8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/13 22:58:13 ID:Kqft79Ep0
憧「はぁっ、ぁん、や、だ、めっ」 

俺の腕の中にいるお前はあられもない姿で喘いでいる。 
苦しそうな、それでいて快楽に溺れている表情は美しい。 

甲高い嬌声は耳にまとわりついて離れない。 

セーラ「憧、もっと声出して」 

耳元で囁いてやれば、上気していた頬を更に赤らめる。 

憧「ばかっ、なに、、言って、やぁっ、あっ、あぁっ!」 

そのくせ、さっきよりも大きい声を出して、快感に震えている。 

セーラ「憧、もっと」 

憧「ぁっ、あぁ、んっあ、ぁ!!!!シズっ!シズっ!」

引用元: 憧「私のこと抱いてよ」セーラ「は?」

11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/13 23:00:33 ID:Kqft79Ep0
何度も、何度も、そう呼ばれる。 
俺の名前はセーラで、シズやない。 

けど、憧は自分が何を言っているのかなんて、全然わかってへんから。 
いつも、いつもそう。 

何も、気付いてはいない。 

でも、それで気持ちがよくて、憧の気が晴れるなら 

別にそれでいい。 

俺とお前の関係はなんて、所詮はそんなもんやろ? 


と、思ってた。…思ってたんやけど。

15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/13 23:04:45 ID:Kqft79Ep0
数ヶ月前、秋、千里山女子 


セーラ「阿知賀と練習試合?ほぉー」 

浩子「そやから、先輩も出席してくださいね」 

セーラ「見てるだけか?一緒に打つん?」 

泉「向こうサイドは3年生もぜひってことらしいです」 

怜「まあ、軽くならええよ」 

竜華「怜は無理せん程度やで」 

怜「わかってるって」 

竜華「それにしてもなんで千里山なん?」 

浩子「あぁ、それは私が向こうの部長さんと仲良くさせてもらってるんで」 

セーラ「あー、あのボウリングの子やな」 

浩子「そうです、インハイのあとちょっとあって」 

竜華「なるほど」

18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/13 23:09:49 ID:Kqft79Ep0
泉「阿知賀は3年生が抜けて、秋の団体戦は不参加決定らしいんです」 

怜「あら、もったいないなぁ」 

浩子「それで、4人で個人戦にエントリーしたはええけど、」 

セーラ「同じメンツとばっかり打ってても練習にならへんって?」 

浩子「ま、そんなとこで。そういうの聞いてたんで、誘ってみたんですよ」 

竜華「あの子らも頑張ってんねんなぁ」 

怜「保護者目線やな」 

竜華「ふふ、そやな」 


阿知賀との練習試合か、ふふん、おもろそうやな。 

あの生意気な1年も来るんやろなぁ、 
ほんでまた食らいついてきよるんやろなぁ。 

相手を捕らえて、睨み返してくる鋭い眼光が印象深い。 
ああいう向かい方をしてくる相手はあんまりおらんから。

21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/13 23:12:47 ID:Kqft79Ep0
怜「セーラ、嬉しそうやな」 

セーラ「え、そうか?」 

竜華「お気に入りのあの子も来るもんなぁ」 

セーラ「そ、そんなんちゃうわ、アホ」 

浩子「…新子憧ですか?」 

セーラ「あぁ、まあそんな名前やったかな」 

泉「またまた照れちゃってー」 

セーラ「うるさい、こら、泉ぃ!」

22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/13 23:16:15 ID:Kqft79Ep0
週末、千里山女子 


灼「あの、今日は練習試合お願いします」 

浩子「こちらこそよろしゅう」 

穏乃「お願いしますっ!」 

憧「よろしくでーす」 

玄「お願いします!あ、お姉ちゃんは欠席です」ぺっこりん 


相変わらず、新子憧はなんか軽い子やなぁ。 
あれ、うちにおったら監督にしばかれんで。 
ま、阿知賀の子やし別にええけどなー。 


簡単な挨拶のあと、適当に分かれて卓について練習試合が始まった。 
俺ら3年生は、とりあえず様子見で色んな卓の様子を見て回ってる。

24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/13 23:23:51 ID:Kqft79Ep0
…んで、やっぱりちょっと気になる新子憧を見つける。 
そっと後ろに立って手牌を見ると、まあなかなかのリャンシャンテン。 
この子の打ち筋やったら、おそらく鳴いて早上がりしてくるやろう。 

後ろでその様子を伺う。…そやけど、一向に鳴く素振りがない。 
リャンシャンテンはイーシャンテンになってるけど、 
でも、鳴いてテンパイに出来たはずやのに、それをやってへん。 

セーラ「…ん?」 

次の局も、その次の局も新子憧らしさ、とでも言うべきか、 
早さもキレの良さも上手さもまるでなかった。 

新しい打ち方を試してるんかとも思ったけど、どうやらそうでもないっぽい。 
覇気もなく、もはや別人なんちゃうか、とまで一瞬思ったくらいや。

26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/13 23:28:06 ID:Kqft79Ep0
先に対局を終えた阿知賀のドラゴンロードをつかまえてそっと聞いてみる。 

セーラ「なぁ、あの子、どないしたん?あれ」 

玄「憧ちゃんですか?…あぁ、えっと」 

セーラ「なんか知ってるん?」 

玄「…えっと、憧ちゃん最近様子がおかしいんですよね」 

セーラ「そう、みたいやな」 

玄「ボーっとしてることが多かったり、麻雀にも真剣に打ち込めてないみたいで…」 

セーラ「原因は?」 

玄「それがわからなくて…みんなで話し合ったりはするんですけど…」 

セーラ「そうか…しかしあれはあかんやろ。言うて悪いけど、いまいちやで」 

玄「…そう、ですよね」 

セーラ「ん~…じゃあちょっと俺が打ってくるわ」 

玄「すいません、お願いします」 

セーラ「玄ちゃんも頑張ってや~」 

玄「は、はい!」

27: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/13 23:33:51 ID:Kqft79Ep0
セーラ「っておらへん…なぁ、泉~新子憧はー?」 

泉「あれ?さっきまでそこのイスに座って…?」 

穏乃「ほんとだ、憧がいない?」 

怜「ん、どしたん?」 

泉「新子さんがおらへんみたいで」 

灼「どこ行ったのかな…」 

浩子「トイレちゃいます?」 

セーラ「あぁ、そうかもな。ほら、ちゃっちゃと打ってこ」 

泉「はーい」 

穏乃「はーい」 


みんながまた卓についていく。 
俺はそこをそっと抜け出して、トイレまで向かった。 

トイレに行きたかったわけやない、つかまえて、話を聞きたかった。 
何を呆けてるんや、と一言言いたかった。のかも。

30: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/13 23:39:58 ID:Kqft79Ep0
新子憧はすぐに見つかった。 

トイレの近くにある空き部屋のドアが開いているのが見えて、 
覗き込んだら、窓辺で外を見ている新子憧がいた。 

セーラ「おう、他校まで来てサボりかい」 

憧「げっ、何してんのよ」 

セーラ「げっ、って。悪いこと見つかったガキやないんやし。いや、ガキか」 

憧「うっさいわね」 

セーラ「お前こそなに抜け出してんねん」 

憧「…いいじゃん別に」 

セーラ「いいわけないやろ、ここ、お前の学校ちゃうで」 

憧「そんなのわかってるわよ」 

セーラ「なぁ、ちょっと話ええか?」 

ドアを閉めて、俺は新子憧に近づいていく。 
少し遠くからカチカチカチと牌の音が聞こえてた。

33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/13 23:43:57 ID:Kqft79Ep0
憧「なによ?お説教なんて聞かないから」 

セーラ「お前はほんまに不良娘やなぁ、似合いすぎや」 

憧「で、なに?」 

セーラ「あ、とりあえず1つ。俺、3年生やからな」 

憧「だから?」 

セーラ「…だからときたか」 

憧「敬語使えって?」 

セーラ「イヤ、もうええ。それはもうええけど…お前、どないしたん?」 

憧「なにが?主語のない会話は嫌いなんだけど」 


なんちゅう腹立つ子や。顔と態度が思いっきり挑発してきてる。 
ま、でも、こういうやつは嫌いちゃうで?

36: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/13 23:49:15 ID:Kqft79Ep0
セーラ「ふんっ、しょうもない打ち方して他校での練習試合サボって、何を考えてるんや?」 

憧「別に何も。だいたい練習試合も別に来たかったわけじゃないし」 

セーラ「ほう、そう来たか。来たくなかったからサボってる、やる気がないって?」 

憧「そうよ、そんなとこ。だからもう放っておいてよ、で、あんたは戻れば?」 

セーラ「玄ちゃん言うてたで、最近ずっとおかしいってな」 

憧「…だからなんなの?あんたに関係ない」 

セーラ「…あんまり俺のこと怒らせんといてや?」 

憧「はぁ?」 

セーラ「がっかりやな、お前は。気にしてた俺がアホみたいや」 

憧「…」 

セーラ「お前は見所があるって思ってたんは間違いやったわ、全部大間違いやな」 

憧「…そうよ、私は何の特徴もない何の取柄もない」

38: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/13 23:55:22 ID:Kqft79Ep0
憧「だから、だからシズだって…」 

セーラ「え?なんて?」 

憧「…別に。何も」 

セーラ「…?まあ、ただ忘れんなよ、俺はお前との個人収支では勝ったけど、けど」 

セーラ「チームは、阿知賀に手が届かずに3位で…俺の団体戦での対局はあれが最後やったんや」 

憧「…?」 

セーラ「チームのために死ぬ気で頑張ってきたのに、あそこで終わった」 

セーラ「個人戦もあったけど、あんなんおまけみたいなもんや」 

セーラ「俺のインハイは…あれが最高で、あれが全てやった…」 

憧「そ、そんなの私には関係ない」 

セーラ「そうやな、関係ないかもな。敗者の戯言でしかないよな」 

セーラ「でも、俺は阿知賀を応援してたし、俺と戦ったお前に誰より頑張って欲しかった」 

憧「…」

40: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/14 00:00:51 ID:/9E6BSq50
セーラ「決勝ではなかなかええとこは見せられへんかったかもしれんけど」 

セーラ「でも、お前らしい打ち方やったと思う。すごいと思った」 

セーラ「…それが、なんやこれ。お前何してんねん!」 

憧「い、いろいろあんのよ!いつまでもインハイのときの私じゃない!」 

セーラ「そらそうや、でも、打ち方まで変わるとかおかしいやろ…何があったんや?」 

憧「…何もない」 

セーラ「別に無理に聞くつもりはないけど、でも、阿知賀のやつらに言えん内容なんやったら…」 

セーラ「俺が聞くで?…なんか、ようわからんけどお前のことは放っておけん」 

憧「なにそれ」 

セーラ「さあな、わからん。…けど、お前なんか辛そうやし、力になりたい」 

セーラ「俺に出来ることがあるんやったら言うたらええ、俺を頼ってええから」

42: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/14 00:07:06 ID:/9E6BSq50
憧「すごい自信…暑苦しいんだけど」 

セーラ「暑苦しくて結構や」 

憧「ふふ、あんたやっぱり面白い人だわ」 

セーラ「そらどうも。…ま、なんでもしたるから、ちょい元気とやる気出せや」 

憧「なんでも?」 

セーラ「え?いや、そら限度とかいろいろあるけど…」 

憧「なんでもって言ったじゃん、先輩」 

セーラ「うわ、ずるいなぁお前」 

憧「…なんでもいいならさ、」 

セーラ「お、なんや?」 


憧「私のこと、…抱いてよ」 


セーラ「は?」

47: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/14 00:14:36 ID:/9E6BSq50
憧「そしたら、やる気と元気、出るかもね」 

憧「あ、なら私の話をしてもいいよ」 

セーラ「待て待て、上級生をか、からかうなよ」 

憧「セーラの顔真っ赤じゃん、なに照れてんの」 

セーラ「こら、呼び捨てにすんな、って照れてへんわ!」 

憧「赤いじゃん、頬。…ま、どうせ無理なんでしょ、いいよ別に」 

セーラ「俺がそ、それをしたとしてお前がどうなんねん」 

憧「やる気と、元気が出るんじゃない?」 

セーラ「す、好きでもない人とそんなことしてか?」 

憧「そうでーす」 

セーラ「ふざけんのも大概にしとけや、新子憧」 

憧「フルネームで呼ばないでよ、野暮ったいなぁ」

49: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/14 00:21:29 ID:/9E6BSq50
セーラ「ほな憧、それになんの意味があるんか教えろや」 

憧「…さぁ、そんなのしてみなきゃわかんないし」 

セーラ「なんやとこら!」 

憧「いいよ、もういい。バカらしくなっちゃった」 

セーラ「…」 

憧「じゃ、あたし先に戻るから」 

セーラ「…」 

憧「今のこと、全部忘れて」 

セーラ「……お前はほんまに俺にそうされたいん?」 

セーラ「それでお前は元気になるん?」 

憧「…そうなんじゃないの?そう思ったから口に出したわけだし」

52: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/14 00:26:28 ID:/9E6BSq50
セーラ「わかった、じゃあ、そうしたらええ」 

憧「は?ちょ、本気?」 

セーラ「お前は本気ちゃうんか?」 

憧「いや、だ、だって…」 

セーラ「携帯のアドレス教えろ、ほんで、今夜うちに泊まれ」 

憧「今日?は?え、そんな準備とかしてないし、だいたいっ」 

セーラ「だいたい?」 

憧「いや…別になんもない…はい、これアドレス」 

セーラ「あとでメールするから。今日は家に親もおらんし、ちょうどええわ」 

憧「それほんとなわけ?」 

セーラ「ほな、先に戻るで」 

憧「え、ちょ、」

55: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/14 00:30:43 ID:/9E6BSq50
憧が何か言いたそうやったけど、無視するように空き部屋を出た。 
自分から言い出したくせに、いざこうなると焦るとかほんまガキやな。 

いや、俺も焦ったしどうしようかと思ったけど…。 
でも確かになんでもするって言うたしな。 

…あいつがそれでいつも通りになるって言うなら、やってやればええんちゃう? 


なんて、最初は軽い気持ちで。 

抱く、が何を意味するかをわかったつもりでいた。 
余裕ぶって、ほんまに、…軽い気持ちやった。

56: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/14 00:35:07 ID:/9E6BSq50
家の場所と時間をメールして、先に家に帰って憧を待った。 
でも、来るはずないって思ってた。 

一人で大阪に残るなんて、他の阿知賀の子らが許すわけないやろうし、 
そもそもやっぱりあれはその場限りの冗談で…と、思ってた。 

けど、そう思うのと同じくらい、あいつは絶対来るって思ってた。 
何の自信かわからんけど、来るって思ってた。 
あいつはそういうタイプのやつや、って思ってた。 

だから、やっぱり、ほら、チャイムが鳴った。 
ガチャリとドアを開ければ、 
私服姿の新子憧が気まずそうな顔をしてそこにいた。

61: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/14 00:43:16 ID:/9E6BSq50
憧「…来た、けど」 

セーラ「どこで着替えたん?制服やったやん」 

憧「あぁ、もうそんなことどうでもいいでしょ?」 

セーラ「いや、気になるし」 

憧「買ったの!で、お店のトイレで着替えたの!それだけ!」 

セーラ「なるほど、…ってここに来るために服買ったってことか?」 

憧「べ、別にそういうわけじゃ」 

セーラ「そうかそうか、悪かったな。まあ、入って」 

憧「…お邪魔します」 

セーラ「言うてた通り、親はおらんし、気を使わんでもええよ」 

憧「う、うん」 

ひどく強張った顔。 

当たり前か、だって、そういうこと、しに来たんやもんな。 
ここに来たってことはそういうことやもんな。 

だから、そんな短いスカートなんやろ?

63: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/14 00:47:16 ID:/9E6BSq50
セーラ「…確認してええか?」 

と、口を開いたのは自室に招き入れて直後のことやった。 

憧「なによ?」 

セーラ「阿知賀の子らには何て言うたん?」 

憧「買い物とかしたいし、一人になりたいからって言ったけど」 

セーラ「そうか、…ならええわ」 

憧「最近腫れ物だから、あたしは」 

セーラ「自覚あるんやな」 

憧「ま、それくらいわかる」 

セーラ「で、もう一つ確認。…こういうの、初めてなん?」 

憧「さぁ、どうかな」 

セーラ「ほんまのこと言わへんとめちゃくちゃにしてしまうで」

67: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/14 00:51:06 ID:/9E6BSq50
憧「…セーラは経験あるの?」 

セーラ「まあな」 


思い出したくもない記憶がよぎる。 
経験があると言えばある、でも、自分にとっては思い出したくない。 

それでも、今こうして余裕ぶっていられるのはあの日のおかげか。 
…一瞬寒気がした。咳をして誤魔化す。 


憧「……意外すぎて、言葉でないんだけど」 

セーラ「で、お前は?」 

憧「…ない」 

セーラ「おいおい、処女のくせにあんなこと言うたんかいな。もう」 

憧「…だからなに?処女だったら人に抱いてって言っちゃいけないの?」 

セーラ「その強気の出所はどこやねんもう」

71: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/14 00:55:40 ID:/9E6BSq50
憧「あんたはなんでもしてくれるんでしょ?」 

セーラ「…限度、わきまえてや」 

憧「それは、自信ないけど」 

セーラ「ま、ええわ…荷物置いて、シャワーへどうぞ」 

憧「う、うん…」 

セーラ「一緒に入る?」 

憧「ば、バカ!何言ってんの!?」 

セーラ「うぶやなぁ、可愛いなぁ」 

憧「ふ、ふざけたこと言わないで!」 


なんて大きな声で言うてたけど、照れ隠しやんな? 
まあ、そう思うことにするわ。

76: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/14 01:02:32 ID:/9E6BSq50
憧「あの、お先…」 

セーラ「早かったやんってシャワー浴びたのに私服のままかい」 

憧「だってこれ以外の服ないし…あんたは入るの?」 

セーラ「俺はさっき入ったから」 

憧「そう…」 

目に見えて大人しくなった。 
シャワーを浴びたら、今から何をするのか現実的に考え始めたか。 

セーラ「じゃあ、ベッドに来てや」 

憧「…うん」 

憧がベッドに腰掛ける。俺はそれを立ったまま見下ろしてる。 
短いスカートが、白い太ももが眩しい。

78: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/14 01:09:27 ID:/9E6BSq50
あぁ、このままこの子としてしまうのか。 
自分自身も、今からすることの重大さを痛感する。 

この子は好きでもない俺に初めてを捧げようとしてる。 
そう、それは俺と同じ。俺の場合、不可抗力やったけど。 

本当にそれでいいのか、ともう一度聞いてみようかと思うけど 
でも、どうせ「うっさい」って言われるのがオチやから言わへん。 

セーラ「…キス、してええの?」 

憧「…いいよ」 

いいよ、と憧が言い終える前に唇を奪った。 
湯上りの憧の唇は柔らかくて暖かくて。 

優しくしようと思ったのに、気付いたら強く唇を押し付けていた。 
憧は顔を少し仰け反らせている。

80: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/14 01:13:32 ID:/9E6BSq50
憧「んっ…」 

唇の隙間から漏れる吐息が色っぽい。 
とても年下には思えない。そう、身体つきだって…。 

ドキドキしている。緊張してる。 
でも、憧はきっとそれ以上にドキドキしているだろうし緊張している。 

やっぱり、ちゃんとリードしてあげないと。 
そう思って、吸い付くように憧の唇を貪った。 

憧「っぁ、はぁっ」 

短く、吐息が零れる。 
でも、それは憧だけじゃない。 

セーラ「はぁっ、んぁっ、はぁ、はぁ」 

頭の中が蕩けていく。 

こんな風に熱く口付けを交わすのはいつ以来だろう。 
そう思うのに、頭は考えることを拒否している。 


何も考えられない。考えたくない。

83: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/14 01:17:18 ID:/9E6BSq50
そうして、考えること拒否したあたりから 
俺は何かの糸が切れたように憧を求めた。 

何度も「いやだ」「やめて」と言われた気がする。 
それでも手も口も何もかも、止めることが出来なかった。 

我に返ったとき、目の前には全裸の憧がいて、 
その上に半裸の自分が乗っかっていた。 

憧「はぁ、はぁ…バカっじゃないの…はぁ、はぁ」 

憧は荒い息を整えながら悪態をつく。 
それでも、表情には悦楽や快楽の色が見える。 

セーラ「気持ちよかったくせに」 

憧「うっさい…はぁ、はぁ…」 

案の定うるさいと言われる。 
それでも、俺が憧と行為に及んだことは消えようもない事実で。 

覆いかぶさって憧を抱きしめると身体は熱かった。

85: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/14 01:22:18 ID:/9E6BSq50
セーラ「熱い身体やなぁ」 

憧「…誰のせいよ」 

セーラ「お前がしてくれって言うからやったんやで」 

憧「そう、だよね…」 

それっきり黙りこんだ憧を俺はずっと抱きしめていた。 

これで何かわかったことがあるんか? 
お前は何を悩んでいるんや? 
お前の望みを叶えたんやから教えろや。 

言いたいことや聞きたいことはいっぱいあったけど 
それでも、黙り込んだ憧に質問をぶつけることは出来なかった。 

そのまま俺らは眠りについた。 
裸のまま抱き合って、暖め合っていた。

86: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/14 01:26:04 ID:/9E6BSq50
朝、目が覚めると憧はおらんかった。 

一瞬、昨日のことは全部夢やったんかも知れへんと思ったけど 
憧が持ってきていたバッグを見て夢じゃないとわかる。 

セーラ「あいつどこ行ったんやろ…」 

ふらふらと起き上がって自室のドアを開けると、 
下の階にある浴室からシャワーの音が聞こえてきた。 

セーラ「…シャワーか」 

憧がいることを音で確認した俺はもう一度ベッドへ戻った。 
疲れたのか、身体がだるい。 

あいつが戻るまでもうちょっとだけ寝るか… 

瞼が下りてきて、もう一度夢の世界に…と思ったとき、 
ガチャリとドアが開く音がした。

89: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/14 01:30:47 ID:/9E6BSq50
憧「あれ、まだ寝てんの?」 

湯上りの匂いがする憧がバスタオル姿で部屋に入ってくる。 

セーラ「やっ…さっき起きたとこや」 

ゆっくりと身体を持ち上げて、ベッドの上に胡坐をかいた。 
俺が起き上がると憧はベッドの空いたスペースに腰掛ける。 

上気した肌、背中がすごくエロい。 
昨日のことをどうしても思い出してしまう。 

憧「…あんま、見ないで」 

セーラ「お、おうすまん」 

俺の視線に気付いたか、そう言われて俺は目線を自分の脚に向けた。

93: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/14 01:40:55 ID:/9E6BSq50
憧「あのさ…聞かないの?」 

憧は俺に背を向けたまま、小さな声でそう言う。 

セーラ「んー…聞きたいけど、言いたくないなら別に」 

憧「おかしいじゃん、あんた聞きたいからあんなこと…したのに」 

セーラ「まあ、そうなんやけど…でもええよ、言いたくなったらで」 

憧「…わかった、ごめん」 

セーラ「はいはい」 

返事をしながら髪にぽんぽんと触れると、 
憧の素肌を晒している肩がビクンと跳ねた。 

憧「っ!」 

セーラ「す、すまん」 

慌てて手を離す。

94: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/14 01:46:19 ID:/9E6BSq50
憧「…いいよ、別に」 

憧の顔が見えへんからどんな表情かわからへんけど 
でも、怒っているわけではなさそうというのはわかった。 

セーラ「で、ちょっとは元気出たん?」 

憧「…うん、少しは」 

セーラ「それはよかった」 

憧「なんていうか…その、」 

セーラ「ごめんって言うつもりならもう何も言うな」 

憧「…わかった」 


俺らはそこでまた黙りこんで、しばらくそのままで 
朝日を浴びながら憧と二人きり。

96: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/14 01:54:37 ID:/9E6BSq50
簡単な朝食を作って食べ終えるころには 
憧は笑顔を見せるようになって俺は少し安堵していた。 

これは頼まれたとか、それはそうかも知れへんけど 
俺は2歳も年下の子に手を出して、行為に及んだ。 

罪悪感が全くないわけじゃなかった。 
だから、憧が笑ってくれて少しほっとしていた。 


憧「じゃあ…帰る」 

セーラ「あぁ、気をつけてな」 

憧「あのさ、」 

セーラ「ん?」 

憧「…また、会って欲しいって言ったら?」 

セーラ「んー…」 

玄関で憧はそんなことを言い出す。

99: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/14 01:59:48 ID:/9E6BSq50
会って欲しいというのはまた話を聞いて欲しいということか 
それともまたこんなことがしたいということか…。 

憧の表情を見ると、どう見ても後者や。 

セーラ「さぁ、気分次第やな」 

憧「私のこと放っておけないんでしょ?」 

セーラ「…ま、確かに」 

憧「じゃあ…また連絡するから」 

セーラ「わかった」 

憧「…またね、セーラ」 


俺の返事を聞いて大きく頷いた憧は俺の家を出て行った。 
憧が出て行って鍵を閉めると、大きなため息が零れた。 

何をしてるんやろ…何でこんなことに。 
と思わずにはいられない。 

軽いノリで、じゃあ、やってやるなんてノリで。 

それでも、実際それを終えて彼女を送り出して、 
我に返って、とんでもないことをしたんやないかって思えてきた。

102: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/14 02:07:42 ID:/9E6BSq50
でも、それでも、そんな風に思っていたのに、 
こんな関係はだらだらと、それでも確実に続いていった。 

週に1回、憧からメールが届く。 
場所と時間が指定してあって、俺はそこへ行くか、憧が俺の家に来る。 

何度も何度も身体を重ねた。 
回を増すごとに憧は乱れるようになっていった。 

恥ずかしい言葉も、恥ずかしいことも、 
恥ずかしがりながらもそのことに興奮している様子で。 

たまに、何のためにこんなことをしているんだっけ、 
と我に返ることはあっても、だからこんなことを止めようとは 
俺から言い出すことはなかったし、 

もちろん、憧がそんなことを言うはずはなかった。

104: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/14 02:11:11 ID:/9E6BSq50
そして、憧が行為の最中に「シズ」と名前を呼ぶようになる。 
「シズ」は阿知賀の大将のことやろう。 

けど、憧は自分がその名を呼んでいることに気付きもしない。 
無意識で呼んでいるんやろうか。 

最初は何を言っているんやろうと疑問に思ったけど 
今じゃそれをすんなり受け入れてしまって 
憧はどうせ何もわかってないから、と諦めている。 

それに、それで気持ちがよくて、憧の気が晴れるなら、別にそれでいい。 
こんなことを延々と続けているのは、結局はやっぱり憧の為やから。 

こんな関係を何て呼ぶんやろ?セフレ、っていうんやっけ。 
何度も身体を重ねようが所詮はそんなもんで、大した関係じゃない。 

それは自分が一番わかっている。

106: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/14 02:14:02 ID:/9E6BSq50
そやけど、憧が何も言わないことには何も先に進まない。 
会って身体を求めるだけじゃ何も変わらない。 

そうなのに、わかっているのに、止められない。 

止められない理由?わかってる、自分が一番わかってる。 
でも、それを口にしたらあかん。考えたらあかん。 

それは自分の為でもあるし、憧の為でもある。 
余計なことは考えず、求めに応じていればいい。 

そんで、今日もまたいろんなものに蓋をして 
見えないフリをして憧を受け入れる。 





とりあえずカン

108: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/14 02:16:51 ID:/9E6BSq50
鯖が不安定な中支援していただいてありがとうございました 
もうちょっと続く予定ではあるんですか 
書き溜めも尽きたし鯖も不安定なのでここまでにしときます 

続きは週末にでもできたらいいなぁと思ってます 


それではみなさんおやすみなさいです

114: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/14 03:24:08 ID:UXVlz5yi0
乙乙 
続編にも期待