 
「そうだよ。この対抗戦、ずっとそうしてたよね?」 
「自分を守るために、±0で打つようにしてきました。意識すればなんとか普通に打つこともできますけど、それだと負けることの方が多いから・・・。それにその方が無理して打ってる感じがして、疲れるんです」 

普通に打って負けるくらいだったら、±0で打ったほうがいいのかもしれない 
少なくとも、負けはしないのだから 
咲ちゃんがそういう考えに至っても、仕方ないことのように思えた 

「今朝のミーティングで、赤土先生から聞きました。3年1組が他のクラスから狙い撃ちされるだろうって」 
「うん、照ちゃんが出る前に中堅までで飛ばすなり削るなりするのは、作戦としては当然だと思うよ」 
「でも、私はお姉ちゃんが打っているところが見たくて・・・」 

だから私をかばい、調整した 
クラスの勝利が遠くなることが分かっていながら・・・ 

調整する麻雀しか、できないから? 

「でも、自分以外の誰かを±0にするなんて、今までやったことがなくて。すごく難しくて、他の2人もすごく強いから、自分を犠牲にするしかありませんでした」 
「そっか・・・」 

多分照ちゃんだったら、もう声を荒らげているかもしれない 

私たちのクラスを甘く見るなって 
どうして自分の勝利を目指さないのって・・・ 

うん、分かるけど落ち着こう、照ちゃん 
咲ちゃんに悪気はない。ただ、誰かが勝って喜び、誰かが負けて悲しむ――そんな感情の行き交いに耐性がない故の行動、そんな行動を責めてもきっと逆効果なだけ 

「咲ちゃん。これが個人戦なら、私は何も言わないよ。でもこれは団体戦。勝負は、咲ちゃん一人のものじゃない」 
「ほんと、そうですよね・・・」 

俯き、視線を落とす咲ちゃん 
咲ちゃんの後ろには、穏乃ちゃんや憧ちゃん達が控えている 
咲ちゃんが失った点棒は、咲ちゃんだけのものではない 

だから、取り返さなきゃいけないんだよ

510: tell you that I love ...(8-1) 2012/10/04(木) 23:59:52.02 ID:eNqBZcmV0
「咲ちゃん。いまからトータルで±0にできる?」 
「・・え?」 

普通の25000点持ち30000点返しだったら、咲ちゃんのポイントは-37 
次の半荘で1位を取り、90000点前後に調整すれば、ポイントでは+37。トータル±0になる 

「その上で、私を±0にしてみて」 
「・・・怒らないんですか?」 

自分が打つと誰かが怒るかもしれない、そんな圧迫された心境で打っても楽しめない 

気配りしすぎても、疲れるだけなんだよ・・・ 

「私は怒らないよ。むしろ、見せてほしいな。私も咲ちゃんも同時に±0に出来るのかどうか」 
「すごく、難しそうですね」 

そう呟く咲ちゃん 
それでも、その瞳は闘志に燃えているように見えた 

「うん、すごく難しいよ。私だって、11万点で留まるつもりはないから」 

次の半荘も±0なら、私の持ち点は11万点前後になる 

「負けたら悔しいから勝つように頑張りました。でも今度は、勝ったら怒られるようになりました。だから±0で打つようになりました・・・」 
「うん、そうみたいだね」 
「でも±0で打つようになったら、今度は怖がられるようになりました。お姉ちゃんにはそれでも怒られたりしました」 
「うん、聞いてる」 
「私、どうしたら良かったと思いますか?」 

真剣な眼差し 
私は安心させてあげられるように、微笑む 

「今までは今まで。これからはこれから。今日はこれから、どんな風に打ちたい?」 

過去のことを言っても、もう戻れたりしない 
それよりも、今目の前に控える次の半荘のことを考えないといけない 
叶うことなら、前向きに 

「・・・勝ちたいです」 

ポツリと、聞き取れないくらい小さな声 
でも、眼差しに力がこもり、咲ちゃんは言った 

「勝ちたいです。みんなの点棒、取り返さないと」 
「そうだね。じゃあ、さっきの±0は無しにする?」 
「あ、でも。全力出したら結局、±0になっちゃうかも・・・」 
「だったらそれでもいいよ。急に無理して変わらなくても、少しずつ変わっていけばいいんだよ」 

少しだけ逡巡して、咲ちゃんは頭を下げた 

「ありがとうございます」 
「うん、じゃあそろそろ行こう」 
「はいっ」 



後半戦、咲ちゃんは全力で打った。そう感じた 
結論から言えば、ポイントでは両者±0になった 

でもそれは前向きな±0だと思う 

照ちゃんがどう思うかは分からない・・・ 
でも、私はこれでよかったと思う 

自分が打ちたいように、打つことができたんだから 


先鋒戦終了 

松実宥(3-1)   110400 
福路美穂子(3-2) 105200 
荒川憩(2-10)   94300 
宮永咲(1-5)    90100

511: tell you that I love ...(8-1) 2012/10/05(金) 00:02:47.08 ID:ItgbP5MU0
-side 穏乃- 

「ねー、サキに何かあったの?」 

淡が複雑な表情を浮かべている 

先鋒戦前半 
モニターで観戦しているだけでは分からないけれど、明らかに咲はいつもと違っていた 

露骨に手を崩して振り込んでいる 
それも、宥さんが切るだろう牌を先んじて・・・ 

かばっているとしか、思えなかった 

「うーん、余計なこと言っちゃったかな」 

苦笑を浮かべる先生 

「ハルエ、咲に何吹き込んだのよ?」 

憧が聞く。先生は肩をすくめた 

「いやぁ、宥が福路と憩に狙われるだろうから、逆にそこを狙い打ってやったらいいよって言ったんだけどね・・・」 
「それがどう巡り巡ってこうなるのよ・・・」 
「サキらしいけどね。ほんと、自分の勝利が眼中にないんだからさ。ま、このくらいいいハンデだよ」 
「それじゃ困ります、咲さんの個人戦じゃないんですよ」 

淡は興味を失ったのか、携帯をいじり始めた 
対する和は、怒り心頭だった 

「テルにメールしたら返事くるかなぁ」 
「とにかく、前半戦が終わったらちゃんと打つように言ってきます」 
「まあまあ、落ち着けよ、和」 

先生がなだめる 
そうこうしているうちに、前半戦が終了した 
咲は-3万点近く。今までずっと±0に調整してきたのに、どうしてしまったんだろう 

咲がすぐに対局室を出て、それを宥さんが追いかけていった 

「まあ、宥に任せておけばいいさ」 
「松実さんは敵チームなんですよ。私が行ってきます」 

先生の言葉をさえぎるように和が教室を飛び出そうとする 
私は慌てて止めた 

「宥さんは、そういうの関係ない人だから」 
「でも、咲さんが今まともな状況とは思えませんし、松実さんが励ましに行くとも限らないじゃないですか」 
「その場にいた宥姉の方が分かることがあるかもしれないし、今の和の剣幕で咲のところに行っても涙目になるだけだよ」 

憧も止めに入ってくれる 
そこにキラキラキラっと、電子音が響く。淡のメールの着信音だった 

「あ、テルからメール来た・・・・。って、うわぁ、やっぱりサキはサキだね」 
「ん、何て言ってきたの、淡?」 
「『宥が±0にされた。何か聞いてる?』だって」 
「え?」 

モニターに出ている点数を見る 

松実宥 105500 

咲がここ3日間でずっとしてきた±0そのものだった 

「なるほどね、サキが変だったのはこのユウって人を±0にしようとしてたからか。ふんふむー、なんて返信しようかな」 
「なっ・・・」 

和が絶句してしまう 
そりゃあそうだろう。私だって意味が分からない 

「こ、こんなの偶然です」 

しかしその声に力はない 
打ち方を見ていれば、明らかに意図的なのは分かる。理解できるかどうかは別として 

「やっぱり余計なこと言っちゃったか。咲は、3年1組が狙われてお姉ちゃんまで回らないのが嫌だったんだろ。だったら宥を±0になるように打てば、次鋒中堅がどんなに狙われてもトブことは考えにくい」 

先生が肩をすくめる 
自分の点数を調整すること自体は、たとえば逆転まで何点必要みたいに考えることはあるけれど 
誰かの点数を調整するなんてこと、普通は考えない・・・

512: tell you that I love ...(8-1) 2012/10/05(金) 00:09:28.68 ID:ItgbP5MU0
「ま、流石に3万点も減らしたら、咲も何か考えるでしょ・・・。後半戦に期待しましょ」 

憧が和の肩をポンポンと叩く 
すっかり毒気を抜かれてしまったのか、和はおとなしく席に着いた 

「『なんにも聞いてないよー。こっちプチ修羅場ー』。よし、送信」 

淡が送信するのと同時に、後半戦が始まった 


後半戦が始まると一転、咲はどんどん上がりだした 
結局9万点まで盛り返して、終了する 

「ねーアコ、これちょっとポイントで計算してみてよ」 
「計算も何も、また宥姉は±0でしょ・・・」 
「いいから」 
「はいはい」 

憧が黒板に点数を書いていく 

「おいおい・・・」 

さすがの先生も、驚きの声を漏らした 

宮永咲 
-37、+37 
松実宥 
±0、±0 
荒川憩 
-4、-12 
福路美穂子 
+41、-25 

点棒で言えば、咲と宥さんの間には2万点の差がある 
けど、トップにポイントが入るオカを入れたとき、2人のポイントは並ぶ 

「まさか、自分も宥姉も±0になるようにしたっていうの」 
「ほんと、これだからサキはおもしろいよね。自分だけでも難しいのに、もう一人も調整するとかさ」 
「認めたくはありませんが、事実は事実ですね・・・」 

みんなが驚きの声を上げる

513: tell you that I love ...(8-1) 2012/10/05(金) 00:12:50.16 ID:ItgbP5MU0
そこに、咲が戻ってきた 
俯いたまま教室に入る 

「あ、あの・・・」 

咲が何か言いかけようとするけど、 

「咲、おつかれ。頑張ったね」 
「え、うん・・・」 

自然とねぎらいの言葉が出てきた 
点棒自体は最下位だけど、まだトップとは2万点差 
それにこんなすごいもの見せられて、燃えないわけがない 

でも咲は、すごい勢いで頭を下げた 

「あの、ごめんなさい」 
「謝ることなんてないって」 
「でも、いつもどおり打ってたら点数減らなかったし・・・」 

顔を上げた咲は、もう泣きそうになっていた 
そんな咲に、淡が微笑んだ 

「サキ、いつもと違うことの1つや2つないと、息が詰まっちゃうよ」 
「淡ちゃん・・・」 
「そーそー、この面子相手に失点1万点くらいなら全然問題無いしね」 
「そもそも運の要素が大きい麻雀で毎回同じ点数とか、そんなオカルトありえませんから」 
「ま、そういうことだ、咲。むしろ余計なこと言って悪かったね」 
「先生、みんな・・・」 

とたん、咲がボロボロと涙を流した 

「咲ってば、なんで泣くんだよ」 
「だって・・・・」 

それ以上何も言えなくなってしまった咲を、私はきゅっと抱きしめた 

「勝ったら嬉しい、負けたら悔しい、プラマイ0だったらまた次頑張る、それでいいじゃん」 
「・・・そう、だね」 

震える背中をポンポンと叩く 
咲ってちゃんと食べてるのかな、すっごく細い 

『まもなく次鋒戦が始まります。選手の方は対局室に集まってください』 

放送が響く。行かないと 

私は咲を抱きしめていた腕を解いた 

「じゃあ次行ってくる。逆転するから、見ててよ」 
「しず、わかってるね?」 

先生が声をかけてくれる 

「大丈夫です、行ってきます」

519: tell you that I love ...(8-2) 2012/10/07(日) 00:39:23.51 ID:tgEyM1f+0
-side 菫- 

-クラス対抗戦 決勝次鋒戦 前半戦 
-東4局 

東 高鴨穏乃 
南 松実玄 
西 弘世菫 
北 臼沢塞 


まったく、めんどくさいことになった・・・ 

「リーチ一発ツモ、2000オール」 

1年の高鴨がツモ上がる 
準決勝の時もそうだったが、何度射抜いても全く動じない 

あの松実宥のように、こちらの癖を完全に見抜いて避けるでもなく 
あの安河内のように、あぶれ牌が出るまえに安手で上がるでもなく 

何度射抜かれようが真っ直ぐに距離を詰めてくる 
いつもならそれこそ、何度でも射抜いてやるのだが・・・ 

――とにかく臼沢を狙え 

昨日のミーティングで、そんな話になった 
久保先生の指示は、とにかく照に回る前に3年1組を飛ばせ、という至ってシンプルなものだった 

簡単に言ってくれる・・・ 

松実宥、臼沢塞、園城寺怜 
この3人に防御に徹せられたら、そう簡単に崩せるものではない 
照が出てくる前にと狙い撃ちにあうのは、向こうだって当然読んでいる 

案の定、臼沢は安河内戦法に出ていてあぶれ牌が出てこない 
そして標準を臼沢にしているせいで、他の二人、特に射抜かれても構わないとどんどん前に出てくる高鴨に先を越されてしまう 
さらに、松実玄がドラを支配しているせいでそもそも打点が上がらない 
うまく射抜けても、せいぜい満貫がいいところだ 

唯一の救いは、東1で松実玄を射抜いておいたおかげで、少し松実玄が躊躇していることか 
流石にドラゴンロードにまで前に出られては火力のない私には厳しい 

まったく、姉といい妹といい、松実姉妹には手を焼く・・・ 

「ロン、2000」 

狙いを高鴨に変え、親の連荘は阻止する 
それでも、その瞳から闘志は消えない・・・ 

臼沢は諦めてこの高鴨を狙うべきなのだろうか 

まったく、めんどくさいことになった・・・ 


なあ、照・・・ 
お前のクラスは、楽しそうだな・・・
520: tell you that I love ...(8-2) 2012/10/07(日) 00:41:36.00 ID:tgEyM1f+0
-side 照-

-クラス対抗戦 決勝次鋒戦 開始前
-3年1組教室

宥が戻ってきた

「宥、咲は何か言ってた?」

いてもたってもいられず、ねぎらいの言葉よりも先にそんなことを口にする私

「宥、おつかれなのよー」
「トップで帰ってくるなんて、ちょーすごいよー」

みんながねぎらうのを見て、私は少しへこんだ
落ち着かないと・・・

「ごめん。お疲れさま、宥」
「いいんだよ照ちゃん。でも、話はあとでね」
「え、ああ・・・」
「大丈夫だよ、悪いようにはなってないから」

すぐにでも話を聞きたいけれど、この場では確かに無理かも
宥が自分の席に座ると、入れ替わりに塞が立ち上がる

「よし、じゃあ行ってくるか」
「塞ー、がんばれー」
「ま、できる限りやってくるよ」

そう言って、塞が教室を出て行った

「ところで、怜ちゃんのこれ、どういう状況?」

怜は、清水谷さんに膝枕されている
わざわざ専用のマットまで持ってきて

ああ、宥が先鋒戦に出て行ってから清水谷さんが来たから、訳がわからないのも仕方なかった

「膝枕分を補給しとるだけやで、宥姉ちゃん」
「そうそう、気にせんといて」
「えっと・・・」

宥の言いたいことは分かる
本来、清水谷さんのクラスはここではないのだし、当の清水谷さんのクラスも決勝に出ている。普通ならここにはいない

「竜華は自分のクラスに居づらいだけなのよー」
「だってひどいんやもん、昨日のミーティング。宮永照に回る前に飛ばせって・・・。それ私をわざわざミーティングに呼び出して言うことやあらへんやろ。朝はしゃーないから顔出したけど、もうムカついてムカついて!」

ということらしい
副将が清水谷さんだが、清水谷さんに「私を止めろ」というような一言くらいほしかったということのようだ
誰が来ても負けるつもりはないけれど・・・

「ま、そういうことやから自分の出番が回ってくるまで怜と一緒にいさせてな」
「え、じゃあ中堅戦の時はどうするの?」
「ここで怜を応援するで!」
「えっと・・・」

宥が来る前にも、塞が同じような議論をしたので、もう止めに入る人はいない
てこでも動かない、そういうことだった

「宥がいない間だけど、いてもいいよってことになったから、そうさせてあげて」
「みんなが大丈夫なら、別にいいけど・・・」



ねぇ、菫・・・・
菫のクラス、これでいいの?

521: tell you that I love ...(8-2) 2012/10/07(日) 00:45:15.45 ID:tgEyM1f+0
-side 塞-

-南4局1本場

南入してから、弘世菫の標的が1年生に向かう。それがなんとなく分かった

昨日の次鋒戦、私には正直実感がなかったけれど、あとで記録を見ると確かに南浦さんの手が1巡程度ではあるけれど遅れていた
少しずつ、塞ぐ力が戻ってきているのかもしれない

だから、南入してから、弘世の手を塞ぐことに意識を注ぐ

普通1巡程度遅れたところで大勢に影響はない
だけど、弘世は違う。1巡違ったがために射損ねるということは十分ありえる

現に、弘世はこの1年の高鴨さんを射抜ききれていない
成功率は半々というところか

宥が冬の個人戦でこの弘世と対戦したときから、くせが修正されているらしい
昨日宥に弘世のくせを聞きに行ったらそんな回答だった

でも、なんとなく視線の動き方が誰を標的にしているかの指標にはなった
オーラスで、おそらく狙いは玄ちゃん
高鴨さんの親で連荘は避けたいところだろう。だとすれば、成功率の上がらない高鴨さんを狙うよりはという判断だろう

――塞ぐのやめるか

私はとにかく、平和手っぽいときには七対子、逆に対子手の時には平和手を目指すように打ち回した
当然無理やりの遠回り、手になる可能性は低い
でも今必要なのは、とにかく振り込みを避けること

思いがけず、宥がトップでバトンを渡してくれた。だから私は、それほど無茶をしなくてすむ
高鴨さんの親での連荘を避けたいのは、私も同じ

「ロン、3900の一本場」

弘世が予想通り玄ちゃんから出上がりする
これで前半戦が終了する

うん、力が戻ってきている実感が湧いてきた
これもエイちゃんとシロのおかげだろう・・・

でも塞がれていると思われるのは良くない
ちょっと調子が悪いな、くらいに思ってくれればいい
目立って狙われたら元も子もないからね

それにしたって・・・

「はあ、また焼き鳥か・・・」

小さくつぶやき、私は席を立った


次鋒戦 前半終了

臼沢塞(3-1) 100100(-10300)
弘世菫(3-2) 110600( +5400)
松実玄(2-10) 88900( -5400)
高鴨穏乃(1-5)100400(+10300)

522: tell you that I love ...(8-2) 2012/10/07(日) 00:47:45.27 ID:tgEyM1f+0
-side 憧-

「今度のしずへのアドバイスは良かったみたいね、ハルエ」

だいぶ落ち着いてきたけど、まだ元気のない咲の頭を撫でながらの観戦

「まあ、ちょっと弘世も調子悪いかなって感じはあるけどね」

今回、ハルエはしずに対してこんなアドバイスをしたらしい

『しずに弘世のくせとか見抜くのムリ! 体で覚えるまで何度でも立ち向かえ』

私がこんなアドバイス受けたらぶん殴ってやるところだけど、体力バカのしずにはちょうど良かったのだろう

準決勝でも狙い撃ちされ、この決勝でも狙い撃ちはされている
でも、今日はその狙い撃ちをかいくぐってどんどん上がっている

おお、かっこいいぞ、しず!

逆に同卓の玄は、東1で狙われてからちょっと手をこまねいている感じだった。途中で満貫ツモが1回あっただけ。
玄にとっては弘世さんみたいなあぶれ牌を狙い撃ちする人は苦手意識が強いだろうし、無理もないことだった

前半戦が終わって、僅差だけど2位までもってきた
これはほんとに逆転できるかもっ

「ね、咲。誰かがへこんでも、こうやって誰か取り返してくれるんだよ」
「うん、そうだね・・・。みんなでひとつのチームだもんね」

咲が±0を狙ってできることは、すごいことだと思う
それは個人戦では、勝利できない力だけど・・・

でも、団体戦だったら、調整する力はきっとこれからも役に立つ

好き好んで±0にできるようになったわけじゃないみたいだから、咲はそんな力は好きじゃないかもしれないけれど
団体戦を通して自分の力をもっとうまく楽しく使えたら・・・

「だからそろそろ笑顔になってさ、しずのこと応援してあげて」
「うん」

まだちょっとぎこちなかったけど、ようやく咲が笑顔を浮かべてくれた

528: tell you that I love ...(8-2) 2012/10/08(月) 01:58:04.56 ID:OYz/mOb+0
-side 塞-

-クラス対抗戦 決勝次鋒戦 後半戦
-東4局

東 臼沢塞
南 弘世菫
西 松実玄
北 高鴨穏乃

「ツモ、2000、4000」

うーん、親っかぶり。旗色悪いな・・・

出上がりの効率が悪いとみるや、弘世はツモ狙いに切り替えてきた
その辺の修正力は、流石に学年上位ランクなだけはある

後半戦は高鴨さんと弘世のマッチレースという様相
しかしお互いドラがないので高くて満貫というツモりあいになっていた
でもこの傾向は、よろしくない・・・


-南1局

「リーチ」

6巡目で、高鴨さんからリーチ宣言

「ポン」
「む、玄さんが鳴くなんて珍しい」

その⑤を鳴いたのは、玄ちゃん・・・
玄ちゃんはほとんど鳴かずに手を進めるのに

鳴いた牌と、手元から出てきた赤5ピンが2枚さらされる。ドラ2つか・・・

ドラは五萬。2枚くらい、もしかしたら3枚持っているかもしれない
そしてソウズの赤は1枚だから、三色同刻がこれで完成したか、あるいは普通にタンヤオか・・・

いずれにせよ、弘世がツモ狙いに切り替えたことで、出上がりの危険が減ったから前に出てきたんだろう

――塞ぐか?

後半戦はツモ狙いに切り替わったこともあって、塞ぐのは温存していた
まだ完全に力が戻ってきているとはいえないし、連続で使えばバテてしまう。大量失点さえ防げれば、そこまで無理をする必要はないんだから

少しだけ、ドラゴンロードが塞げるのかどうか試してみるか

そう考え、私は玄ちゃんに向ける視線に力を込める

「・・・・っ!」

きっつぃ・・・
だぁぁぁ、ヤメヤメヤメ!

どこかの修行場で地球の重力を10倍にした、みたいな圧力が一気に押し寄せてきた

あの照でさえ、まったくドラが来ないほどの支配力
そんなものを塞ぐのは並大抵じゃないってことか・・・

とりあえず玄ちゃん警戒しつつオリだな・・・
そして3巡後

「ツモ。タンヤオ・トイトイ・三色同刻・ドラ7。12000、6000」

もう少しで数え役満か・・・
まったく、これだけドラが集まれば1回上がるだけで一気に形勢逆転できるから羨ましい

親っかぶりが弘世だったのが救いだけど、これで一人沈みか・・・
まあまだ1回も上がってないから当たり前だけど

でも、牙を剥くのはラス親でいい。それまでは、凌ぐっ


次鋒戦後半戦南1局 終了時点

東 弘世菫  106600
南 松実玄  105900
西 高鴨穏乃 101400
北 臼沢塞   86100

529: tell you that I love ...(8-2) 2012/10/08(月) 01:59:23.45 ID:OYz/mOb+0
-side 恭子-

観戦室から、出店で買ってきたポップコーンを片手に観戦する
対局さえ始まってしまえば、もうできることはない。ただ敗者として、勝負の行く末を見守るだけ

出来れば、あの場にいたかったけどな・・・

「隣、ええか?」
「・・・・なんでこんなとこにおんねん?」

声でわかる
振り返りもせず、私は長机の自分の左隣をコツコツと叩いた

「恭子こそ、なんでこんな人の少ないところで見とるねん。探したやん」
「いや、そもそも洋榎に探されるなんて思っとらへんしな」

隣に座ったのは愛宕洋榎、同じサッカー部の、主将にしてエースストライカーというやつだ
そして同時に、3年2組の中堅。もうすぐ出番のはずだった

「いや、ウチのクラス居づらいんやもん。竜華がおればまだええけど、残りの面子は大阪のノリが全然通じへん。息が詰まってまうで」
「竜華がおらんってどういうこっちゃ」
「昨日ミーティングがあったんやけどな。久保ちゃんが、宮永照に回す前に3年1組を飛ばせとか言いよるから竜華カンカンでな」
「ああ、そりゃダブルで怒るな」

自分には宮永照を止められないと言われたも同然
あと、中堅までに飛ばせって、仮にそれができたとして中堅で飛ぶ可能性が高い。怜を飛ばせと言われているようなもの

「由子は3-1におるし、絹も漫も2-10におるし、恭子くらいしかフリーなのがおらんと思ってあっちこっち探したんやで」
「メールなり電話なりすればええやん」
「それじゃあつまらんやろ、時間も潰れんし」
「なら私がどうこう言われる筋合いもあらへんな・・・」

私を探していてたというよりは、とにかく誰か話し相手が欲しかったというくらいのことだろう・・・

洋榎には、由子が対抗戦に出ていない理由を伝えてはいない
決勝の日に用事があるから断った、でもその用事はオーダー決定後に無くなった、ということで洋榎には説明してある

流石に代行に止められたとか聞いたら洋榎も黙ってはいないだろう
事が大きくなるのを恐れた由子から相談を受けた私は、とりあえず適当な理由をでっちあげておくことにした

真相を話すつもりではいる、でもそれは対抗戦が終わったあと
余計なことを話して、洋榎が麻雀に集中できないという事態になるのは避けたかった

ましてや今は、決勝戦のもうすぐ中堅戦が始まる時間
そんなタイムングで洋榎に会うとは思っていなかった
これは、話をしておけというサインなんやろうか

・・・いや、無いな。こんなタイミングで話してどうなる

「ポップコーン、もらうで」
「言いながら食うのやめや・・・」

まあ、話さんでもええやろ
今洋榎に余計なこと吹き込んでどうするねん

530: tell you that I love ...(8-2) 2012/10/08(月) 02:00:22.02 ID:OYz/mOb+0
「おや、先客ですか?」

そこにやってきたのは船久保だった
もともとここで舟久保と待ち合わせをしていた

「お、浩子やん。浩子もこんなとこで観戦なんか」
「っていうかなんでこんなところに洋榎さんがおるんですか?」

そりゃあそう思うわな

「ま、試合前の気晴らしや」
「さよですか。でももうオーラスみたいですし、ぼちぼち戻った方がよろしいですよ?」
「なんや、ここに着いてからはあっという間やったわ」

そう言って洋榎が立ち上がる

「まあ、飛ばせと言われた以上、全力で飛ばすのがウチの流儀や。相手が何万点持ってようとな」
「その自信、ちょっと分けてほしいわ」

冗談めかして言ったつもりだったが、もう洋榎のスイッチが切り替わっていた

「恭子、お前にはお前の強さがある。それだけは覚えとけ」
「あ、ああ・・・」

思わず圧倒された・・・
ほんとに飛ばしかねんな、これは
洋榎が観戦室を出ると、同じ場所に船久保が座った

「手短に。頼まれてた歴代の代表選などのデータです。10年くらいと言わましたが、学校でデータ化されているものは全部焼いておきましたので、あとで見てください」
「仕事早いな・・・」
「それほどでも。それに興味がありまして」
「こんなこと調べろって言った理由か?」
「まさに」

まあ、ただの推測に過ぎんから過度の期待はご遠慮願いたいところやが・・・

「思ったんや。宮永照に勝ってほしくない理由。現在進行形な理由なのか、それとも宮永照には関係のないまったく別のことなのか」
「それで過去の記録にヒントを求めた、というわけですか」
「まあ、どうせ空振りやと思っとるし、真相の究明になんて興味はあらへん。ただの暇つぶしや。データは帰ったら見させてもらうで」

そうこうしているうちに次鋒戦が終了した

次は中堅戦・・・・
この妙な胸騒ぎは、いったいなんなんやろうか

531: tell you that I love ...(8-2) 2012/10/08(月) 02:02:41.81 ID:OYz/mOb+0
-side 塞-

-クラス対抗戦 決勝次鋒戦 後半戦
-南4局

南 弘世菫  108600
西 松実玄  102000
北 高鴨穏乃 103300
東 臼沢塞   86100


弘世の視線がやたらこちらに向かってくるのを感じる・・・
うーむ、最後の最後に私を狙い打つつもりだろうか

確かにラス親ということで多少の無茶をすることを見越せば、まっすぐ進んであぶれ牌が出る可能性も高い
ほんとに冷静だね、感心する

ってことは、この手、まっすぐ切ったら狙い撃ちか?

ドラ:五萬
手牌:二三四六④⑤⑥456788 ツモ:四

3色確定させるなら7ソウ切りでカン五萬待ち
でも、ドラが五萬である以上、このカンチャンはツモれない

とすれば、六萬はどうせつっくかないから六萬切りするのがベストか?
けど、そういうベストな牌ってのが確実に弘世に狙われている牌・・・・

とすれば、ドラ支配下では来るはずのない牌で待つしかない

打:7ソウ

そして私は、玄ちゃんを塞ぎにかかる

「・・・・・きついって」

小さく呟く
これは支配力だけでいえば天江衣に匹敵するわ・・・
あのときは無我夢中だったから、能力の限界点をその場では気づかなかった

全力疾走でマラソンをしているような疲労感が襲ってくる
限界点はまだもう少しだけ先
ギリギリまでは塞ぐ

せめて自分のツモ巡が回ってくるまでもたせる

532: tell you that I love ...(8-2) 2012/10/08(月) 02:03:45.48 ID:OYz/mOb+0
弘世がノータイムでツモ切り

次いで玄ちゃんの、手が止まる
ちょっとだけ首をかしげた
ドラが来る予定だったんだろうか?

時間にしたら5秒にも満たなかったんだろうけど、塞ぎ続けている私にはその5秒も惜しい
ようやく玄ちゃんが切る
次の高鴨さんは、同じくノータイムでツモ切りした

自分のツモ巡
今までで最大級の疲労感が襲ってくる

まるでドラゴンがのたうちまわりながら最後の抵抗を示しているかのよう
これを塞ぎきれば上がれる

そんな予感を支えにして、私はいつも以上に重たく感じる牌をツモった

真っ赤に彫られた、五萬という文字

「ツモ!」

私がツモった牌を卓に置くと、全員の表情が凍りついた

「赤ドラだとっ」
「玄さんがいるのに・・・」
「・・え、えっ」

そしてゆっくりと手牌を倒した
もう倒すだけでもきついて・・・

「タンヤオツモ三色ドラ2。6000オール」

今日で最初の、そして最後のあがり
一応親だから連荘できるけど、もうそんな体力残ってないや・・・

「もう、ちょーダルいよーだからあがりやめします」

シロなのか豊音なのかよく分からないセリフ
みんなのおかげでなんとかギリギリ1位はキープできたし、これでよかったよね


次鋒戦終了

臼沢塞(3-1) 104100(-6300)
弘世菫(3-2) 102600(-2600)
松実玄(2-10) 96000(+1700)
高鴨穏乃(1-5) 97300(+7200)

533: tell you that I love ...(8-2) 2012/10/08(月) 02:05:21.82 ID:OYz/mOb+0
-side 怜-

-クラス対抗戦 決勝中堅戦 前半戦
-南3局


もう、アカンかもしれん・・・


―――照

  ―――由子

    ―――宥姉ちゃん

      ―――塞、豊音





 ―――竜華

   ―――竜華っ

     ―――竜華ぁぁ





私、何を信じたらええの・・・

もうわからへん・・・

誰か、助けて・・・


「ロン、16000」


またや・・・

また・・・


神代っ・・・・・・

546: tell you that I love ...(8-3) 2012/10/11(木) 20:29:31.05 ID:Mah/Mafi0
-side 怜-

-クラス対抗戦 中堅戦 開始前

塞の跳満が決まる
玄ちゃん相手に赤ドラをツモってきた

「玄ちゃん・・・」
「塞が、塞いだんだろうね」

宥姉ちゃんは流石に複雑な心境やろうな
玄ちゃんのドラ支配は絶対のはずだった、それでも塞に一時的とはいえ塞がれた・・・

ふむ、かっこいいことしてくれる
プレッシャーを感じてまうやん

「さて、動きたないけど、行こか・・・」
「頑張ってな、怜」

どのくらい頑張れば、ええんやろうな

中堅戦の面子が今までとは格が違う

学年2位の愛宕洋榎
全中チャンプの原村和
そして、神代小蒔・・・・

ちょっとやそっとの頑張りじゃ、太刀打ちできるとは思えない

ゆっくりと立ち上がる
照が、私をじっと見つめていた

「怜、100点残っていればいいから」
「・・・流石に100点じゃまずいやろ」
「100点でいいから」

そう強く言われても簡単には、はいそうですか、とは言えない
東1は様子見なんやろ・・・

「1年の副将と戦ったことあるんか?」
「ないよ」
「じゃあアカンやん、せめて万点棒は残しとかんと」
「様子見は、必ずしないといけないわけじゃない。牌譜も見てるし」
「・・・さすがに勝ってくるとは言わん。でも、安心して様子見できるくらいの点棒は残す、意地でもな」
「・・・怜」

照が複雑な表情を浮かべるけど、知らん
多少の無理はさせてもらうで

547: tell you that I love ...(8-3) 2012/10/11(木) 20:30:40.30 ID:Mah/Mafi0
そこに塞が戻ってきた、小瀬川白望に支えられて
そのあとから、鹿倉胡桃とエイスリンも入ってきた

「ただいまー」
「塞ー、お疲れさまー。っていうかなんでシロ達がいるの?」
「シロ以上にダルそうにしてるから心配になって」

塞も、そして支えている小瀬川もダルそうにしているのはなかなかシュールな構図だった
そしてエイスリンがスケッチボードに描かれたイラストを見せる

救急車と担架?

「病院に行かないといけないくらい動けないのかって心配した」

小瀬川解説員が一瞬で読み取る
エイスリンがコクコクと頷いた

「エイちゃん大げさ大げさ」
「でも動けなかったのは事実っ」
「まあ、そうだけどさ」

美術部の面子が談笑しとるけど、塞が体力をかなり消耗しているのは間違いなかった

塞がここまでして1位を守ったのに、私がのうのうと打って100点でええなんて、そんなの許されるわけないやろ・・・

「ちょうどええから、このマットに横になり」

竜華が、今まで私が横になっていたマットに塞を手招きした

「はは、まさか自分がそこで横になるとは思わなかったよ」
「ほら、誰か膝枕したり」
「はいはーい、私やるよー」

豊音がちょこんとマットの端に座った
塞が横になると、すぐに起き上がった

「豊音の膝じゃ高すぎる・・・」
「えぇー」

じゃあ次はシロだなどと会話が飛び交った
私も、この試合終わったら膝枕してもらお・・・

「じゃあ、行ってくるな」
「頑張ってねー」
「そこそこでいいのよー」

声援を背に、私は教室を出て対局室に向かった

548: tell you that I love ...(8-3) 2012/10/11(木) 20:32:01.61 ID:Mah/Mafi0
-クラス対抗戦 中堅戦 前半戦

-東2局

北 愛宕洋榎
東 神代小蒔
南 原村和
西 園城寺怜

東1はリータン一発ツモで先制できた
まだ姫様は起きとるが、未来視に割り込んでくる様子はない

問題は、寝てから・・・

「・・・・ったく」

と思ったら、もう寝よる
昨日と同じように、冷たい風が駆け抜けるかのように体が震える

まあええ
とりあえず1巡先見てお手並み拝見やな


―――――

手牌から⑥を切る、これでとりあえず平和テンパイ
洋榎が白をツモ切り

そして神代のツモ順でまたしても手が止まった

「昨日、警告したはずですが?」
「悪いけど、はいそうですかなんて簡単にはいかへんよ」

おっそろしいほどの睨みをきかせてくる
まったく、普段のぽやぽやした感じからは全く想像がつかん・・・

「昨日の神とは違いますから、これ以上は容赦はできません」
「そこをなんとか」
「無理です」

そう言いながら神代は、手出しの①切り

なるほど、それならその牌で上がれるわ

「ロンや、平和ドラ1」

―――――


昨日と違い1巡目から干渉しよったか・・・
まあでも、実際に切る牌自体は未来視と同じはずやろう

私は未来視の通り、⑥を切った。これで神代から平和ドラ1で出上がりできる

「ロン」
「・・・はっ?」

手を倒したのは、原村和

「タンヤオドラ2。3900」

なんでや?
1巡先を見た時と同じ牌を切ったのに、なんで結果が違ってくるん・・・

⑥で振るのなら、そもそも洋榎がツモったのがおかしいやん

――未来が書き換えられた?
――それとも、偽物の未来を見せられた?

考えられへん
何かの間違いや・・・
きっと疲れがたまっててちょっと未来視を覚えそこねただけや

いかんいかん、大げさ大げさ

でも実際には大げさでもなんでもなく、それが事実だということを東場ではっきりと突きつけられた

549: tell you that I love ...(8-3) 2012/10/11(木) 20:33:45.05 ID:Mah/Mafi0
-東3局

この局は1巡先を見るだけなら、神代はちょっかいを出してこなかった
容赦しないゆうとったけど、はったりやったんやろうか・・・・

再び1巡先
ふむ、これで一発ツモできるな
リーチ棒を取り出し、立てる

「リーチ」
「ポン」

ありえない声がかかる、1巡先を見たときには誰も鳴かなかったのに・・・

また原村っ・・・
神代やなくて、特殊なんは原村の方なんか??

一発も消え、ツモってきた牌はただツモ切るしかない・・・

「ロン、タンヤオ一盃口。2600やな」

その牌で洋榎があがる

違う
やっぱり未来が書き換えられとる

だって今切った牌は、原村が鳴かなければ本来洋榎がリーチ後1発でツモる牌やったんや
だったら一巡先を見たとき、洋榎がツモ上がりしとらなおかしい・・・

神代の瞳が私を見据える
絶対零度にまで冷え込んだような、冷たい眼光で

怖い・・・

心の奥底の震えが、少しずつ這い上がってくるのを感じた

550: tell you that I love ...(8-3) 2012/10/11(木) 20:35:42.00 ID:Mah/Mafi0
-東4局

再び1巡先を見る
前の局は振り込む前だけ書き換えられていた、そこまでは普通やった
まだ5巡目の段階なら、まだ未来は書き換えられてないだろう・・・多分・・・・・


―――――

ツモ切りの白は誰も鳴かない
そもそも1巡目に原村が切っとるしな

洋榎が手出しで北
神代が発

「ポンや」

それを洋榎がポン、南を切る
その後再び神代。切ったのは中

「おっと、そいつもポンや」

洋榎が発と中を揃える
でも、大三元やったら私の切った白も鳴いとらんと出来へん。もう白は場にあって2枚
あっても小三元までやな

また神代のツモ
神代が切ったのは・・・・

――白

「なんで白が出てくる・・・」
「ロンや、大三元やで!」

しかもそれを洋榎があがる
おかしいやろ、その白は5枚目やん

原村が1枚
私が1枚
洋榎が手牌に2枚
そして神代が切った1枚

ありえない未来

こんな露骨に書き換えてきよって、何が目的なんや・・・

神代の瞳は、相変わらず冷たいまま

「なんとか言ったらどうや、神代。こんな露骨に嘘とわかる未来見せよって」

返事はない
ただ氷の視線が、私を射抜くだけだった

―――――


・・・大三元があるから白は切らない方がいいですよ、っていうことか?
それで私の手を止めようとでもいうんか?

もうまともな未来は見せないぞっていう警告か?
嘘と分かる未来ならええけど、嘘かどうか分からんかったら、もう1巡先を見ても惑わされるだけ・・・

・・・1巡先が見れない?

私から未来視を取られたら、何が残るっていうの
未来視があるから、私は学年ランクを上げられた。なかったら、今も300位あたりでくすぶっていた

竜華やセーラとようやく対等に打てるようになれて、どんなに嬉しかったことか
照にだって、未来視が無かったらクラス対抗戦には誘われてはいなかっただろう・・・

551: tell you that I love ...(8-3) 2012/10/11(木) 20:37:41.97 ID:Mah/Mafi0
「おい、はよ切れ。怜」

現実に呼び戻される

「ごめん・・・」

慌てて白を切る

「ポン」

鳴いたのは、洋榎
あ、白が2枚あることはほんとやったんか・・・

神代が中を切り、それもポン

「あるでー、大三元あるでー」

洋榎が白と中を揃えた
まだ発は場には出ていない

そして次巡、ツモってきたのは

――発

流石に切れん。なんでこんなの持ってくる

1巡先を見る?
でもまた書き換えられとるかもしれん・・・

それでも・・・・

私はすがるように、1巡先を覗く


―――――

発を切る

「カン」

まさかの大明槓

「ツモや、大三元。責任払いやな、怜」

洋榎手牌:②③77 白-白白 中-中中 発-発発発  嶺上牌:①

薄気味悪く笑う洋榎
そして、神代も、原村も、似たような笑みを顔に貼り付けていた・・・

ケタケタと、3人の不気味な笑い声が重なる

私は未来の中で叫んだ

怖い・・・
こんなのホラーやん・・・

助けて、助けて・・・・

竜華、竜華っ・・・

―――――


「おい怜、おまえ大丈夫か?」

また現実に呼び戻される

「いや、すまんな・・・」

はっきりと、自分の声に生気がないのが分かる

「介錯したる、はよ切りや」
「せやな。介錯してほしいわ・・・」

もはや、自分が何の牌を切ろうとしているのか私には分かっていなかった

552: tell you that I love ...(8-3) 2012/10/11(木) 20:39:52.60 ID:Mah/Mafi0
-side 洋榎-

洋榎手牌:②③六七八77 白-白白 中-中中

ま、ただの白中だけやけどな・・・
それにしても怜はビビリすぎちゃうか

もともと色白やけど、どんどん顔面蒼白になってきよる
体調悪いんやったら、それこそはよ終わらせてやらなかんな・・・

手を震わせながら怜が切ったのは、

「強い牌切るやん。それでこそ園城寺怜や」

――発

普通は切れんのやけどな、上がりも鳴かれもしないのを未来見て確認したんやろ
便利なこっちゃで

「でも悪いな、ツモや。500、1000」

ドラの無い、白中だけの手
ここはこれでええ

どうにもさっきから、隣の魔物が大人しいからな
自分の親番で稼がせてもらうで

553: tell you that I love ...(8-3) 2012/10/11(木) 20:42:02.26 ID:Mah/Mafi0
-side 怜-
-南1局

洋榎のさっきのあがり
大三元やなかった、でも待ちは同じ・・・

何が嘘で何が本当なのか、さっぱり分からん
どないしたらええの

未来を見なければええのか?
でも、そんなことをしたら私の実力なんかで太刀打ちできへん・・・

かといって未来を見たら、またあんな恐ろしいものを見せられるかもしれん・・・

どうしたらええの?
どうしたら・・・

「リーチや!」

洋榎が8巡目にリーチをかけた
神代も原村もとりあえず現物を切る

私のツモが回ってくる
降りることで頭がいっぱいになる

もう戦いたくない・・・ひたすら現物を切れば振ることはない
でも、現物は今2枚しかない・・・

・・・現物があるうちは未来は見ない

ひとまず現物を切る
洋榎の一発は無し

「リーチ」

神代が追いかけた・・・
原村は完全に降りたのか、神代のリーチ牌を合わせ打つ

でも私は神代のリーチ牌は持っていない・・・
共通する安牌は、無かった

私は・・・私はなんて弱くて、脆くて、愚かなんや・・・・

絶望しか待っていないというのに、それでも一巡先に縋ってしまう


―――――

神代のリーチ牌は②
神代も洋榎も、④を捨てている
②は原村が合わせ打ちし、さらに洋榎も1枚捨てている。ワンチャンスというやつやけど

普通なら、筋の①は通るはず・・・

「ロン」

発声とともに牌を倒したのは原村

「ピンフのみ。1000点」

・・・・確かに原村に対しては無筋やったけど、どう考えたらええんや、これは

―――――

554: tell you that I love ...(8-3) 2012/10/11(木) 20:44:09.74 ID:Mah/Mafi0
それでも現実的に、切るのは①くらいしかなかった
それに、あの原村の手は②③での①-④待ちだった
神代も洋榎も①は単騎かシャボでしか待てない

仮に原村に上がられても1000点
これが嘘でも、リーチしている人に振るよりはマシだろう

「ロン」

発声とともに牌を倒したのは原村

「ピンフのみ。1000点」

1巡先を見たのと同じ牌姿
でも、そこから先が違っていた・・・・

「ロン、四暗刻。頭ハネです」
「えっ・・・」

さらに牌が倒れる

1巡先を見たときは牌を倒さなかっただけっつうことか・・・

「神代っ・・・」

なんで四暗刻の①単騎でリーチかけるんや

いや、2人からリーチかかって、さらに④の筋、②が全部見えれば・・・弱気になった私からは確実に出る
そのためにあえて原村の手を見せた

1000点で流せるなら助かる
そう、私を誘導した

アカン、こんなのもう、無理や・・・

私の緊張の糸は、そこでぷっつりと切れた・・・

555: tell you that I love ...(8-3) 2012/10/11(木) 20:46:27.97 ID:Mah/Mafi0
-南4局

はは、もう100点も残せんかもしれんな・・・

南2も南3も神代が聴牌した直後、私の思考を操るように都合のいい未来をみせ、私は神代に簡単に振り込んだ
差込マシーンがいるので、洋榎も原村も成す術なく、ただ見ているだけしかなかった

オーラス
自分が親なのが、唯一の救い
だって、連荘地獄にはならへんやろ

投げ出したい・・・
目の前の牌をわーって叫びながらぐちゃぐちゃにしたい・・・

―――・・・・ときぃ

ああ、もうアカン
竜華の声が聞こえた気がした
幻聴やな

あの原村のペンギンみたいに、私も竜華に膝枕してもらいながら打てばまだ戦えてるんかな

―――怜!

幻聴がどんどんはっきり聞こえるようになる
竜華・・・
膝枕分、もう全然足りへんよ

っていうかもう抱きしめてほしいわ
さっきから震えが止まらんもん

竜華・・・・
大好きやで
愛してるんよ

でも、ごめん
この気持ち伝える前に、もうどうかなってまうわ


配牌が終わると、もう見たくもない未来を強制的に見せられた



私の未来には、絶望しかない




中堅戦前半 南4局開始時点

園城寺怜(3-1)   38600(-65500)
愛宕洋榎(3-2)  103500(+ 900)
神代小蒔(2-10) 160500(+64500)
原村和(1-5)    97400(+ 100)

563: tell you that I love ...(8-3) 2012/10/13(土) 00:21:51.77 ID:4uu3wBVz0
-side 由子-

なんとなく、予感はしていた・・・

「怜が、振り込んだ・・・」

竜華が表情は一瞬で青ざめていく

東1こそ、いつもの怜だった

けれど、東2では原村に振り込み
東3ではリーチを掛けたのに、洋榎に振り込み
東4では洋榎にツモられた

そして極めつけは南1局

神代への四暗刻振り込み・・・・

「もう、見えてないのよー」

怜は1巡先を見るとき、捨てようとする牌を持つ
そして見た未来が都合が悪ければ、改めて別の牌を持つ
見た未来が良ければ、そのまま牌を切る

怜は牌を持ちかえていなかった
だから、あの振り込んだ①は、未来を見た上で切ったことになる
でなければ、もう見えてないかのどちらか・・・

見えて四暗刻振り込みなんてありえない。だからもう、見えてない

もう竜華はモニターを見ていなかった
祈るように手を組んで額にあてていた。ただひたすら小さな声で、怜、怜と呟く
まるで何かを念じるように

・・・今は下手に声をかけない方がよさそうなのよ

教室を見回す
結局、白望が塞の膝枕役に落ち着いていた
美術部の面々も全員残って観戦していた

「宮永さん・・・・」

その白望が照に声をかけた

「神代との、対戦経験は?」
「・・・無い。2年10組で過去に対戦したことがあるのは、荒川さんと松実さんだけ。3年2組は全員対戦したことはあるけど」

絹ちゃんとは昨日対戦したから、天江と神代は鏡で見たことがないということになる
学年が違うとなかなか戦う機会はない
同学年だと、ランク考査のための合同授業があるので対戦は多くなるけど

「そう、じゃあ分からないのか・・・ダルイね」

神代を見透かしたことがあれば、今の状況もわかるかもしれないと思ったのだろうけれど、空振りに終わってしまったようだ

南2局も怜が神代に振り込む
神代の連荘。しかしそこは洋榎、原村から1300点であがってなんとか連荘は阻止する
それでも南3局はまた怜が神代へ倍満の振り込み・・・

10万点以上あった点棒は、もう4万点を切っていた
このペースでは、2半荘は持たない・・・

「怜ちゃん」
「怜・・・」

照と宥が、同じタイミングでつぶやいた

南4局、配牌が終わった怜は、まったく動かなくなってしまった
そして、竜華も・・・

564: tell you that I love ...(8-3) 2012/10/13(土) 00:24:21.95 ID:4uu3wBVz0
-side 怜-

はは、そうや、このまま牌を切らんかったらええんや
強制的に見せられた未来なんてどうせ紛い物に決まっとる

「はよ切れや、怜」
「そうです、早く切ってください」
「切らへん。もう未来なんて見る必要ない」

洋榎と原村が急かすが、私は切らない

「切らなければ、ずっとこの世界の中ですよ」

神代に睨まれるたび、氷柱で突き刺されるかのような錯覚を覚える
それでも、どんなに恐怖で体が震えようと、もう切りたくないもんは切りたくない

―――怜!

また聞こえた
竜華、竜華・・・・

どこにおるの?
近くにおるのなら、顔見せてや

「竜華、竜華、助けて!」
「怜!」

背後から、待ち焦がれた声がした
神代の視線が、私の背後に反れる
振り向こうとした瞬間、抱きつかれた

「怜、振り向いたらダメやで」
「竜華・・・なんで?」

顔が見たいのに・・・
それでもこの温もりは、確かに竜華のもの

今まで私を覆っていた絶望が、嘘のように晴れていく

「怜、もう大丈夫やからな」
「ほんまに?」
「ああ、ほんまやで」

今すぐにでも振り向いて抱きつきたい
でも、力強く抱きとめられてそれは叶わない

ええか、これはこれで安心できるし・・・

「神代、私の怜にずいぶん手荒な真似してくれたみたいやな!」
「警告はしました。無視したのはそちらです」
「警告さえすれば何してもええんか!」

あの神代に物怖じせず啖呵を切る竜華
あかん、竜華ってこんなにかっこよかったん・・・

神代が私の背後をじっと見つめた

「あなたが本来の?」
「もう元には戻らんけどな」

何の話をしとるん?

神代がため息をつく
霧があたりを覆いはじめた、まず原村と洋榎の姿が、霧になって消えていく

「興がさめました。いったん目を覚ますことにします」

神代の姿も霧の中に飲まれていく

「園城寺さん」

今までとは違い、緊張感に欠けるぽやぽやとした声
かすかに見える神代の頬に、伝う涙

「・・・ごめんなさい」
「神代っ」

叫ぶ声は、霧に飲まれた

―――――

565: tell you that I love ...(8-3) 2012/10/13(土) 00:25:19.38 ID:4uu3wBVz0
「怜さん、怜さん! 大丈夫ですか!!」

煌の声で、私は現実に呼び戻された

「ああ、すまんな・・・」
「体調悪いなら無理すんなや」
「もう、大丈夫や・・・」

洋榎がそう言うけど、はいそうですかとゆうわけにはいかない

荒れる息を整える
でもこれ、もう1半荘ももたんかもしれんな・・・
精神的にかなり消耗してもうた

正面を見ると、神代は確かに目を覚ましていた

「あ、すみません、寝てたみたいです」
「・・・対局中に寝ているとか、そんなオカルトありえません」

原村がツッコミを入れる
でも、世の中はオカルトで溢れとるんやで・・・

「なあ、神代?」
「はい、なんでしょうか」
「寝てる時って、どんな気分なん?」
「・・・さあ、寝てますので分かりません」

さっき謝っていたのは素の神代かと思ったんやけど、覚えてないんやろうか・・・・

まあええか
神代が起きているなら、もう未来を見ても問題無い
それに何かあっても、きっと竜華が助けてくれる

「悪かったな、じゃあ、始めよか」

初っ端から2巡先を覗く

気がつけばいつの間にか点数は4万点を切っていた・・・
なにをやっとるんや、私はっ
ラス親やし、ここで取り返したる!

「ロン、12000!」
「は、はいっ」

8巡後、神代から出上がり
っていうか神代からどれだけ取られとるって話や・・・

「はあ、はあ・・・」

息が荒れる、体も震えだしてきた
このくらいの無茶がなんや、まだ取り返さなあかん点棒が半分も残っとるんやで

神代の差し出す点棒を受け取ろうと、手を伸ばす

瞬間・・・・

「あ、れ?」

視界が歪む
牌が崩れる音がする

自動卓が牌をかき混ぜる音を間近で聞きながら

私の意識は闇に溶けた

566: tell you that I love ...(8-3) 2012/10/13(土) 00:26:52.84 ID:4uu3wBVz0
-side 照-

南4局がようやく始まった
怜は明らかに息を切らしている、傍から見ていてももう限界

それでも、いままでの生気のない振り込みが嘘かのように積極的に牌を切っていく
まるで、燃え尽きる前の最後の灯火のように・・・・

怜、お願いだからそんなに無理しないで・・・
ここで負けても、誰も責めたりしないから

そんな願いも虚しく
神代さんからロン上がりした直後、怜は卓に突っ伏した

「怜ぃぃ!!」

清水谷さんが一目散に教室を飛び出していった

「宥、私たちも行こう」
「そ、そうだね」
「シロとエイちゃんは残ってて。豊音、行くよっ」
「うんっ」
「私も行くのよー」

塞は小瀬川さんとエイスリンさんに任せて、私達も慌てて後を追う

対局室に着くと、すでに清水谷さんがまだ卓に突っ伏したままの怜の肩に手を添えていた

「怜、怜、しっかりして」
「とにかく保健室へ運びましょう」
「せやな・・・」

花田さんがそう指示すると、清水谷さんが怜を抱き上げようとした

「手伝います」

宥が反対側に体を回す

「あ・・・」

怜が小さく声を出した

「大丈夫、怜ちゃん」
「怜、気がついたんか?」
「私、倒れたん?」
「せやで、もう休まなかん。保健室行こ」

怜は小さく首を振った

「まだ1半荘残っとるやん」
「もう無理だよ、怜ちゃん」
「でもっ」

耐え切れず、私は声を荒らげた

「後のことはいいから、早く怜を保健室に連れて行って!」
「照・・・」

私の剣幕に押されたのか、怜はうつむいた
抵抗せず、2人に連れられて教室を出ていく


「で、審判。どないするん。基本メンバー交代できへんのやろ、3-1は棄権か?」

怜が出ていくのを見届けてから、愛宕さんが花田さんに聞く

――棄権

567: tell you that I love ...(8-3) 2012/10/13(土) 00:29:52.74 ID:4uu3wBVz0
こんな事態になるとは思ってなかった
棄権するしかないのなら、それでも仕方ないけれど・・・

花田さんは首を振った

「基本的にメンバー交代は認められていませんが、病欠などの理由があれば交代は可能です」

あ、でも交代してもらう人なんて考えてなかった

「なら私が出ればいい話なのよー」

由子が前に出る

「由子はダメ。出たら部活が」

由子の肩をつかみ、思わず口走ってしまった

「部活がどうしたねん? 由子が出てんかったのは用事があったからだけなんやろ?」

え?
まさか同じ部活の部長なのに、知らない??

「部活に集中したいから、対抗戦に出れませんって言っただけなのよー」
「宮永の口ぶりじゃあ、とてもそんな風には聞こえんかったけどな」

また私は余計なことを言ってしまった・・・
愛宕さんは由子を睨みつけていた

「何かあったんか、由子?」
「何もないのよー」
「嘘ゆうなや、そんな仲やあらへんやろ」
「・・・・・ごめん、ここでは言えないのよ」
「なんやそれ!」

愛宕さんが、やり場のない怒りをぶつけるように、床を蹴る
大きな音が対局室に鳴り響き、その音が消えると対局室は静寂に包まれた

私は沈黙を破って、尋ねた

「・・・・由子、いいの?」
「6人目だって言ってもらえて、嬉しかったのよ。イラストまで描いてくれて、ほんとに嬉しかったのよ」
「でも・・・」
「ここで私が出なかったら、それこそ棄権か、誰か別の人探したって飛ばされて終わりなのよ」

対抗戦に出たらレギュラーから下ろすと言われて一度は辞退したのに
本当に、いいの・・・

「今はね、このクラスで勝ちたいって気持ちの方が強いのよー。後のことは、いいから」

そんな笑顔で言われたら、もう私は何も言えなかった

「というわけで審判さん、交代をお願いするのよー」
「交代を認める前に、ひとつ説明しておくことがりますが・・・」
「わかってるのよ、8300点を3人に支払ってゲーム続行、でしょ?」

8300点を3人に支払う?
意味が分からず、私は由子と花田さんを見た

「ご存知でしたら、すばらです。交代する選手のランクが下なら問題ありませんが、上の場合、そのランク差×100点を対局する他の3クラスに支払うというルールになっています」

後から聞いたことだけど、要は偵察要員を禁止するルールとして決められたらしい
オーダーに弱い人を入れて他のクラスを見てからメンバーを変える、というようなことを行わせないための処置

「怜は103位、私は20位。その差は83だから、8300点を3人に支払わないと交代できないのよ」
「支払いが24900点になりますから、それがすばらではないと思われるのでしたら、怜さんよりもランクが低い人を出していただく必要があります」

現在50600点
由子が交代することにより、25700点になってしまう

「ほぼ配給原点で1半荘くらいなら普通に打てば大丈夫なのよー」
「由子、それ本気で言っとるんか?」

愛宕さんが立ち上がった
その拳がワナワナと震えている

「本気も本気なのよ。それに、うちのクラスで洋榎のことを一番よくわかっているのは私なのよー」
「ならその余裕、叩き潰したる。卓につけや、由子!」
「上等なのよー」

568: tell you that I love ...(8-3) 2012/10/13(土) 00:32:22.48 ID:4uu3wBVz0
「交代でよろしいですか、宮永さん?」
「え、なんで私に聞くの?」

もう交代するのが既定路線になっていると思っていただけに、花田さんにそう聞かれて戸惑った

「オーダー提出時に、リーダーに丸を打ってくださいとなっていたと思うのですが。メンバーの交代決定権は、担任またはリーダーとなっていますので」
「え、じゃあ先生に聞かないといけないの?」
「いえ、どちらかが認めればOKです」

まあ先生に聞いても、私に任せたとしか言わないだろう・・・
もう由子が腹をくくっているのだし、私がどうこう言うことじゃないだろう

それに、みんなが必死になってこの決勝の場まで来たのに・・・
最後が棄権だなんてことになったら、怜が一番ショックを受けるだろう

「交代を。園城寺怜に代わって、真瀬由子」
「了解しました。すばらです」


まだ怜はサイコロを振っていなかったので親の連荘もできたけど、由子は上がり止めを選択した



中堅戦 前半戦終了

園城寺怜(3-1)   50600
愛宕洋榎(3-2)  103500
神代小蒔(2-10) 148500
原村和(1-5)    97400

後半戦よりメンバー交代
ルールにより、3年1組は8300点ずつ他3クラスへ支払い

真瀬由子(3-1)   25700(-24900)
愛宕洋榎(3-2)  111800(+ 8300)
神代小蒔(2-10) 156800(+ 8300)
原村和(1-5)   105700(+ 8300)

578: tell you that I love ...(8-3) 2012/10/16(火) 21:41:00.22 ID:WIk/QDet0
-side 塞-

怜が倒れて、みんなが教室を飛び出していく
本当は私も行きたかったけれど、まだ体力が完全に回復しているわけではなかったので動けなかった

しばらくすると、モニター上に清水谷さん、そして照たちもあらわれた
そこで画面が突然切り替わった

今日の先鋒戦がリプレイで流れ始めたのだ

――競技中断の為、しばらくリプレイをお楽しみください

そんなテロップが流れる
どうやら対局室の様子は見せてはもらえないらしい

「はぁ、ここからじゃ状況が分からなくなっちゃったわね」
「胡桃たちが戻ってくるのを待つしかないね・・・ダル」

リプレイでは、瑞原先生と福与先生による実況解説、そしてゲストとして生徒会長の竹井さんが対局中にいろいろと発言をしていた

「おおっとー、チャンピオンの妹、宮永咲がまた振り込んだー!」
「うーん、差込みに来た感じがするかな☆」
「差込み? なぜです?」
「わかんないですっ☆」
「あのー、私は必要ですか?」
「なんとなく会長を呼んどけば箔がつくかなと思って呼んだだけだけど、いてくれた方が盛り上がるよ!」
「はぁ、ほんとに帰ろうかしら・・・」

全く解説になっていない解説・・・
これでも好評らしいから、世論からずれているのは私なのかもしれない

しばらくすると、豊音と胡桃が帰ってきた
帰ってきたのは2人だけ

「オカエリ」
「2人だけ?」

豊音の表情は芳しくなく、胡桃は落ち着いていた
クラスが違うし、普段もそうだけど、何かあっても冷静でいられるのは胡桃の方だろう

「えっと、どこから話そうか」

胡桃と豊音が席に着く

「・・・・園城寺さんは?」

シロが口を開いた
ダルイといいながらも、さすがに気になるんだろう

「園城寺さんは、清水谷さんと松実さんに運ばれて保健室に行ったよ。チャンピオンはこれから保健室に行くからって別れたところ」

結局、怜は保健室に運ばれたのか・・・
となると、これで試合は中断ということなのだろうか

その時、リプレイを流していたモニターが切り替わった

579: tell you that I love ...(8-3) 2012/10/16(火) 21:42:06.55 ID:WIk/QDet0
「え、由子?」

怜の代わりに座っていたのは、由子だった
対抗戦に出たら、サッカー部のレギュラーを下ろされるから出ないんじゃなかったの?

「そう、真瀬さんが園城寺さんの代わりに出ることになった。ランク差のせいで25000点近く支払いして」

ちょうどモニターでも、その事情を説明しているところだった

「お待たせしました、試合再開ですっ。その前に、中断中の経緯について会長から説明があります!」
「改めまして、生徒会長の竹井です。運営主催者として説明いたします」

外部からの観戦者もいるため、流石の会長も畏まっていた

「3年1組の園城寺怜さんが体調不良のため、試合を中断しておりました。本来メンバー交代は認めていませんが、正当な理由であれば交代できるルールになっています。園城寺さんが試合続行不可能であると大会委員長である花田煌が認定し、3年1組のメンバー交代を認めました」

そこでモニターが由子の顔写真と名前、学年ランク20位であることが表示される

「園城寺さんのランクが103位、真瀬さんのランクが20位です。ランクが上位の生徒に交代する場合、他のクラスに不利となるためランク差×100点を他の3クラスに支払うルールになっています」

25000点近い支払い。これで元は、取れるんだろうか・・・
棄権するよりはましかもしれないけれど、由子の部活の件も含めてかなりの痛手に思える

「中断前の親の園城寺さんの上がりは成立、続行か上がり止めかは未選択でした。交代した真瀬さんが上がりやめを選択しましたので、試合再開は後半戦東1局からとなります。以上です」

長い説明をすらすらと言い切った。流石に会長を務めるだけはある

場決めはすでに終わっていたようだけど、この説明のためか対局はまだ開始されていなかった

東 真瀬由子(3-1)
南 愛宕洋榎(3-2)
西 神代小蒔(2-10)
北 原村和(1-5)

各学年を代表するような面子相手に、由子がどんな風に立ち回るのか
圧倒的な点差とはいえ、後ろに控えるのはあの宮永照

開始前に照が怜に言っていたように、とにかく100点でもいいからつなげるのが最低限の仕事

「由子、がんばって・・・」

それでも、私があの場所にいたら、あんな風に笑顔でいられるだろうか

由子に、悲壮感は全くなかった

580: tell you that I love ...(8-3) 2012/10/16(火) 21:43:24.23 ID:WIk/QDet0
-side 洋榎-

-クラス対抗戦中堅戦 後半戦
-東1局

さっぱり分からん・・・・

なんで由子はうちにはこの対抗戦に出んかった理由が言えんのや
そんで、なんでうちに言えんことを、宮永照は知っとる・・・

そりゃ勉強とか恋愛とか答えられへんことやってあるけど
でも、部活の事なんやろう・・・
恭子かて、そんなこと言ってへんかった

恭子は、知っとるんやろうか・・・

「ロン、5800なのよー」
「うっ」

あかん、なんやこの振り込みは・・・素人かっ

由子の顔を見る
いつも通りの由子
けどそれがかえってうちの心をかき乱す

どうしてそんな風に、いつも通りに打てるんや
由子と恭子は、うちの大の親友やと思っとったんやで。それやのに、なんで隠し事すんねん

対抗戦と部活には、本来つながりなんてない
恭子なら即座につなげてみせるんやろうけど、うちはそんなごちゃごちゃ考えるタイプやない

「ロンよー、4800の1本場」
「は、はいっ」

今度は由子が神代から上がり
いつも通り、伸び伸びと打ってくる

分からん、さっぱり分からん・・・・
いま分かるのは、うちに隠し事しとったというのに、由子にはまったく臆した様子が感じられんこと

親友やて思っとったのは、うちの思い込みやったんか・・・

「ロン、1600点」
「・・・はい」

今度は原村に振ってしまった
でも、これで由子の親は流れた

はあ、もうウジウジ考えてもしゃーない!

さあ、うちの親番や
ここで稼いだる


その気負いが空回りするのは、由子への苛立ちが原因なのだと思っていた


密かに、うちの心の底に潜んでいたものがうごめきだしていた

581: tell you that I love ...(8-3) 2012/10/16(火) 21:45:11.62 ID:WIk/QDet0
-side 和-

-東4局

対戦相手がどうあろうと、普段なら気にはしないのですが・・・
けれど流石に、対戦相手が突然倒れては多少は意識せざるを得ません

「リーチや!」
「ロン。2900」
「くっそ・・・」

私は手牌を倒した

やけに対面の人が苛立っている
憧の言っていた中堅マニアという人。強いという話だったけれど、本来の実力を出せていないように感じる

私はそれほど団体戦の経験はないけれど、それでも中堅という役割でそれほど気負っても仕方ないというのは分かる・・・

現状を冷静に見つめれば3年1組の一人沈みですが、3万点以上持っているので飛ぶことを視野に入れる必要もなくて
それよりも、まだ独走を続ける2年10組と少しでも差を詰めるのが先決

どうにもこの神代という方も、優希のように集中力に欠ける人のようです
前半戦は何も手が出せないほどに3年の園城寺さんという方からどんどん点数を削っていたのですが、後半はとても同一人物とは思えないほど振り込んでいる
前半と後半で人が違うなんて、そんなオカルトはありえませんけど

とにかくこの親番で、少しでも1位との差を詰めること
あとは、憧と、淡さんがなんとかしてくれるでしょう・・・

どうにも、あの淡さんとはイマイチ気が合いませんが
それでも、同じクラスメートですし。それに麻雀の腕も、かなりオカルトな思考に捕われていとはいえ確かですから

駅伝なら、とにかくタスキをつなぐことが重要なのであって・・・

対面の方は、そんなことを忘れて自分がアンカーかのように焦っているように感じる
昨日はもっと自信に満ちた打ち筋をしていたと思ったのですが

「リーチ」

いつも通り打てば、それがクラスのためになると、私は信じています

「ツモ。4100オールです」

582: tell you that I love ...(8-3) 2012/10/16(火) 21:48:36.60 ID:WIk/QDet0
-side 由子-

-南1局2本場

原村が親で2回上がった後は、流局で親流れして自分の親番
今のところは振込もなく、神代も起きたままだからなんとかなってるのよ

怜が神代のことを気にかけていたからひょっとしたら無茶して倒れるかもしれないと思ってルールを読み返したりはしていた
けれど、実際に交代することになるとはそこまでは思っていなかった

それでも、もし出ることになったらといろいろ考えた
考えて考えて、もし出番が来たのなら出ようと心に決めた


恭子とは、洋榎には対抗戦が終わってから話そうと決めていた
ただ洋榎に余計な心配を掛けさせたくなかっただけで、仲間はずれにしようとかそういう意図はなかったのに

――絶対にハブられたとか思ってるのよー

そうでなければ、こんなにイライラした洋榎は見たことがない
どんなときでも自信に溢れていた打ち筋が、今はすっかりと息を潜めていた

でも、そうじゃないとは、それは勘違いだとは、今この場では言えない
このクラス対抗戦は学校中に中継されてる
いまここで打っている様子は牌譜に起こされたり、映像も記録として残されることになる

そんなところでうかつに、代行にレギュラー外すと脅されましたなんて言えないのよ

あとで話せば、洋榎も分かってくれる
いまはそう信じるしかない
そして信じているからこそ、私は自分のクラスのことに集中できる



去年の部活対抗戦、私が次鋒で洋榎が中堅だった
その時は、アーチェリー部の先鋒が照で、次鋒に回ってきた時にはもうどうしようもないくらいの大差がついていた
それでも、洋榎は笑いながら言った

「うちがなんとかしたるから、由子は好きに打ってこい」

それがどんなに心強かったか・・・
結果的にはアーチェリー部が優勝したけれど、次鋒戦と中堅戦はサッカー部が区間賞を取った
それは、今でも誇りに思うこと

583: tell you that I love ...(8-3) 2012/10/16(火) 21:50:21.68 ID:WIk/QDet0

洋榎、あなたの背中を守ってくれる人はクラスにいるの?
結局竜華も石戸さんも、心の一番奥底では信頼してないから一人で気が焦ってるのよ。自覚はないと思うけれど・・・

3年2組がバラバラなのは傍から見ても明らかだった
ただ部長という括りで集められただけ
船頭多くして船山に上るが如しなのよ・・・

個々に強いから、決勝に来るまでにまとまりがなくても良かったのだろうけれど・・・


それに引き換え、照の考えたオーダーはほんとによく考えられていると思う

前の3人は防御に徹すればそこまで失点はしない。そして、照にさえ繋げばなんとかなるという安心感がある
唯一の不幸は、怜が神代に当たってしまったことくらい
そうでなければ、怜も無難に中堅戦をこなしていただろう

3人でつなぐ体勢を整えられたからこそ、宮永照が比較的戦力の手薄になる副将に座り、一気に稼ぐことが可能になった
普通に先鋒にオーダーされていたら照のマークは厳しくなるし、残ったメンバーは逆にプレッシャーを感じてしまったかもしれない

そしてその照も、大将の豊音を信頼している
でなければ、自分が大将に座って豊音をもっと前に出しただろう

3年1組は照が指揮者になって、クラスの調和をとっている
でも、3年2組は指揮者しかいない・・・・そこに旋律は生まれない

――ごめんね、洋榎

敵として対局している以上、今は心の中でそう思うことしかできなかった

――でも、大丈夫なのよ

周りが思うほど、私は事態を深刻には捉えないことにした

――あくまでレギュラーを外すと言われただけ。部活を辞めろとは、言われてないのよ

私は、自分がサッカー部ではギリギリでレギュラーになっているのは自覚している
エースの洋榎や、司令塔として外せない恭子とは違って

だからこそ、自分も外せない存在になってしまえばいい

そんなに簡単なことではないけれど、部活を辞めてしまえば可能性は無いけれど幸いにも部活は続けていいのだから

――夏の大会には、間に合わせてみせるのよー

だから今は、3年1組のメンバーとして全力で打つだけ

「ツモ、6200オールなのよ」

本当はこんな出方じゃない方が良かったけれど・・・


クラス対抗戦に出られて、本当によかった



中堅戦終了(収支は後半戦のみ)

真瀬由子(3-1)   48500(+22800)
愛宕洋榎(3-2)   93800(-18000)
神代小蒔(2-10) 129300(-27500)
原村和(1-5)   128400(+22700)

604: tell you that I love ...(8-4) 2012/10/20(土) 23:16:16.77 ID:uycWguwY0
-side 照-

豊音と鹿倉さんには教室に戻ってもらうことにして、私は保健室へと向かった

その途中、見覚えのある人物とすれ違った

「あれ、愛宕さん?」

昨日副将戦で戦った、愛宕絹恵さんだった

「あ、チャンピオン・・・」

ひどく落ち込んでいるようだった
ああ、また私はこうやって麻雀で人を傷つけていくんだろうか

それにしても、どうしてこんな所にいるんだろう
今は2年10組が戦っているわけだし、3年2組の中堅は彼女の姉のはずだ。こんな所にいないで、応援しているのが普通だと思うけれど

「もうすぐ、中堅戦の後半が始まるよ?」

中堅戦が中断していたから、どこか買い出しにでも行く途中だったのかもしれない

「あ、ありがとうございます」

そう言うと、小走りに去っていく
そういえば、保健室の方から来たような・・・

まあ、いいか

保健室に着くと、なぜか戒能先生と宥が扉の前の長椅子に腰掛けていた

「どうしたの?」
「あ、照ちゃん。ちょっと2人きりにしてくれって、竜華ちゃんに言われて」
「こうして、お邪魔虫は退散しているわけです」

今、怜が誰と一番一緒にいたいかと問われれば、清水谷さんなのは間違いないだろう

「怜の体調の方は、大丈夫なの?」
「今のところ、問題無いですよ。何かあれば呼ぶように言いましたし」

病人を置いて保健室を出るというのは先生なりに抵抗はあったんだろう

「じゃあ、待ってようか」

私は宥の隣に座った

「照ちゃん、試合の方はどうなったの?」
「由子が出てる」
「え、由子ちゃん?」
「由子も悩んだと思うけど、それでも出るって決めたんだから、私には反対なんてできなかった」
「そっか・・・」
「なにやら、重そうな話ですね?」

戒能先生が長椅子から立ち上がる

「私はどんどん保健室から遠ざかるような運命なのでしょうか?」
「いや、そういうつもりじゃ」
「冗談ですよ」

微笑みを浮かべると、再び腰掛けた
先生が扉の向こうに視線を向ける

「まだ、効果が足りなくて倒れていた方が、幸せだったんでしょうか?」
「・・・え?」
「独り言ですよ」

そのとき、保健室の扉が開いた

605: tell you that I love ...(8-4) 2012/10/20(土) 23:18:25.65 ID:uycWguwY0
「すいません、ありがとうございました」

扉を開けたのは清水谷さん
どうやら用件はすんだようだ

「もういいの?」
「ええ、大丈夫です」
「怜は?」
「待たせてもうて悪かったな。お見舞いしたって」

清水谷さんが体をどける
私が中に入ると、怜はベッドで寝ていた体を起こそうとしていた

「いいよ怜、寝てて」
「ん、大丈夫。それより、試合は?」

対局室にいたときよりは落ち着いているようだった

「由子が出てるよ」
「えっ、由子?」

驚く怜。事情を知っていれば誰でもそうなるだろう

「モニター、つけましょうか」

そう言って、戒能先生がモニターをつけてくれた
場面は、東2局
由子が立ち親だったようだけど、点数は増えていた

「由子、振り込んだん?」
「いや、怜と交代したときに25000点払ってるから、むしろ上がってるよ」

ルールを知らなければ怜が倒れた時よりは点数が減っているのだから、振り込んだと思っても仕方なかった
私は改めて、由子が出るに至った経緯を説明した

「そうか・・・。ごめんな、迷惑かけて」
「怜が無事なら、それでいい」
「でも、由子もレギュラーになれなくなるんやろ」
「それも含めて由子が決めたことだから、私は尊重したい」
「そっか・・・」

怜が俯いてしまう
私だって、こんなことにはなって欲しくなかったけれど・・・
それでもまだ、起こりうる最悪ではないと思うし。由子だってあんなに真剣に、なにより楽しそうにしている

「とにかく今は、由子を応援すること。私たちに出来るのは、それくらい」
「せやな。今の由子なら、大丈夫そうやもんな」

606: tell you that I love ...(8-4) 2012/10/20(土) 23:21:43.95 ID:uycWguwY0
-side 竜華-

怜が倒れた・・・

私のせいや・・・

「ごめんな、竜華。宥姉ちゃん」

宥ちゃんと一緒に怜を保健室まで運ぶ
とりあえずは大丈夫そうやけど・・・

「結局今日もお世話になってもうたね、先生」
「そろそろ専用のベッドを発注しようか迷うところです」
「ええなぁ、ふかふかのにしてや」
「ノーウェイノーウェイ」

冗談を言いながら、怜は自分でベッドに潜り込んだ
そして毛布を頭からかぶった

「棄権になるんかな・・・」

毛布でこもった声は、震えていた

「100点でもええって言われとったのに、それすらできんとか・・・・最低や」
「怜・・・」
「私なんかが出たら、あかんかったんや」

泣いとるんか
怜、ほんま・・・ごめんな・・・

「先生、宥ちゃん、悪いけど二人きりにせてくれへん?」

先生と宥ちゃんが顔を見合わせて、頷いた

「何かあったら呼んでくださいね」
「怜ちゃん、あんまり落ち込まないでね」

そう言って、二人はすぐに出て行ってくれた
ありがとうな

「なあ、怜」
「なに?」

あやうく聞き逃しそうなくらい小さな声

「怖かったか、神代に変なもん見せられて」

毛布の上から怜の背中をなでる

「・・・竜華。オーラスに助けてくれたの、ほんまに竜華?」
「ほんまやで。ごめんな、すぐに助けてあげれんくて」
「なんで?」

怜が毛布から顔を出した
涙ですでにぐちょぐちょになっていた

ほんまに怖かったんやな、怜
そんで、悔しいんやろうな

ごめんな、ごめんな・・・・
こんな思いさせて、ごめんな

「なんでそもそも、助けにこれたん?」
「・・・怜、今まで言わへんかったけど」

ひと呼吸置く
臆病な私の、告白が始まる

「もともと、怜の1巡先を見る力、私のものやったんや」
「・・・・え?」

607: tell you that I love ...(8-4) 2012/10/20(土) 23:26:42.83 ID:uycWguwY0
-side 怜-

「もともと、怜の1巡先を見る力、私のものやったんや」
「・・・・え?」

私の頭は真っ白になった
こんなときに、なんの冗談?

でも、竜華は真剣な目しとる
それに、こんなときにそんな面白くもない冗談、言うはずあらへん・・・

「何言うてんの?」

それでも私の口から出るのは、否定の言葉

「中学校から怜と知り合ったけど、1年の時私すごく弱かったやろ?」

竜華は構わず話を続けた

「そうやな、1年の時は私の方が強いくらいやったわ」
「でも小学生の時は強かったんやで。小3のときに、1巡先が見れるようになったんやから」
「・・・・ほんまに、ほんまなん?」

冗談を言うとは思えへんけど、それでもすぐに信じろと言われて信じられる話でもなかった

「ほんまや」
「だって、今までずっとつきおうてきて、そんなこと一回も言ったことあらへんやん」

竜華は首を振る

「だって、誰にも言ったことあらへんもん。今でこそ、この学校とかいろいろ特殊な打ち方する人たくさんおるけど、小学校の時はそんな人おらへんかったから、よう言わんかった」
「でも、中学の時は? 中学の麻雀部にもすごい人おったやん」
「そのすごい人に、私は未来視を封じられた」
「え・・・あ・・・」

私たちが1年の時の部長が飛び抜けて強かったのは覚えてる

「塞ちゃんみたいな感じやな。でも、未来が見えなくなった私はすごく弱くなった。そりゃそうやな、未来が見えて当たり前やと思っとったんやから」

そうやな・・・・
未来が見えなくなって、私は完全に戦意を喪失した
それと同じことを竜華も味わっとったんか

608: tell you that I love ...(8-4) 2012/10/20(土) 23:28:29.84 ID:uycWguwY0
「部長が卒業した時に、私に言ったんや。勝手に封じてごめんね、封印は解くから、もう好きに使っていいよってな」
「なんでそんな流れになったん?」
「力に振り回されてろくなことにならないって、私が入部した段階で思ったらしい。ほんと、すごい人やで」
「え、じゃあ今まで未来が見えとったん?」
「見ようと思えばな」

竜華は小さく首を振った

「でも、中学の時の1年間で思ったんや。未来が見えなくても、強くなりたいって。ほら、ちょうどセーラがすごく強かったやん」
「せやな・・・。ダントツやったもんなぁ」
「補助輪がないと自転車乗られへんみたいで、カッコ悪いって思ったんや」
「そうか・・・」

じゃあ私は、なんやったんやろう
未来が見えて、補助輪付きで自転車乗れて自慢しとっただけやったん?

「去年の秋に、怜が倒れたやろ?」
「それからやな、私が未来が見えるようになったの」
「逆にそのときから私は、どんなに頑張っても未来が見えんくなっとった」

あの頃の私は、もう麻雀に見切りつけようかと思ってた
打つのは楽しいけど、竜華やセーラにはぜんぜんかなわへんし・・・

ただ楽しめればいい

強くは、なれない・・・・

そう思ってた矢先に生死の境を彷徨って
未来が見えるようになっていた

「怜が未来が見えるようになったって言ったから、私の力は怜のところへ行ったんやって思った」
「私が未来を見て、カッコ悪いとか思わへんかったの?」

こんなの八つ当たりだと分かっても、聞かずにはいられなかった

「よく分からへんかった、そんな力に頼るなって言うべきなんかどうか・・・・。怜、すごく嬉しそうやったから」
「嬉しかったよ。これで竜華やセーラと肩を並べられるなって・・・」
「ごめんな。こんなことになるんやったら、ちゃんと言わなあかんかったんや」

竜華が悪いことなんて、何一つないのに
補助輪に例えるから悪いイメージになるだけで・・・

どんなに便利な道具も、使い方を誤れば大怪我をする
ただ、それだけのことや

「急に色々言われて混乱しとるんやけど・・・」
「ごめん・・・」

しょぼんとする竜華
神代と相対したときはあんなにかっこよかったのに

まあ、そんなところも全部ひっくるめて

竜華がいらなかったこの未来視も含めて・・・

「ありがとな、竜華」
「・・・・え?」

609: tell you that I love ...(8-4) 2012/10/20(土) 23:29:57.17 ID:uycWguwY0
-side 竜華-

「ありがとな、竜華」
「・・・・え?」

怜の微笑みは今まで見てきた中で一番、綺麗やった

怜が上半身を起こすと、私の目をじっと見つめた

「竜華にはいらなかったかもしれんけど、私にはこの未来視は必要やったよ」
「怜・・・」
「未来視が無かったら、私はもう麻雀諦めてた。あの冬の個人戦も、このクラス対抗戦も、私はただ眺めとるだけやったと思う」
「でも、神代に・・・」
「だから未来視で竜華と繋がっとるって、わかったんやろ。最高やん」

つながり・・・

ずっと言いたくて言いたくて、言えなかったこと
自分のせいで、怜に辛い思いをさせてるんじゃないかって
辛い思いをさせるんじゃないかって

ごめんな、ごめんな・・・・
そう思うだけで、私は何もしてこなかったのに・・・

それでもええって、言ってくれるの?

「竜華が気に病む必要なんて、あらへんからな」
「怜っ!」

もうこのぐしゃぐしゃの感情が抑えられなくて
私は怜を抱きしめていた

「竜華・・・」
「怜・・・」

怜の腕が私の背中に回る
その力が強くなるのを感じて、私は躊躇する

「強くても、大丈夫なん?」
「そんな気遣い、いらんよ・・・」

怜の囁きが、私のリミッターを外す

強く、強く・・・

「竜華、やっぱり痛いわ」
「ごめんっ」

ああもう。だから聞いたのに!
私は慌てて怜から離れた

「なんや、締まらんなぁ・・・」
「ほんまやね・・・」

お互いに笑い合う
しばらく見つめ合って、今度は怜が私を抱き寄せた

怜の息遣いが、耳をくすぐる

「なあ竜華」
「・・・何?」
「ありがとな・・・・愛してるで」

思わず強く抱きしめそうになるのを耐えた
そんなん耳元で言うなんて、反則やわ

今度は痛くならないように、そっと怜を抱きしめた

「私もやで」

この静寂が、私たちの時間を緩めていく

なあ、怜・・・
どんな未来が見えようと、私たちは望む未来へ進んで行こうな

612: tell you that I love ...(8-4) 2012/10/21(日) 12:49:42.03 ID:ia4+5Xbs0
-side 由子-

「洋榎」

対局が終わり、私はすぐに洋榎に声をかけた

「うちは用なんてあらへん」
「私はあるのよー」
「うちには無い!」

ああもう、完璧にこじれちゃったのよー

「洋榎ー」
「ついてくんなや」

対局室を出ていく洋榎を追いかける
ついてくるなと言われても無理な相談なのよ

何度も呼び止めても完全に無視されてしまう
はあ、これはちょっと予想外なのよー

「洋榎、由子!」

私たち二人を呼び止める声に、洋榎も立ち止まった
そこには恭子が腕組みして立っていた
なんか眉間にしわを寄せてるけど、きっと洋榎に対して怒ってるに違いないのよ

「恭子、洋榎が私のこと無視するのよー」
「恭子、お前までうちのことハブってんやないやろうな!」
「恭子、洋榎にガツンと言ってあげてほしいのよー」
「恭子、由子にガツンと言ってやれや。宮永なんぞに相談できてなんでうちに相談せんのやってな」
「恭子!」
「恭子!」
「うっさいわ、黙らんかい!」

ええぇ、あの恭子がキレたのよ・・・
その対象は、私だった

「由子、お前なんで対抗戦に出とるねん! なんのためにこっちがいろいろ気まわしたと思っとるねん」
「あの場面で出ないと後悔すると思ったのよー」
「こっちの後始末も考えや! まったく、代行とバトルせなかんやんか!」
「その、ごめんなのよ」

代行とバトル??
恭子、もしかしてレギュラー剥奪を撤回させようと思ってるの?

今度は洋榎に向かって恭子がキレた

「洋榎、お前もや。なんやあの腑抜けた打ち筋は、それでもうちらのエースか!」
「そやかて由子が」
「問答無用や! 卓についたなら麻雀のことだけ考えや」
「あ、すいません・・・」

そこで恭子が大きく息をついた

「とりあえず、久々に3人で飯食おうや。洋榎には話しておかなかんことあるしな」
「あ、ああ。せやせや、結局由子はなんやってんな」
「その件についてはエクストリーム土下座の用意はあるのよー」
「それは大事やな」

そうして3人で腹を抱えて笑った

「なんやもう、あほらしいわ。はよ飯食いに行こか」

613: tell you that I love ...(8-4) 2012/10/21(日) 12:52:03.85 ID:ia4+5Xbs0
「はぁ、代行に脅された?」
「そうなのよー」
「だったらなんでうちに言わへんのや! すぐにでも代行のところに殴り込んだったのに」
「そう言うと思ったから相談できなかったのよー」
「あ、すいません・・・」

と言いつつ、洋榎は手元のたこやきを口に運んだ

「東京の屋台にしては、このたこやき旨いな」
「それはなによりや・・・」

恭子が呆れ顔で言う。そしてため息をついた

「さて由子、アレやるか・・・・」
「なのよー」
「お、待ってたで」

学食でやるのはなかなか勇気がいるけれど、洋榎に心配かけたのは間違いないこと
恭子と二人して、学食の端っこまで移動する

「洋榎ーーー」

思いっきり叫び、洋榎まで全力疾走

「すいませんっしたーーーーー」

そのままの勢いで洋榎の足元で土下座

サッカー部名物、エクストリーム土下座
できるだけ派手な演出で土下座をし、許しを請う
これをもって全部水に流す、それがサッカー部のしきたりなのよ

「よっしゃ、この観衆の中、見事なエクストリーム土下座や。感動したっ」
「はあまったく、3年にもなってこれやる羽目になるとは思わんかったわ」
「なのよー」

周りがざわついているが、私たちがサッカー部だとわかると納得の視線になる
まだ慣例になっているからいいけど、やっぱり恥ずかしいのよー

「ま、これでいままでのことはチャラやな。で、実際のとこ、これからどうすんねん」

再び席につくと、恭子が少し難しい顔をする

「由子が対抗戦に出てもうたからな。正直、事態がどう転ぶかよく分からへん」
「ごめんなのよー」
「まあそれはもうチャラやからええけども。とりあえず様子うかがってみるしかあらへんな。3年1組の勝敗によっても、こっちの動きは変わる」

もともと代行が動いたのは3年1組を負けさせるため
なら私が出ても、結果3年1組が負けたのならお咎めなしの可能性はある
逆に勝ってしまったら?

「まあ、そのへんのややこしいことは恭子に任せるわ。荒事になったら任せとき」
「そうならんことを祈る・・・」

614: tell you that I love ...(8-4) 2012/10/21(日) 12:53:53.75 ID:ia4+5Xbs0
-side 憧-

「よっし、行ってくる!」

昼休みも終わり、とうとう副将戦
相手はあの、宮永照
無事で済むわけがない

でも私たちの大将は、淡だ

「淡、玉砕してくるからあとは頼んだ!」
「大丈夫、任せて安心だよ」

1位を走る玄たち2年10組との点差は僅かに900点
逆に3年1組とは約8万点差

ここまでは理想的な展開
私でぶち壊すわけにはいかないっての

「憧ー、頼んだぞ!」
「憧、平常心です」

しずと和も声援を送ってくれる
そんな中、咲が少しうかない顔をしていた

「咲、どうしたの?」
「憧ちゃん、思い出したことがあるんだ・・・」

咲は、少し震えていた

「お姉ちゃん、この点差だからいつも以上に全力で来ると思う」
「そりゃそうよね。そのくらい織り込み済みだって」
「だから、もし卓が軋む音がしたら気をつけて」

卓が軋む?

「どういうこと?」
「私も1回しか見たことないんだけど。お姉ちゃんの連荘を止めてもうお姉ちゃんの親がない状態で、いつもみたいに1000点から上がっていたらお姉ちゃんは勝てないって状況の時があったの」

たとえば南3局が照さんの親で、親が流されてオーラス1000点だけ上がっても逆転不可能という、そんな状況だったのだろう

「そのとき、卓が軋む音がしたの。ギギギーって」
「なにそれ、故障?」
「私も初めはそう思ったけど。その局、お姉ちゃんはいつもとは全然違う打ち方で倍満をあがったの」
「・・・いきなり倍満?」
「うん、それでお姉ちゃんの逆転」

連続和了だけでも厄介だってのに、まだそんな奥の手があるって言うの?

「テルにそんなのあるなんて聞いたことないよ?」
「先生はどうなんですか?」

淡が驚き、しずがハルエに話を振る
ハルエも首を振った

「去年のクラス対抗戦で、私が憩と衣の担任だったとき。1回だけ、憩に対して不自然な上がりはあった。でもそれが何なのか、私にも分からない。多分滅多に出さないような、奥の手なんだろう」
「そう・・・」
「ただ、その1回もオーラスだった。そのとき卓が軋んだかどうかは、私には分からないけどね」

でもま、そんな奥の手があるって分かってるだけでも収穫
対局中にいきなりそんなの出されたら、対応できるかどうか分からない

「ありがとね、咲。気をつけるよ」
「うん、がんばって」

みんながここまで繋いでくれた
ここまで来て負けるわけにはいかないっ

そして、咲に勝つ喜びを教えてあげるんだ
一人一人はそんなに強くなくても、みんなで力を合わせれば勝てるって

619: tell you that I love ...(8-4) 2012/10/22(月) 01:35:13.81 ID:ZlXuH6JB0
-side 憩-

中堅戦が始まってから、絹ちゃんの姿が見えない

「どこ行ってもうたんやろうねぇ・・・」
「昨日の宮永さんとの戦いがこたえるのかもしれないね。私もしばらくは落ち込んだし」

私の隣には玄ちゃん
昼休みになっても絹ちゃんは教室には戻ってこなかった

それぞれ手分けして探しているところ
私たちは保健室に向かっていた。戒能先生とは医療関係についてよく話をする

「なんもなければええけど、もう昼休みも半分切ってるしなぁ・・・」

中堅戦の園城寺さんのように公式に認められる理由であれば交代要員も出せるけれど、ただいなくなったでは通らない
開局時間から5分遅れればそれで棄権となる

初めから休みやったんなら分けるけど、次鋒戦までは一緒に応援しとったんやからな・・・

保健室に着くと、そこにいたのは戒能先生と、

「いくのん先生、こんなところで何してはるんですか?」
「憩ちゃんや。ちょうどよかった」

にへらとしまりのない笑みを浮かべて、赤阪先生は1枚の紙を差し出してきた

「絹ちゃん、体調不良で午後は休みになったんよ~。これを煌ちゃんに渡してくれへん?」

渡されたのは、戒能先生の署名が書かれた病欠の証明書
これを大会委員長の煌ちゃんに渡せば、誰かに交代するのは可能になる

でも、どうも納得いかん・・・・

「・・・でも、中堅戦が始まるまでピンピンしてましたよ?」
「本人もそう言っていましたが、中堅戦が始まったくらいに保健室に来て体調が悪いということでしたので、寮へ帰るように指示しました」

質問に答えたのは戒能先生
・・・そんな体調が急に悪くなるようには見えんかったけど。絹ちゃん、サッカー部やから体は鍛えとるはずやし

「え、じゃあ絹恵ちゃんの代わりはどうするんですか?」
「漫ちゃんでどーやろか。絹ちゃんよりもランク低いから、由子ちゃんみたいに点棒出さんでもええしな」

玄ちゃんはあっさり信じとるのか、もう赤阪先生と交代の話をしている

「じゃあ、今度は漫ちゃんを見つけて話をしないといけないね」
「せ、せやね・・・」

どんなに納得できなくとも、ここに病欠の証明書がある以上、交代要員を確保しないといけないのは確定事項
2年10組のリーダーは私だから、私が交代を告げに行かなければならないわけやし

「玄ちゃん、ちょっと外で漫ちゃんに電話してもろうてええ?」
「うん、わかったよ」

玄ちゃんにひとまず外に出てもらう

620: tell you that I love ...(8-4) 2012/10/22(月) 01:36:50.81 ID:ZlXuH6JB0
「赤阪先生」
「どうしたのー、急に改まって?」

ひと呼吸置く
いまさら覆すことはできないのだろうけれど、せめて一矢報いておきたかった

「絹ちゃんは、納得しとるんですね?」
「納得もなにも、体調不良やって。なー、良子ちゃん」
「ええ。そうですよ」

戒能先生も平然と返事をする。その視線は、まっすぐと私に向かってきていた。一応、納得はしとるのか?
もし無理やり休まされたとかやったら、多分先生は視線を逸らしたり泳がしたりしとると思う

「ええです・・・。漫ちゃんに代打断られた場合の交代要員については、私に一任してもろうてええですね?」
「時間あらへんしな、憩ちゃんの人選にお任せやー」
「わかりました」

まあ、漫ちゃんは断らんと思うけども・・・

「憩ちゃん、漫ちゃんOKだって!」

外で電話してもらっていた玄ちゃんが保健室に戻ってきた
OKか・・・

それでも、私個人としては、絹ちゃんに頑張ってほしかったけどな・・・
いまさらどうこう言ってもしゃーないけども

「じゃあ、絹ちゃんに代わって漫ちゃんってことを私が言いにいけばええんですね?」
「よろしくなー」
「じゃあ行こか、玄ちゃん」

確かに相手は宮永照
そして昨日の絹ちゃんはまったく通用してへんかった。オープンリーチは確かにすごかったけれど、そう何回も使える手ではない

だったら、漫ちゃんの爆発に賭けてみたくなる気持ちも分からんではない
それでも・・・

――これでええの、絹ちゃん?

621: tell you that I love ...(8-4) 2012/10/22(月) 01:37:47.97 ID:ZlXuH6JB0
-side 照-

昼休みになり、怜はひとまず保健室から教室に戻っていいことになった

「毛布と枕は持っていっていいから、応援中は横になってなさい」

といって戒能先生が寝具を一式貸してくれたようだ
由子が戻ってきていないけど、サッカー部の人達と話すのでと塞のところにメールが来たらしい
なので残りのみんなでご飯を食べることにした

「こちらの教室は賑やかでいいな」

そう言って教室に入ってきたのは、菫だった

「あれどうしたの、菫?」
「愛宕は戻ってこないし、石戸も大将戦に向けて準備があるから部室の方へ行くらしくてな。福路も部室の方へ行くそうだ。だからもう2組にいてもしばらく誰もいないんだよ」
「そう・・・」

これで教室には、美術部の5人が全員、怜と清水谷さんと途中でお見舞いに来た江口さん、宥、菫、そして私を含めて11人になった

「じゃあ、副将戦の時もここにいる?」
「できればその方が退屈しなくて済む。愛宕も、真瀬のいるこちらの教室の方が居やすいだろうしな・・・」
「あー、なんか、ごめんな」

清水谷さんが手を合わせて小さく頭を下げた

「清水谷は悪くないさ・・・。それに、今日が終わってしまえばこんなぎこちない空気もなくなるだろうからな」

本来ならクラス対抗戦は親睦を深めるために行われていることなのに、なんだか悲しい・・・
でもそれも、あと副将戦と大将戦を残すだけ
勝っても負けても、それで終わり

本当は咲のことを宥から聞こうと思ったけれど、とてもそんな雰囲気ではなさそうだった
それに、宥が悪いようにはなってないと言うのだから、今はそれを信じよう

怜のこととか
由子のこととか
中堅戦でいろいろありすぎて、咲の話を今聞いてもあんまり落ち着かないかもしれないし

とにかく今は、副将戦のことを考えよう
由子が持ち直してくれたとは言え、トップまでは8万点差はある

・・・アレ、使うしかないかもな

正直、使いどころが難しいからあまり使いたくないのだけれど


――苦戦の、予感がする

658: tell you that I love ...(8-5) 2012/10/30(火) 00:42:23.78 ID:46QsH+Kc0
-side 照-

-クラス対抗戦 決勝副将戦直前
-廊下

私は清水谷さんと一緒に、対局室へ向かって廊下を歩いていた

「宮永さんと打つの、久しぶりやな」
「そうだね。去年の部活対抗戦のとき以来」

確か準決勝でソフトボール部と当たり、その先鋒が清水谷さんだった

「清水谷さん」
「ん、なに?」
「怜、大丈夫だった? ほんとのところは、清水谷さんにしか打ち明けないだろうから」

すこし思案顔をし、清水谷さんは微笑んだ

「その前に、その清水谷さんっての、やめにせん?」
「え?」
「呼びにくいやろ、正直自分でも長ったらしい名字やなぁ思っとるし。怜みたいに、呼び捨てでええんやで?」
「そうだね・・・竜華」
「ん、それで」

竜華がひとつ頷き、

「怜のことなら、心配いらんで。あんなことにはなってしまったけど、クラス対抗戦に誘ってくれた照に感謝しとったくらいや」
「感謝・・・」
「怜も、クラス対抗戦出るの初めてやしな」

未来視があってようやくランクが上がってきたばかりの怜
だから、今まで対抗戦に呼ばれることもなかったんだろう

「そう・・・。でも、怜がまた倒れてしまわないように、できるだけ配慮したつもりだったんだけど」
「あれはしゃーないよ。神代以外やったら多分怜は倒れとらん」

神代小蒔、か
神社の関係で神様と関わりがあるとかないとか聞いたことはあるけれど、実際に直接対局したことがないので本当のところはよく知らない

「ま、とにかく怜は大丈夫や。だから、お互い気兼ねなく打とうな」
「そうだね。悪いけど、手加減はできないから」
「いきなり本気にならんといてや」

そうこうしているうちに、対局室に到着した

卓についているのは一人

「照さん、よろしくね」

既に場が決まっているのか座っていた新子さんだったが、立ち上がってぺこりと頭を下げた

「うん、よろしく」
「よろしくなー」

竜華も軽く頭を下げ、牌を引いた。引いたのは北、新子さんの対面
私も牌を引く。引いたのは東。竜華が上家、新子さんが下家

残る席に座るのは――

659: tell you that I love ...(8-5) 2012/10/30(火) 00:44:27.12 ID:46QsH+Kc0
「すいません、失礼します」

なぜか対局室に入ってきたのは、荒川さんとショートカットの子だった
あれ、愛宕さんじゃないの?

「煌ちゃん、悪いけど選手交代をお願いするわ」
「絹恵さんはどうされたのですか?」

花田さんが審判席から立ち、荒川さんのもとへ向かう
荒川さんが差し出した、1枚の紙。ここからでは細かい内容までは分からないけれど、花田さんがその紙を見ると、ため息をつく

「戒能先生のサインが入った、病欠証明書ですか・・・」

え、病欠??
中堅戦の途中で会った時には、病気には見えなかったけれど・・・
あれから体調を崩したんだろうか

「うん、そういうわけなんよ。だから絹恵ちゃんに代わって、漫ちゃん。ランクは漫ちゃんの方が下やから点棒は出さんでええんよね?」
「ええ、分かりました。絹恵さんは、大丈夫ですか?」
「多分な、うちも直接見とらんから・・・」
「そうですか・・・」

証明書を受け取ると、花田さんはどこかへと電話をかけ始めた
それを見て、荒川さんと上重さんがこちらにやってくる

「というわけで申し訳ないんやけど、選手交代で漫ちゃんが入るんで、よろしくお願いします」
「漫ちゃんと打つとは思わんかったわー。サッカー部ではずいぶん可愛がられとるみたいやん」
「あれはかわいがりレベルですよ、ほんまに・・・」

竜華は知っているのか、随分親しげだった
そういえば、サッカー部とソフト部は結構仲が良いって怜から聞いたっけ・・・

「上重漫です。よろしくお願いします」

一礼して、卓に付く上重さん

荒川さんが、私の方を見てにっこりと笑顔を浮かべた

「先鋒で戦いたかったで、チャンピオン」
「それは、悪かったね」
「ま、その分は漫ちゃんにきばってもらうさかい。うちの漫ちゃんを甘く見ると、痛い目にあうで」
「ちょ、ハードル上げんといて!」

そこに花田さんがやってきた

「お待たせしました。場外にも選手交代の説明が終わりましたので、対局を開始しましょう」

「よろしくお願いします」

全員の声が重なる

いよいよ、始まる・・・
親決めのサイコロが回りだした


副将戦、開始

東 宮永照(3-1)    48500
南 新子憧(1-5)   128400
西 上重漫(2-10)  129300
北 清水谷竜華(3-2)  93800

667: tell you that I love ...(8-5) 2012/10/31(水) 02:18:26.31 ID:vnvvxB380
-side 漫-

-クラス対抗戦 決勝副将戦
-東1局
-親 宮永照
-ドラ 白

配牌:三三四⑥⑦⑨1234白白北

配牌3シャンテン、ドラ対子。まずまず・・・

それにしても、いきなりこんな大舞台で打つことになるとは思わへんかった
先生から、サッカーと同じく漫ちゃんスーパーサブやからちゃんと備えといてやとは言われとったけども

「チー」

上家の1年生、新子さんが鳴きを入れる
ここに来るまでに憩ちゃんから聞いていた情報通りの、速攻鳴き麻雀

清水谷さんと直接打ったことはないけれど、概ね部長並みと思っていれば間違いないだろう

そして、宮永照・・・

東1局だけ様子見して、その場でその人の打ち筋を全て見抜いてしまうらしい
そんなの反則やろと思うけども、それが現実

――1位キープとか、そんなん考えんでええからな。とにかく生き残ること、それだけや

最後にくれた憩ちゃんからのアドバイス
2年10組の大将に控えているのは、天江衣。味方なら、こんなに頼もしいことはないんや

いったるっ

「チー」
「ロン!」

うそん・・・

いきなり新子さんに3900の振り込みで、2位転落

そして、

ゾクゾクゾク

全身を悪寒が走る
冷たくて透明な針が、何千と体を突き抜けていくような感覚
これが、見透かすっていうやつなん?

こんなんと、ほんとに戦えるん・・・・
対面に座る宮永照の眼光は、獲物を狙うハンターそのものだった

668: tell you that I love ...(8-5) 2012/10/31(水) 02:19:38.16 ID:vnvvxB380
-side 照-

-東2局
-親 新子憧

鏡に映るのは、その思考、打ち筋
どういう場面でどのようにうち回してきたのか
どういうときに特殊な打ち方をするのか

その膨大な情報が一気に映し出され、瞬間に理解する


――清水谷竜華
――攻守とも堅実、ただし精神状況によって牌勢が大きく左右される。現在、7段階でレベル7(最高状態)

――上重漫
――攻守ともにまだ発展途上。ただし対戦相手の強さや調子の良さが上がるほど、自身の調子・火力が上昇する

――新子憧
――速攻重視。鳴き三色、鳴き一通も積極的に使用、火力は低いが失点も少ないアベレージプレイヤー


竜華がレベル7か。確か前に対戦したときは、レベル5だったかな。あの時よりもさらに調子がいいということ
そして竜華が最高状態ということは、それに引きづられて上重さんの調子も上がっていくと見ていい

それを防ぐには・・・
悪いけど、新子さんを叩くしかないか

上重さん自体を叩いても、新子さんの調子が上がれば上重さんの調子も上がってしまう。戦意を喪失してくれればそれでもいいけれど、それでも子が上がれば戦意復活ということもありうる
だからやはり、狙うなら新子さんだろう
菫みたいな狙い撃ちは、得意ではないけれど

「ツモ、500、300」

まずは自分の親まで引き寄せる
東1の立ち親を捨てているから、南1局でできるだけ稼ぎたい

その後、東3、東4と連続で上がり、南場の親を迎えた

669: tell you that I love ...(8-5) 2012/10/31(水) 02:21:24.36 ID:vnvvxB380
-side 憧-

-南1局
-親 宮永照
-ドラ 北

ここまではやられっぱなし
でも、この親だけは全力の全力で流すっ

「ポン」

副将宮永照と知ってから、学校内の牌譜は徹底的に調べた
少しでもいい、隙があれば見つけたい
隙がなくても、これまで照さんと戦ってきた人達がどういう戦いをしてきたのか分かれば対策も見えてくるかもしれない

藁にもすがるような気持ちで、ハルエにも協力してもらって牌譜をあさった

結論、私が目指すべきは――

審判席に座るあの人、花田煌

「チー」

2副露。最初に中が鳴けたから、1000点でいいからとにかく流す

手牌:六六七①①③⑤ 中-中中 8-79

そう、玄とあの花田さん、園城寺さんが戦った冬の個人戦の牌譜

かなり無茶な形から、それでも花田さんは鳴き続けた
照さんにできるだけツモを回さないようにポン材をとにかく抱えながら

完全に同じことをしようとは思わない。鳴き仕かけはチーの方が得意だしさ
でも、ツモ順を飛ばせるポンは照さんが親の時は重視すべき

竜華 打:六

「ポン!」

3副露。これだけ鳴いて、待ちがカンチャンとか・・・ひどい話だわ

手牌:①①③⑤ 中-中中 8-79 六-六六

でもこれでとにかく張ったっ
ここからは、全ツッパで行くしない


-side 竜華-

新子さん、やるなぁ・・・
1年生で、しかも相手が宮永照であそこまで鳴き続けるのはなかなかできへんことや

手牌:一一五七③④⑨135東西北

でもな、私も今日はすこぶる調子がええねん
いままで怜に対して抱え込んでたもんが、一気に解放されたおかげかもしらんな

だから、だいたい分かるで。新子さんのほしいところ

打 ④

670: tell you that I love ...(8-5) 2012/10/31(水) 02:22:46.09 ID:vnvvxB380
-side 憧-

「ロン、中のみ1000点」

六萬に続き、④ピンもあっさり出てきた

これって、差し込み?

わーいラッキーと簡単に思うほど、私は楽観視はしない
多分、清水谷さんの手牌はボロボロのはず。そんな中、的確に照さんの親を流す手を打ってきた・・・

照さんにばかり気を取られていたら、いつの間にかいいとこどりされてる可能性だってある

ま、でもとにかくこれでこの半荘の照さんの親は流れた。次の半荘に入れば、また点数はリセットされるんだから、あと3局連続和了されてもそこまでのダメージはない

と、思っていた



ギギギー



「え・・・・」

これが、咲の言っていた、卓の軋む音?
オーラスだけじゃなかったの??

私は慌てて照さんを見る

先程まであった威圧感が嘘のように、照さんは項垂れていた
髪が垂れ下がっていて、表情は見えない

まるで、空っぽの人形になったみたいに、じっと動かない
そこにいるのは分かっているのに、気配がまるでなかった

「あの、照さん?」
「ああ、すまない」

ゆっくりと顔を上げる照さん
そこに張り詰めた気配はなくて・・・・

「いきなりか・・・・」

照さんのつぶやく声は、ほとんど聞き取れない
ゆっくりと底冷えしてくるような、そんな見えない恐怖があたりを包み込んでいるようだった

「ごめんね、宥」

宥姉の名前を呼ぶ声は、ひどく震えていた

673: tell you that I love ...(8-5) 2012/11/01(木) 23:58:06.62 ID:s/CNYacO0
-side 憧-

-南2局
-親 新子憧
-ドラ ⑨ピン

照 捨て牌:④②白東西

憧 手牌:一一二二四五六六八九77北

うーん、すんごい萬子に偏ってるけど、照さんが全然萬子出してくれないし・・・
これ、照さんも萬子の染め手なのかな・・・
いきなりピンズから切ってるし、そのあと字牌だしな・・・

それに、あのギギギーって音

咲もハルエもオーラスだけだって言ってたけど、現にあの音はしたし、照さんの様子が変わったのも間違いない

漫 打:8ソウ

「ポン」

照 打:3ソウ

照さんが鳴く
んー、萬子じゃなくてソウズの染め手?

うーん、自分の親番だけど降りるべきかな・・・・
北は照さんの風だし、7ソウは切れなさそう
4対子あるし、とりあえずチートイ目指して切り回すかな・・・

憧 ツモ:北

あれ、北が重なった・・・
これで照さんと北を持ち合う形になってれば、少しは照さんの手も遅れるかもしれないけど
でも、あのギギギーで、北・混一ってのもどうなんだろうか・・・トイトイやドラを絡めてようやく、跳満になるかどうか

憧 打:九

なんにせよチートイの1シャンテン
場合によってはポンしまくってもいい。トイトイなら3つ鳴いてようやくテンパイだからちょっと厳しいけど・・・

上重さんがツモ切り
清水谷さんがツモ、そして少し手が止まった

「・・・・このへん?」

そう言って切ったのは、一萬
じっと、私の目を見る清水谷さん

鳴けっていうの?
鳴いたらもうトイトイで突っ走るしかなくなるけど・・・

照さんの腕が山に伸びる

――ヤバイ

直感的にそう感じるっ

674: tell you that I love ...(8-5) 2012/11/01(木) 23:59:34.99 ID:s/CNYacO0
「ポン」

憧 打:八

照さんの腕が止まる
清水谷さんが小さくうなづくのが見えた
わかんないけど、多分今の牌は照さんに渡しちゃいけない、そんな感覚

でもこれは照さんは次のツモ順で上がる・・・
ちょっとやそっとずらしても上がられるのは、過去の牌譜を見ても分かってる
もうとにかくポンしまくるしかない

漫 打:二萬

「ポン」

竜華 打:北

「ポン」

憧 手牌:六六77 一-一一 二-二二 北-北北

それでも、一つ鳴くごとに死に近づいているような感覚が強くなっていく
自分の前にはもう牌は4つしか立ってない
自分を守る砦が少なくなったようで、ひどく心細く感じる・・・

上重さんがツモって、切る

漫 打:三萬

違う・・・・
お願い、清水谷さん・・・

清水谷さんのツモに力が入る。けどその力が抜けて、そのままツモ切りした

竜華 打:七萬

おしい・・・

そして照さんが、卓の端を掴んだ

それでも、相変わらず対戦相手を押しつぶすようなプレッシャーはない。そういう見える恐怖ではなく・・・
暗闇で物音がして、何かがいるけどそれが何か分からないような、そんな不可視の恐怖

溜めを作り、一気に右腕が山に伸びていく

「ツモ」

ツモってきた牌は、発
そして・・・・

照 手牌:22334466発発 8-88 ツモ:発

「緑一色。8000、16000」

これが・・・
あの、ギギギーってやつの効果?

・・・・こんなの、どうしろって言うのよっ

675: tell you that I love ...(8-5) 2012/11/02(金) 00:00:12.61 ID:BsqWPXe+0
-side 恭子-
-副将戦開始直前

「なんなら3-1で観戦しよかな。恭子も来たらええやん」

洋榎がそんなことを言い出す

「流石に対戦中のクラスに行くのはまずいんとちゃうの?」
「ええやん、もううち試合終わったんやし」
「午前中も美術部の人たちがいたから今更洋榎が増えても気にしないのよー」

まあ、由子がそういうならええかもしれんな・・・
それに、洋榎の試合が終わっとるのは事実やしな

っていうか美術部って、白望とエイちゃんか。これでセーラと初美がおったら13組が揃ってまうな

1組の教室に着く。松実がいて、怜は毛布をかけて寝転んでいた
美術部の5人が揃っている
そして、セーラはいたが、初美はいなかった。代わりにいたのは、弘世

「なんで弘世がおんねん」
「隣の気まずさはお前も良く知っているだろう?」

洋榎に苦笑を向ける弘世

「石戸は大将戦の準備は部室でするそうだ、着替えてくるんだろう。福路も部活の後輩と観戦するそうだ」
「さよか。まったく、なんでこんなバラバラになってもうたんやろな・・・」
「それも今日までと願うよ」

お互いに苦笑を向け合い、洋榎は空いている席に腰掛けた

「恭子まで来たんかー。これで初美がおったら13組もそろったのにな」
「石戸の手伝いなんかもな」

セーラが笑う
怜が心配で来たんやろうな。竜華は副将戦に出てしまうしな


そして副将戦が始まろうとしていた
けれど、すぐに起きたアクシデント・・・

「は? 絹が病欠? そんなアホなことあるかい!」

そう、絹ちゃんが病欠で、代わりに漫ちゃんが入ると説明された

「なんかの間違いやろ! 朝は一緒に登校してきたんやで」

洋榎が携帯を取り出し、絹ちゃんに電話するが、出ない・・・
代行、まさか絹ちゃんを無理やり病欠扱いにして下げさせたんか・・・

「くっそ。なんやねんな、今日は!」

そう言って、洋榎が席を立ち、教室を出て行こうとする

「どこ行くんや!」
「保健室や!」

慌てて私が追いかけようとしたが、由子が先に教室の外に出る

「恭子はここで見ていいのよー」
「なんでや? 由子こそ応援せなあかんやろ」
「漫ちゃんの試合、見てあげてほしいのよ」

そう言って、こちらの反論も許さず由子が洋榎を追いかけていく

いや、そりゃ漫ちゃんの試合は気になるけども
いくらなんでもこの場面でそれを言い出すのは不謹慎というかなんというか・・・

「ま、由子に任せとき。試合始まるで」

いつの間にか横に並んでいたセーラが、私の肩をポンと叩く
それで、一気に肩の力が抜けてしまう

「・・・そうさせてもらうわ」

仮に絹ちゃんが臆したにしたって、それだけで病欠にはならない
絹ちゃんが倒れたところなんて見たことないし、体は丈夫な方なのは一緒に部活しとってわかっとるつもりや

代行・・・
ここまでして、あんた何を得たいんや

676: tell you that I love ...(8-5) 2012/11/02(金) 00:01:20.16 ID:BsqWPXe+0
-side 照-

南場の親で連荘できなかった
この事実は、重い

新子さんの気迫は良い方向に作用している
空回りしてくれれば良かったが、そうもいかないようだ

そして竜華も、迷わず新子さんのアシストに回った
さすがにレベル7。状況が良く見えている・・・・

そしてこの2人が高まっていけば、今はまだ緊張しているのか手が伸びていない上重さんが爆発するのも、時間の問題
牌を自動卓に流し入れるときに、チラッと見えた

ドラ、北の暗刻

彼女の火力は確実に上がっている
あとは、火薬を着実に貯め込む火薬庫に、いつ火がついてしまうのか・・・

アレ、使うしかないか・・・

決断


私は脱力し、自分の心の奥底へ潜り始めた
深く、深く・・・







「あの、照さん?」
「ああ、すまない」

新子さんの声で、意識が覚醒する
ちょうど、サルベージも完了した・・・


――ロード中........選択完了......
――松実宥


「いきなりか・・・・」

こんな私を見たら、宥は寒がるんだろうな・・・・

「ごめんね、宥」

届きはしないけれど、


――.........reverse


勝つために、今は許して・・・

677: tell you that I love ...(8-5) 2012/11/02(金) 00:02:26.62 ID:BsqWPXe+0
-side 宥-

「照ちゃん・・・」

南場の親が流れた瞬間、照ちゃんの様子が変わった
一瞬落ち込んじゃったのかなと思ったけど・・・

顔を上げた照ちゃんの表情はまるで、部屋で泣いていたときの照ちゃんのようだった
どうしてそんなに悲しそうなの・・・

「・・・・出すのか、アレを」

弘世さんが呟く

「アレって、なんやの?」
「・・・・まず滅多に使わない、照の奥の手だ」

怜ちゃんの問いに、弘世さんが答える

「照にそんなのあるの?」
「えー、知らなかったよー」
「とりあえず、解説は1局終えてからだ」

塞ちゃんと豊音ちゃんも驚きの声を上げるけれど、弘世さんはそれ以上答えなかった
そして、照ちゃんの配牌が終わる

照配牌:23334468②④東白発

「ソウズで染め手か?」
「緑一色がほのみえる感じかな?」

口々に感想を述べるけれど、私は身震いを感じずにはいられなかった

「赤い牌が、一枚もない・・・」

赤い牌は20種類
赤くない牌は14種類
だから、赤くない牌だけで配牌されるのは無いわけじゃないけど、珍しいことだとは思う

「そうか、最初は松実か・・・」

弘世さんがまた呟く

「もったいぶらんと、解説してやー」

セーラちゃんが弘世さんの横に座って肩を軽く揺さぶる
弘世さんはため息をつく

「この先の照のツモを見ていれば分かる。赤いか、赤くないかに注目してみるといい」

結局、緑一色を上がりきるまで、照ちゃんはただの一度も赤い牌をツモることは無かった
そんなことって、ありえるの?
今までの照ちゃんに、そんな偏りはなかったのに・・・

「アカイノ、ナイネ」
「ほんと・・・それで緑一色とか。凄すぎてダルい・・・」

みんなの視線が弘世さんに集まった

678: tell you that I love ...(8-5) 2012/11/02(金) 00:03:48.14 ID:BsqWPXe+0
「さて・・・。赤い、赤くないの段階で分かったと思うが、照は松実の能力をコピーして使ったんだ」
「いやいやいや、なんでやねん」

怜ちゃん、セーラちゃん、末原さんの3人の声がハモった
うーん、さすが大阪出身

「あー、ここは末原解説員に任せるで」
「誰が解説員やねん」

3人がお互い顔を見合わせ、セーラちゃんが末原さんにどうぞと手を出した

「まあええけど。コピーになってへんやろ、赤くないのばっかりやったやん」
「照が、鏡のようなイメージで対局者の打ち筋を見透かすのは知っているな」
「ああ、それは聞いとるけど・・・・そうか、鏡か」
「そう、鏡なんだ」
「おーい、勝手に納得せんで解説しとくれや、解説員」

セーラちゃんが不満げな顔をする
それでも、もうみんな大体のところは分かっているのだと思う

「鏡は左右を逆にする。だから宮永のコピーも、そのままじゃなくて反転コピーになっとるんや」
「そう。だから松実の場合、『赤い牌が集まりやすい』が反転して『赤い牌は集まらない』になった」
「おー、ちょーすごいよー。じゃあここから緑一色連発だよー」

豊音ちゃんがはしゃぐけれど、弘世さんは首を振った

「残念だが、それは無い」
「えー、そうなのー?」

がっかりする豊音ちゃんに、弘世さんが肩をすくめる

「そんなことができるのなら、照は毎回こっちを使うさ。連続和了なんてしなくてもいい」
「滅多に出さないっていうなら、使い勝手が悪いつうことなん?」

怜ちゃんの質問に、弘世さんはモニターに視線を移した

「まあ、次の局で分かるさ。照が滅多に使いたがらない理由がな」



副将戦前半戦 南2局終了時点

宮永照(3-1)    87600
新子憧(1-5)   115800
上重漫(2-10)  114100
清水谷竜華(3-2)  82500

683: tell you that I love ...(8-5) 2012/11/02(金) 23:26:38.94 ID:BsqWPXe+0
-side 照-

-副将戦前半戦 南3局
-親 上重漫
-ドラ 六萬

――ロード中........選択完了......
――小瀬川白望

――.........reverse


照配牌:一二①②⑤⑤⑥⑨79白東北

小瀬川さんか・・・
しかも外れの方を引いたみたい
上重さんに振り込むのだけは避けないとな・・・

「・・・・ちょいタンマ」

はぁ、悩んでも先が見えてるって辛いな・・・
少し考え、染めるのがいいように思えてしまう

打:二萬

684: tell you that I love ...(8-5) 2012/11/02(金) 23:29:52.20 ID:BsqWPXe+0
-side 塞-

照の配牌は4シャンテン
ピンズが多いけど、染めていくにはちょっと厳しいかな・・・

「照のコピー能力は、正直まったくの未完成だ。それでも役満を上がってしまうあたり、十分強力なんだろうけどな」

弘世の解説が続く

『・・・・ちょいタンマ』

モニターから、そんな照の声がする
え? これって?

「どうやら次は小瀬川のようだな。だが、私の知っているパターンと違うな」
「・・・私?」
「パターンが違うってどういうことっ?」

シロがけだるげに弘世に視線だけ向けた
そして胡桃の質問に、弘世が答えた

「小瀬川は、悩むと手が高くなるんだろう。私が知っている小瀬川のコピーは『ノータイムで切り続ける限り手が高くなる』だったが、照はいきなり手を止めた。だから多分、別タイプのコピーだ」

同じシロをコピーしても、結果が違うことがあるということか・・・

そうこうしているうちに、照が次巡ツモってきたのは、三萬
今ペンチャンの二萬を切ったばかりだというのに

「ちょ、思いっきり裏目ってるんだけど・・・」
「悩んだら裏目に出るコピーなん? 使えんな・・・・」
「これが照が使いたがらない理由だよ」

私と怜が声を上げ、それを弘世がつなぐ

「照は誰をどのようにコピーするのか、ほとんど制御できてない。そして不利なコピーでもその局が終わるまでは取り消すことはできない」

それを聞いて、美術部のみんなから率直な感想がもれた

「シロのこのコピー、使えないね・・・」
「シロー、どうしてコピーされちゃったのー」
「どうしていい方向にコピーされてあげないかなっ」
「シロ、ドンマイ!」
「・・・・なんで私が責められる流れなの? ・・・生きるのもダルイ」

シロがさらに脱力する
みんなで同時に言うと、さすがにちょっとへこんじゃうかも・・・・

そうこうしているうちに、竜華からリーチが入った
当の照は、白を切った瞬間に白を立て続けにツモってまた裏目っていう状態で、手は全然進んでいなかった

『・・・・ちょいタンマ』

竜華のリーチを前に、またそう言う照

「いま、すんごいフラグが立ったな・・・」
「100%振るな・・・」

セーラがつぶやき、怜も同意する
当たり牌の高め9ソウを、照はバッチリ持ってるのよね・・・・

そして案の定、照は9ソウをつかんだ

685: tell you that I love ...(8-5) 2012/11/02(金) 23:33:52.42 ID:BsqWPXe+0
-side 漫-

竜華さんからのリーチが入る
せっかくの親番やっていうのに・・・・

漫 手牌:四五六六六③④⑤33345

4メンチャン、三萬なら3色がついて跳満にまで届く。それ以外でもタンヤオドラ3で親満
これは上がりたい・・・・

そしてチャンピオンの打牌は・・・

「ロンや。まさか照から一発で出てくるとは思わへんかったわ」

9ソウ・・・

竜華 手牌:八八⑨⑨⑨12345(赤)678

「リーチ一発、一通ドラ1。裏も乗って跳満。12000や!」
「はい・・・」

手は入っとるのに
もう少し、もう少しなんや・・・

チャンピオンだって振り込むんやから、だったら私にもチャンスはあるはずっ



-side 照-

-副将戦前半戦 南4局(オーラス)
-親 清水谷竜華
-ドラ ⑧ピン

――ロード中........選択完了......
――薄墨初美

――.........reverse     (続)

690: tell you that I love ...(8-5) 2012/11/04(日) 07:36:33.70 ID:GlTl9HRE0
-side 照-

-副将戦前半戦 南4局
-4巡目

鬼門は北東の方角
裏鬼門はその反対側、南西の方角

北家に座った時、牌をさらす場所が北東になる
そして南家に座った時、牌をさらす場所は南西になる

必要な牌を並べることで、残りの風牌が集まってくる

方角のみが反転し、小四喜を招き入れるという能力には変化がなかった

「ポン」

対面、上重さんから出た西を鳴く

照 手牌:二三③⑤6789南南北 西-西西

・・・できれば南から鳴きたかった
私に対しては南はダブ南、西を先に鳴いたら警戒されてしまうかもしれない

でも贅沢は言っていられない
さっきみたいにハズレ能力を引くよりはよっぽどマシ・・・

照 打:⑤

「ポン」

新子さんが動き出す・・・・
彼女のスピードに対抗できるか?


-side 憧-

ギギギーの後の緑一色には驚いたけど、次の局は照さんが振り込んだ

オーラスしか使ってこなかったのは、1局限定能力なんじゃないだろうか
あるいは、高い手を上がれるけど次の局では振り込んでしまう制限があるとか。オーラスだけで使えばその制限は関係ないから使ってたとか

とにかく、過度にあのギギギーを恐れても仕方ない

照さんは親じゃない。だから前に進め!

憧 手牌:六七八八③③⑤⑤(赤)3578南

そして照さんから出される⑤ピン
もう攻めるっ

「ポン」

憧 打:南

「ポン」

照さんが南を鳴く。あちゃー、持ってたか
こんな早い段階で2副露させちゃうとスピードでも負けるかも・・・

照 打:③

「ポン」

憧 打:8ソウ

憧 手牌:六七八八357 ③-③③ ⑤-⑤⑤(赤)

よっし、とにかくこれで1シャンテン
速攻で流すっ・・・

691: tell you that I love ...(8-5) 2012/11/04(日) 07:40:21.66 ID:GlTl9HRE0
-side 漫-

まだ4巡やのにもう2人とも2副露って・・・

漫 手牌:三五(赤)②④⑧⑧⑧⑨666中発 ツモ:⑤(赤)

ドラ爆なのはええけど、鳴けるところ出なくて動かれへん
しかも中とか発とか切りにくくなってもうたし・・・

新子さんはタンヤオ風味やけど、役牌片上がりみたいな可能性だってあるし
チャンピオンも、南西と鳴いとる。字一色はあらへんとは思うけども・・・

・・・いや、あるかも分からん
憩ちゃんが言うとったやん

――卓が軋んだら、連続和了やない何かが起きたんよ。気ぃつけてぇな

卓が軋む音がしたあと、緑一色
前の局は振り込みやったけど・・・

一色と役に名前がつくのは、4つ

混一色・清一色・緑一色・・・そんで、字一色

振り込んだ局も、チャンピオンは染め手くさかった
まだ3巡やけど、場の捨て牌に字牌がほとんど出てへん

一色能力とか、ありえるんやろうか
でも、憩ちゃんが見たのは清一やったらしいし・・・・

・・・逃げ回ってばかりもおられへんけど、ギリギリまで絞る

打:⑨ピン


-side 竜華-

竜華 手牌:一四四九①②⑨1東白白発中 ツモ:南

照と新子さんが鳴きあってお互い2副露、漫ちゃん⑨切りで回ってきたけど・・・
とりあえず③ピンがポンされてもうたから、この①②のペンチャンが厳しい

うーん、どないしよかな
初めから国士気配やったけど、でも西が残り1枚で厳しいんやよな

・・・・南と西が鳴かれて、場には東と北が見えてない
まさかとは思うけど、照やったら小四喜もありえるしな・・・

とりあえず様子見とこか

打:②ピン

692: tell you that I love ...(8-5) 2012/11/04(日) 07:44:39.68 ID:GlTl9HRE0
-side 照-
-8巡目

照 手牌:6789東東北 西-西西 南-南南 ツモ:東

・・・・間に合わなかったか

でも、最低5人は続けないとコピーモードは止まらない。長いと8人くらいまで止まらなかったこともある
オーラスでしか使わなかったのは、自分で制御できないコピーを何局も続けるリスクが高いから
立ち上がりは、自分に有利になるようにくらいのことはできるようになったけど、それでも誰をコピーするか分からない

次の半荘の東場の親に食い込まなければいいけど・・・

照 打:北



-side 恭子-

「すごいな・・・・」

ただ、そんな感想だけが口をつく


照 手牌:6789東東東 西-西西 南-南南

憧 手牌:六七八3345 ③-③③ ⑤-⑤⑤(赤)

漫 手牌:三四五(赤)③④⑤(赤)⑧⑧⑧6667

竜華 手牌:一九①⑨1東南西北白白発中


「客観的に見れば、北切りの一手やけど、果たしてあの場にいて冷静にそれができるかどうか・・・。次巡、北をツモって役満の公算が高いのにな」
「南西鳴いて立て続けに東が来たところで、コピーを知っとる俺らには初美の能力やって分かるけど、竜華たちはそれを知らんわけやしな」

次の宮永のコピーが初美の鬼門の反転なのは分かった
ここでまた役満を上がるのかと思いきや、他の3人も手を仕上げていった

結果完成した、宮永照包囲網

6ソウを切れば新子
7・8ソウを切れば漫ちゃん
9ソウを切れば、竜華の国士に振る

北を諦めるしか、宮永に手はない

「なんか、あんときみたいやわ・・・」

怜が懐かしそうな顔をする

「あんとき?」
「冬の個人戦」
「ああ、確かにな・・・」

宮永と戦ったのは、怜と、いま審判席に座る花田煌。そして松実宥の妹、松実玄

「今の竜華は、私以上に状況が見えとる。あの1年がどんどん鳴いていくのは、まるで煌を見とるようや・・・」
「漫ちゃんが、松実玄、か・・・・。前半焼き鳥なところまで真似せんでもええのに」

いま、ほとんどのドラを抱えているのは漫ちゃん
その火力をまだ持て余しているけど、そろそろ爆発を見せてほしい

『ツモ』

モニターから、和了を告げる声がした

694: tell you that I love ...(8-5) 2012/11/04(日) 17:31:21.00 ID:GlTl9HRE0
-side 由子-

保健室に着くと、そこにいたのは戒能先生と、赤阪先生だった
代行とは今の洋榎には合わせたくなかったのよー

殴りかかろうととする勢いの洋榎を、私は必死に止めた

「代行、絹をどこやったんや!」
「もう洋榎、落ち着くのよー」
「由子ももっと怒れや、代行のせいで試合出れんかったんやろ」
「それはいいのよー」
「よくなんてあらへんわ!」
「洋榎ちゃん、落ち着いてや~」
「どの口で言うんや!」

相変わらずぽけーっとしている代行。そして戒能先生が二人のあいだに入る

「落ち着いてくださいね、洋榎さん。順番に話をしましょう」
「良子ちゃん、絹はどないなっとるんや!」

戒能先生を揺さぶる洋榎
先生は、あっさりこう言った

「ズバリ、仮病です」
「な、な・・・・」

あまりの即答に、流石の洋榎も言葉を失う
なんとなくそう思っていたけど、あっさり認めるとは思わなかったのよー

「仮病ってどういうことやねん、だったらなんで病気の証明なんて出したんや!」
「あとは赤阪先生が説明してくれますよ」

そういって、先生は自分の机に戻っていった

「代行、説明してもらおうか。事と次第によっちゃ、分かっとるやろうな」

もう今にも殴りかかりそうな、鬼の形相をしているのよ
いつでも止められるように身構える

代行は、見たこともないくらい真剣な表情だった

「説明はするんよ。でも、対抗戦が終わってから、末原ちゃんや漫ちゃん、絹ちゃんを交えてでええ? みんな巻き込んでもうてるしな」
「・・・・絶対やな?」
「絶対やよ?」

しばらくにらみ合い、洋榎がため息をつく

「絹はどこにおるんや」
「寮に戻ってもらっとるよ」
「分かった。由子はもう教室に戻り。私は寮に行ってくる」

そう言うと、洋榎が保健室を出ていく
閉められた扉を見て、赤阪先生はひとつため息をした

「ごめんな、由子ちゃん」
「んー、何に対してなのよ?」

だいたい予想はついたけれど、あえてとぼける
先生は苦笑した

「レギュラーのこと」
「もう覚悟は済ませたのよー」

レギュラーを外されてもしかたないと、もう腹をくくった
先生は小さく首を振った

「由子ちゃん。善野先生、夏前には戻ってくるんよ」
「え?」

善野先生。元々のサッカー部の顧問
今は入院してしまっているけれど、そうか、戻ってこれるんだ・・・

「だからな、もともと夏の大会のレギュラーを決める権限なんて、私にはないんよ」
「じゃあ、代行はサッカー部の顧問やめるのよー?」
「まあ、その話はまた後でな。もう教室戻り?」

手をひらひらと振る
もうこれ以上話を進める気はないようだった
私は保健室を出ると、教室に戻ることにした
それにしても、恭子にはこのことをどう伝えようか・・・

695: tell you that I love ...(8-5) 2012/11/04(日) 17:39:15.51 ID:GlTl9HRE0
-side 照-

-南4局

「ツモ」

かろうじて、ツモったのは私
北を否定したことで、鬼門の流れは絶たれた
そこからは普通のツモになり、9ソウを引き入れた

「ダブ南混一、2000、4000」

竜華が点棒を差し出しながら、私の河の北を見る

「んー、親っかぶりかぁ。にしても、北を持ってたら小四喜狙えたんとちゃうん?」
「だって、これは切れないでしょ?」

コツコツと、ツモってきた9ソウを指差す

「ま、ご想像にお任せするで」

パタンと手牌を伏せる竜華

「うーん、前半終了。また後半よろしくお願いします」

そう言うと、新子さんはスタスタと対局室を出ていく

「じゃあ、私もいったん失礼します」

上重さんも少し肩を落としながら対局室を出ていった
なんとか今は彼女を抑えられているけれど、危険な爆薬庫状態であることには変わりない
ああいうタイプは一度火がつくと加速がついて止められなくなる

それに・・・

「じゃあ、うちらも一回戻ろか?」
「そうだね」

レベル7、最高状態の竜華がこんなにやっかいとは思わなかった
次の親も連荘は厳しいかもしれない・・・・



副将戦前半戦 終了

宮永照(3-1)    83600(+35100)
新子憧(1-5)   113800(-14600)
上重漫(2-10)  112100(-17200)
清水谷竜華(3-2)  90500( -3300)

696: tell you that I love ...(8-5) 2012/11/04(日) 23:43:34.68 ID:GlTl9HRE0
-side 咲-

憧ちゃん、すごい・・・

結果的にはお姉ちゃんの一人浮きだけど、微差の1位で折り返した

お姉ちゃん相手に、積極的に鳴いてた
私が今お姉ちゃんと戦ったら、あそこまで堂々と戦えるだろうか・・・・

「たっだいまー」

憧ちゃんが帰ってくる

「憧、照さんと充分渡り合ってるよ!」
「あの親っかぶりは不運ですが、この調子で行けば問題ないですね」
「いやー、でも結構しんどい」

穏乃ちゃんと和ちゃんが駆け寄った

確かに、あの緑一色のとき、憧ちゃんが親だったのは痛かった
あの、ギギギーってのは、私には正体は分からないけれど

「アコ、やるじゃん。テル相手に十分出来てると思うよ。あのリュウカって人が協力してくてるしさ」
「清水谷さんね・・・・。あの人にも注意してないと、知らないうちに牙を剥かれてる可能性もあるからね」
「ん、その辺気付けてるなら問題ないね」

清水谷さんは手を崩してまで、憧ちゃんに鳴かせたり差し込んだりという場面が多くあった

「咲、先生。客観的に見て、あのギギギーについてどう思った?」

私には分からなかったので、小さく首を振った
赤土先生は、手元のメモを今までじっと見ていたが、顔を上げた

「多分だけどな、あれは能力コピーだ」
「コピー?」

一体何をコピーしたんだろう・・・

「こちらからでは、ギギギーって音までは聞こえなかったんだが、咲がお姉ちゃんがうつむいたのがギギギーのときだって言ってたから、そこからの動きを観察していた」

そう、そこから先生はお姉ちゃんの動きを一挙手一投足見逃さず、細かにメモしていた

「わかりやすいから遡ろうか。南家で南と西を鳴くと東と北が集まっていた。これは3年の薄墨初美の逆バージョン」
「あー、副将戦で当たるかもしれないって牌譜見た、あの巫女さんね」
「その前の振り込み。『ちょいタンマ』と悩むのは、3年の小瀬川白望の特徴だ。本来なら悩むと手が高くなるんだが、逆に悩んで裏目を引いていた」
「うーん、その人は知らないな」

3年生の人の打ち筋を逆にしているコピー・・・・
そんなの私には気づけない。逆に先生だから気づけたことなんだろう

そうか、お姉ちゃんの鏡
鏡だから、反対のコピーになっちゃうのか

「そして緑一色の局。配牌とツモを含めて、宮永照の手に、赤い牌は1枚もなかった」
「赤い牌が1枚もないって。それって宥姉の反対ってこと?」
「そう、宥の逆バージョン。だから結果的に緑一色を上がれた」
「そういうことか・・・・」
「まあこれが正しいかは分からないけど、あの『ちょいタンマ』は結構決め手かな」

メモ帳を机に置いて、先生は私の方を見た

「な、咲。そもそもお姉ちゃんが、あんな風に悩んで手を止めるとか、その段階でありえないよな?」
「そうですね。お姉ちゃんが手を止めるなんてよほどのことだと思います」

お姉ちゃんが手を止めるところなんてほとんど見たことがないくらい
ましてや、ちょいタンマだなんて聞いたことがない

「その上で憧、正直これは対策しようがないわ」
「うん、聞いてて分かったわよ。3年の打ち筋を普通にコピーされても分かんない人が多いっていうのに、それを逆転されたら対局中にどうこうできるなんて思えないわね」
「そういうこと。ま、正体不明よりは心理的にましってところかな」

697: tell you that I love ...(8-5) 2012/11/04(日) 23:44:28.27 ID:GlTl9HRE0
小さく頷き、憧ちゃんは私の方を向いた

「咲、見ててくれた?」
「え、うん。憧ちゃん、すごかったよ」
「私はいま個人収支はマイナスだし、それをいいとは思わないけど。それでも、クラスはトップ」

お姉ちゃん相手にプラスになんてそう出来ることじゃない
でも、これは団体戦だから・・・

「私の役目はさ、淡にできるだけ負担にならないような点数でつなぐこと。咲が守って、しずと和が稼いでくれた点棒をできるだけ減らさずにね」

ずっと一人で打ってきたから、私は誰かの為になんて打ってこなかったから
収支がマイナスでも、とにかく次につなげばいいなんて、分からなかったから

「だからさ、咲。私一人見れば勝ってなくても、クラスでは勝てるような、そういう麻雀もアリだと思うんだ。ね、だから今日のことはあんまり落ち込まないでね」
「うん、ありがとう、憧ちゃん」

憧ちゃんの微笑みに、心があたためられていくのを感じる

お姉ちゃんが打つところを見たいなんて動機で、3-1の松実さんをかばったけれど・・・
今は、憧ちゃんがお姉ちゃんに向かっていく姿が見たかった

お姉ちゃんが、私の打つ麻雀を認めてくれないのは仕方ないことだと思う
じゃあ、憧ちゃんは?
勝たなくてもいいって言ってくれる憧ちゃんの打ち方は、お姉ちゃんにはどう写るんだろう

「頑張ってね・・・」
「うん、任せといて」

ぐっと親指を立てて、元気な笑顔を見せてくれた

「じゃ、行ってくるね」

698: tell you that I love ...(8-5) 2012/11/04(日) 23:45:45.63 ID:GlTl9HRE0
-side 漫-

「私だけ焼き鳥ですんません!」

教室に戻るなり私は頭を下げた

「漫ちゃん、頭上げてや。急に交代してもろうて、1位と微差なんやから問題あらへんて」
「そうだぞ、漫。後ろには衣が控えてるんだ。大船に乗ったつもりで堂々と打ってくればいい」

憩ちゃんと衣ちゃんがそう言ってくれる
が、なぜか二人は手に水性ペンを持っていた・・・

「なぁ、そのペンなんなん?」
「んー、これ? なんやサッカー部で漫ちゃんのかわいいおでこにいろいろ落書きするのがブームって聞いてな。後半戦も焼き鳥やったら、乗るしかないこのビッグウェーブに、と思うてな」
「ばいおれんす感というが漫には不足しているらしいからな。衣も一肌脱ぐぞ」
「その情報のソース出してぇな!」

はぁ、もう。クラスでもいじられキャラになったら体力もたへんて・・・

「あれ、そういえば小蒔ちゃんは?」

クラスにいたのは、憩、衣、玄の3人だけだった。絹ちゃんがおらんのは仕方ないとして、小蒔ちゃんがおらん理由が思い当たらない

「小蒔ちゃんだったら部室の方にいってるよ。部活の先輩に呼ばれたんだって」

そう答えたのは玄ちゃん。さすがに玄ちゃんはペンは持ってなかった

「それより漫ちゃん。私もチャンピオンと当たった時は全然上がれてないし、全然気にすることないよ」
「それでも焼き鳥やで?」
「それ私も言われたよ。宮永さん相手にそんなに削られてないから大丈夫って」
「そう・・・。じゃあ私も、チャンピオンに倍満ぶちかますくらいのことはせなあかんね」

玄ちゃんみたいな絶対支配でないにしても、今日はドラがどんどん入ってきてるのは間違いない
ただ、テンパイまではたどり着いても、そこで止められてしまう

「お、言うたね漫ちゃん。じゃあひとつアドバイスな。もうちょい鳴き仕掛けしてってええと思うで。ちょっと緊張しとるんかあんまり動きがなかったと思うんよ」
「そういえば、あの卓が軋むってやつ、傍から見ててどないやったん?」
「あー、あれか・・・。多分やけど、深く考えてもしょうがない気がするで」

ちょいタンマというのが、3年の小瀬川っていう人のくせらしい
それが出てきたということは、なんらかの模倣を行っているのではないか
だとすれば、知らない人を真似している可能性も高いから、そこまでこだわってもかえって墓穴を掘るかもしれない

そんな説明を受けた

うん、よくわからん

分かるのは、私は残りの半荘、やれるだけやるしかないってこっちゃ
手は入ってきてるんや、分厚い紙一重やけど、乗り越えんとな・・・

じゃないと・・・・・

「ところで、額に何書くのがスタンダードなんやろうなぁ。やっぱり鰻か?」
「おお、難読漢字なら任せろ」

何書かれるか分かったもんやないわ

703: tell you that I love ...(8-5) 2012/11/09(金) 07:01:23.03 ID:rYGXWybO0
-side 菫-

照にしては、あまり稼げなかった印象だな
まあもっとも、東1の親は捨てているし、南1の親もあっさり流され、それでも3万点以上稼いでいるのだから悪くないんだろう

まったく、自分のクラスを心配すべきなのにな・・・
だが、照を倒すために集められたとささやかれ、それで団結できるほど私は大人じゃない

久保先生は大将に石戸を据えた
私がオーダーを組むなら大将に清水谷を据えただろうな

その意味、石戸には伝わっているはずなんだ
2年10組が勝ち上がることは見こうして・・・
だから余計に、クラスのためになんて言葉が出てこない

無理な狙い撃ちを指示される先鋒次鋒が損な役回りかと思っていたが・・・
こうして自分の出番が終わってしまえば、大将というのもかなりキツイと思える

石戸、今お前は何を考える・・・

「ただいま」
「戻ったでー」

照と清水谷が一緒に教室に戻ってきた

「おかえりなさい」
「竜華、惜しかったなぁ」

歓迎の言葉を口々にするなか、私は照に歩み寄る

「照、悪いな。アレについては解説済みだ」
「覚悟はしてたから、問題ないよ。オーラス以外で使えばバレちゃうのは分かってたし」
「途中でアレを出すなんてな・・・ギリギリだったのか?」
「点差もあるし、竜華は最高状態。普通にやったんじゃ稼げない」
「そうか・・・・」

そのまま、照は松実のところに向かった

「照ちゃん、お疲れさま」
「菫から説明は聞いたと思うけど、ごめんね」

きょとんとする松実
何を謝ることがんだ? 私にも分からなかった

「宥の反転なんてして、寒がるっていうか、怖がられちゃうんじゃないかって思って」
「最初はびっくりしたけど、全然気にしてないよ」
「そう、なら良かった」

ほっとした表情を見せる照
知らないうちに随分親しくしているみたいだな・・・
まあ友好関係が広がるなら、その方が照のためにもいいのだろう。いつまでも私がお守りもしていられないしな

一方の清水谷は、一目散に園城寺のところに向かっていた

「怜、大丈夫やったかー」
「私のことはええから、自分のこと気にしいや」

それでも嬉しそうにはにかんで、膝枕されていた

「もうちょっとで国士やったのに、惜しかったなぁ」
「しーっ」

清水谷が慌てて口に指を当てるが、それを照が微笑んで見ていた

「ほら、やっぱり張ってた」
「あ、当たり牌が何かまでは教えへんからな」
「9ソウやでー」
「ちょ、セーラ!!」
「どうせあとで牌譜見たらバレるやん」
「そういう問題やあらへんのに!」

そこに真瀬が戻ってきた
しかし愛宕はいない

「由子、洋榎はどないしたん?」

末原が尋ねると、真瀬は首を振った

704: tell you that I love ...(8-5) 2012/11/09(金) 07:02:34.05 ID:rYGXWybO0
「洋榎は絹ちゃんに会いに寮に戻ったのよー」
「それで、絹ちゃんはどないやったんや?」
「えっと、それは・・・」

言いよどむ真瀬
おそらく、ここでは言いにくいことなのだろう

「なんなら、3-2は空いてるぞ?」
「そうするのよー。ありがとう、弘世さん」

そう言うと、真瀬は末原の手を引いて教室を出ていった

さて・・・

私は清水谷の近くの席に移った

「清水谷、お楽しみのところ悪いが、照の打ち筋について解説は必要か?」
「ああ、途中で打ち方変わってビビったけど、あの失敗したコピーみたいなの何なん?」

それを聞いて、周囲から笑い声が漏れる

「失敗したコピーとか、ちょー面白いんですけどー」
「シロは失敗作なんかじゃないからねっ」
「シロ、ドンマイ!」
「だからなんで私が・・・もはやダルすぎて快感に・・・・ならないな・・・」

さらにぐだーとなる小瀬川
まあ、確かにあの3回で不利に働いたのは小瀬川のときだけだったが・・・

とりあえず同じような解説を清水谷にもする

「なるほどな、鏡か。面白いの隠しとったんやね」
「あんまり使いたくなかったけどね・・・」

照がため息混じりにそう言う

「そう? おもろいやん、毎回やってほしいくらいやわ」
「・・・また今度ね」

・・・ほう
変わったもんだな。以前だったら絶対にやりたがらなかったのに

部内で密かに調整していたから、今まで照のこの反転コピーを知っていたのは、私と渋谷と亦野だけだった

『副将戦再開まであと5分です。選手は対局室にお集まりください』

放送が流れる

「じゃあ、行こか、照」

清水谷が園城寺の体をゆっくりと起こす

「竜華、あと3400点やで?」
「分かっとるよ」

ん、なんの点数だ?

「照ちゃん、頑張ってね」
「うん、大丈夫」

照も松実と微笑みあい、清水谷と一緒に教室を出ていった

「なあ怜、今の点数なに?」

江口の質問に、園城寺は人差し指で口を抑えた

「秘密や」
「なんやのそれー。末原解説員はおらんのかー!」

708: tell you that I love ...(8-5) 2012/11/11(日) 00:50:02.42 ID:pbFB8hP/0
-side 照-

-クラス対抗戦 決勝副将戦 後半戦
-場決め

東 清水谷竜華(3-2)  90500
南 上重漫(2-10)  112100
西 宮永照(3-1)    83600
北 新子憧(1-5)   113800


-東2局
-親 上重漫
-ドラ 東

東1は竹井さんの反転で、なんなくツモ上がりできた
悪待ちを好む彼女の反転は、3面張以上なら和了率上昇というもの


そしてこの東2局・・・


――ロード中........選択完了......
――白水哩

――.........reverse


はぁ、よりによって白水さんか
私この能力苦手なんだけどな・・・

配牌:三四七九①②③⑦44568南

――3飜

選択権も反転されている
私が選ぶまでもなく、勝手に指定されてしまう

ドラが東であることを考えると、赤が来ないとドラを数に含めるのは難しい
リーチ平和に、タンヤオか一盃口あたりかな・・・
ツモ次第ではクリアできそうではる

しょうがない・・・

私は一度牌を伏せる
そして勢いよく牌を起こした

――リザベーション!!

右足首、左腕、そして首に圧迫感が加わる
実際に拘束されているわけではないのに、イメージの中で鎖に繋がれていくのが分かる

――スリー!!

リンク先は、対局者の中から選ばれる

709: tell you that I love ...(8-5) 2012/11/11(日) 00:52:13.57 ID:pbFB8hP/0
-side 憧-

ビビクン!

右足首、左腕、そして首に突然変な感じが走る

「ふきゅっ」

変な声もれたっ・・・
あわてて袖口で口元を抑える

なに、なんなのこれ・・・

3箇所のじわじわとした変な感じはまだ続いている
これもギギギーの効果なの?

照さんを見るけど、照さんに変化があるようには見えなかった
まあ、基本対局中に表情変えたりしない人だからわかるわけないんだけど

うーん、イマイチ集中できないけど
とにかくあがるのみっ

ああ、でもなんかもどかしいっ・・・



-side 照-

リンク先は新子さんか・・・

白水さんの場合は、自分が和了すればリンク先の姫子さんが倍の飜数で上がれるというもの
でも私が使うと、自分が和了できなければリンク先の対局者、今回は新子さん、が倍の飜数で南2局で上がれるというものになってしまった

つまり、この東2局で私が3飜で上がらなければ、新子さんの南2局でのハネマンが確定してしまうということだ
逆に私が上がれば、南2局での新子さんの和了はほぼ消える

それにしても、新子さんが落ち着かないな・・・
私の方はただ圧迫感があるだけだけど、リンク先はビビクンってなるって菫が言ってたし・・・

いつもこれ使ってる白水さんはどんな心境なんだろう
っていうか菫から詳しく聞かなかったけれど、ビビクンって、何?

新子さんが顔を赤らめてそわそわしているのを見ると、電気みたいなものなのだろうか・・・

「ロン、8000」

結局、集中力を欠いた新子さんがあっさりと竜華に振り込んだ

これで南2局の新子さんのハネマンは確定
南3局の自分の親までに手を高めておくということはできなくなった・・・

あとは、このコピーがいつ終わるか、か
とりあえず最低ラインの5人は消化した。次は自分の親番だし、もう終わってくれればいいけど

だけどコピーモードは続いた


――ロード中........選択完了......
――東横桃子

――.........reverse


最悪の形で・・・

710: tell you that I love ...(8-5) 2012/11/11(日) 00:53:18.84 ID:pbFB8hP/0
-side ゆみ-

試合の様子は気になるが、久を実況解説に取られてしまい、結果私が出店など試合外の部分の見回りを行うことになった

「別についてこなくていいんだぞ、モモ」
「好きでついて行ってるだけっす」
「ならいいんだが・・・」

傍目には私が独り言をしているように見えるんだろうか

中学の時の後輩で、それからもずっと私を慕い続けてくれている後輩
東京と長野と離れてしまっても、電話なりメールなりは続けていた

「副将戦はそろそろ後半かな。どうだった、宮永照は?」
「そうっすね。強かったっす」
「牌譜は見たよ。作戦は悪くなかったが、ツメが甘かったな」
「ううっ・・・」

2位狙い自体は悪い作戦ではない
むしろ、私も同じチームならそのように指示しただろう
ステルスが通じるのかどうか試さないことには、後の作戦も立てづらい

ただ、ステスルには常に見破られる可能性は付きまとう
その点は常に考慮していなければならなかった

「まだまだ、先輩には届かないっす」
「そんなことはない。お前の方が強いよ」

おそらく、モモが目標とする私は、現実の私とはもう乖離していることだろう
私はそんなに立派でも、強くもないよ

「そんなことないっすよ。先輩の方が強いっすよ」
「お互い否定しあっても不毛だな・・・・」

じっと私を見つめてくるモモを直視できず、私は前を向く
キョロキョロと落ち着かない様子であたりを見回す女性がいた

まだ春先、花粉症のためにマスクをしているから口元は分からない
それでも、そのセミロングの女性には見覚えがあった

「小鍛冶先生?」
「え?」
「ああやっぱり、小鍛冶先生だ」

マスク越しで声がこもっていたものの、それでも近づくにつれ確信を得る
間違いなく、1年前に退職された小鍛冶先生だった
私が1年の時の担任だったので、よく覚えている

711: tell you that I love ...(8-5) 2012/11/11(日) 00:53:44.43 ID:pbFB8hP/0
「先輩、この人は?」
「ああ、私が1年の時の担任の小鍛冶健夜先生だ。私が2年になる時に退職されたんだが」
「・・・もしかして、加治木さん?」
「そうです、加治木ゆみです。お久しぶりです」

一礼する
顔を上げると、それでも小鍛冶先生は落ち着かない様子でキョロキョロしていた

「・・・・誰かお探しでしょうか?」
「そういうわけじゃないんだけど・・・」

・・・・逆か?
誰かに見つかりたくないとか

退職の理由は聞かされていない
噂では寿退職だなんて話も出ていたが、それなら隠す必要もないし、なにより左手の薬指に指輪もない

まったく、今日は色々と動きが多いことだな・・・

「よろしければ、あまり人のこない穴場の観戦室をご案内しましょうか?」
「あ、そうだね。そうしてくれると助かるよ」
「じゃあ少し歩きますけど」

退職理由を聞くのは野暮なのだろうか・・・
それでも、タイミングさえ合えば聞いてみたい

「・・・あまりキョロキョロしていると、かえって目立ちますよ?」
「そうだよね・・・」

小さくため息をつく先生
仲の悪い先生でもいて会いたくないとか、そういう類のことなのだろうか・・・

「腕章をしてるけど、生徒会なの?」
「副会長をしています。残念ながら私のクラスは昨日負けてしまいましたので、今日は生徒会で見回りです」
「そういえば1年のときには、クラス委員もしてくれてたよね」
「そうですね。そういう役割が好きなんでしょうね」

話をして、先生も少しは落ち着いてきたようだ
っと、先生にばかり気を取られていてはいけないな

「モモ、昔話ばかりになってしまってすまないな」
「いいっすよ、黙ってるっすからお気になさらず」
「そういえば、この子は?」
「1年の東横桃子っす。先輩とは中学からの後輩っす」
「そう、よろしくね」

先生は微笑みを浮かべて小さく頭を下げた

712: tell you that I love ...(8-5) 2012/11/11(日) 00:54:54.66 ID:pbFB8hP/0
-side 照-
-東3局
-親 宮永照

対局者の捨て牌が全く見えなくなる
ただ、手の動きは分かるので、誰のツモ順なのかというのは分かった

テンパイ競争
ただし、私だけ目隠しをした状態

・・・・自分の親だというのに
東横さんには、ずいぶん嫌われてしまったのかな

ただひたすら、自分の手だけを見てツモを目指すしかない
けれど、そんな悠長なことを許す面子ではないわけで

「ロ、ロンです」

自分の振込を自覚すると、一気に視界が開けた
一番振ってはいけない相手に振ってしまったようだ

「リーチ一発ドラ6、裏無し。倍満です」

上重さんへの放銃
まずいな、これで導火線に火を着けてしまった


-東4局
-親 新子憧

――ロード中........選択完了......
――亦野誠子

――.........reverse

またハズレコピー・・・
誠子の反転、3副露以上したらツモ和了不可

っていうかまだコピーが終わらない。自分で決断したことだけれど、流石に困る・・・

「ツモ、3000、6000」
「くっ・・・」

また上がったのは上重さん。完全に調子づかせてしまった


南入だけど、まだコピーが止まらない


――ロード中........選択完了......
――荒川憩

――.........reverse


よし、これなら行ける
上重さんを止めるっ


副将戦後半戦 東場終了時点

清水谷竜華(3-2)  91500
上重漫(2-10)  138100
宮永照(3-1)    72600
新子憧(1-5)    97800

717: tell you that I love ...(8-5) 2012/11/11(日) 22:57:36.52 ID:pbFB8hP/0
-side 漫-
-南1局
-親 清水谷竜華
-ドラ 5ソウ

配牌:三四四五(赤)③③④⑤(赤)34555(赤) ツモ:④

配牌、ツモ、ともに今かなり調子が出てきとる

四切りで、タンピン三色ドラ6、ダブリーかけてツモか一盃口が付けば数え役満
これで完全に引き離せる

前半戦はアカンかったけど、後半は行けるで!

「リーチ」

打:四



-side 照-

荒川さんの能力は、3回以上失点すると爆発するというもの
それが逆転して、3回以上失点するまで爆発。私はまだ2回しか失点してないので条件を満たす

配牌:二二三三四四五五六六八八西 ツモ:八

凄まじいな・・・
西切りで、二三五六の4面張

清一・タンヤオ・一盃口で倍満確定
これ以上の手替わりもないだろう・・・

上重さんがダブリーで来たけど、これ以上引き離されないためにも勝負に出るしかないか

「リーチ」

打:西



-side 竜華-

2軒ダブリーなんて考慮しとらへんよ・・・

新子さんが少し手を止めて、東切り

照からダブリーか、まだコピーモード続いとるんかな
上重さんも完全に調子が良くなってきてしもうたし
私が親やっていうのに、困るわそういうの・・・

でもな、調子がええっていうのは、常にいい配牌が来ることを指すんやない

手牌:一六八②⑧468西西西白発 ツモ:7

安牌を切っているうちに手が入ってくるっていうこともあるんやで
調子のええときは、そもそも当たり牌を切る状況にならへんもんや

ま、とりあえずは振りあってくださいってとこやな・・・

打:西

718: tell you that I love ...(8-5) 2012/11/11(日) 23:00:19.59 ID:pbFB8hP/0
-side 憧-
-7巡目

まっずいなぁこれ
手牌はイマイチだし、かろうじて現物を切って来れたけどそろそろ限界・・・

捨て牌
竜華:北西西西一⑧発
漫 :四9九東89④
照 :西一中⑧北七⑨
憧 :東一中九北七

憧 手牌:二二①①③⑤1123477 ツモ:9

やった、9ソウなら通ってる
ソウズが全然出てくれないから溜まってく一方なんだけど、この後はスジを頼りに①を切ってくしかないかな・・・
ダブリー相手にスジとかあんまり頼りたくないけど、読みようもないしね

打:9

「ロン、2900」
「え?」

まさかのロン・・・
牌を倒したのは、清水谷さん

手牌:六七八②②45678白白白

西暗刻切りしておいて、ちゃっかり張ってるなんて・・・
いや、生牌の発切り。あれで少しは警戒すべきだったかっ

「ま、私が一番安いからお買い得やったで」

そう言いながら、私の出した点棒と2人のリー棒を回収していく
ヤバイ、今のでリー棒含めると逆転された・・・

2軒ダブリーに振り込むよりはマシだったんだろうけど、それでも親の連荘を許してしまった
ジリ貧になる前になんとかしないと・・・

けど、今ので流れを引き寄せたのか、清水谷さんがそこから2連続で親満。ツモ1回とトップの上重さんから直撃で逆転して一位に浮上した
ようやく照さんがノミ手で流して、南2局に入った


-南2局
-親 上重漫
-ドラ 7ソウ

上重さんがサイコロを振る
その時、なぜか目の前に鍵が浮かんでいるように見えた

・・・・え、何?

その鍵には数字の6と書かれていた。数字を認識した瞬間、もう鍵は消えていた

疲れてるのかな、私・・・・
手早く理牌を終える

配牌:①②③④⑤⑥⑦⑧5666北

おお、いいじゃんいいじゃん
ダブリーも見えるし、ツモが悪くても鳴き一通もアリ

上重さんの一撃は重たいし、はやいとこ勝負に出よう
照さんも牌を切り、私の第一ツモは⑨ピン
いきなり急所きたっ。これで一通完成、待ちも3面張

これは行くしかないっしょ!

「リーチ」

でもってー!

「一発ツモ!」

手牌:①②③④⑤⑥⑦⑧⑨5666 ツモ:5

「裏はなし。3000、6000」

平和もドラもつかないけど、これで最低ラインの配給原点復帰
照さんの親を全力で流して、ラス親に賭ける

719: tell you that I love ...(8-5) 2012/11/11(日) 23:01:33.46 ID:pbFB8hP/0
-南3局
-親 宮永照
-ドラ 南

コピーモードは竜華が上重さんに直撃したところで終了した
連荘モードに入り、とりあえず竜華の親を流す

けど、南2局はすでに新子さんに跳満キーが渡ってしまっている

だから、この親で連荘を続けるしかない


竜華が最高状態だろうと
上重さんが爆発していようと
新子さんがどんなにスピードを上げようと


関係ない
すべて蹴散らし、私は勝つ


副将戦後半戦 南2局終了時点(収支は副将戦開始から)

清水谷竜華(3-2) 117500(+23700)
上重漫(2-10)  113800(-15500)
宮永照(3-1)    66500(+18000)
新子憧(1-5)   102200(-26200)

723: tell you that I love ...(8-5) 2012/11/13(火) 22:54:46.58 ID:WZUKWhFD0
-side 竜華-
-南3局

さってと、とりあえずトップにはなったけど
照の親。ここが最終関門やな。ここをどう凌ぐかや

まったく、今まで見た中で一番すごい迫力やないか・・・
思わず身震いしてしまいそうやわ

「ツモ、500オール」

早いな、3巡か・・・・
まあ、安い時の照はホントに早いからな

勝負は、満貫に到達するくらいや

流石にこんなに早いと小細工もできへん

しかも照の下家は新子さんやから鳴いてくれるかもしれんけど
漫ちゃんさっきからあんまり鳴いてへん

まあ上家だから鳴かなくてもええんやけど、アシストも苦手そうやんな
前半で照の親を流した時のようにはいかんで、これ・・・

「ロン、2900の1本場」
「はい・・・」

振ったのは漫ちゃん
うーん、どうも自分だけでなんとかしようとして周りがみえとらん気がするな・・・
手が入ってる分、周りをアシストしようなんて考えが浮かばないんやろう

流石に堂々と、みんなで協力して流そうとかは言えへんし
しかも間の悪いことに、順子場ときた・・・

対子場やったら新子さんが鳴いてくれるんやろうけど、それも叶わん・・・
それも含めて、照の支配なんかもしれん

「ツモ、1500オール」

平和手・・・・
やっぱりそうやんな

伊達に大会無敗を誇ってるわけやないわ
簡単には終わらせてくれへん・・・

このままじゃまずいし、ちょいと無茶するか・・・

724: tell you that I love ...(8-5) 2012/11/13(火) 22:56:13.27 ID:WZUKWhFD0
-side 憧-

-南3局3本場
-ドラ 9ソウ

完全に順子場、かといってタンヤオも三色も一通も全部微妙だから動こうにも動けない
どうしろっていうのよ・・・

このまま削られてればいいの!?

「チー」

清水谷さんが動く

竜華 副露:2-13

染手?
チャンタ?
下の三色?

まだ分からないけど、欲しそうなところをどんどんアシストするしかない
照さんは6巡くらいまでには仕上げてくる

チャンタや下の3色なら、この辺?

打:二

「チー」

竜華 副露:二-三四

ええっ、何その鳴き!!
染め手もチャンタも消えたんですけど・・・・

あとはソウズの鳴き一通か、どちらかの三色。それとも後付けの役牌バック?

・・・・いや、そうじゃない

そうか、清水谷さんの手も順子手ってことよね
でも、一人だけ順子手じゃない人がいる

この状況を、伝えたいのね

「チー」

憧 副露:③-①②

この局を捨ててでも、3人の意思統一を図りたいってことなら、乗るしかないっしょ

気づいて、上重さん!

725: tell you that I love ...(8-5) 2012/11/13(火) 22:57:34.06 ID:WZUKWhFD0
-side 漫-

竜華さんが、訳のわからん3副露
それに呼応して、新子さんも2副露

竜華 副露:2-13 二-三四 ⑧-⑦⑨
憧 副露:③-①② 七-六八

・・・なんや、役があらへんのになんで鳴くん?
しかも全然ポンせんで、チーばっかり

対子場やないんか?

漫:五五(赤)七①①②⑤(赤)⑥999東東

私の位置で鳴けばそれだけチャンピオンに早く回るからポンでは鳴けないと思っとったけど・・・・
私にドラが固まっとるだけで、他の3人は順子場なんか?

「ツモ、2900オール」

また平和手・・・・
私だけドラが固まっとるだけで、やっぱり場は順子場

前半戦みたいに、新子さんがポンしてチャンピオンにツモ順を回さないっていうことは今の状況じゃできへんってことや

竜華さんはそれを知らせようとして、あんな鳴きを
そして新子さんもそれに対応した・・・

察しの悪い奴で、すんません・・・
私が動いたらアカンと思っとったけど、とにかくポン材のある私が動くしかあらへんのや

でないと、この鬼気迫るチャンピオンには、対抗できへん

726: tell you that I love ...(8-5) 2012/11/13(火) 23:01:03.54 ID:WZUKWhFD0
-side 竜華-
-南3局4本場
-ドラ 北

気づいてくれたか、漫ちゃん
そうや、次の局も捨ててええ、とにかくポンして流れを変えてほしいんや

私や新子さんじゃ、普通に手なりで打って、普通に照に速さで負けるのがオチや
今、場の流れに逆らえるのは、漫ちゃんしかおらん・・・

だから、受け取りや

打:5ソウ

「ポン」

漫 副露:5-55(赤)

漫ちゃんの自風の北がドラになったんは幸いや
おそらく漫ちゃんには、最低でも対子で入っとる
役牌が対子であれば、ある程度は思い切って動ける

2-10はこのあと天江衣が控えとるから、漫ちゃんにはあんまり上がってほしくないってのもあるけど・・・
でも、このままじゃ現状を打開できんまま照の独走を許してまう
難しい判断やけど、照の手が跳満、倍満と仕上がってしまっては手遅れや

その前に漫ちゃんに動いてもらわんとな

それに、極力私から鳴いてくれれば、照にツモが早く回るということもない
私から鳴けばツモ巡通りやからな

竜華 ツモ:北

うーん、私のところにも来るんか、これ・・・
まあええ、受け取り

「カン」

まさかの大明カン
漫ちゃん、それはちょっと張り切りすぎちゃうかな
責任払いは勘弁してや・・・

嶺上では上がれず、ツモ切り

ドラ表示牌は、西

・・・見えとるだけで、北ドラ9か。ほんと恐ろしいやっちゃ、漫ちゃんは
でも、これも漫ちゃんが動いてくれる気になったからこそ
じっとしとったら、ここまで場は動かへんかったはずや

さあ、照
まだまだ漫ちゃんの勢いは衰えとらんで
この爆弾、どう処理する?

照が臆してくれればええけど、まあそう簡単はいかんやろな



-side 照-

竜華、やってくれる・・・

ただ場を動かしたくて意味のないチーをしたのかと思ったけれど
本当の狙いは、眠れる獅子を起こすこと、か

冬の個人戦を、少しだけ思い出す

けれど決定的な違い
松実玄はドラを切れなかったけど、上重漫にそんな制約はない

わざわざ北をカンしてきたことから、完全にふっきれて前進してきたことは分かる

――けどね

「ツモ、4400オール」

そう簡単に、私は引き下がったりしない

727: tell you that I love ...(8-5) 2012/11/13(火) 23:02:38.76 ID:WZUKWhFD0
-side 漫-
-南3局5本場
-ドラ ⑤ピン

とうとう5本場・・・
でも今の北のカンで、自分の火力が高まっているのは確認できた

「カン」

オタ風の東を暗カン
ドラ表示牌は、北
これでドラ4追加

そして、嶺上牌でテンパイできたっ

「リーチ」

打:2ソウ

チャンピオン相手に先制!
これはツモれる気がするで

手牌:二三四五六⑤⑤(赤)⑤(赤)33 [東東東東]

728: tell you that I love ...(8-5) 2012/11/13(火) 23:05:08.87 ID:WZUKWhFD0
-side 照-

・・・・まったく、どこまでドラを乗せれば気が済むんだろう

手牌:三三四四五⑧⑧⑧55(赤)667 ツモ:7

⑧切りでテンパイ、二盃口なら出上がりできるけど二萬が出たらダマでは上がれない
次は跳満が必要、タンピン一盃口ドラ1では満貫止まり

どうせツモり合いだ
リーチしても、二萬が出たら困る・・・

打:⑧

「チー」

新子さんが動き出す
上重さんの一発消しだろうか・・・

憧 副露:⑧-⑦⑨

打:北

竜華のツモ巡、少し考えて打ってきたのは

打:二萬

・・・・・くっ、上がれない
竜華は何食わぬ顔をしているけど、ほんとに憎らしいくらいによく見えてる

上重さんのツモ
しかし上がり牌でなかったようで、そのままツモ切り

打:五萬

同巡だからこれも上がれない
まったく、これはもうツキに見放されたかな・・・

私のツモは北だったのでそのままツモ切り
新子さんが手出しで6ソウ

そして竜華のツモ
少し悩み、出したのは

打:②

「ロン」

手を倒したのは新子さん

「一通のみ、5本場で2500」

手牌:①③④⑤⑥88899 ⑧-⑦⑨

また竜華にやられた・・・
あの二萬切りが無かったら、連荘できたのに

「これ以上の連荘はご遠慮願うで、照」
「まったく・・・」

ほんとに、最高状態の竜華は厄介だよ・・・

「オーラス、か」

泣いても笑っても、これが最後




だったら、ちょっと無茶してみようか





副将戦後半戦 オーラス前

清水谷竜華(3-2) 105700
上重漫(2-10)  100300
宮永照(3-1)    96600
新子憧(1-5)    97400

731: tell you that I love ...(8-5) 2012/11/15(木) 02:08:11.72 ID:bSatWB8W0
-side 憧-

-副将戦後半戦 オーラス
-親 新子憧

なんとか照さんの親を流せた

まあ、ほとんど清水谷さんのアシストのおかげだけど
流石に3年部長連合に隙はないわ・・・

でも、もうアシストは無い
私のラス親を続けさせる意味なんてないから
自力でなんとかしなきゃ・・・



ギギギー



またっ・・・

私は慌てて照さんを見た
また無気力に俯いている

「もう連荘はないし、それ出してくるんやな」

清水谷さんが、笑顔を浮かべる
もう、何が出てくるのかわからないのに、どうしてそんな楽しそうにできるの?

ハルエが言っていた通りコピーなのだとして、自分にデメリットになるようなコピーも多かったように思う
振り込んでいる局もあったし・・・
それでも使ってくるのは、宥姉のコピーみたいに有用なものもあるから?

麻雀自体ギャンブルみたいなもんだけど、その上にさらにギャンブルをするこの能力・・・
この局、一体どんな能力で来るんだろう

そろそろ声をかけてもいいのかな?
そう思ったときだった



ギギギー



「・・・2回目!?」
「マジか、どないなるやろな?」
「っていうか、何が起こっとるんですか?」

先ほどは余裕を見せていた清水谷さんも事態を理解できてはいないらしい

身震いが止まらない
底冷えするように、足元からひっそりと何かが這い寄ってくるよう

「・・・・すまない、待たせたね」

照さんが顔を上げる
その表情は完全に凍りついていた

「新子さん、サイを」
「あ、ごめんなさい」

私は慌ててサイコロを振る

一体、何が起きるんだろう

732: tell you that I love ...(8-5) 2012/11/15(木) 02:09:59.43 ID:bSatWB8W0
-side 由子-

「はぁ、ホントに誰もいないのよー」

3-2の教室には誰もいなかった
決勝戦に出ているというのに、どうしてこうなってしまうんだろう

「ま、静かでええやろ」

恭子は窓際の柱に背をあずけた

「それで、代行は何て言っとったんや?」

私はまずは絹ちゃんが仮病であったことを伝える

「まあ、それは想像の範疇やわ」

流石に恭子、その程度のことは分かっていたようだった

「でも、それでよく洋榎が納得したな?」
「2点目、サッカー部を集めて後で赤阪先生がみんなにこれまでのことを説明したいって」
「む、それは予想外やな」

考え込み、恭子はため息をついた

「まあ、もともとどこかでバトルせなならんかったんや。向こうがその場を作ってくれるなら手間省けたと考えるべきか・・・」
「でも、そのバトル、必要無さそうなのよー」
「ん?」

おそらく、これは恭子にも予想はできないだろう

「善野先生、夏には戻ってくるみたい」
「え、ほんまか?」

心底嬉しそうな表情を浮かべる恭子

1年の時に一番善野先生に目をかけてもらったのが恭子だった
そこまでの恭子は私と同じDFだった。入ったときは私の方が上手かったくらい

でも善野先生がMFにポジションを変更して、徹底的に手ほどきをした
その結果、みるみるうちに才能を開花させ、2年の春にはすでにレギュラーを獲得するようになった

でもその矢先に善野先生が病気で倒れたのだった
そして急遽顧問に就任したのが、赤阪先生だった。サッカーの経験すらないので、代行顧問として

「うん、だから赤阪先生言ってたのよー。そもそも夏のレギュラーの決定権は自分にはないって」
「・・・・そうか」

笑みはすぐに消えて、またいつもの思案顔に戻った

「じゃあ、レギュラー剥奪なんてのは、もとから空手形やったってことか」
「そうなるのよー」
「となると、この後説明したいってのは、なんでそんなことしたかって話か?」
「そこまでは聞いてないのよー」

話の流れからすれば、それくらいしかないと思う

なぜ私をレギュラーから外すと嘘をついてまで3-1のオーダーから外そうとしたのか
そして絹ちゃんを仮病で下げさせた理由

「・・・宮永照を負けさせるために仕方なく、なんて今更言われたところで特に驚きはせんけどな」
「それで私のことは説明つくけど、絹ちゃんは?」
「昨日の絹ちゃん見とれば、漫ちゃんの方が宮永に対抗できる可能性あるからってだけやろ。もし交代が自由なら、私でもそうしとる。洋榎や絹ちゃんには悪いけどな」
「なら、なんで照を負けさせたいのかって話になる?」
「・・・・それ聞いたところで、どないなるって話やけどな」

まあ確かに・・・
なんとなく疑問が解消する程度のことでしかないのかもしれない

「まあ、代行にもサッカー部の洗礼を受けてもらうくらいのことはせんと気は治まらんけどな」

赤阪先生のエクストリーム土下座・・・
それは確かに見てみたい気はするのよー

「まあ大体の事情は分かったわ」

恭子は柱に預けていた体を、勢いをつけて起こした

「戻ろか」
「なのよー」

733: tell you that I love ...(8-5) 2012/11/15(木) 02:12:27.21 ID:bSatWB8W0
-side 竜華-

-副将戦オーラス
-ドラ ①ピン

ギギギーってのが、今まで照が見てきた能力を反転コピーするという話は聞いた
でも、今回それが2回鳴った

2人分を同時に使用するってことなんやろうか
まあ何にせよこのオーラス、照もかなり無理してくるんやろうな

まあ私は真っ向から戦うなんてことはせーへんからな
上がれそうなら上がるけど、無理なら一番被害が少なくて済むように立ち回るだけや

今日はそれが気持ちええくらいに上手く回っとる

「カン」

ここで照の暗槓。8ソウ、か
ふーん、あんまり積極的にはカンするイメージないけどな・・・

ってことは、1人目は妹の咲ちゃんか?
思い出すのも癪やけど、昨日のミーティングで1-5の話も出とった

1-5の先鋒、宮永咲
彼女は嶺上開花が得意で、嶺上牌は必ず和了牌もしくは有効牌になるらしい
そして宮永照の妹だから、姉のような魔物の可能性があるから気をつけるように

そんな話だった

でも、反転するんやったら、カンしても無駄ツモになるだけな気がするけどな
カンしやすいけど、上がれない、そんな能力とちゃうか?

ドラ表示牌は、中

はぁ、また漫ちゃんにドラ乗りよるやん
漫ちゃんはすでに白を鳴いている。これで白ドラ3は確定

ほんま、上手いこと抑えられたけど、これ以上はちょっと厳しいかも分からんな
親やから新子さんに差し込むわけにも行かへんしな
照が安ければええけど、正直読めない・・・

それにしても、上がれないカンと分かっててそれでもカンしたっていうなら・・・・
リーチしての裏ドラ期待か?
でもさっきから、表のドラはカンドラ含めてほとんど漫ちゃんに乗っとるから、あんまり期待できへん気もするけどな

照が嶺上牌をツモる
でも、そのままツモ切り

やっぱり咲ちゃんのコピーなんやろな

新子さんもツモ切りして、私の番

竜華 手牌:二二三五六七⑤⑥⑦5679 ツモ:四

うん、ええとこ来た
高目ならメンタンピン三色
差し込む先もあらへんし、ここは押しとくか?

「リーチ」

9ソウを横にした瞬間、走る悪寒

――あっ、これまずい

「カン」

パタンと3枚の9ソウを倒したのは・・・

「照・・・」

734: tell you that I love ...(8-5) 2012/11/15(木) 02:45:01.36 ID:bSatWB8W0
-side 照-

――ロード中........選択完了......
――宮永咲

――.........reverse


そう、ここで来るんだね、咲・・・

今日の宥との対局
結局、±0で終わったけど・・・

±0で打つのが楽しいのか、やっぱり私には分からない
宥に話を聞いてみれば、分かることもあるのかもしれないけれど


でも、咲・・・


今日からは、ちゃんと向き合おう


だから、鏡越しなんかじゃなくて、ちゃんと真正面から向き合おう・・・・


お願い、宥
私に、力を貸して

やったことは無いけどもう一回、鏡を出す
2回鏡に写せば、本来の姿に戻るはずだから

意識を集中して
深く、深く・・・・



――ロード中........選択完了......
――宮永咲

――.........reverse


なんとか、上手くいった?

・・・・そう、これが咲が見ている世界
もしほんとにそうなら

ごめんね、咲・・・






竜華が9ソウを切る

「カン」

私にはもう見えている
その嶺上牌が、何なのか

「ツモ、嶺上開花ドラ1。3900」

照 手牌:①②③四五六7 [8888]9-999 嶺上牌:7


副将戦終了

清水谷竜華(3-2) 101800(+ 8000)
上重漫(2-10)  100300(-29000)
宮永照(3-1)   100500(+52000)
新子憧(1-5)    97400(-31000)

740: tell you that I love ...(8-5) 2012/11/15(木) 22:44:24.09 ID:bSatWB8W0
-side 憧-

嶺上開花・・・

まるで咲みたい。でも、どうして?

「なんでや、照。咲ちゃんの反対のコピーならあがれんはずやん」

そういえば今日初めてだろう、意図しない振り込みをしてしまった清水谷さんが少し声を荒らげた

照さんは、息を整えてから答えた
顔も少し青白い・・・

「2回コピーした。だから、普通の咲だよ」
「2人やなくて2回やったんか・・・・」

どうやら清水谷さんは2人分コピーしたと思っていたようだった
私はというと、深く考えても仕方ないからあんまり考えないようにしていたけれど

私は照さんの手牌を改めて見た


照 手牌:①②③四五六7 [8888]9-999 嶺上牌:7


・・・・どうしてこんなことを?
その手牌から疑問が生まれる

だって、8ソウをカンした段階でもうツモ上がりしている・・・
照さんがカンしたとき、手の中はこうなっていたはず

照 手牌:①②③四五六78888999

どの牌をツモってきたにせよ、ツモドラ1の和了
なのにわざわざ上がりを崩して、8ソウの暗槓

照 手牌:①②③四五六7999 [8888]

この形で待っていたことになる

「照さん・・・・」
「なに?」
「どうして、8ソウをカンしたんですか。その段階で、ツモできてますよね?」

清水谷さんと上重さんの視線が照さんの手牌に集まる

「新子さん、咲はその手ではあがれないんだ・・・」
「あがれない?」

ツモはツモなんだから、別にあがれないなんてこと・・・

ふと、照さんの点数が目に入る

100500点

まさか・・・・

「プラマイ0?」
「かつ、2着になれる点数。咲、家族で打ってる時はいつも2着だったから」

上重さんが100300点だったから、その条件を満たすのは3900点しかない

30符3飜か、あるいは60符2飜
でもこれもツモだと1000、2000になって合計が100600点になってしまう
だから出上がりするしかない

ドラが1つあるだけで役のない手
でも出上がりしないといけない

だから、大明カンからの責任払いを狙うしかない

理屈は分かるけど・・・・

「こんな打ち方しか、咲はできないって言うんですか?」

でも今日は、自分を捨ててまで違う打ち方をしようとしてた
点数を取られて悔しがってた

こんなか細い道を進むような、そんな麻雀だけしか打てないなんて、そんなことないのに・・・

741: tell you that I love ...(8-5) 2012/11/15(木) 22:45:56.94 ID:bSatWB8W0
「少なくとも、私と打った段階では、ね」
「でも今日の咲は・・・」
「うん、きっと咲なりに考えて打ったんだと思うよ。私には、まだ分かってあげられないかもしれないけれど」

まっすぐ勝利に向かって進む麻雀じゃないかもしれない
でも、寄り道しながらでも、決して後ろに戻ることさえなければ・・・

ゆっくりと、照さんが立ち上がった
瞬間、体が私の方へ傾いてくる

「照さん!」
「ごめん、立ちくらみ・・・」

私は慌てて照さんの体を抱きかかえた
なんとか床に倒れてしまうのは防げたようだ

「教室戻ろか、照?」

清水谷さんも立ち上がる

「お疲れさまでした」

上重さんも立ち上がって一礼すると、対局室を出ていく

「ありがと、大丈夫」

照さんは卓に手をついて、私から離れた

「ほんとに大丈夫ですか?」
「ちょっと無理しすぎたかな・・・。1日に2連続で鏡を使ったことも、同じ人に2回使ったこともなかったから」
「もう、照のクラス、みんな体張りすぎやで」
「・・・返す言葉がないな」

ああ確かに・・・

穏乃と対局した臼沢さんも、玄のドラを塞いで体力使い果たしてたし
和と対局した園城寺さんも途中で倒れてしまったし・・・

ふと、清水谷さんと目があった

「新子さん、照のことは任せといてくれてええから、教室に戻ってええで」
「分かりました。今日はありがとうございました」

私自身はかなり失点してしまったけど、それでも清水谷さんがアシストしてくれてなかったらもっとひどいことになっていたのは間違いない

「こちらこそ助かったで。新子さんが縮こまってたら、照の親も流すの大変やったろうからな」

必死に鳴いていったのは無駄じゃなかった
うん、やれるだけのことはやれたと思う

最終的にはラスになってしまったけど、トップとの点差は4400点
あとは、淡がきっと勝ってくれる

「照さん、清水谷さん、ありがとうございました」

さあ帰ろう
みんなが待つ教室へ

そして淡の背中を引っぱたいて送り出してあげるんだ、この対局室へ

750: tell you that I love ...(8-6) 2012/11/20(火) 23:44:02.46 ID:PeRsxs880
-side 晴絵-

嶺上開花、か
咲の得意な役・・・反対のコピーだけじゃなく、普通のコピーも使えるということなのかな

「思ったより全然点数残ってるよ、余裕だねー」

試合結果が出て、淡が背伸びする
最下位ではあるけれど、トップまでは4400点差。あってないような差だ

「最後、やっぱり私ですよね、コピー」
「多分ね。ま、戻ってきたら憧に聞いてみな」

複雑な表情をしている咲
お姉ちゃんに打ち方を好まれてないと思ってるんだから、コピーされてどういう風に捉えていいのか戸惑っているんだろう

それにしても、思った以上に接戦だな・・・・

咏が校長先生からの特命で宮永照のクラスを支援していることは知っている
けれど、私は自分のクラスを優先しろと、咏自身からそう言われた



「できることがあれば、なんでも言ってくれていいのに。校長先生には恩があるし」
「いいっていいって、晴絵ちゃんは自分のクラスがあるっしょ」
「でも・・・」
「宮永照を勝たせろって言ったって、結局できるのは露払いだけさね。それに、実力で他のクラスに負けるんなら、それはそれでしょうがない」

一度生徒が卓についてしまえば、教師には何もできない
ただベストの状態で、卓につかせてやるのが使命

「・・・・なら、いつも通りにさせてもらうよ」
「それに宮永照にとっては、晴絵ちゃんのクラスが勝ち上がってくれる方がやる気も出そうだしねぃ」
「宮永咲のこと?」
「そういうこと、姉妹対決なんてのも熱そうだろ?」
「あえて組ませたりはしないけどね。私はいつもオーダーは生徒の好きにさせてるから」
「私も、今回は宮永照に任せるさ」

手伝いを拒むのは、何かあっても自分だけの責任にするつもりなんだろう
まったく、あの人みたいなこと、してくれなくていいのに・・・



そうして好きにさせたオーダー
私が組むとしたらと考えたオーダーとほぼ同じだった

違うのは、次鋒・新子憧、副将・高鴨穏乃というくらい

そして私がオーダーを組んでいたら、おそらくもっと失点は増えていただろう
弘世と憧では、憧が弘世をかわそうといろいろ考えすぎてあまり稼げなかっただろうし
宮永照と穏乃では、まっすぐ行き過ぎて清水谷との連携が上手くいかなかったんじゃないだろうかと思う

なんにせよ、この程度の点差で大将に回せたんだ
十分に勝機はある

しかし、去年の教え子の天江衣が今回は敵に回るとか、なかなか複雑なもんだな・・・

「ただいまー」

憧が戻ってきた
真っ先にしずが駆け寄った

「ラス転落しちゃったよ、ごめんね」
「そんなことない、全然放されてないし、大丈夫だよ!」
「ありがとね、しず」

ほほえんで、憧は淡の元へ歩いていく

「やるだけはやった。後は頼んだ!」

そう言って、手を高く上げる
座っていた淡はぴょんと立ち上がり、ハイタッチした
乾いた、景気のいい音が教室に響く

「もっと点差開いてても良かったのに、私の見せ場がなくなっちゃうじゃん」
「戻ってきて泣き言言わないでよ」
「テルのいない大将戦で、私が負けるわけないでしょ?」

過剰なほどの自信の笑みを浮かべる淡
足元を掬われないといいけど、言っても火に油を注ぐだけか・・・

751: tell you that I love ...(8-6) 2012/11/20(火) 23:46:04.59 ID:PeRsxs880
淡が扉の前まで進むと、声をかけたのは和だった

「淡さん」
「なにー、ノドカ?」
「あとは、よろしくお願いします」

淡は、少しだけポカーンとした表情を浮かべた

「・・・てっきり、油断するなとかそういうお小言が来るのかと思ってたよ?」
「言っても、無駄でしょう?」
「あはっ、わかってきたじゃん」
「まあ、負けでもしたらあなたのオカルトを徹底的にデジタルに矯正してあげますから、そのつもりで」
「じゃあ私が勝ったら、ノドカもオカルト入門だ」

視線が交差し、一気に笑い声が響く
一番大げさに笑っているのは、しずだった

「淡のデジタルとか和のオカルトとか想像できないよ」
「しず、くくくっ、受けすぎ」
「憧ちゃんも十分受けてると思う・・・」

小さく笑う咲
そんな咲が、淡と向き合った

「淡ちゃん」
「なに、サキ」
「ごめんね、すっごく今更だと思うけど・・・・」

ひと呼吸置いて、咲が恥ずかしそうに言った

「私、このクラスで勝ちたいな」

静寂が訪れ、淡はため息を漏らした

「・・・ほんとに今更だよね、サキ」
「逆に咲さんは、今までどう思っていたんですか?」

和も呆れたように尋ねる

「えと、±0にしてればみんな褒めてくれてたから、それでいいのかなって」
「無欲というかなんというか・・・」

憧も流石に呆れ顔だった

それでも、咲はこの対抗戦で得るものがあったってことだ
それだけで十分だと思ってしまうのは、すっかり私も教師が板についてきたのかな・・・

「さあ、そろそろ出番だよ、淡!」

緩んだ空気を引き締めるのも、教師の役目というものだろう

「行って、勝ってこい。祝勝会の場所はもう押さえてあるんだからね」
「ふふ、二次会まで押さえておかないとダメだよ」
「圧勝してきたら考えてやるよ」
「お財布、カラになっても知らないからね」

752: tell you that I love ...(8-6) 2012/11/20(火) 23:47:44.36 ID:PeRsxs880
-side 照-

「ただいま」
「戻ったでー」

竜華とともに、3-1の教室に戻ってきた

「照ちゃん、お疲れさま」

宥をはじめとして、みんなが労いの言葉をかけてくれる
私は、豊音のところへ向かった

「ごめんね、あんまり稼げなくて」
「全然大丈夫だよっ。あとは最終兵器の私に任せて!」

立ち上がり、ぐっと握りこぶしを作る豊音
その表情はやる気に満ちていた

「やっと全力で戦えるんだもん、ちょー楽しみだよー」
「トヨネ、ファイト」
「・・・・がんばって」
「シロの応援なんてかなり貴重だよ、無駄にしたらダメだからね」
「あははっ、とにかく頑張ってきて、豊音」

美術部のみんなが声援を送る
まだ出会って間もないだろうに、それでも結束はかたいみたい

ふと視線を移すと、竜華は怜のところに向かっていた

「どやった、怜。約束は守ったで!」
「正直、あそこまでやるとは思っとらんかったわ・・・。どないしよ」
「なんでそこで悩むねんなー!」

調子が戻ってきたのか、椅子に座っている怜の表情は、わざととわかるような困り顔だった
いったい、なんの約束をしたんだろう?

「なー、怜。さっきの点数なんやったん、そろそろ教えてやー」

そこに江口さんが乱入する
怜はぷいっと顔を背ける

「秘密やってゆうとるやん」
「なあ怜ー、照相手にプラスで帰ってきたら怜のこと好きにしてええって言っとったやん。反故になんてせんといてぇ」

秘密だと言っている先から、竜華が涙目で怜に迫っていた
顔を真っ赤にする怜は、なかなかに可愛かった

「竜華、なんでこんなとこでバラすねん! 最低や」
「だって無しにしようとしとったやん!」
「ボケも通じへんの!」
「今はそんなボケ必要ない!」
「ボケがなかったら大阪人生きられへんのやで!」
「そんなことない、怜さえいれば私は生きていける!」
「・・・・照れるやん」

怜の負けのようだった・・・
江口さんも流石に口を挟むタイミングを測りかねていたようだったけど、ようやく口を開いた

「そっか、さっきの点数はプラスまでの点数か。ところで、挙式の予定はいつごろなん?」
「飛躍しすぎや!」
「すまんな、ボケがないと生きられへんねん。それとも、俺も怜を糧に生きたらええんか?」
「ボケで生きてください、お願いします」

きっちりと90度に腰を曲げて頭を下げる竜華
それをみて、また江口さんはケラケラ笑った

「まあ、あの極悪非道冷酷無比の冷血チャンピオン宮永照にプラスで帰ってきたんやから、上出来やろ。それでこそ俺らの部長やで」

いまさりげに酷いこと言われたような気がするけど、多分ボケだろう
うん、ボケだから、気にしちゃいけない・・・・

「照、そこはツッコミ入れなあかんとこやでー」
「まったくや、なっとらんな」

なぜか怜と竜華にダメ出しされる・・・
え、なんでそんな流れなの??

753: tell you that I love ...(8-6) 2012/11/20(火) 23:49:22.58 ID:PeRsxs880
「いや私、長野県民だし・・・」
「じゃあ長野県民は何が無いと生きられへんのや」

江口さんに質問されるけど、急にそんなこと言われても・・・
長野の名産品ってなんだっけ??

「えっと、蕎麦とか?」
「うわー、ベタ・・・」

そ、そんなこと言われても・・・・
あと、確か長野で生産量1位なのって

「じゃあ、胡桃とか?」
「胡桃、まさかのご指名だよー」

え、そういう意味じゃなくて・・・。木の実としての胡桃であって
でも、鹿倉さんが豊音たちに押し出されて私の前にやってくる

「まさか私がいないと生きられないだなんて、そんな展開考慮してなかった・・・」

え、ここにボケは入らないの??
なんでちょっと恥ずかしそうに俯いてるの?
っていうか何、この展開??

「急すぎて気持ちの整理ができてないけど、生きられないんじゃ仕方ないよね」
「いや、だから鹿倉さんのことじゃなくて・・・」
「さっきみたいに胡桃って呼んでよ!」

ええ、だから何この展開?
ボケなの、違うの??
鹿倉さんの表情ってほとんど変わらないから読み取れないんだよね・・・

私が戸惑っていると、不意に背後から抱きしめられた

「わ、私だって、照ちゃんがいないと生きられない」
「え、宥?」

耳に宥の吐息がかかって、少しだけぽっーとしてしまう

「照ちゃんは、本当は鹿倉さんが好きだったの?」
「ち、違う。私だって、宥がいないと生きられない!」

慌てて否定して、私は振り返えって宥を抱きしめていた

教室は静寂に包まれて
そして一気に歓声で爆発した

「まさかとは思っとったけど、照と宥姉ちゃんはそうやったんか!」
「全然ツッコミ来ないからどこまで演技したらいいのか分からなかったんだけど、まさかの展開っ」
「うわー、うわー、大人だよー!」

周囲の歓声で、一気に冷静さを取り戻す

・・・・今、みんなの前で抱き合ってるよね?

754: tell you that I love ...(8-6) 2012/11/20(火) 23:50:27.57 ID:PeRsxs880
「宥、ちょっと・・・」

やんわり離そうとするけれど、宥はますます強く抱きついてきた

「やだ・・・・」
「でも、みんな見てるし・・・」
「やだ!」

語気を荒らげて、全然離れようとはしない宥

ああ、もうそんなに体を震わせないでよ・・・
すぐに強く否定しなかった私が悪かったから

もう、頼ってほしいんじゃなかったの?

私は宥の頭を優しく撫でた

「ごめんね」
「・・・・うん」

ああ、でも周りの視線が気になって仕方ない・・・

「胡桃の演技、良かったよ!」
「でしょー」
「コイビト、ステキ」
「・・・・・あつい」
「ラブラブだよー、いいなー」

なんでこんなことになってるんだろ

離れたいけど、離れたくない
そんなもやもやした気持ちで・・・

「宥じゃないと、私ダメだから・・・」
「うん・・・・」
「さっきの鏡で疲れたから・・・また、膝枕して」
「うん・・・・」

ようやく、宥が腕を下ろした
ああ、でもなんだかんだで離れてしまうと熱が消えていって寂しくなってしまう・・・

もう、ほんとに、宥じゃないとダメになっちゃったよ



「なあ、末原・・・・」
「なんや、弘世?」
「これから、大将戦だよな、確か?」
「・・・・まあ、ギスギスしとるよりはええんちゃう?」
「ラブラブで羨ましいのよー」

遠くで、そんな会話が聞こえた

761: tell you that I love ...(8-6) 2012/11/24(土) 07:22:06.79 ID:f93sGyvD0
-side 巴-

霞ちゃんの着替えも終わり、お茶を入れて霞ちゃんの前に置いた

「いいんですか、クラスにいなくて?」
「・・・・・いいのよ。それよりごめんなさいね、生徒会の方もあるのに」

一瞬の沈黙
なんとなくは聞いていたけれど、やっぱり3年2組の空気は良くはないのだろう

「いえ、生徒会の方は午前中の当番で済ましてきたから大丈夫ですよ」

あらかじめ着替えの手伝いはお願いされていたし、仮に決勝まで来た場合は私は副将だったのでもともと午後はあけていた

今頃はその副将戦が行われてる頃だろう
仮に私たちのクラスが勝ち上がったとしても、あの宮永照と当たってまともにやりあえるとは思えなかった

昨日の副将戦。初美ちゃんと、姫様のクラスの愛宕さん、そして消えるという1年生
仮にその1年の代わりに私が入っていても、結果はさして変わっていなかっただろう

そう考えると、姫様のクラスが残れたのもギリギリのところだった

マナーモードにしておいた携帯が震える
春からのメール
部室には流石にモニターがないので、試合の経過は誰かに伝えてもらうしかなかった

『南2局、宮永照が緑一色和了』

点数経過は書かれていないものの、少なくともそれが異常なことだけは分かった
先ほど、南1局の親が流れたというメールが来たばかりだったから

霞ちゃんにもメールの内容を伝えると、小さく首をかしげた

「連続和了以外にも何か奥の手があるのかしらね?」
「かも、しれませんね・・・・」

この文面だけでは、それが何なのかまでは分からないけれど

「奥の手、か・・・」

その呟きは暗かった
あまり乗り気ではないのだろうか

「姫様をお連れしたのですよー」
「お待たせしました」

扉が開き、初美ちゃんと姫様が部室に入ってきた

「ごめんなさいね、小蒔ちゃん。わざわざ呼んじゃって」
「いえ、大丈夫ですよ」

霞ちゃんが浮かべた微笑みは、今さっき暗い呟きを発していたとは思えない
まったく、姫様の前ではしゃんとするんだから・・・

「それでお話というのは、恐ろしいもののことですか?」
「ええ、そうよ」

霞ちゃんが座る円卓の正面に姫様が座る
その間に初美ちゃんも座り、私はお茶を用意するために窓際の給湯スペースに向かう
スペースと言っても、机の上に小さな棚があって湯呑やお茶葉、ポットなどが置いてあるだけだけど

手早く用意すると、姫様と初美ちゃんの分を汲んで円卓に戻った

「どうぞ」
「ありごとうございます」
「ありがとうなのですよー」

ふーふーと冷ましながら、一口お茶を飲む姫様

「美味しいです、ありがとうございます」
「いえいえ」

そうして私も初美ちゃんの正面、霞ちゃんが左、姫様が右になる位置に座った

762: tell you that I love ...(8-6) 2012/11/24(土) 07:24:40.53 ID:f93sGyvD0
霞ちゃんは姫様がお茶を飲み終わるのを待つと、真剣な表情を浮かべた

「正直、小蒔ちゃんのクラスも出ているのに許可を求めるのもどうかとは思うのだけどね」
「いえ、霞ちゃんが本気を出した方が衣ちゃんも喜ぶと思いますよ」

姫様のクラス、2-10の大将は天江衣
学年ランクは、荒川憩に次ぐ2位。姫様は起きたり寝たりの差が激しいので3位になっているけれど

霞ちゃんはひとつ咳払いをした

「改めて。姫様、本日の対局でおそろしいものを降ろす許可をいただけますでしょうか?」
「はい、許可します」
「・・・ありがとうね」

半ば形式的なものだ
姫様が許可しなかったことなどないし、そもそも許可がなくても霞ちゃんがその気になれば自分の意志で恐ろしいものを降ろすことはできる。もっとも、霞ちゃんも無断で使うことはないけれど

また携帯が震える
春からのメール

『オーラス、宮永照がヘン……裏初美』

・・・・ふむ、意味が分からない

メールの内容をみんなに伝えると、初美ちゃんが春に電話をかけるようだ

「もしもし、はるる? 裏初美ってなんなのですかー」

それから2、3会話を交わし、電話を切る

南家に座った宮永照が、南と西を鳴いたら東と北が集まってきた。ということらしい。
確かに裏初美と表現できる・・・

「偶然、なんでしょうか?」
「直接見てないから分からないけれど、南2局で緑一色を上がったみたいだし、何かそういう打ち方なのかもしれないわね」
「ほんとに化物なのですよー、昨日のも正直トラウマになりそうなのですよー」

昨日直接対戦した初美ちゃんが一番その恐ろしさを分かっているのだろう
それに加えてさらに奥の手があるとなれば・・・

「まあ、ここで考えていてもしょうがないわ」
「じゃあ私と姫様は、はるるに会ってくるのですよー」
「そのあと、私は教室に戻りますね」

姫様もただ許可を求められただけで、教室で応援したいと思っているんだろう
同じく決勝に残っている霞ちゃんが部室を選んだのとは対照的に・・・

・・・・本当に、どうしてこうなってしまったんだろうか

「霞ちゃん」

出ていく姫様と初美ちゃんを見送る霞ちゃんに声をかける

「何かしら?」
「良かったんですか?」

私の意図を分かった上でだろう、鋭い視線が突き刺さる

・・・・やっぱり、そうなんだろうか
霞ちゃんの気持ちはすでに、固まってしまっているんだろうか

「・・・・その、許可を得るのが、恐ろしいものだけで」
「そこから先に踏み込むつもりはないし、踏み込んではいけないわ」

私の言葉を断ち切るように、静かに、それでいて強く言い切る

「ええ、そうですね・・・・」

霞ちゃん・・・

もう自分のクラスのために戦うつもりなんてなくて
姫様のいる、2-10のアシストに回るつもりなんだろう

「・・・お茶、入れますね」

それを責めるつもりはない
ただ願わくば、その気持ちが誰にも気づかれないように・・・
そして打っている途中でもいいから、その気持ちが少しでも変わるように・・・

私には、ただ見守ることしかできないけれど

763: tell you that I love ...(8-6) 2012/11/24(土) 07:31:32.70 ID:f93sGyvD0
-side 玄-

副将戦も後半の南入してくらいになって、小蒔ちゃんも教室に戻ってきた

「ごめんなさい、ちゃんと応援できなくて」
「ええよ、部活の先輩に呼ばれとったんよね?」

憩ちゃんが微笑む
くるくると水性ペンを回していたが、もうその出番はなさそうだった

宣言通りの倍満直撃もあったし、それに最終的には3着になっちゃったけど、トップとの差は1500点しかない
衣ちゃんなら全然問題ない

それでも小蒔ちゃんは、副将戦の結果を見ると中堅戦が終わって帰ってきたときと同じように頭を下げた

「ごめんなさい、私が後半あんなに振り込んだりしなかったらもうちょっと点差もあったのに」
「心配するな小蒔。むしろ最高の場面で衣に回ってくることに感謝しているくらいだ」

腕組みをする衣ちゃんはニヤリと笑う

「それとも、点差がないと衣が勝てないとでも思っているのか?」
「そ、そんなことないです!」

ぶんぶんと大きく首を振る小蒔ちゃん

「衣ちゃんなら、どんなに離れてても逆転してくれます」
「そうだろう。それにようやく宴に参加できるのに、勝っている状態でバトンをもらっても興が醒める」

今日まで、衣ちゃんが打つ場面は無かった

初日、2日目は楽勝ペースだった
憩ちゃんが荒稼ぎして、私もつないで、小蒔ちゃんに回る頃にはどこか飛びそうになってて、それを小蒔ちゃんが確実に飛ばしてきた

でも3日目は違った
流石に準決勝までくるとレベルが違う・・・
中堅までは1位のままで来たけれど、副将戦で全部ひっくり返された

やっぱり宮永さんを止めるのは容易ではない

けど今日は、それなりに止められた方なんじゃないだろうか

――うらやましいな

今日の漫ちゃんを見てて、そう思った

冬の個人戦を思い出す
私は最後の最後になるまで何もできなかった
煌ちゃんが必死に鳴いて、それを怜さんがフォローしているのを、ただ私は見ているだけだった

ようやくドラを切る決心ができたけど、今でもドラを切ることはほとんどない

でも、今日の漫ちゃんにはドラがどんどん集まってきてたし、それはドラを切っても変わらなかった
あのくらい積極的に動けるようになれれば、私はもう少し強くなれるんだろうか

それに今日の次鋒戦で、ドラを切ってないのに他の人にドラをツモられた・・・
あんなことは初めてだった

ドラを大切にってお母さんに言われて、ずっとそうしてきたけれど・・・
ドラを大切にするだけじゃなくて、その先にもっと重要なことがあるんじゃないかって

具体的にどうしたらいいかなんて分からないけれど、何か試してみなくちゃ
今よりもっと、強くなるために

764: tell you that I love ...(8-6) 2012/11/24(土) 07:33:32.62 ID:f93sGyvD0
「ただいま」

そこに、漫ちゃんが戻ってきた

「おかえり漫ちゃん、頑張ったなぁ」

キュポン

憩ちゃんがねぎらいの言葉をかけると同時に、なぜか水性ペンのキャップを取った
あれ、焼き鳥じゃないはずだけど・・・・

「憩ちゃん、なんでペン持っとるん?」
「え? 頑張ったご褒美にと思うてね」
「そんなご褒美いらんわ!」

ジリジリと間合いを詰めていく憩ちゃん
机を間に挟むようにして横へ動く漫ちゃん
さらに衣ちゃんが動いた

「おお、鬼ごっこか? 漫を捕まえたらいいんだな?」
「鬼ごっこちゃうし。むしろ憩ちゃん止めてや!」
「ふっふっふー、逃げられへんよぉ」

漫ちゃんはいつの間にか、憩ちゃんと衣ちゃんに囲まれていた
天使のような微笑みで、憩ちゃんがどんどん漫ちゃんに近づいていく

「小蒔ちゃんが1位でつないだクラスの点棒を、最終的には3位にしてもうて・・・。これは懲罰動議もんやで」
「いやいやいや、憩ちゃん1位キープとか考えんでええとか言うてたやん!」
「・・・・はて?」
「はて?、やないわ!」
「隙アリだ!」

憩ちゃんが小首を傾げているあいだに、衣ちゃんが漫ちゃんを捕まえた

「よし、ナイスや衣ちゃん!」
「しもうたっ」
「無事捕縛。降伏しろ、漫」
「いややー、いややー」

ジタバタと暴れるけど、すぐに憩ちゃんも空いている左手で漫ちゃんをつかんだ

「なんて書いてほしい?」
「ちょ、小蒔ちゃん、玄ちゃん、見とらんと助けてや」
「あわわ」
「皆さん、楽しそうですね」
「楽しくなんてあらへん、誰か助けて!!」




-side 豊音-

色紙もあるし、ペンもある
楽しみだなー

ちょっとは緊張もするけれど、でもでもこれから戦うのは全力出しても勝てないかもしれない相手
今日まで全力は出すなって照から言われてたけど、やっと全力出して戦えるよー

「準備万端、行ってくるよー」
「トヨネ、ファイト」
「・・・・・頑張れ」

みんなが応援してくれる
みんながここまで繋いでくれた

いろいろあったけど
それも今日の、この対局で終わり・・・

だから、せめて悔いのないように

「勝つからね」

ただ勝利を目指して、突き進もう

768: tell you that I love ...(8-6) 2012/11/25(日) 10:54:15.03 ID:OcTBPknG0
-side 智葉-

「ふう、ようやく副将戦も終わりか」

放送室の前で肩をくるくると回している久を見かけて、私は声をかけた

「お疲れのようだな、久」
「ああ、智葉。流石の私も、あの2人の先生の無茶振りを受けるのは疲れるわ」
「ふふ、たまには無茶振りされる身にもなれってことだ」
「あら、そんなに私って無茶振りしてたかしら?」

まったく、自覚がないのかただとぼけているだけなのか・・・・
まあ、とりあえず用件を済ますか

「大将戦のゲストは私が引き受けるよ」
「え、いいの?」
「というより、いい加減お前をゲストに取られていると、このあとの表彰式とか片付けとかに支障が出る」
「それもそうね。助かるわ」

久が軽く手を上げる
私もその手を軽く叩くと、放送室の扉を開けた

「失礼します」
「お、智葉っち、どうしたの?」

中にいたのは福与先生と、

「もしかしてゲストとして来てくれたのかな☆」
「ええ、会長はこのあと表彰式などの準備もありますから」

瑞原先生。あとは放送に関わっている生徒が数名

「おお、そういうことか。ノリで呼んじゃったけど、悪かったね」
「そうですね、事前にご連絡いただければシフトを組みましたけど」
「昨日まで試合してたし、事前は無理っしょ?」

それはそうだが、昨日の夕方にでも言ってくれれば予定の調整はできたが・・・
言ってはなんだが、福与先生に計画性を求めても無駄か

そろそろ大将戦直前の総括を始めるということなので、席に着いた

「さあいよいよクラス対抗戦も大将戦を残すのみ! 会長に代わって、ゲストには生徒会会計の辻垣内智葉さんが来てくれた!」
「よろしくお願いします」
「ここまでの戦い、智葉っちはどうだった?」
「正直、意外の一言ですね」
「ほうほう、具体的には?」

分かっていたけれど、ずいぶんと雑な実況だな
まあ本職でなく好きでやってもらっているのだから、そんなものかもしれないが

「なんだかんだで、副将戦が終わった段階では3-1がリードしていると思っていました」
「それでもチャンピオンは52000点稼いでるけどね☆」
「不用意な振込が何度かありました、それがなければもっと上積みできていたはずです」
「確かに途中で打ち筋変わってたよね。会長とも何だろうって話してたけど、智葉っちは知ってる?」
「いえ、私も分かりません」

あれこれ予想はできなくもないが、ここでそれを披露しても仕方ない

「そっかー。さてさて、じゃあこの大接戦から、どのクラスが抜け出すと思うか、はやりんも含めて改めて予想してもらえるかな!」

優勝予想か・・・
点数差はほとんど無いに等しい
なので単純に4人の実力の比較になるが

瑞原先生が小さくウインクして、先に話を始めた
先生が話しているうちに考えておけということだろう

「はやり的には、やっぱり2-10かな☆ 3-1の姉帯さんと1-5の大星さんはまだ本気出してないから実力がどこまでか分からないけれど、やっぱり衣ちゃんの破壊力は頭一つ抜けてると思うな☆」
「なるほど、無難な予想だね。3-2はどう?」
「石戸さんはリードを守るのは長けてるけど、この位の接戦になるとちょっと厳しいかな☆」
「じゃあ次、智葉っちの予想行ってみよー」

順番が回ってくる
まあ、概ね瑞原先生の言った通りなのだが・・・

769: tell you that I love ...(8-6) 2012/11/25(日) 10:55:49.14 ID:OcTBPknG0
「まず3年の優勝はないと見ています」
「そうなの?」
「石戸の攻撃力には不安が残るのは瑞原先生の指摘通り。そして姉帯は私もよくは知りませんが、3-1のオーダーの組み方を見れば、おそらく姉帯は特殊な打ち手でしょう」
「え、そこまでわかるの?」

あくまで予想だが、そこまで外れてはいないだろうと思う

「特殊な打ち手には2種類。分かっていれば対応できるか、分かっていても対応できないか。姉帯が前者だからこそ、宮永は自分で極力稼いで姉帯の打ち筋を隠してきたと見ます」

そう、天江衣のような分かっていても簡単に対応できない相手なら宮永先鋒で良かったはずだ
だが宮永はあえて比較的層の薄い副将に座った。そこで稼ぐしかなかった、そういうことだと思っている

「分かれば対応できる程度であれば、残りの面子ならその場でもある程度対応可能でしょう。天江を差し置いて勝つには、弱いのではないかと見ます」
「なるほどー。はやりんにはこの重厚な解説は無理だわー」
「はやりだってそのくらいやろうと思えばできるけどね☆」
「はいはい。それで、2-10と1ー5なら、どっちが勝つと思うのかな?」

昨日の準決勝で戦ったという贔屓目はあるかもしれないが、それでも

「・・・・・おそらく、1-5」
「おお、その心は!」
「ここからは単純に、期待込みです。昨日直接戦って、これからさらに伸びる1年だというのは感じました」

昨日の先鋒戦
福路にある程度抑え込まれるだろうことは覚悟していたが、さらに場のコントロールに宮永咲が加わり、私も小走もまったく思うような麻雀をさせてもらえなかった

その後も1ー5は自分たち以外は全員3年生という卓でも誰も臆することなく、3-18、久たちのクラスを振り切った
赤土先生のクラスは、何かを起こしてくる・・・

「それに、姉の連覇を阻止するのが妹というのも、なかなか見られるものではないですからね」
「おお、それは確かに。なら1-5を応援するしかない!」
「実況はあくまで公平にね☆」

目の前のモニターには、次々と対局室に入ってくる様子が映し出されていた
いよいよ始まる・・・・

770: tell you that I love ...(8-6) 2012/11/25(日) 10:57:57.04 ID:OcTBPknG0
-side 煌-

とうとう大将戦
長かったクラス対抗戦も、今日で終わり

「一番乗りかなー」

まず最初に入ってきたのは、3-1の姉帯さん
なぜか手には色紙を持っていた・・・・一応チェックしておいた方がいいのだろうか

「なになに、色紙ー? もしかしてこの私のサインがほしいの?」
「あ、大星さんだ」

あとから入ってきてのは1年の大星さんだった
姉帯さんは満面の笑みを浮かべて、色紙を上からにゅっと大星さんに差し出した

「うん、記念に是非と思ってね」
「そういうことならお安い御用。この私のサインはとっても貴重だから大事にしてよね」
「もちろんだよー」

手馴れた手つきでぐにゃっとしたサインを書く
あれは絶対に授業中とかに自分のサインを考えて悦に入ってるタイプですね
ですがその堂々たる書きっぷりは、すばらです

「名前は入れたほうがいいの?」
「うん、豊かな音って書いて、豊音ちゃんへって」
「りょーかい。とよ、ね、ちゃんへ、と。はい、できた!」
「わーい、ありがとう!」

大喜びしている姉帯さん
まあただの色紙のようですし、あえて目くじら立てるのもすばらくないですね・・・

「あら、色紙?」

次に入ってきたのは石戸さんだった

「あ、石戸さんだ、サインください!」
「えー、私だけじゃないの?」
「あらあら」

自分だけがサインを求められていると思ったのか、すねてしまう大星さん
サイン色紙を受け取るものの、そうそう自分のサインを求められる機会がないであろう石戸さんはやや戸惑っているようだった

「サインなんてしたことないんだけど・・・・」
「普通に名前書いて、あとは豊音ちゃんへって書いてください!」

慣れていないと言いつつ、綺麗な文字でスラスラと書いていく

「こんな感じでいいのかしら?」
「うん、ちょーうれしいよー」
「そんな普通なサインよりも、私の方が絶対価値があるからね!」

なぜか意地を張る大星さん

771: tell you that I love ...(8-6) 2012/11/25(日) 10:59:24.67 ID:OcTBPknG0
そこに最後の対局者である、衣ちゃんが入ってきた

「む、なにやら物情騒然としているな」
「あ、天江さんだー。サインください!」
「サイン?」
「ちょっと、あなた誰でもいいの!」

また食ってかかる大星さん
なかなかプライドの高い方なのでしょうか

「ふふ、衣のサインを懇望するとは、ものの価値が分かっているようだな」
「むー、最初に求められたのは私なんだからね」

それにしても、衣ちゃんと姉帯さんの身長差がすごいですね・・・・

衣ちゃんは真ん中にでっかく「衣」と書く

「あ、この辺に、豊音ちゃんへって入れてください」
「豊音という名なのか、いい名だ。胸に留めておこう」
「わーい、ありがとう!」

こうして3枚の色紙をもらった姉帯さんは、私のところに向かってきた
うーむ、改めて近寄られるとかなり大きいですね

「これ、預かっててもらっていいですか?」
「ええ、大丈夫ですよ」

色紙を受け取り、机の中にしまっておく

「それでは、牌を引いて、場決めをお願いします」




大将戦開始

東 天江衣(2-10) 100300
南 石戸霞(3-2)  101800
西 大星淡(1-5)   97400
北 姉帯豊音(3-1) 100500
続き