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651: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 10:32:52 ID:yLD4VRRD0
@会場某所 

 対局を終えたかじゅとモモ。 

 二人は、揃って対局室を出ると、控え室へ戻る途中にあるベンチで、足をとめた。 

 並んで座る、かじゅとモモ。 

かじゅ「モモ……控え室に戻らなくていいのか?」 

モモ「先輩こそ……チームの代表者じゃなかったんすか……?」 

かじゅ「そうなんだが……もう少し……こうしてお前といたくてな」 

モモ「私もっす……」 

 ベンチに座り、寄り添う二人。 

 それは、もし通りかかった者がいたならば――。 

友香(あれ……? ねえねえ、あれ鶴賀の三年生でー? なんでこんなところでー?)コソッ 

泉(疲れてはるんやろ。そっとしといたほうがええですよ)コソコソッ 

 この通り、かじゅ一人が戦いの疲れを癒しているように見えただろう。 

 しかし、それは確かに二人なのだ。 

 強い絆で結ばれた、二人なのだった。

前回
咲「え? どの学年が一番強いかって?」次鋒戦  

引用元: 咲「え? どの学年が一番強いかって?」

655: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 10:34:22 ID:yLD4VRRD0
@会場某所 

初美「お疲れサマですよー」 

霞「あら……わざわざ迎えに来てくれたの……?」 

初美「私だけじゃないですよー」 

はるる「」ポリポリ 

巴「っていうか……お祓いしないとマズいでしょ」 

霞「それもそうねぇ」 

小蒔「霞ちゃん、お疲れっ!」 

霞「あら……小蒔ちゃん。これから対局?」 

小蒔「うん……そうだけど、どうかした?」 

霞「ううん、なんでもないわ。二年生チームはトップタイだから、小蒔ちゃんも頑張ってね」 

小蒔「うんっ!! 霞ちゃんや初美ちゃんに負けないように打ってきます! それでは……またあとでっ!!」 

 握り拳を作って、笑顔で対局室に向かう、神代小蒔。 

 しかし、その後ろ姿を見守る永水女子の四人の顔は、多少、緊張していた。

656: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 10:35:40 ID:yLD4VRRD0
霞「巴ちゃん……悪いわね。今日はもう一回お祓いしてもらうことになりそうだわ」 

巴「いえいえ……そのために来たようなもんだから……」 

初美「相手が誰だかはわからないですけどー……同情するですよー」 

はるる「」ポリポリポリ 

 と、その背後から――。 

憩「あれ……? 永水の皆さん……なんやおそろいで」 

霞「あら……あなたは……三箇牧の」 

憩「荒川憩です。今日は中堅で小蒔ちゃんと組ませていただきます」ペコリン 

霞「へえ……そうなの……」 

巴(うわっ……二年選抜のオーダー組んだやつ誰よ……よりにもよって姫様と荒川憩を組ませるなんて……!) 

初美(これは……中堅のあの二人には申し訳ないですけどー……私と霞は次鋒で正解だったかもですねー) 

はるる()ポリポリポリポリ

657: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 10:38:26 ID:yLD4VRRD0
@会場某所 

絹恵(ふうー……しんどー……って、浩ちゃんのやつ、迎えに来ーへんのかーい。ま、ええけど……) 

 愛宕絹恵、精根尽き果てたといった風に、通路の端にしゃがみ込む。 

 と、そこに通りかかる人影。 

洋榎「よっ、絹っ!」 

絹恵「お……! おねーちゃん!? なんで!!?」 

洋榎「なんや……そんな驚くことないやろ」 

絹恵「いや……やっておねーちゃん今回は敵やから……まさか迎えに来てくれるとは思っとらんくて」 

洋榎「あーちゃうちゃう。絹の迎えやない。うちがこれから対局なだけや」 

絹恵「あ……じゃあ、インターハイと同じで中堅なんやね」 

洋榎「せや。ま、どこに置かれようとうちはいつも通りがつーんと勝つだけやけどなー」 

絹恵「おねーちゃんは……強いからなー……」 

 絹恵、小さく溜息。洋榎、それを知ってか知らずか、軽やかに絹恵の背中を叩く。 

洋榎「なに言うてんの自分。絹も頑張っとったやんけ。さっきの次鋒戦後半、絹がトップやったやんか」 

絹恵「え……おねーちゃん……?」

658: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 10:39:46 ID:yLD4VRRD0
洋榎「ま、うちなら最後の和了りは華麗に裏を乗っけてチームを単独トップにしてたとこやけどなー。そこらへんが絹の甘いとこや。やけど……さっきのはむっちゃカッコよかったでー? 
 うちなー、控え室でな、あれうちの妹なんやでーって他県のやつらに自慢しとったんや」 

絹恵「おねー……ちゃん……!!」 

洋榎「絹もなー、もうちょいちょいっと強かったらうちとタメ張れるようになんでー。やから、もっと気張って……自信持って打ちや。せやったら……安心して姫松を絹に任せられるわっ!」 

絹恵「う……うんっ! 頑張るでっ! うち、もっと強くなんねんっ!」 

洋榎「頼んだで。ほな、おねーちゃんが麻雀の見本見せたるから、絹も控え室で自慢するとええで。あれが自分のおねーちゃんやー言うてな。ま、この愛宕洋榎を知らんやつなんておらんやろけどなー」 

絹恵「うんうん……! せやな! おねーちゃんは有名人やからなっ!」

659: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 10:40:55 ID:yLD4VRRD0
 ちなみに、その影では。 

Q(先輩方……空気読んでくださいよ……! 今出て行ったらなんもかんもぶち壊しですからね……!!) 

セーラ(わ……わかっとるわそんなこと!) 

怜(愛宕姉妹……妹のほうは……なかなかのふとももの持ち主と見た……!) 

竜華(なんやあんた……! また浮気かいな……!!)

660: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 10:43:30 ID:yLD4VRRD0
すばら「お待たせしましたあああ!! 全国選抜学年対抗戦もとうとう中堅戦までやってきましたあああ!! 各チーム、オーダーは以下のようになっていますっ!!」 

@一年選抜:森垣友香(劔谷)・二条泉(千里山女子) 

友香「驚いた。泉さん、なんか先輩ばっかみたいでー?」 

泉「ホンマや……じゃあ、セーラ先輩とかぶらんほうにうちが出るわ。さすがに卓に三人千里山はマズいやろ……」 

@二年選抜:神代小蒔(永水女子)・荒川憩(三箇牧) 

小蒔「荒川さんは、前半と後半のどちらがいいですか?」 

憩「うちはどっちでもええよー。ほな、あっち向いてホイで決めよか?」 

@三年選抜:愛宕洋榎(姫松)・江口セーラ(千里山女子) 

洋榎「なんや知った顔ばっかりやなー。劔谷に千里山に三箇牧……あとは晩成でもおったらなー……完全に近畿大会なんやけど」 

セーラ「洋榎さんは近畿大会かもしらんけど……フナQ以外の千里山が勢揃いって……俺らからしたら部活の順位戦のノリやで、コレ……」 

@混成チーム:園城寺怜(千里山女子)・清水谷竜華(千里山女子) 

怜「おおおおおお!! 巫女さん……!! 巫女さんのふとももっ!!」 

竜華「ほな……怜は巫女さんの出るほうなー。となると……当然うちの相手はナースやなっ!」

661: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 10:46:41 ID:yLD4VRRD0
@実況室 

すばら「中堅戦が間もなく始まろうとしていますっ!! 鹿児島の神代選手を除けば全員が近畿勢っ! うち六人が大阪府の選手です!!」 

初瀬「激戦区大阪……その中でも選りすぐりのトップランカー……近畿大会で必ず名前の挙がる方々ばかりです。かく言う私も近畿地区なので……観客席からよく見ていましたが……こうして勢ぞろいとなると、本当に壮観ですね」 

純「姫松と千里山からは合計で九人参加してるからな。ま、こういうことも起こるとは思ってたぜ」 

菫「注目すべき選手ばかりで目移りしてしまいそうですね。ただ……まあ、当然一人だけ異彩を放っているのは……なんと言っても彼女だと思いますが」 

すばら「唯一の非近畿勢……永水の神代小蒔選手ですねっ!」 

純「強い弱いは別にして、何をやらかしてくるかわかんねえって意味では……あいつがこの中堅戦の目玉……もとい台風の目だろうな」 

初瀬「先ほどの薄墨選手や石戸選手と同じ高校というだけで……身震いしてしまいそうです」 

菫「果たして鬼が出るか蛇が出るか……楽しみな一戦です」 

すばら「それでは……各選手席に着いたところで――中堅戦前半を開始いたしましょうっ!!」

662: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 10:48:25 ID:yLD4VRRD0
@対局室 

東家:一年選抜・森垣友香(劔谷) 

友香「(私ら劔谷が勝てなかった千里山の昨今ダブルエース……それに秘境のお姫様が一人……こりゃかなり面白そうな卓でー!)よろっ!」 

北家:三年選抜・江口セーラ(千里山女子) 

セーラ「おっ、怜が前半に出てきたかー。(そういや怜が活躍し出したのは最近やからな……竜華とは何度か公式の個人戦でぶつかっとるけど……怜とガチで敵同士なんは初めてやないか?)ほな……みんなよろしくなー」 

西家:混成チーム・園城寺怜(千里山女子) 

怜「お手柔らかにな、セーラ。(ふふん……残念ながら……セーラなんて眼中にないんや……うちの狙いは永水の巫女さん……おっ、劔谷の副将もなかなかのもんで……さすが全国選抜はええふとももしてはりますなー!)他のお二人もよろしゅう」 

南家:二年選抜・神代小蒔(永水女子) 

小蒔「みなさん、今日は最後まで、よろしくお願いしますっ!!」ペコリ 

 中堅戦前半――開始ッ!!!

664: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 10:51:01 ID:yLD4VRRD0
@実況室 

すばら「さあ……始まりました中堅戦前半!! 起家は兵庫県・劔谷高校の森垣友香選手ですっ!」 

初瀬「森垣さんは、どことなく、伝統的で物静かなイメージの劔谷の人たちとは少し違う感じがしますね。型破りというか。インターハイの準々決勝では、千里山の船久保選手と阿知賀の鷺森選手を相手にプラス23200点のトップを取っています」 

純「オレはよく知らないやつだが、どんな打ち方をするやつなんだ?」 

初瀬「全体的に火力は高めですね。インターハイではいきなり親の倍満を和了っていました」 

菫「若さが溢れている感じがしますね。先が楽しみな選手です」

665: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 10:51:56 ID:yLD4VRRD0
@観戦室 

澄子「みんなはどう思いますか、友香……勝てると思いますか?」 

梢「わかりません……相手はあの江口セーラと」 

美幸「園城寺怜だもんなもー」 

莉子「神代小蒔もいますしね……」 

美幸「でももー」 

澄子「?」

667: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 10:53:52 ID:yLD4VRRD0
美幸「友香は……あのインターハイのあと……私たちが負けた千里山と阿知賀の牌譜をよく研究してたもー」 

莉子「そうですね……遅くまで部室に残って。千里山や阿知賀だけじゃないです。全国の強豪校……個人戦の上位選手……いろんな人の打ち方を研究していました」 

美幸「私や梢ちゃんはもう引退で……たぶん競技麻雀をやるのはインターハイが最後だったからもー、あの試合をどこか思い出としてみてるところはあったもー」 

梢「でも……友香は私たちとは違うものを見ている気がします。私たちは……ベスト16に残れただけでどこか満足していましたが……友香はそうじゃない。来年、再来年……もっと先まで見据えているんだと思います」 

莉子「友香ちゃんは……勝つつもりで戦ってますよ。私をまくった高鴨さんと同じチームで……」 

梢「私に三万点差で勝った江口セーラと……」 

美幸「私に五万点差つけた園城寺怜に……勝つつもりで戦ってるもー」 

澄子「そういえば、あの子、開会式のときに言ってましたね。劔谷を代表して勝ちたいと思いますって……」 

莉子「友香ちゃんなら……やってくれます!」 

美幸「そうだなもー。みんなで信じて見守ろうもー!!」

669: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 10:55:45 ID:yLD4VRRD0
@対局室 

東一局・親:友香 

友香(みんな、今頃観戦室で見てるかな。私……頑張るんでー。あのインターハイ……美幸先輩は……園城寺怜や宮永照を見て……世界の違いを感じるって言ってた。莉子は……負けた後……牌を握るのが恐いって言って……ずっと泣いてたっけ)タンッ 

友香(私は……みんなが弱かったとは思わない。けど……それでも足りないものがあったのは確かなんでー。 
 だから……勝てなかった。私はそれを埋めたいと思う……あんな……たった一回のトーナメントで……全てが決まったとは思わない。私たちはまだまだ強くなれるし……もっと上を目指せるんでー)タンッ 

友香(世界が違うなんてことはないんでー……! 園城寺怜も……江口セーラも、牌に愛された子とか言われてる神代小蒔も……ただ私たちから見れば高いところにいるというだけで……その山の頂……宮永照が頂点に立つ山は……どこまでも陸続き。 
 険しいけれど……一歩一歩前に進んでいけば……辿り着ける。それを――今日、私が証明してやるんでー!!)タンッ 

 四巡目 

友香「リーチでー!」クルッ

670: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 10:58:16 ID:yLD4VRRD0
小蒔(わっ……親リー! これは振り込めませんっ!)タンッ 

怜(一巡後に……8000オール? 劔谷の一年生……いきなり無茶苦茶やな。セーラ……これ鳴けるか?)コホッ 

セーラ(高そーで嫌な感じやな。む、怜が危なそうなところを切ってきた……? ははん、さては鳴かんとあかんパターンか。ええで……それは鳴けへんけど……協力したる……)タンッ 

怜「(おおきに……)ポン……」コホッ 

セーラ(ん……ちょい待った……? ってことは……これが劔谷の和了り牌? なんや……こんなん抱えとったらテンパイできひんやん! 怜のやつ……こないな面倒な牌を俺に回すとは……ええ度胸やんけ!)タンッ 

怜(いや……そんな睨まれても……うちの牌で鳴けへんかったセーラが悪い。せやったら巫女さんに掴ますことができたんや) 

友香(一発ならずでー。ま、わかってたけど。一巡先が見える園城寺怜が相手ではそうそう一発は狙えない。ま……ダマでもリーチかけてても園城寺には和了る未来が見えるわけだから……ここはリーチが正解だったはずでー。 
 園城寺だっていつでもズラせるわけじゃないし。神代小蒔が振り込んでくる可能性もあるし。私のツモはあと十回以上残ってる。和了るチャンスはまだまだあるんでー!)タンッ 

小蒔(うう……安牌ないですね! で、でも……頑張りますっ!!)タンッ 

怜(さて……さっきの8000オールを見たから劔谷の和了り牌はわかっとる。ここは他家のために安牌を増やしつつ……ゆっくりテンパイを目指すとしよか……)タンッ

671: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 11:00:53 ID:yLD4VRRD0
 終盤 

怜(って……劔谷の子……めちゃめちゃ引き強いなー! あれから二回も鳴くことになるとは思わへんかった……カンチャンで和了り牌が三枚しかないっちゅうのに……ズラしてもズラしてもツモで引いてくるとかプチ化け物やでこの子。 
 東一局やいうのにもう疲れたわ……全部セーラのとこに送れればうちもセーラもテンパイできたんやろうけど……そう上手く鳴けたら苦労せんわな。結局一枚ずつみんなのところに回してしもうた。これじゃ親以外はノーテンやろなー)コホッ 

セーラ(だあああ……怜から回された牌が最後まで浮いてもうた!)タンッ 

友香(園城寺……三副露か。もし全部私の和了りをズラすための鳴きだったら……もうどうやったって和了れんでー)タンッ 

 流局ッ!! 

セーラ「ノーテン」 

友香「テンパイでー」 

小蒔「ノーテンです」 

怜「ノーテン」 

友香(まあ……そう簡単には和了らせてくれないと思ってたけど。勝負はまだまだ始まったばかりなんでー!) 

怜(せやな……勝負はまだ始まったばかり……こっからが本番やで……)ゴゴゴゴゴ 

友:110200 神:107200 セ:103500 怜:78100 供託:1000

672: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 11:05:37 ID:yLD4VRRD0
東一局一本場・親:友香 

怜(劔谷の一年生……直に対戦してみるとやっぱ強いなー。あの準々決勝……フナQが『あいつは放っておくしかなかった』ゆうてたからなー。別に不思議能力を持っとるわけでもないんやろ。ただ単純に強い。ええなあ……そういうの……憧れるわ)コホッ 

怜(うちは麻雀が強いわけやないねん……ちょっと人より先が見えるだけや。地力では劔谷の一年生のほうが上。一年だった頃のセーラにだって……能力ナシで戦ったらまず勝てへんやろな)コホッ 

怜(やからやろか……強豪校の一年生レギュラーっちゅうんは……どうしても憧れてまう。それも……純粋に麻雀の技術を高めてレギュラーになったような……泉とか、この子とか、阿知賀の二人、それに清澄の原村和とかな)コホッ 

怜(一巡先が見えへんようになったら……うちはきっとあの子たちには勝てへん。実際……インターハイでは能力の通じひんチャンピオン相手に何もできひんかった。ダブルとかトリプルとか……そりゃ死ぬ気で頑張ったけど……麻雀でなんとかしたんと違う。 
 その点……新道寺はすごかったわ。あとで二回戦の牌譜をちゃんと見てみたら……宮永照相手に先鋒戦で他校がトバんかったのは新道寺が頑張ったからやったもんな……)コホッ 

怜(うちはまだ……一巡先を見るんを……どっかでズルしてると思うてる。そりゃ……天江衣みたいに自分の能力に誇りを持って戦ってる人もいっぱいおるやろ。大星淡みたいにとんでもない能力を持ちながらも慢心しない子もおるやろ。 
 けど……うちはそうやない。うちは……どれだけ勝っても心は三軍なんや。セーラや竜華が……活躍してるのを見て……世界が違うなーって憧れてるだけの……応援席でチームの勝利を祈ってるだけの……その他大勢や)コホッ 

怜(やけど……! そんなうちの三軍根性を見抜いてても……見抜いてたからこそ……監督はうちをエースにしてくれた。セーラや竜華にも……うちが千里山のエースやって認められた。そんなんもう……死ぬ気で頑張るしかないやん……!!)コホッ 

怜(みんながうちを認めてくれてる。うちが心の中で何を思うてても関係なく……みんながうちを千里山のエースやって言うんや。その期待は……重たいけれど……応えたい。インターハイで負けて強くそう思えたんや。 
 やって……三軍やった頃のうちみたいに……華々しい舞台で戦う強い人を……すごいなー言うて見てる子は……千里山にだって他の高校にだっていっぱいおる。 
 今はたまたま……どういうわけかうちがその強い人ってことになっとって……せやから……強い人に憧れる人の気持ちがわかるから……そういう子たちの期待に応えるためにも……うちは勝ちたい……!)コホッ

674: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 11:07:59 ID:yLD4VRRD0
 八巡目 

友香「またまたリーチでー!」 

怜(せやろな……そこでリーチやろな……そんなん……一巡前から知っとったで……!!) 

怜「ほな……うちもリーチや」トッ 

セーラ(おおお!! 来たで来たでー……怜の絶対一発リーチ。ま、逆に言うと……これでズラせたら怜のリーチはただのリーチや。未来予知能力の弱点やな……怜は未来が見えるけど……その見えとる未来が……行動を起こすことで他家にも伝わってまう)タンッ 

友香(江口セーラ……園城寺のリーチに対して動揺なし……!? ってか鳴く気もなしでー……!? ちょ……これは……困ったことになったんでー!!)タンッ 

小蒔(ま……また先にリーチされてしまいました……しかも二家同時……どうしましょうっ!?)タンッ 

 小蒔の出した牌、誰も鳴かずッ!! 

 瞬間、未来は不確定から、確定へッ! 

怜「……ツモ! リーチ一発ツモ赤一……2000・4000は2100・4100」パララ 

セーラ(ま、せやろなー) 

友香(親っ被り……さっきのも合わせて二本もリー棒持っていかれたんでー……!) 

小蒔(はう……! 一発! すごいです!) 

怜(セーラ……動いてこんかったな……何を考えとるんや……?) 

友:105100 神:105100 セ:101400 怜:88400

675: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 11:12:12 ID:yLD4VRRD0
東二局・親:小蒔 

セーラ(なんや……怜……自分がリーチしたらみんなこぞって鳴きに来るとでも思てんのか……? 
 そんなことないで……そりゃ……怜の一発率は半端やないけど……普通に打ってたって一発は来るし……一発消しやって……状況によってやるときもあればやらへんときもある。それだけのことや……)タンッ 

セーラ(麻雀は……相手の和了りを潰したもんが勝つんと違う。最終的に一番点を稼いだもんが勝つ競技や。俺が怜のリーチに反応しなかったのやって……簡単なことや。 
 怜……一発で和了りたいなら好きなだけ和了るとええで……俺はその上を行くだけのことや……!!)タンッ 

 五巡目 

セーラ「ほな……反撃開始といこかっ! リーチやッ!」スチャ 

友香(こっちもか……江口セーラ。二年で名門千里山のエースになった……関西でも屈指の高火力選手……!)タンッ 

小蒔(ま……また先制リーチ! みなさん速いですねっ! め、めげませんよっ!)タンッ 

怜「チー……」タンッ 

セーラ(っと……なんや……さすが俺……一発やったんか。ま、一発消しくらい……誰だってようやるわな。怜……そんなんで俺を止めた気になっとんのやとしたら……大間違いやで……!)タンッ 

友香(園城寺が鳴いたってことは……これが江口セーラの和了り牌。オーケー……これなら回せる。こっから追いつくんでー!)タンッ 

小蒔(できることを……やります……!)タンッ 

怜(こうやって鳴くと……少しの間未来が見えなくなるんが辛いな……)タンッ

676: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 11:14:20 ID:yLD4VRRD0
セーラ(怜……怜は未来予知が反則かなんかやって思うてて……それで俺からエースの座を奪ったこと……気に病んでたみたいやけど……)タンッ 

セーラ(そんなこと……関係ないねん。能力とか……関係ないねん。どんな競技やって……生まれ持った才能……人にはない特別……そういうもんを武器にして戦ってるやついっぱいおる。 
 俺は女やけど……女やってだけで……例えば男より速く走ることができひんのやで……? やけど……それがなんやねん……!!)タンッ 

セーラ(みんな同じ力で……同じ土俵で戦ってたってオモロないやん……!! 世の中……強い弱いがバラバラで……能力もバラバラで……いろんな人がおる! やからこそ……その中で勝ちたいって思えるんやろ……!! 
 一巡先が見える? 見ればええやん! 鳴いて速攻? 鳴けばええやん! 連続和了? させときゃええやん!! 俺は俺の麻雀で勝つだけやっ!!)タンッ 

友香(さあ……こっちも張った! さすがに追っかけはしないけど……園城寺の気が江口セーラに向いてる今は和了るチャンスでー……!)タンッ 

小蒔(劔谷の人……危ないところを切ってきましたね……こちらもテンパイしている感じでしょうか……!)タンッ 

怜(セーラ……うちがおっても和了る気満々やな……! その真っ直ぐさは……先輩相手に堂々と打っとった一年の頃と……変わってへん……!!)タンッ 

セーラ(ズラされようとなんだろうと……和了れんときは和了れんし……和了れるときは和了れるんや……!! 麻雀って……そういうもんやろ……!! なあ……怜……!!) 

 セーラ、ツモ牌を、手牌の横に叩きつけるッ!! 

セーラ「ツモや……! タンピン一盃口赤一ツモ……裏一……!! 3000・6000ッ!!」 

友香(うっわー……相変わらず高っけー!) 

怜(一発消しても打点は変わらんかったか……! やっぱ……セーラはカッコええなあ……! 憧れるわ……!! 千里山のエースは……誰がなんと言おうと……やっぱりセーラしかおらんな……!!) 

小蒔(お、親っ被りですか……!?) 

友:102100 神:99100 セ:113400 怜:85400

677: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 11:18:46 ID:yLD4VRRD0
東三局・親:怜 

友香(千里山の二人……さすがの強さでー。江口セーラを相手にするなら……満貫以上の手じゃないと稼ぎ負ける。園城寺を相手にするなら……せめて両面以上の待ちじゃないと鳴いてツモが潰される。なにその縛り……! ま、望むところでー!)タンッ 

友香(千里山はレギュラー五人が全員この対抗戦に出てるから……出れなかった人のこととか考えないで……自分の麻雀を打てばいいだけ。 
 対して私は……出れなかったみんなの分まで頑張るって縛りを最初から設けてるんでー……今更満貫縛りだろうが両面縛りだろうが……どんとこいでー!!)タンッ 

友香(さて……このタイミングでこれが来たかー……どーしよ。普通に打ってたら千里山の二人に持っていかれる感じがする……なら……ここは麻雀らしく……大博打してみるんでー!!) 

友香「……カンッ!!」パララ 

小蒔(暗槓ですか! しかも……晒したのがドラの北……!? 劔谷の方……これでドラ四ですね……!!) 

友香「さーて、カンドラ表示牌はー……いっし西ッ! またまた北ドラでー!!」タンッ 

小蒔(カンドラ北……!! ド……ドラ八……!!?)タンッ 

怜(見えとったけど……現実になると一層迫力が増すでコレ。まあ……普通に打っとればうちなら振り込まんけど……これはツモられても相当痛い。ただ……この子の引きの強さを考えると……ズラしても和了られるような気もするわ。 
 ほな……普通に打っててもあかんな……ここは……速攻で流してみよか……!) 

怜「チー!」コホッ 

セーラ(お……? 怜が鳴いた? 劔谷はまだ張ってないような感じやけど……ってことは、ズラしの鳴きやなく速攻の鳴きか。へえ……全然昔より頭回るようになっとるやん……今の怜なら一巡先が見えなくたって……十分イケてると思うで……!!)タンッ 

友香(ほい来たテンパイ……! しかも絶好の三面張ッ!! まさかの園城寺がナイス鳴きっ! これはいくしかないんでー!!) 

友香「リーチでー!!」クルッ

678: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 11:20:59 ID:yLD4VRRD0
怜(む……さっき鳴いて未来変えてもうたから……今はわからへんけど……なんやまた一発でツモりそうやな……させへん……うちが先に和了る……!!) 

怜「ポンや……!」コホッ 

セーラ(仕掛けてきよるなー……怜。やけど……そういうんが裏目に出るのもまた……麻雀やで……!!)タンッ 

友香「ツモ……!! リーチツモドラ八……裏は乗らずで4000・8000でー!!」パララ 

怜(ぐ……倍満……!? たまに無理して仕掛けてみたらこれかいな。こりゃ大打撃やで……!!) 

小蒔(み……みなさんだんだん手が高くなってます……!!) 

セーラ(劔谷の一年生……先が楽しみなええ選手やな。俺はそういう高いの大好きやで……もちろん自分が和了るときはやけど……!!) 

友香(これでトップでー! みんな見てるー!? 私……千里山が相手だって全然負けてないんでー!! 最後まで応援よろっ!!) 

 ここまで、園城寺怜、満貫! 江口セーラ、ハネ満! 森垣友香、倍満……!! 

 対局はまさに高打点の叩き合いの様相……ッ!! 

 そんな中、一人和了りのない永水・神代小蒔は――!! 

小蒔(す……すごいです……目も眩むような打ち合い……! なんだか……なんだか頭がくらくらして…………眠くなってきました………………)ウトウト 

 魔神の覚醒――目前ッ!!! 

友:118100 神:95100 セ:109400 怜:77400

680: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 11:25:19 ID:yLD4VRRD0
@実況室 

すばら「森垣選手の倍満が決まりましたあああ!! 一年選抜・森垣選手、千里山のダブルエースを相手にまったく引けを取っていませんっ!!」 

初瀬「今の北カンのような強気の打ち方は、とても好感が持てます。同じ一年生として、森垣選手には頑張ってほしいです!」 

純「大星や鶴賀の東横のときは、同じ一年とは思えないとか麻雀として成立してないとか言ってたのに、初瀬ちゃんは非オカルトに甘いなぁ」 

初瀬「すいません……。でも、誰だって親近感が湧く人を応援したくなりません?」 

純「そうか? オレはどっちかっていうと、衣みたいに途方もなく強いやつのほうが見ていて気持ちいいけどな」 

菫「私は……照の麻雀に親近感や気持ちよさを抱いたことはないですね。私の場合、いつかあいつに勝ちたいと思ってますから、馴れ合ってる暇なんてありません。 
 そういう意味では、初瀬さんにとってうちの淡なんかは……敵として厄介だから親近感が湧かない……つまり、初瀬さんはゆくゆく淡と戦って勝つことを考えている……と言えなくもない」 

初瀬「いや……さすがにそこまでは……」 

純「ま、オレにとって衣は敵になりえないからな。常に味方だから、勝てなくたって別にいいんだよ。あいつの強さは、オレの強さみたいなもんだ」 

菫「今対局している面子でいうと、千里山の園城寺選手は、どこか江口選手に憧れている感じがしますね。かたや、二年の秋まで無名だったエース。かたや、一年生のときからベンチ入りしていて二年生から堂々デビューしたエース。 
 園城寺選手は去年の秋季大会までずっと三軍だったと聞きます。色々と、思うところがあるのでしょう」 

初瀬「森垣さんなんかは、見ていて、憧れって感情とは無縁な感じがしますね。誰が相手だろうと勝ってやる……そんな気迫を感じます。千里山の江口選手もそんな感じですよね」

681: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 11:27:34 ID:yLD4VRRD0
純「憧れかぁ……考えてみりゃ面白いよな。例えば、初瀬ちゃんは、小走先輩に憧れてるんだよな。小走先輩みたいになりたいと思うか?」 

初瀬「もちろん! 先輩は私の憧れで、目標で、いつか対等な立場に立ちたいと思ってます」 

純「オレの場合、衣が好きだが、衣になりたいとは思わねえな。強いやつに憧れるやつってのはいくらでもいるけどよ、強いやつの側からしてみれば、案外、どこにでもいるような普通のやつに憧れを抱いたりするのかもしれねえ。 
 さっきの石戸霞なんかは、化け物みたいに強いが、もっと別の何かを求めているように見えなくもなかった。鶴賀の二人のこと、羨ましそうに見てたもんな」 

菫「面白い問題提起ですね。うちの淡は強いですが、もっと強い照に憧れています。照みたいになりたいと言っていた。しかし……照はどうなんでしょうね。あいつは、何を目標にして、何に憧れているのか。気になるところではあります」 

初瀬「チャンピオンですか……あそこまで強いと、もはや、憧れとか畏れではなく……ただただ遠いなぁとしか思えなくなってきますね」 

純「そう言ってやるなって。うちの衣じゃねえが、あいつら魔物も人間なんだよ。友達になっちまえば何も遠い存在なんかじゃねえ。そんな風に敬遠されるのは、向こう側にしてみりゃけっこう寂しいもんなんだぜ?」 

菫「まあ、強過ぎる力は他人を遠ざけますからね。初瀬さんみたいに感じるのも致し方ない。けれど、これは知っていてほしいです。強い力を持つ人には……本人にしかわからない苦悩がある」

682: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 11:29:06 ID:yLD4VRRD0
初瀬「なるほど。じゃあ……神代選手も……そうなんですかね」 

純「さあ……わからねえな。見た感じ、あんま悩んでるようには見えねえが」 

菫「巫女さん仲間も多そうですしね」 

初瀬「ふむ……なんだか、少しだけ、強い人たちのこと……理解できそうな気がしてきました。 
 この対抗戦が始まったときは……ここに出てくるような人と卓を囲むなんてできっこない……そう思ってましたけど、今なら、一回くらいは一緒に麻雀を打ってみたい……強さを肌で感じてみたい……そう思えなくもないです」 

純「いい心掛けだな。が……果たして、神代小蒔の全力を見て……同じことが言えるかな、初瀬ちゃん?」 

初瀬「え……」 

菫「神代小蒔選手……対抗戦が始まる前、照は彼女のことを、自分より異質だと評価していました。ここまでは大人しいですが……そろそろ何かが来そうな予感がします。 
 天江選手と淡に続いて……今日三人目の牌に愛された子……一体どんな闘牌を見せてくれるのやら」 

初瀬「お、お二人とも……脅かさないでくださいよー!」

685: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 11:36:31 ID:yLD4VRRD0
@対局室 

東四局・親:セーラ 

友香(暫定トップ……けど……まだまだ大変なのはここからなんでー。私の今日の目標は……みんなに……目の前の化け物たちが勝てる相手なんだと証明すること。 
 今は確かにトップだけど……これは私の運がたまたまよかっただけ。それじゃダメ……下手したら私まで世界が違う人扱いされる……そんなの嫌なんでー)タンッ 

友香(ターゲットは……やっぱり園城寺怜……! 美幸先輩……見ててくださいよ……! 先輩に五万点差つけた化け物にも……やり方次第で勝てなくはないんだって……私が証明してみせるんでー!!)タンッ 

怜(なんや……劔谷からごっつうマークされとる感じするわ。まあ……うちとセーラは劔谷の三年に勝っとるからな。その弔い合戦のつもりなんやろか。 
 セーラなら……喜んで受けそうやな。うちはそういう暑苦しいの苦手やけど……せやけど……別にむざむざ負けてやる気はあらへんで……!)コホッ 

友香(園城寺怜の未来予知は……いつでも見えてるわけじゃない。牌譜と睨めっこしてようやく見つけた……ほんの僅かな隙。園城寺はよく他家のツモ和了りを消すけど……消したあと数巡だけ……何度か……一巡後に裏目ることがあった。 
 二巡裏目りはけっこうあったけど……一巡裏目りはほとんどない。そして……そのほとんどないうちのほとんどが……何らかの形で園城寺が動いた直後に起きてる。 
 たぶん……この人……予知した未来と違う打ち方をすると……数巡の間は未来予知が使えなくなるんだ……そこが攻略の糸口でー!)タンッ 

怜(っと……また劔谷のツモか。七対ドラドラツモ……待ちは五筒か……満貫やないか。させへんで……!) 

怜「チー」コホッ

687: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 11:41:46 ID:yLD4VRRD0
セーラ(今日はよう鳴くなー怜。たぶんツモ消しなんやろうが……俺やないとすると劔谷か。 
 ただな……怜……得意技を得意になってやり過ぎると逆に狙われんで。まあ……怜のツモ消しはせざるを得ない得意技やからな。せんかったらせんかったで和了られるのがわかっとるわけやから。 
 やけど……チャンピオンが打点を上げんとあかんっちゅうのと同じで……せなあかんことってのは……能力に振り回されて自分の意思とは関係なく打ってまうってのは……相手からすれば……付け入る隙になるんやで……)タンッ 

友香(鳴いたな……園城寺……!! この場……江口セーラと神代小蒔は重たそうな感じだから……今のはきっと私のツモをズラすための鳴き……ってことは……私はここでツモだったはずでー……ってあれ……?) 

 怜がツモをズラした直後、友香の手に舞い込んできたのは、やはり和了り牌の五筒ッ!! しかも高めの赤ッ!! 

友香(へえ……これはなんなんだろ……和了っとけってことでー……? 麻雀の神様……もしいるんだとしたら気紛れ過ぎでー……! 
 けど……私は神様に好かれなくたっていい……牌と仲良くなれなくたって別にいい……私は私の仲間に好きになってもらいたいんでー……!!)タンッ 

 友香、和了り拒否ッ!! 

 その一打の不可解さを理解できたのは、この場では未来を見た怜一人ッ!! 

怜(はあ!!? なんやねんそれ……!!? 意味が……意味がわからん!!? ツモ切りで赤五筒……!?
 まずズラしたのに高めで和了ってきたことにびっくりやけど……それ以上に……ハネ満和了り拒否ってどういうことやねん!!? 何考えてんのや……この一年……!!?) 

友香(へえ……驚いてる驚いてる。なるほど……園城寺の見える未来は一通りだけなんだ。自分が改変したあとの未来は……園城寺には見えない……!!)

688: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 11:46:28 ID:yLD4VRRD0
小蒔(なんだか上家が危ない気がしますね……と、五筒ですか。一応、合わせておきましょう)タンッ 

怜(って……うちのツモまで赤五筒かいな。半端ないなこの子……さっきの巡目……うちは鳴くとしたら劔谷本人から鳴かへんと……それ以外のズラしは意味なかったってことやんな……チャンピオン並みの引きやで……この子……!)コホッ 

セーラ(うえ……何コレ……劔谷から全員がツモ切り五筒って……気持ち悪っ!! 
 なんや……筒子一通行けるかと思うてたけど……五筒が三枚も見えてんのやったら……タンピンにシフトやな……いくら怜の赤五筒が鳴けるからって……鳴き一通なんて俺は絶対やらへんで……)タンッ 

友香(さあて……これで張り替え……完了……!!)タンッ 

小蒔(五筒がこれで涸れましたか。上家……筒子に染めているようには見えません……これは通るでしょうか)タンッ 

怜(劔谷……今張り替えよったんか……!? まさか……この子……うちが未来改変するとちょっとの間一巡先が見えなくなるんを見抜いてるんか……!!? それでわざわざ張り替えやすい七対子を選んだんか!! 
 実際……和了りが見えたときは不思議や思うたんや。七対子みたいな単騎待ちや東一局みたいなカンチャン待ちは……和了り牌が少ない分うちにツモを潰されやすい……それを踏まえて……さっきは三面張で和了ってきた……やのになんでまた単騎なん……ってな。 
 今の打牌……間違いないで……狙って張り替えをしたんや……! うちの未来予知の弱点を突くために……!! ハネ満ツモまで捨てて……!!? 信じられへん……想像以上ちゅうか想定範囲外やわ……この子……!!)コホッ 

セーラ(ええ感じに真ん中に寄ってきたな。ヤオ九牌さん、ほな、サイナラ!)タンッ 

友香(さっきから和了れ和了れうるさいよ神様……ただの和了りなんて私の眼中にはないんだ……狙うは園城寺怜からの直撃のみ。絶対に成し遂げて……みんなに見せてやる……! 
 園城寺怜……一巡先を見る者……! あなたには……未来が見えるのかもしれない……けど……!! それは見えるだけであって……私たち劔谷の未来は……誰にも奪えないんでー!!)タンッ 

小蒔(安牌……増えました……!)タンッ 

怜(くっ……あと一巡もすれば未来が見えるようになんのに……! まだ見えへんか……しかもこんなときに限って……安牌ないやん……!!) 

 怜、困惑ッ!!

689: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 11:49:51 ID:yLD4VRRD0
怜(この状況を狙って作ったんか……劔谷……!! こないな……こないな打ち方……うちは知らんで……!! 絶対思いつかん……思いついてもやろうと思わん……仮にやろうと思うたとしてもできる気がせえへんわ……!!) 

 怜、一周回って、苦笑ッ!! 

怜(ああ……振り込みが恐いのなんて久しぶりやわ……! そういや一年の頃はようセーラや竜華にボコられとったっけ……懐かしいで……この感じ……何をやっても負けてまうような……追い詰められる感じや。 
 そういうんを……弱いなりにぎりぎりでかわしていくんが……楽しかったな。ごくたまーにそれでセーラや竜華に勝てたときは泣くほど嬉しかったなぁ……! ええやん……劔谷……!! あんたオモロいで……!!!) 

 怜、場を眺めて、捨て牌を選ぶ。 

 手に掴んだのは、一筒ッ!! 

怜(本来七対子にヤオ九牌はむしろ危険や。劔谷の七対子は断ヤオと複合できひん感じやったしな。かなりの確率でありえる。 
 やけど……前巡……劔谷が待ちを変えたあと……神代もセーラも一筒を切っとる。そのあと劔谷は手替わりしてへんから……もしこの子が一筒で待ってんのやとしたら……地獄単騎でその上山越。 
 まあ……ハネツモ和了り拒否をしたこの子ならやりかねん……狙いはうちみたいやし……せやけど……そんなん一々考慮しとったら何も切れなくなるわ。 
 ジャンケンでグー出す言うてる相手にパー出そうかなどうかな悩むのと一緒や。答えはあらへん。未来が見えへん今のうちに頼れるのは……確率だけや。その確率が……一筒が最も安全や言うてる。これで振り込んだら……相手が一枚上手やった……それだけの話や……!!)タンッ 

 怜、覚悟の一筒切りッ!!! 

 劔谷・森垣友香の待ちは果たして――!!

690: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 11:52:11 ID:yLD4VRRD0
友香(みんな……!! 莉子……! 澄子先輩……梢部長……美幸先輩……!! 見てますか……!!? 私……化け物を捉えましたよ……!!! 私らのいる世界は……どこまでも繋がってるんでー!!) 

 友香、力強く手牌を倒すッ!! 

友香「それロンでーッ! 七対子ドラドラ……6400でー!!」ゴッ 

怜(あ……和了り拒否からの山越地獄単騎……!? ホンマにようやってのけよったな……!!? 和了られといてなんやけど……素直に感動やわこんなん……!!!) 

セーラ(うっわ……嘘やろ……なんやその和了り……!? わけわからへん!! たぶん……怜から直撃を取りたかっんやろけど……点数的にはハネ満ツモのほうが削れたやん……! 点数度外視で直撃狙いって……俺やってそんな無茶はやらへんで……!!) 

小蒔(ふわっ……!! これ……三巡前にハネ満和了り拒否……!? それに私の一筒を見逃しですか……!! 
 よくわかりませんが…………すご過ぎて何がなんだか………………どうしましょう……………………とても眠いです…………………………)ZZZZZZZZZZZ 

友香(みんな……私……やりましたんでー!!!)ピース 

友:124500 神:95100 セ:109400 怜:71000

691: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 11:54:12 ID:yLD4VRRD0
@観戦室 

莉子「友香ちゃん……!! カメラ目線でピースしてる……!!」 

梢「なんだか無茶をしていると思ったら……そういうことですか」 

澄子「そういうこと、とは?」 

美幸「たぶん私らに見せたかったんだもー。私らが勝てなかった千里山……でも……それは決して勝てない相手じゃなかったってもー」 

澄子「あの子……そんなことを考えて打ってたんですか……」 

梢「ええ……あの七対子も……きっと莉子を励ますための和了りだと思いますよ」 

莉子「はい……! 友香ちゃんの……頑張れ……負けるな……って声が聞こえた気がします……!!」 

美幸「なんだかなーもー……引退する気だったけど……まーた麻雀やりたくなってきたなもー!」 

梢「そうですね。インターハイは終わってしまいましたけど……もう少しだけ……みんなと一緒に打ちたいものですね」 

澄子「まだコクマとかがありますよ……! 先輩方……また一緒にやりませんか?」 

莉子「それがいいです! 私も……友香ちゃんに負けないくらい頑張って……強くなってみせますっ!!」 

梢「そうですね……友香が帰ってきたら……みんなで今後のことを話し合ってみましょうか」 

美幸「でも……今は先のことよりも……とにかくみんなで友香を応援するもー!」 

莉子「はいっ!」

693: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 11:56:48 ID:yLD4VRRD0
@実況室 

すばら「あ……あの園城寺さんが振り込んだ……!!!!?」 

純「煌ちゃん煌ちゃん、実況忘れてるって」 

すばら「はっ!? これは申し訳ありませんっ! あまりに森垣選手がすばらなことをやってのけたので……驚いてしまって……!!!」 

菫「花田さんは園城寺さんと打ってますからね、驚きもひとしおでしょう」 

初瀬「あんな和了りを見たら誰だって驚きますよ。本当にすごかったです。きっとかなり園城寺選手の牌譜を研究したんでしょう……私も見習わなくてはいけませんね」 

菫「そういえば、園城寺選手はインターハイで照に振り込んでいましたが、彼女がリーチ時以外に振り込んだのは、あれが公式戦では初なんだとか。ということは、これが二度目ってことになるでしょうね」 

すばら「まさにセカンドインパクトッ!!」 

初瀬「えっ? なんですかそのワードチョイス……」

694: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 11:58:21 ID:yLD4VRRD0
純「これで一年選抜が頭一つ分抜け出したな」 

すばら「はいっ! というわけで、南入しました! 今しがた、ハネ満和了り拒否――からの山越地獄単騎で園城寺選手からまさかの直撃をものにした森垣選手の、親番ですっ!」 

菫「直撃も火に油というか、江口選手や園城寺選手がまた一段と加速した感じがします」 

初瀬「本当ですね……わっ、江口選手……六巡目でハネ確リーチ……! また高いのを張りましたねっ!」 

純「江口セーラのリーチに園城寺は動かない、か。一発はないってことだな」 

すばら「一方、親番の森垣選手はさっきの無茶が祟ったのか、少し苦しい手牌ですっ! これは鳴いて流しに行くでしょうか?」 

菫「セーラ選手の打点が高いのは周知の事実ですからね。振り込む危険を犯して無理に連荘を狙うより、トップの今は素直にオリというのが妥当な気がします」 

すばら「おおおっと、森垣選手、面子を崩してきました! これはベタオリかっ!!」 

純「と、園城寺も張ったな」 

初瀬「リーチ……はかけませんね」 

菫「一発狙いと、江口選手のツモ消し……当然のダマでしょう」

695: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 11:59:34 ID:yLD4VRRD0
すばら「江口選手はツモならず……! これは園城寺選手には見えていたのでしょう……っと!! その園城寺選手っ!! 一巡待ってからここでリーチをかけてきましたあああ!! これは園城寺選手が江口選手を出し抜くのか!?」 

純「江口セーラがやっちまったって顔してるなぁ……」 

初瀬「そうですね……この南一局は、これで終わりでしょうか」 

菫「いや……もちろんそうとは言い切れませんが……しかし十中八――」 

 その――瞬間ッ!!! 

 テンポよく和やかに会話が進んでいた実況室に押し寄せる……津波のような圧倒的悪寒ッ!!!! 

すばら・菫・純・初瀬「――ッ!!!!?」ゾゾゾッ 

 その破壊力はさながらセカンドインパクト……ッ!! 

 衝撃は、実況室だけではなく、会場中に伝播するッ!!!

696: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 12:02:21 ID:yLD4VRRD0
@観戦室 

莉子「うっ……!!!」クラッ 

美幸「ええ……莉子っ!!? 大丈夫かもー!!?」 

梢「今のは……!?」 

澄子「恐らく……!!」 

莉子「……ゆ……友……香…………ちゃん……」パタッ 

美幸「誰か助けてくださいもーーーーー!!!?」

697: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 12:03:34 ID:yLD4VRRD0
@三年選抜控え室 

霞「あらあら……来てしまったわねぇ」 

初美「二度寝ですよー……」 

久「みんな、気分が悪くなったら無理せず医務室に行ってね」 

美穂子「上埜さんと一緒なら喜んで……//////」 

哩「姫子、大丈夫と?」 

姫子「はい……なんとか」 

シロ(うわー……これ準々決勝のときとは段違いだな……こんなのが相手じゃなくてホントよかったー……) 

豊音「わわわわっ!!!? 去年テレビで見たやつっ!! すごいすごいっ!!! 神代さんの相手もしたかったー!! これ生で感じたかったー!!!!」

698: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 12:04:32 ID:yLD4VRRD0
@二年選抜控え室 

衣「ほう……」 

透華「ヤバげ……今日一番のヤバげですわ!!」 

絹恵「なんや頭痛くなってきたわ……」 

Q「うちも……」 

尭深「……大丈夫……?」 

灼「玄、生きてる……?」 

玄「…………」フルフル 

かおりん「えっ? みなさん、何をそんなに恐い顔してるんですか?」ケロッ

699: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 12:06:13 ID:yLD4VRRD0
@一年選抜控え室 

穏乃「おおおお……園城寺さんがリーチしたっ!! これはまた一発ツモが来るのかー!!? 森垣さん、頑張って! 鳴いてっ!!」 

憧「いや……穏乃、あんた今騒ぐポイントはそこじゃないでしょ……」 

和「そうですよ。ただの追っかけリーチに騒ぎ過ぎです。あと、また一発とか、そんなオカルトありえません」 

優希「いや、和ちゃんもズレてるじぇ……」 

南浦「優希……あなたよくこんなのと戦って生きて帰ってきたわね」 

淡「んー……どうだろう。インターハイの準々決勝とは全然違う感じがするなぁ……一体いくつ持ってんだろうねぇ……」ウネウネ 

モモ「森垣さん……大丈夫っすかね」 

咲「あの人は……たぶんこういうの強いと思う。それよりも……お姉ちゃんに病院送りにされた園城寺さんが……心配だなぁ……」

700: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 12:07:15 ID:yLD4VRRD0
@混成チーム控え室 

末原「うっわ……『ザ・魔物ヒットパレード☆』って今度はこいつかいなっ! 勘弁してくれやー……!」ガクブル 

かじゅ「これは……満月時の天江衣と同じか……或いはそれ以上だぞ……!」ゴクッ 

小走「ふうん……面白いじゃないか」 

宥「あれ……なんだか……寒気が増しました……?」 

照「ホットココア……買ってくる?」 

まこ(うおっ、チャンピオンが今日初めて喋りよった!? わしゃこっちのほうがびっくりじゃ!!) 

漫「先輩ー? どうしたんですかー?」ケロッ 

池田「なんだ? みんなして頭痛かー?」ケロッ

702: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 12:09:32 ID:yLD4VRRD0
@対局室 

南一局・親:友香 

小蒔()ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ 

 八巡目 

セーラ(これは……えらいヤバいで……!! 警戒しとらんかったわけやないけど……こんな突然出てくるんはさすがに予想外やで……!! リーチかけてもうてるやんか……!! 
 やけど……怜が追っかけたんやから……とりあえずこの場は大丈夫なはず……やんな……?)タンッ 

友香(これは……神代小蒔の雰囲気が変わった感じでー? どうしようかな……江口セーラの捨て牌鳴けるけど……ここはズラさずに園城寺に和了ってもらったほうが得策でー……?)タンッ 

小蒔()タンッ 

怜(…………っと、危ない危ない。今一瞬……意識飛んどったわ。えっと……今うちのツモやんな。大丈夫。まだ生きとる。神代小蒔……ついに動き出しよったか……やけど……ここはうちが終わらせる……魔物退治は次局からや……!) 

 怜、未来予知した一発ツモッ!! 

 しかし……和了り牌、来ずッ!! 

怜(は……? んな……んなアホな……え? 誰も鳴いとらんよな? なんやこれ? 今何が起きとん……?)

703: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 12:10:19 ID:yLD4VRRD0
@特別観戦室 

憩「へえー! こないなことが起きるんやねー!」 

洋榎「なんや一発ちゃうんかーい! ま、そういうこともあるやろな~」 

泉(いやいやありえませんよっ!! 園城寺先輩が……鳴かれてもいないのに一発で和了られへんなんて……!?) 

竜華(と……怜……!!)

704: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 12:12:58 ID:yLD4VRRD0
@対局室 

怜(まあ……和了れへんのやったら仕方ないわ……信じられへんけど……これは捨てるしかあらへんな……)コホッ 

セーラ(はああああ!? 怜……!! 一発ちゃうんか……!! どないなってんねん!!!?)タンッ 

友香(園城寺が一発ならず……!? 神代小蒔……一体何をしたんでー?)タンッ 

小蒔()タンッ 

 十六巡目 

小蒔「ロン……門前清一平和一盃口一通……16000」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ 

セーラ「お、おう……」チャ 

怜(神代小蒔……うちの和了り牌……あのとき来るはずやった三筒を……手に三枚も抱えとる……? 
 嘘やろ……こいつ……鳴きもせず未来を変えよったんか……? あの……なんか出てきた瞬間……あれだけで……触れもせず山牌の並びを捩じ曲げよったんか……? ありえへんやろ……)クラッ 

友香(これはオリてて助かったパターンでー。さて……園城寺の次は……全国区の魔物が相手か……けど……これはさすがにキツいかもでー!) 

 神代小蒔、ついにその身に女神を宿すッ!! 

 六女仙を従える――霧島神境の姫……満を持して降臨ッ!!! 

小蒔()ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ 

友:124500 神:113100 セ:92400 怜:70000

716: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 13:11:34 ID:yLD4VRRD0
@実況室 

すばら「さて……園城寺選手がまさかの一発ならずで……神代選手が江口選手から倍満を和了り……南二局に突入したわけですが……!!!」 

純「せめて……神代の覚醒がもう少し遅ければなぁ……親番で連荘って可能性を潰せたかもしれねえが……」 

すばら「開始早々から……場がとんでもないことになっておりますっ!! これは……石戸霞選手の一色独占より……さらに惨いっ!!!」 

菫「恐らくは……これが神代選手の最高状態でしょう。これは……天照大神の中で最も強い支配力を持っているんじゃないでしょうか……それくらい……現実離れした場になっています……」 

初瀬「こんなオカルト……ありえてほしくありませんっ!!」 

純「ところが現実にありえてるんだなぁ……。どうだい、初瀬ちゃん、あいつと卓を囲めるか……?」 

初瀬「ううう……が……がが……頑張りますっ!!」 

菫「ナイスガッツですね。私は絶対嫌ですが」 

初瀬「ええっ!? なんでですかっ!!?」 

菫「だって……あれでは神代を射抜けない。そんな荒れ場はご免です」 

純「そうだな……確かに、あれから直撃を取るのは鶴賀の東横以上に無理そうだ」 

すばら「さあ……!! いよいよ全国区の魔物が眠りに憑いてその眠りから覚めました!! ちょっと何を言っているのか自分でもわかりません!!! 果たして他家に成す術はあるのか……!!! 全力で見守りましょうっ!!」

718: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 13:16:11 ID:yLD4VRRD0
@対局室 

南二局・親:小蒔 

友香(これは……本当に現実でー? 悪夢のほうがまだマシ……最悪の冗談か何かであってほしいんでー……けどまあ……これに勝たないと私の目標は達成できない……考えろ……どうにか戦う方法を……考えるんでー!!)タンッ 

小蒔()タンッ 

怜(これ夢ちゃうやろな……うち……さっきの衝撃でやっぱ死んだんと違うか……? 
 なら……こっからは何があってもうちの夢オチ言うことで……目覚めたときは……竜華のふとももの上におるんがええな……って!! 現実逃避はあかん!! それはさすがに三軍以下やっ!!)コホッ 

セーラ(これで……神代は五連続萬子切り……対して俺の手牌と……怜と劔谷の捨て牌には……筒子と索子と字牌しかあらへん。これは……石戸霞からの類推やけど……正真正銘の一色独占能力か。 
 なんちゅうか……俺も宮永照とかその他いろんな強いやつと打ってきたけど……こないなアホな状況は初めてやで……)タンッ 

友香(一色独占……永水の石戸霞は……数牌36枚と字牌28枚……合わせて64枚をその支配下に置いていた。 
 ただ……配牌とツモは合わせて13足す18の31牌……当然……終盤になれば支配から溢れる牌が出てきて……他家の絶一門も崩れる……序盤を鳴いて凌いだりすれば……或いは石戸から直撃を取ることも可能。 
 実際……さっきは姫松の愛宕絹恵が上手く石戸のツモ番を食って直撃を取っていた……違うパターンでは……インターハイで清澄が王牌から和了り牌を掠め取って翻弄していたっけ……が……しかしでー……)タンッ 

小蒔()タンッ

719: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 13:17:59 ID:yLD4VRRD0
怜(神代小蒔……もし仮に……この巫女さんが数牌36枚を完璧にその支配下に置いとるんやったら……その支配から溢れる牌はたったの5枚。 
 それが王牌に含まれてもうたら……最後の最後までうちらの絶一門は解けんことになる……要するに……神代はうちらに振り込まんし……うちらは神代から和了れん……)コホッ 

セーラ(せやけど……振り込まんとか和了れんとか……そんなんは……さっきの次鋒戦で鶴賀の一年生が似たようなことをやっとった。 
 問題はそこやないねん……同色の数牌ばかりをひたすらにツモっていくんやったら……そんなん……どうなるかなんて日の目を見るより明らかやん……)タンッ 

友香(ほぼ百パーセントの確率で……毎局九蓮宝燈……ッ!!!!)タンッ 

小蒔()タンッ 

怜(緑一色……字一色……古役なら大車輪や百万石、黒一色とかやろか……染め手系の役満は数あれど……九蓮はその最高峰や……天和、字一色七対子、四槓子並みの難易度を誇る……最も出にくい役満の一つ……!)タンッ 

セーラ(せっかくやし一回くらい実物拝んでみたい気もするけど……神代の親番でそれはないな。せめて子の役満やないと……親の役満で連荘なんかされたら……もう立て直しがきかなくなるで……!)タンッ

721: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 13:20:20 ID:yLD4VRRD0
友香(とりあえず……さっきの石戸霞の例もある……鳴いてツモがズレるか試してみるんでー!!) 

怜(あかん……! それはあかん……!! その未来はもう見えとったんや……劔谷……!!) 

友香「チー」タンッ 

小蒔()タンッ 

 友香、戦慄ッ!!! 

友香(げ……!? ズラしたのにツモ切り萬子……!!!? いくらなんでもひど過ぎるんでー!!) 

怜(やっぱりか……その鳴きではズレへん……! わかっとった……その未来は見えとった……なら……うちの知らない未来は……どうや……!!)コホッ 

セーラ(ん……怜が妙なところを出してきよったが……なるほど……そういうことかいな。了解やで……怜……そのパスもろた……!!!) 

セーラ「チー!」タンッ 

友香(千里山コンビ……! これは……私の鳴きとは違う……未来が見える園城寺が絡んでいる鳴きなら……いくら神代だって……!!)タンッ 

小蒔()タンッ 

 戦慄――再びッ!!! 

友香(でっ……!!? でええええええええ!!?)ゾッ 

セーラ(またツモ切り萬子やと……!!? 今……怜からの……未来が見えとる怜からのパスでツモをズラしたんやで……!!? どうなってんねん……!!)ゾッ

722: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 13:24:05 ID:yLD4VRRD0
怜(う……嘘やろ……!! そんな……ありえへん……!! やって……うちの見た未来では……神代が今ツモ切りした牌は……劔谷がツモ切りするはずやった九索やないとおかしいやろ……!! なんでズラす前と同じ牌をツモ切ってんねん……! 
 っちゅうか……うちのとこに来た牌も……さっき見た未来で神代がツモ切りしとった萬子になるはずやろ……!! なんで九索やねん……これはまさか劔谷のツモやったやつか……んなアホな!! 
 なんやこれ……うちの未来予知が……おかしくなっとんのか……!? 
 いやいや……それは違う……さっきまでは正常に見えとった……それが……うちが未来を改変した途端に狂った……っちゅうことは……神代の支配力が……うちの未来予知の上を行っとるってことか……!!? 
 さっき三筒を一発ツモできひんかったのと同じ……うちの未来予知を狂わすほどの……支配力……!! そんなん……チャンピオンかて……うちの未来改変で阿知賀に振り込んだんやで……!! 無茶苦茶やないか……!!)コホッ 

セーラ(怜が目に見えて動揺しとるな……っちゅうことは……怜の見た未来ではありえへんことが……今起きたってことやんな。 
 それだけ神代の支配が半端やないってことか……さっき怜が一発ツモを逃したとき……そんな予感はあったが……しかし……怜の未来予知がこの場においては絶対やないとなると……こりゃ本格的にヤバいで……。 
 怜の未来予知の上をいく力……チャンピオンのときみたいにダブル・トリプルで対応できる類の能力やないってことか……まあとりあえず……今神代がツモ切りしたっちゅうことは……まだ九蓮テンパイってわけやないんやろうけど……それも時間の問題やろな……!)タンッ 

友香(ええっと……もし仮に……数牌36枚をランダムに引いていくとして……九蓮ってだいたい何巡目くらいに出来上がるんでー……? 次が九巡目だけど……いずれにせよ……海底までには間違いなく和了ってくるんでー……!!?)タンッ 

小蒔()タンッ

723: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 13:25:33 ID:yLD4VRRD0
怜(今度は手出し……また萬子……! っちゅうことは……九蓮に向けてまた一歩手が進んだってことかいな……!! もう嫌や……!!)コホッ 

セーラ(怜……心折れたらあかんで……!! まだや……まだ神代が和了ったわけやあらへん……諦めんのは早いでっ!!) 

セーラ「ポンッ!」タンッ 

怜(セーラ!? 二副露……!! うちの知らん未来……! まさか……テンパイか……!?) 

セーラ(当たり前田のクラッカー……!! 二色麻雀なら……三麻でようやったやんか……!!) 

怜(さ……さすがセーラ!! よっ、千里山のエース!!!) 

友香(江口セーラ……張ったのか……! どこでー? どこが当たりでー!!? ここっ!!)タンッ 

セーラ(だああああ……っ! 惜しいで……劔谷……!! その一つ隣やっ!!) 

 完全に協力態勢を作った、怜、セーラ、友香ッ! 

 しかし、一致団結して魔神に向かおうと湧いた、その直後ッ!! 

 戦慄……三度ッ!!!

724: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 13:27:12 ID:yLD4VRRD0
小蒔「ツモ……門前清一……6000オール……」パラララ 

友香(うっわ……それマジでー……?)ゾゾッ 

怜(そんな……! 嘘やん……!! セーラが鳴いた直後やで……!? うちが見た未来とはツモ順がズレとるんやで……!? しかも……しかもセーラが鳴かなかった未来では……あんた……その一萬をツモ切りしとったはずやん……!!!)ガタガタ 

セーラ(ははっ……これは……笑うしかないで……!!!)ゾワッ 

 晒された神代小蒔の手牌……!! 

 それは点数以上に、三者の心を抉るッ!! 

 小蒔手牌:一一一二三三四五六七八九九:ツモ一:ドラ7 

 戦慄の――高め九蓮宝燈……ッ!!! 

友香(高め九蓮……初めて見た……!! いや……手牌と捨て牌全部一色染めっていうのも……モチ初めて見たけど……!!) 

怜(なんやこれ……!? ズラしても崩せん一色独占……アテにならへん未来予知……ほんでもって……セーラが和了るかと思いきや……見透かしたようなメンチンツモ……!!?) 

セーラ(さらに悪いことに……これで……神代小蒔は……連荘や……!!!) 

小蒔()ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ 

友香・怜・セーラ(この……化け物……!!!) 

友:118500 神:131100 セ:86400 怜:64000

725: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 13:30:46 ID:yLD4VRRD0
@実況室 

すばら「こ……これは……なんと言ったらいいのでしょう……!!!」ゾゾゾゾッ 

初瀬「すいません……私、ちょっとトイレで吐いてきます」フラフラ 

純「あー、初瀬ちゃん、トイレ行くついでに永水のやつ誰か連れてきてくれー!!」 

初瀬「わか……っうぇ……りました……!!」ダッ 

菫「想像を絶するとはこのことですね。私なら……そうですね、速攻で他家を射抜いて神代選手の親を流し、あとは役満を食らおうがなんだろうがとにかくトバずに帰ることに全力を注ぎます」 

純「速攻ねぇ……それができりゃあ苦労しないが。普通に打ってりゃ一色の神代のほうが二色の他家より早いわけで」 

菫「井上さんならどうしますか?」 

純「オレにはちょいと荷が重そうだな。見た感じ鳴きが通用しないっぽいし」 

菫「鳴きの無効化ですか。確かに、一巡先が見える園城寺選手がいろいろ動いたというのに……神代選手はお構いなしに一色独占してましたからね」 

すばら「何か……攻略の糸口のようなものは……?」 

純「天に祈れ」 

菫「気を強く持つことですかね」 

すばら「お二人ともっ!! 解説を投げないでくださいっ!!」

726: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 13:32:43 ID:yLD4VRRD0
初瀬「戻りましたー!!!」バンッ 

菫「初瀬さん、随分と早かったですね」 

純「顔色もよくなってるな。で、永水のやつは……って、ん?」 

初瀬「すいません、永水の人を連れてこようと思ったんですが……その必要はないって………………先輩が/////」 

小走「ニワカに解説はできんよっ!!」ドンッ 

 王者、見参ッ!! 

すばら「あ……あなたは……!? 晩成・小走やえ選手ッ!!? どうしてここにっ!!?」 

小走「観戦してたら解説の初瀬が吐きそうだって出て行くのが聞こえたからな。心配になって来てみたんだ」 

純(いや……それにかこつけてしゃしゃり出てきただけのような気がするが……) 

菫「それで、小走さん、何か、神代攻略の目処は立ちましたか?」 

小走「ま、多少はなっ!」 

すばら「すばらっ!! ぜひお聞かせくださいっ!」 

小走「そうだな。まずはっきりさせておきたいのは、神代が九蓮を和了る確率だ」 

すばら「おおおお!! 数学的視点から入るとは!! さすが奈良の名門・晩成高校ッ! 偏差値70ッ!!!」 

純(な……70ッ!!? み、見えねー……!!)

727: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 13:34:57 ID:yLD4VRRD0
小走「さっき観戦しながら、私なりにちょっと計算してみたんだ。決して正確ではない、荒っぽい仮定に基づいた計算だがな。それでも、さほど的外れではないと思う」 

菫「この一局の間に確率計算を終え……さらには攻略法まで見つけてくるとは……さすが奈良王者は違いますね」 

小走「揶揄かうのはよしてください、シャープシューター。弘世さんだって気付いてるでしょう?」 

菫「まあ……神代の打ち方のクセについては、なんとなく。しかし、九蓮和了の確率まではさすがに……」 

初瀬「それで、先輩っ! 神代の九蓮、和了る確率はどれくらいなんですか!?」 

小走「慌てるな、初瀬。王者はいついかなるときも、悠然と構えておくものだっ!」 

初瀬「はいっ!」 

純「いいから早く教えろよ」 

小走「そうだな。勿体振るようなことじゃない。というわけで、私の計算では、神代が九蓮を和了る確率……まあ一つの目安として今神代がメンチンを和了った十巡目を区切りとしよう。十巡目で神代が九蓮をツモる確率は、約14パーセントだ」 

すばら「十巡目九蓮が……14パーセント……!! 十回に一回以上……!!」 

小走「計算の過程を知りたい人ー?」 

一同「………………」 

小走「まあ、いい。もしいたなら、小走やえによる受験生のための高校数学講座が始まるところだったんだが」 

菫(それはそれで聞いてみたい気がしないでもない……)

729: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 13:38:15 ID:yLD4VRRD0
小走「で、まあ、十巡目までにそれくらいで、そこから十八巡目――最終ツモまでに和了る確率は、ま、九割以上あると見ていいだろう」 

初瀬「なんだか……よくわかりませんが、数字に落とし込むことで、少し恐怖感が減った気がします、先輩!!」 

小走「魔物など所詮そんなもんだ」 

純「で、神代の攻略法ってのはなんなんだ? さっき、シャープシューターが打ち方のクセとか言ってたが」 

小走「なに、簡単なことだよ。あいつは……今の神代は……恐らく人間じゃない。別の何かだ。そういうやつの大半は、一定の法則に従って動いてる――言ってしまえば機械みたいなもんなんだ。さて、ここに麻雀牌を持ってきたわけだが……」パラパラ 

純(用意がいいな……!!) 

小走「例えば、配牌がコレで、以降、十巡目までのツモがこんな順番だったとして、みなさんならどうやって打つ?」 

 仮配牌:1122333677899 
 仮ツモ:3→4→5→8→8→9→4→6→5→1→…… 

純「3をツモって7切って、4をツモって3切って、次巡に5をツモって和了りだな。メンチン平和一盃口ツモ……これだけで倍満確定だ」 

小走「そう……それが最速だ。もし、あれが人間だったらそういう風に打つに決まっている。九蓮なんて必要ない。三巡目親倍ツモで連荘……競技麻雀ならそれで十分」 

すばら「神代選手は……どう打つんですか?」

731: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 13:40:34 ID:yLD4VRRD0
菫「彼女のクセ……というか、プログラムみたいなものでしょうか。その法則に従っていけば、まず3をツモ切りします。次に4をツモって2を捨てます。次は5をツモって7を捨てます。次の88はツモ切りで、9をツモって3切り。 
 465をツモ切って、1でフィニッシュですね」 

小走「ご名答。さすが弘世さん」 

初瀬「一体……どんな規則性が?」 

小走「九蓮に必要なのは1・9が三枚、2~8が一枚ずつ、プラスどれか一枚だ。神代は、それ以外の、九蓮に不必要な牌のうち、まずは重複している牌から捨てていく。これが第一法則。優先順位は、対子、暗子、槓子の順だ」 

菫「上の例でいけば、2の対子と7の対子から優先的に切っていくわけです」 

小走「で、第二法則。対子や暗刻が複数ある場合、数字の若いほうから切っていく」 

純「へえ……随分妙な切り方をすると思ってたが……そんな規則性があったのか」 

小走「最後に第三法則。九蓮の形に不必要な牌をツモった場合、第一第二法則に関係なく、即ツモ切りする。上の例で言えば、最初の3のツモ切りがそれに相当するな」 

初瀬「す……すごい……!! たった一局見ただけなのに……!!」 

すばら「それで……その法則から導き出される攻略法とは……!?」 

小走「この法則から、神代小蒔は九蓮以外は眼中にないということがわかる。例外は、さっきみたいなケース。他家のテンパイを察知したとき、ツモって来たのが和了れる牌なら、仕方なくメンチンを和了る。 
 しかし、基本的には、あの魔物は九蓮に向かってただひたすらに、規則的に打っていくだけの機械だ」 

純「なるほどな……攻略の糸口が見えてきたぜ」

732: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 13:42:06 ID:yLD4VRRD0
小走「九蓮以外を和了ることを考えてないのだから、当然、上の例でいうところの、三巡目親倍ツモとか、そういう手の打ちようがない和了りはしてこない。なぜなら、倍満だろうが三倍満だろうが数え役満だろうが、それは九蓮じゃないからだ」 

初瀬「つまり……九蓮を目指す以上は……どうしても手が遅くなる……!!」 

小走「そういうこと。速攻でメンチンを連荘し続けるプログラムだったら、アレには誰も勝てんよ。けど、そうじゃない。アレは人じゃないから……メンチンで十分……みたいな人間らしい価値観では動かない。それが、弱点その一だ」 

菫「弱点その二は、なんでしょう?」 

小走「さっき、他家のテンパイ気配を感じたらメンチンでも先に和了るケースがあると言ったが、それができるタイミングは、限られている」 

すばら「おおおおっ! どういった具合に!?」 

小走「もう一度、仮配牌と仮ツモを眺めてみよう」 

 仮配牌:1122333677899 
 仮ツモ:3→4→5→8→8→9→4→6→5→1→……

734: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 13:43:40 ID:yLD4VRRD0
小走「これで神代の手牌がどんな風に進んでいくかというと、以下のような感じだ。で、テンパイしてるときに○を、イーシャンテン以下のときに×をつけてみる。そんでもって、テンパイしていて且つメンチンを和了れるケースに●を付けてみる」 

 一巡目:1122333677899:ツモ3× 
 二巡目:1122333677899:ツモ4× 
 三巡目:1123334677899:ツモ5× 
 四巡目:1123334567899:ツモ8○ 
 五巡目:1123334567899:ツモ8○ 
 六巡目:1123334567899:ツモ9○ 
 七巡目:1123345678999:ツモ4● 
 八巡目:1123345678999:ツモ6○ 
 九巡目:1123345678999:ツモ5○ 
 十巡目:1123345678999:ツモ1☆九蓮和了! 

小走「まあ、ざっとこんなもんだ。この仮配牌と仮ツモの例では、神代は四巡目以降ずっと張ってたものの、和了り牌が来たのは七巡目と十巡目の二回だけ。要するに、そうそう都合よく他家の和了りを潰すことなんてできないってことだ」 

すばら「つまり……あの神代小蒔選手に対抗するためには……どうしたらいいのでしょう!!?」 

小走「ひたすらに速攻あるのみ。神代が和了る前に和了れ。和了り続けろ。それなら負けることはない」 

すばら「うわわあああ!! 散々引っ張ったあげくものすごく現実的で普通の答えが返ってきましたああああっ!!」 

小走「非現実的で異常な答えなんて返したところで、誰も実行できないだろうが」 

菫「おっしゃる通りですね」

735: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 13:45:12 ID:yLD4VRRD0
小走「ま、そういうわけでだな。十巡目が一つのデッドラインだと思ってほしい。それまでになんとか和了るしかない。二色で手を作っているんだし、三人で協力すれば一人くらいは早和了りできるやつが出てくるだろう。 
 他家のテンパイ気配を察知したら、即差し込み。もしくは、さっきみたいに鳴いて速攻。鳴く場合は、神代のツモ番を飛ばせれば一石二鳥だな。ま、もちろん早和了りがメンチンで潰されることもあるだろう。 
 が、それだっていつでもできるわけじゃない。たとえ神代がテンパイしていようとも、大体二~四巡に一回くらいしか神代はツモれないはずだ。その隙に和了ればいいだけのこと」 

すばら「おおお!! なんだかよくわかりませんがイケそうな気がしてきましたっ!!」 

小走「ま、これはあくまで負けない戦い方だがな。勝つとなると……少々賭けに出なきゃならん」 

すばら「か……勝つ戦い方があるんですか!? あの神代選手にっ!?」 

小走「当然っ! ただ規則的に打って九蓮を目指すだけのニワカなど……相手にならんよッ!!」 

初瀬「先輩……素敵ですっ!! で、どうやって戦えば勝てるんですか!?」 

小走「それは教えないっ!!」 

すばら「ずこー!」

736: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 13:46:57 ID:yLD4VRRD0
純「ま、自分で考えろってことだな。初瀬ちゃん、先輩にばかり頼ってちゃ、いつまでも強くなれないぜ?」 

菫「そうですね。どうやったら勝てるか……それを考えるのも、訓練の一つです」 

初瀬「なるほど……頑張りますっ! 先輩、私も色々考えてみるので、あとで答え合わせしましょう!!」 

小走「おう、楽しみにしている。じゃ、初瀬の体調も回復したことだし、私はこれで失敬する。また何かあったら呼んでくれ。どんな魔物も私が丸裸にしてやるよ。ではっ!」ダッ 

 王者、去るッ! 

純「さて……なんだか胡散臭い気もするが……これで少しは光が見えた、のか?」 

すばら「私たちは……まあそうですね。一応、神代選手対策はある程度練れたと思います。ただ……あの場にいる三人が……どうするのかまでは……なんとも」 

菫「彼女たちなら心配は要りませんよ。この対抗戦に出てくる選手は……みな一筋縄ではいかない。遠からず、同じ結論に辿り着き、実行してみせるでしょう」 

純「けど……せっかくだから一度くらいは生で九蓮を見てみたいもんだなぁ」 

初瀬「井上さん、完全に傍観者目線ですね……」 

すばら「さあああ!! どうなってしまうのか、中堅戦前半……!! 神代選手の連荘は止まるのか!? 九蓮宝燈和了の歴史的瞬間は訪れるのか……!! 大注目ですっ!!」

738: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 13:51:42 ID:yLD4VRRD0
@対局室 

南二局一本場・親:小蒔 

友香(相変わらずの絶一門……しかも神代小蒔はまた一色切り。今度は筒子の九蓮狙いでー)タンッ 

小蒔()タンッ 

怜(あかん……さっきので大分心が折れた。一巡先を見て……それで未来改変しとるのに……神代の支配力はその上を行く。 
 どうやっても神代の一色独占を止められへん。そういえば……阿知賀の松実玄……どんだけ鳴いても……うちが未来を変えようと変えまいとお構いなしに……ドラを一人で独占しよったな。あれと似たようなもんやろか。 
 いやいや……阿知賀の松実玄はそれが弱点になっとった……たとえ支配力はあの子のほうが上でも……あの子から直撃を取る方法はいくらでもあった……やけど……神代はそうもいかへん。一色独占とドラ独占は全然ちゃう……神代からは……直撃が取れへん)コホッ 

セーラ(なんや……怜……顔が死んどんで……! それがチャンピオンと戦って一度しか振り込まへんかった千里山のエースの顔かいな……!! 
 そら……未来予知が通じんのは辛いやろけど……未来を変えようと変えまいと特定の牌を独占できるって……そんなん要するに松実玄と同じってことやろ……! それが……たまたまドラやなくて一色独占やってだけの話やないか……! 
 何をそんなに絶望しとんねん!!)タンッ 

友香(園城寺……なんだか顔色悪いけど大丈夫でー? じゃあ……まあ、病人もいることだし……ここは私がさっさと和了って終わらせるんでーよろっ!!) 

友香「チー!」タンッ 

小蒔()タンッ

739: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 13:53:18 ID:yLD4VRRD0
怜(また……鳴いても筒子のツモ切り……これは見えとったけど……どないせえっちゅうねん……劔谷は鳴いて速攻でいくんかわからんけど……それ……さっきセーラがやってダメやったやん。 
 セーラでダメやったんを……いくら劔谷の一年生がすごいかて……できるわけあらへん……まして……うちには無理や……)タンッ 

セーラ(怜……!! しっかりせえよ!! 鳴いて速攻はこの場の最善策なんやって!! それくらい……さっきの神代の捨て牌をちゃんと見てれば気付くことやろ……!! 
 こいつはメンチンを狙っとらん……端から九蓮に向かって機械的に動くだけの人やない何かや……! 速攻しようって意思を持った人間が三人で協力すれば……いくらでも突破できるんや……!! 
 しかも……三人のうち一人……怜は未来予知能力を持ってるんやで……!! さっき俺の和了りが潰されたのはたまたまなんやって……!! 頼むから目ぇ覚ましてくれ……怜……!!)タンッ 

友香(うっ……それ鳴けないんでー!)タンッ 

小蒔()タンッ 

怜(次巡……まだ神代は和了らんか……やけど……これもアテにならんよな……劔谷が鳴いて手を進めたりしたら……またあっさり神代がメンチンツモるかもわからへん……)タンッ 

セーラ(こ……の…………ドアホがッ!!!!!!) 

 いつまで経っても腑抜けた闘牌を続ける怜に、セーラ、怒号ッ!!! 

セーラ「だあああああああそれチーーーーーーーーーーやっ!!!!!!!」

740: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 13:54:41 ID:yLD4VRRD0
友香(うわっ!!? え、なに? びっくりしたんでー!!!?) 

怜(え……? なんや? セーラ……いきなりどないしたん……!?) 

セーラ「怜ッ!! 答えやッ!! 千里山のエースは誰やねん!!!!!」 

怜「え……? セーラ……?」 

セーラ「ちゃうわボケええええええええええええええ!!!!」 

怜「え……? ええ……?」 

 怜、困惑。セーラ、溜息。 

セーラ「もううううう…………なんで俺やねん! 千里山のエースは自分やろ、怜! 俺は元エース! なんでそんなこともわからんねん!!」 

怜「いや、そんなこと言われても……」 

セーラ「あああじゃあもうそれでええわ! 今だけな!! 今だけ俺が千里山のエースな!! ほんで怜は三軍や!! もうええからそこで大人しく俺の応援でもしとれっ!!」 

怜「はあ…………」

741: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 13:56:05 ID:yLD4VRRD0
セーラ「ほな、えろう騒いで失礼しました。続けますわ!」タンッ 

友香(わけわからんでー)タンッ 

 直後ッ!!! 

セーラ「ハイそれロンや。一通ドラ一赤一。3900は4200な」 

友香「え………………マジでー?」 

 唐突な和了りに、振り込んだ友香、驚愕。 

 しかし、それ以上に驚愕したのが……。 

怜「えええええ!? セーラ!? なにいきなり和了っとん!!? うちそんな未来見てへんで!? しかもザンクて!! しょぼ過ぎやん!!」 

セーラ「当たり前やろ!! 誰がこんなどっかの一年みたいな鳴き一通なんて和了るか!!! そらさっきまでは和了る気なかったわっ!! やけど怜が俺のことエースや言うから……しょーがなくなりふり構わず打ったんやろ!!! 
 常に勝ちに行くんが千里山の麻雀!! 勝つためにはプライドもなんも捨てたるわ!!! ほんで…………本当の今の千里山のエースは怜やねんで!!! しっかりせえよ!! 終わってもないのに負けた顔すなっ!!! 
 エースがそんなザマじゃ……竜華やフナQや泉……他の部員にも笑われんで!!! この対局はみんなが見とるんやぞ!!!!」 

怜「!! みんなが……見とる…………!?」

742: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 13:57:43 ID:yLD4VRRD0
 園城寺怜――関西の名門、全国ランキング二位、千里山女子の現エース。 

 多くの部員が、その勇姿に憧れ、その頂を目指し、日々鍛錬に励む。 

 かつては、その多くの部員のうちの一人だった、怜。 

 応援席から、エースの活躍する姿を、ずっと見ていた……。 

セーラ「怜……俺ら三年やで? しかもレギュラーやで? 怜にいたってはエースなんやで? そんな俺らがシャキっとせな、後輩に示しがつかへんやろ。 
 誰が相手やろうと関係ない。どんなに力の差があっても関係ない。千里山の麻雀はトップを取りに行く麻雀や。それがわかったら……サイコロ回しや。次は怜の親番やで」 

 怜がずっと見ていた元エース、江口セーラは、そう言って笑った。 

怜「ホンマ……セーラは……カッコええな……!! ふとももは全然ダメやのに……麻雀しとるときだけは……ホンッッッマにカッコええなあ……!!!」ウルッ 

セーラ「な……泣くなや、気持ち悪いっ!」 

怜「泣いとらんで。これは…………血や」 

セーラ「アホ! そんな透明な血があるか!!」 

怜「せやかて……うち病弱やから……」 

セーラ「病弱関係あらへん! 血の色に病弱関係あらへんやん!!」 

怜「ハハ……しょぼいツッコみ……点数で言うたらザンクやで」 

セーラ「やかましいわっ!!」

743: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 13:59:23 ID:yLD4VRRD0
 怜、笑いながら目元を擦り、大きく息を吸い込む。 

怜「せやな……うち……弱気になっとったわ。親番回してくれて、ありがとな、セーラ。こっからは……千里山の真のエース――園城寺怜に任しとき!」 

セーラ「おうっ! ま、今日は残念ながら俺は怜の敵やからな。もちろん怜の好きなようにもさせへんけど!」 

怜「望むところやで。ザンクで刻むしょっぱい元エースなんかに負けへんわ!」 

セーラ「やからっ! 今の和了りは忘れてや!! 蒸し返されると恥ずかしいわホンマ!!」 

 と、漫才も酣――。 

小蒔()ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ 

 魔神、無言の圧力ッ!!! 

セーラ「…………早くしろやて」 

怜「言われんでも…………わかっとるわ!!」ピッ 

 賽を回す、怜ッ!! 

 多少の疲労はあるものの、その口元には、不敵な笑みッ!! 

怜「さあ……一発ぶちかましたるで……!!」 

 中堅戦前半、佳境ッ!! 

友:114300 神:131100 セ:90600 怜:64000

744: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 14:02:41 ID:yLD4VRRD0
南三局・親:怜 

怜(と……意気込んだものの……どないしよ。チャンピオンとはまた違う無茶苦茶さや。チャンピオンは……うちの未来改変に対して……改変しようとしまいと同じ結果になるように支配しとった……牌の並びまでは動かせへん。 
 うちが二索を避ければ、新道寺が五索を振り込むとか……そういう感じや。やけど……神代はそうやない。うちが何をしようと……何を見ようと……神代の一色は崩れん。うちらの絶一門も解けん……)タンッ 

怜(強いて隙があるなら……さっきのメンチンの手牌と捨て牌……神代は九蓮以外和了るつもりがないってことがわかる……それゆえに……普通に一色で手を進めるよりは格段に手が遅くなる……。 
 言うても……さっきは十巡目で九蓮テンパイやったんやから……中盤を過ぎればいつ役満を和了ってもおかしくない。うちらに残された道は……神代が九蓮をテンパイするまでの序盤……ここで何をできるかや)タンッ 

怜(セーラや劔谷はひとまず早和了りで場を流すことを狙った。そらまあ……それが無難やろな。うちら三人のうちの誰かがテンパイに持っていければ……二色やし……差し込みはわりと簡単やろ。一巡先が見えるうちもおるしな。 
 そうやって……南三局と南四局……流して流してホナサイナラって……それで……それなら傷はこれ以上深くならんやろけど……本当にそれでええんかな……)タンッ 

怜(セーラは言うとった……いついかなるときも……誰が相手やろうとも……常にトップを目指すんが千里山の麻雀やて。現状……トップは神代で二位が劔谷……うちとセーラがマイナスや。 
 こないな状況で……せっかくの親番や言うのに……神代の役満が恐いからいうて即流ししてまうような……そんな気の抜けた麻雀を千里山のエースが打つやろか……? 否……打たへん……!!)タンッ 

怜(うちは……千里山のエースとして……簡単にこの親番を捨てることは許されへん……! なんとかして……神代小蒔を引き摺り下ろす……この対局を見てる千里山のみんなの……期待を裏切るわけにはいかんのや……!!)タンッ 

怜(なんて……言うてたらテンパイしてもうた……さすがうちやな!!) 

 怜手牌:222456789②②②[⑤]:ツモ3:ドラ七

746: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 14:09:37 ID:yLD4VRRD0
怜(こういう普通の未来予知はまだアテになる……鳴いて神代のツモをズラそうとするとなんやわけわからんようになるけど……普通に門前で手を進める分には……うちの見た通りの未来になる。 
 当然、一巡後に裏目ることがない分……テンパイ速度は一般人より早い。さて……赤五筒切れば索子の六面張……高め一通やけど……次巡で和了れるやろか……)ギュルル 

 怜、一巡先を見るッ!! 

 果たして未来は……ッ!? 

怜(と……最安めの四索ツモやん。どないしよ……リーチかけとくか……? そしたらリーチ一発ツモ……2000オール。ぼちぼちか……? 
 やけど……神代がどう動くかやな。うちに今見えたんはドラの七萬ツモ切りやけど……うちがテンパイしたこの巡目……今の神代が七萬でメンチンを和了れる手牌なんやったら……この未来予知はアテにならん。 
 うちのテンパイを察知してツモ切りせんと和了ってくるやろ……リー棒持ってかれんのも嫌やしな……せめて……神代が今張っとるんか張ってないんかわかれば……)コホッ 

 怜、小さく咳をして、目を瞑り、集中を高める。 

怜(しゃーない……今の神代相手に出し惜しみしとるような余裕はないもんな。見えてるもんは多いほうが今の神代の手を読みやすいはずや……ここは……ちょっときついけど使うしかないやろ……!!) 

 怜、開眼ッ!! 

怜(ダブル……ッ!!!)ギュルギュル 

 一巡先の……その先に見えたものは……!!!


2: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 14:18:41 ID:yLD4VRRD0
怜(これは……!!? やって……やってもうた……!! 神代……! 次々巡もドラの七萬をツモ切りかいな……!! これじゃ……なんもわからへんやん……なんも変わらへんやん……!! 
 せめて……他の牌を切るとか……手出しとか……そういう情報がないと……こんなんダブルやり損やで……!!)クラッ 

 怜、眩暈を堪えて、必死に意識を保つ。 

怜(ホンマにしくったわ……生きるんて辛いな……どないしよ……結局メンチンで潰されんのかどうかはわからへんかったんや……リーチかけとこか。 
 神代が和了らへんかったら一発ツモや……ほんでもって……運が良ければ裏も乗るかもしれん……裏ドラ三枚とか乗ったら儲けもんやし……リーチ……かけとこか……!) 

 怜、点棒を確認、赤五筒を手に取る……! 

怜(ほな……行くで……頼むから潰されんでな……裏ドラ期待の……赤ドラリーチ……!!!) 

 その――打牌の直前ッ!!! 

怜(待って……うち今なんて言うた……? 裏ドラ期待の……赤ドラリーチ……? ドラって……? ドラ…………!? そうや……ドラ……!!! これは……なんてことや……見落としてたで……!!!) 

 インターハイ、阿知賀のドラゴンロードと卓を共にした怜。 

 ドラには、人よりも少し、思い入れがある。

5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 14:23:24 ID:yLD4VRRD0
怜(なんで今までこの不自然さに気付かなかってん……!! そうや……この場のドラは七萬……萬子や……!! 神代がこの状態になって……独占しとる色がドラになったんはこれが初めて……!! 
 ほんでもって……さっき同じような一色独占しとった石戸霞と……神代との違い……! 鳴きを入れると崩れ……終盤になればなるほど支配力が落ちてくる石戸霞と……神代小蒔の一色独占は明らかに強度が違う……! 
 神代の一色独占は絶対や……この違いが……あのドラの七萬に……現れてんで……!!) 

 永水・石戸霞の支配は、王牌にまでは及ばない。 

 霞の支配する一色牌と字牌・計64牌、そのうち、霞の手に入らない33牌を、霞は王牌に押し込めることができない。 

 ゆえに、中盤以降では、溢れた一色牌と字牌が、他家の手にも入るようになる。 

 石戸霞の一色独占能力は、山の深いところでは、機能しない。 

怜(石戸霞の一色独占では……ドラ表示牌が石戸の色になるケースはなかった。インターハイで宮永咲が嶺上牌を掠め取っとったけど……それもやっぱり石戸の色やなかった。 
 対して神代小蒔の一色独占は……あくまで推測やけど……鳴こうがズラそうがどうやっても神代は一色独占するし……他家の絶一門は最後まで解けん……! それが正しいんやとすれば……あとは単純な引き算やん……!!) 

 仮に、神代小蒔はどういう手順であろうと一色牌をツモり続け、他家の手に神代小蒔の独占色が入ることは絶対にないのだとして――。 

怜(一色牌36枚……そのうち神代小蒔の手に入るんは最大31枚……神代が北家の今は30枚や。 
 ほんでもって……残りの6枚が絶対にうちらのとこに回ってこんのやとしたら……それらは全部王牌に押し込められとるはず……やから今……神代の色がドラに現れてるんやないか……!!?) 

 王牌14枚、うち、6枚が、神代小蒔の一色牌。

6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 14:25:16 ID:yLD4VRRD0
怜(今はドラ表示牌で1枚見えとるから……残り5枚。13枚中5枚なら……ちょっと無理するだけで……この絶一門を崩せる……!! 絶一門が崩れるんやったら……神代から直撃を取ることも……不可能やなくなる……!!) 

 そして……その一縷の可能性を……怜は既にその目にしていた……!! 

怜(ダブル……やり損なんかやなかったで……!! もちろん……上手くいく確率はごっつう低いけど……ここで勝負に出なくて……何が千里山のエースや……!! 
 神代から直撃を取れるかもしれへん僅かなチャンス……!! 2000オールで流してしまうんはヘタレのやること……!! さあ……宣言通りにぶちかましたんで……全国区の魔物……!!!)タンッ 

 怜、手に掴んだままの赤五筒を、河に流すッ! 

 リーチは――掛けずッ!! 

怜(こっからは完全な運勝負やで……今さっきダブルを使ったうちは……きっともうこの南三局が終わるまで未来が見えへん……見えへんっちゅうことは……わからへんってこと……神代が勝つかもしれんし……うちが勝つかもしれへんよな……!!) 

 そして……ツモは巡って、神代小蒔へ。 

小蒔()ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ 

 神代は、手にしたドラの七萬を――、 

小蒔()タンッ 

 切るッ!!!! 

怜(切ったッ!!! 切ったな……神代小蒔……!! うちがテンパイしとんのに……こいつは今メンチンを和了らんかった……!!! 今のこいつの手は……七萬で和了れん……!! これで第一関門……突破や……!!!)

7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 14:27:54 ID:yLD4VRRD0
 そして、怜がツモったのは、予知通りの、四索ッ! 

 怜手牌:2223456789②②②:ツモ4:ドラ七 

 ツモのみ……500オールッ! 

怜(ほな……ダブルで見た未来を……現実にしてみよか……!!)タンッ 

 怜、四索、ツモ切りッ!! 

 和了り拒否ッ!! 

セーラ(怜……? なんや楽しそうやな……これは何か狙っとるんか……? オモロいやん……千里山の真のエースが……どんな戦い方をするんか……元エースとしてじっくり見させてもらうで……!)タンッ 

友香(これでやっとイーシャンテン……手が重たいんでー。というか……千里山の園城寺怜……赤五切りなんて張ったっぽい感じに見えたけど……その四索ツモ切り……なんか打ち方に違和感がある。 
 まさか……何を狙ってんのかわかんないけど……この状況で和了り拒否とかしてるんでー……?)タンッ 

 友香、怜のツモ切りを訝しく思いながらも、自らの手を進める。 

怜(劔谷……劔谷のさっきの一撃……あれを食らわんかったら……こんな無茶な作戦……思いつきもせんかったで。あんたには感謝しとる。 
 あんたが……さっき無茶やって成功してみせよったから……うちも……頑張ったらうまくいくんちゃうかって……希望が持てる……! ホンマ……あんたは大した一年生やで……!!) 

 怜、友香の捨てた二筒を……ダブルで見えていたその二筒を――鳴くッ!! 

怜「カンッ――!!!」パララッ 

 怜、二筒、大明槓ッ!!! 

 未来を……変える……ッ!!!

8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 14:31:05 ID:yLD4VRRD0
怜(頼むで……!! 来てくれや……!! うちに……この魔物に一発ぶちかます……唯一の武器を……!!!) 

 石戸霞より高い強度を誇る、神代小蒔の一色独占。 

 もし仮に、その支配が王牌にまで及んでいたのだとしたら。 

 嶺上牌にすら、神代小蒔の色が一枚もなかったとしたら。 

 当然、他家が絶一門を崩すことは不可能。神代小蒔は、他家に振り込む憂いなく、淡々と九蓮へ向けて不要牌を切るだけ。 

 しかし……現実はそうではなかったッ!! 

 互角の力を持つであろう、龍門渕・天江衣の支配と同じくッ!! 

 神代小蒔の支配もまた……淵底の向こう――王牌にまでは及んでいなかった……!!! 
  
 あくまで、神代は王牌に一色牌を押し込めるだけ……!!! 

 その押し込めた牌の並びまでは……神代にすら……未知ッ!!!! 

怜(……ッ!! 来た……!!! ホンマに……来たで……!!!!) 

 怜手牌:2223456789/②(②)②②:嶺上ツモ七:ドラ七・⑧ 

怜(さあ……嶺上張り替え……!! 覚悟せえや……魔物……神代小蒔……!!)タンッ 

 怜、九索切りッ!!! 七萬単騎の切っ先を、神代の喉に突き立てるッ!!! 

 怜手牌:七222345678/②(②)②②:待ち七:ドラ七・⑧

9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 14:33:21 ID:yLD4VRRD0
セーラ(嶺上……なるほど……考えよったな……!! 確かに……神代の一色独占とうちらの絶一門が最後まで続くんやとしたら……神代の色が王牌に埋まっとらな計算が合わへん。嶺上で神代の色をつかめるなら……直撃も可能や……!!)タンッ 

友香(へえ……嶺上とは思いつかなかったんでー……! 千里山の園城寺怜……一巡先を見れる力があるからか……こういう無茶はあんまりしてこないタイプだって思ってたけど……さすがに千里山のエースは伊達じゃないみたいでー)タンッ 

怜(さあ……神代小蒔……ツモ飛ばされて……ツモ順ズレたけど……どうせお構いなしに萬子ツモってくるんやろ……!! せやけどな……うちはもうさんざん見とるんや……! 
 神代小蒔……! あんたは鳴きに関係なく……必ずうちが未来予知で見た一色牌をツモってくる……!! つまり……あんたが今からツモるんは……二巡前にうちがダブルで見た……七萬ってことやんな……!! 
 ほんでもって……あんたはさっき……うちがテンパイしたのに七萬で和了らんかった……! あんたは七萬では和了れん……! やったら当然……どんだけそれが危険やわかってても……人やないあんたはそれをツモ切るんやろ……!!! これで詰みやで……!! 
 楽勝や……全国区の魔物……!!) 

 神代小蒔、山から牌をツモるッ!!! 

小蒔()ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ 

 そして、それをまるで機械のように、躊躇なく、ツモ切るッ!!! 

 切ったのは……ドラの七萬ッ!!!! 

怜「ロンやッ!! 断ヤオドラドラ……7700ッ!!!」ゴッ

10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 14:34:52 ID:yLD4VRRD0
 怜、死力を尽くしての狙い撃ちッ!!!! 

 本来なら2000オールで8000点しか詰め寄れなかったところを、7700直撃で、トップ・神代小蒔との差を15400点縮めるッ!! 

 しかし、その差はまだ大きく……!!! 

 否、大きいからこその……!!! 

怜「これでうちの連荘や……!! まだまだ祭りは終わらへんで……一本場ッ!!!」 

 怜、逃げや流しは眼中に無しッ!!! 

 千里山のエースが狙うはただ一つ……トップの座ッ!! 

 一巡先を見る者――決死の一本場に挑むッ!!! 

友:114300 神:123400 セ:90600 怜:71700

11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 14:41:38 ID:yLD4VRRD0
@実況室 

すばら「園城寺選手が神代選手を直撃いいいいい!!! 絶対無敵に見えた一色独占をドラ単騎で粉砕ッ!!! 全国ランキング二位――名門・千里山女子のエースがその強さを見せ付けましたあああ!!!」 

初瀬「園城寺選手……得意の一発ツモでも十分だったはずなのに……! 危険を冒してまで神代選手を削りに来るとは……まったく予想できませんでした!」 

純「これが……さっき小走が言ってた『勝ちにいく戦い方』の一つなんだろうな。園城寺は一発ツモで連荘をしてもよかった。一巡先が見える園城寺なら、早和了りもしやすいし、ただ早いだけじゃなくリーチ一発で手を高められる。 
 しかし……それだけじゃ断トツの神代には届かないと踏んだ。なんつーか、機械みたいな神代と違って、意思が感じられるよな。オレは好きだぜ、ああいう流れを呼び込む感じの戦い方」 

菫「しかも、今の和了りはただの無鉄砲な特攻ではありません。東四局で森垣選手が園城寺選手から直撃を取ったときのような、勝算と確信に満ちた狙い撃ちです。文句のつけようがない闘牌ですね」 

すばら「しかし……すばらなのはすばらなのですが……私としては園城寺選手の身体が心配です。インターハイのときのように……無茶をし過ぎなければいいのですが……」 

純「親の連荘……一本場か。園城寺は……きっと勝つまで和了り続けるつもりなんだろうが……本当に大丈夫なのか?」 

初瀬「あっ……今、園城寺選手が……!!?」

14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 14:47:10 ID:yLD4VRRD0
@対局室 

南三局一本場・親:怜 

 配牌、理牌ッ!! 

怜(牌が……重たいで……なんや……ダブル一回ってこんなしんどかったか……? 
 あのインターハイんときは……フナQの言うてた三年パワーってやつでどうにか保ってたんかもな……今のとこはまだ一巡先が見えとる……やけど……あと一回でもダブルやったら……たぶん意識飛ぶわ……これ……) 

 怜配牌:①⑦⑦⑧⑨1688東東西中:ツモ①:ドラ③ 

怜(これは……七対子か……鳴いて対々が早そうか……? 東を鳴けたらそれで役がつくけど……あんま鳴くんもな……点数下がってまうし……)コホッ 

 怜、一巡先を見る。セーラはツモ切り發、友香は手出しの西、神代は手出しの二萬、怜のツモは、二索。 

怜(セーラは役牌ツモ切りか。数牌メインでわりと早そうやな。劔谷はなんともわからん……神代は手出し……早速九蓮に一歩近付いた……ほんでうちは二索かぁ……いつもやったら……とりあえずオタ風牌切りやな。 
 一索は浮いとるけど……二索が来るなら捨てへんでええ……中張牌が少ないから……もう四、五巡様子見ていけそうやったらチャンタ系も悪くない……やけど……それで……神代をまくれるやろか……?) 

 怜、先ほどの直撃に満足せず、貪欲に勝ちを目指す。 

怜(いつも通りやったら……勝てへんかもしれへん……うちはもう……一巡先しか見えへんわけやない……回数限定必殺技を持っとるんや……それを使わんっちゅうんは……手抜きと変わらんよな……!! 
 あかんあかん……千里山のエースは……手抜きなんて……せえへんよな……!!!) 

 怜、何があっても雀卓のほうへは倒れないように、椅子の手摺を掴んで身体を支え、唇を噛む。 

 そして……一巡先のその先の――さらに先まで目を凝らすッ!!!

15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 14:50:34 ID:yLD4VRRD0
怜(この局……最初から飛ばすで……手抜きもせえへん……手抜かりもあらへん……正真正銘これがうちの全力や……行くで…………トリプルッ!!!!)ギュルギュルギュル 

 怜、三巡先へ――!!!! しかし……その代償は大きく……!!! 

セーラ「――!!! ――――!!!!」 

怜(…………あれ……なんや……セーラ……何言うてんのか聞こえへん……) 

セーラ「怜……!!! 怜ッ!!! しっかりせえや!!!!」 

怜(……え……うち……今……どないなっとんの……? って……なんや……痛っ……!) 

セーラ「聞こえとるか……!! 返事せえや、怜!!」 

怜「…………聞こえ……とるわ…………大丈夫やって……」クラッ 

セーラ「大丈夫やあらへんやろ!!! なんや……いきなり手摺掴んだと思うたら……そのまま後ろに仰け反って……!! しかも口から血ぃ流しとるし……!! びっくりするわ……!!!」 

怜「……ああ……唇噛み切ったんか……道理で痛いと思うた……」 

セーラ「ホンマ……俺が竜華やなくてよかったな……竜華やったら……卓をひっくり返してでも怜のこと抱き締めに行ってたで……!!」 

 怜、ぼやけた視界で世界を見る。 

 セーラは、怜を案じつつも、席を立ってはいなかった。 

 対局中、手牌を開けたそのときから、席を立って移動するのは反則であり、罰符を払って場は流れる。 

 セーラ……怜の闘う気持ちを汲んでの……必死の我慢ッ!!

16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 14:52:07 ID:yLD4VRRD0
怜「ありがとな……セーラ……おかげで……未来に繋がったわ……」 

セーラ「ええから……早くその血ぃ拭きや……制服に垂れんで……」 

怜「何から何まですまんな……」 

 怜、対面に座る友香に、軽く笑ってみせる。 

怜「第一打から待たせてすんまへん……ほな……いま打ちますわ……」 

 対して、友香、険しい表情で、少し怒ったように、低い声で言う。 

友香「病弱かなんか知りませんけど……この場はあなたと神代だけのものじゃないんでー。次に意識飛ばして対局を止めたら……私棄権するんでー……よろ」 

怜「せやな……ホンマ……申し訳ない。神代さんも……聞こえてんのかどうか知らんけど……ホンマにごめんなさい……」 

小蒔()ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ 

怜「ほな……行きますわ……」コホッ 

 怜、第一打は、中ッ!!

18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 14:54:20 ID:yLD4VRRD0
怜(迷惑……かけてもうた……あかんなぁ……それは勝つ負ける以前の問題やん……反省反省……) 

セーラ(ったく……心配かけさせよって……これで何もできひんようやったらドツいたるで……)タンッ 

友香(千里山の園城寺……確か……インターハイの準決勝では……二巡・三巡先まで見えてるっぽいときがあった。美幸先輩と一緒にモニターで見てたけど……その二、三巡先まで見たっぽいときの園城寺は……今みたいに死にそうな顔してたっけ。 
 ってことは……今、園城寺は一巡先よりもさらに遠い未来を見てきたってことでー……? じゃあ私がここで西を切るのも、次に何を切るのかも……わかってる。 
 まあ……それならそれで……別にいいんだけど……ただ……そういう無茶をするんだったら体力くらいはつけてきてほしいもんでー……) 

 友香、溜息。 

怜(あれ……なんや……劔谷……何を迷っとん……? 西切るんちゃうのか……?) 

友香(何をそんな不思議そうな顔でこっち見てるんでー。そっちは一回対局を止めてるんだから……私が少しくらい長考したって……文句言われる筋合いはないんでー) 

 友香、徒に、手牌を弄っては、切る牌を選ぶ……フリを続ける。 

友香(さて……さすがにこれ以上悩むのはマナー違反でー!)タンッ 

 友香、迷った末に、西切り。 

 否、友香は、決して迷ってなどいない。 

怜(劔谷……まさか今……うちのために目一杯時間使ったんか……!?) 

友香(また倒れられたらたまんないんでー。ここで棄権とか絶対嫌なんでー。それに……フラフラの半病人に勝っても……こっちはまったく嬉しくないんでー!) 

 友香、怜に塩ッ!!!! 

怜(おおきに……劔谷……!!)コホッ

21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 14:56:31 ID:yLD4VRRD0
 しかし、そんな友香とは対照的に――。 

小蒔()タンッ 

友香(ふん……ノータイムで切ってきたか……さっきから本当に人間じゃないみたいでー) 

怜(せやろな……まあ……勝手に無理してんのはうちや……同情引きたいわけやない……ただ……勝ちたいだけや……)ツモッ 

 怜、ツモ、二索ッ!! 打、一索ッ!! 

 怜手牌:①①⑦⑦⑧⑨2688東東西:ドラ③ 

怜(トリプルで見た未来では……次に二索、その次に西をツモる……それで……七対子テンパイ……目指すんは……最速で……最高打点の……和了りや……!!) 

 そして、ツモは巡り、怜の見ていない五巡目――! 

怜(ここで……發かいな……) 

 怜手牌:①①⑦⑦⑨2288東東西西:ツモ發:ドラ③

22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 14:58:31 ID:yLD4VRRD0
怜(發はな……セーラが最初に捨てとる。そのあと……三巡目に劔谷が捨てとるから……残ってんのは二枚。どう考えても……場に一枚も見えてない九筒のほうが確率は高い。 
 やけど……なんとなく筒子の高めは劔谷が抱えとる感じもする……ほんでもって……セーラも劔谷も發を一枚ずつ切っとるっちゅうことは……もう手牌に發がないってことやんな……当然……神代の手牌にも發はないわけで……。 
 となると……この山の中に……ほぼ確実にもう一枚の發が眠ってる……なんとなくやけど……ここが運命の別れ道な気がするわ……) 

 怜、深呼吸ッ!! 

怜(セーラはなんやかんや言うてそういうとこシビアやし……神代は九蓮マシーンやからあれやったけど……唯一……劔谷が毎巡牌捨てるんに時間使うてくれたおかげで……大分休めたわ。 
 さっきはな……前局のダブルから間を置かずにトリプルやったから……さすがにしんどかったけど……今なら……ちゃんと意識保てる気がする……!)フゥ 

 長く息を吐きながら、目を閉じて、集中を高めていく怜ッ!!! 

怜(負けへんで……絶対勝つんや……! やって……セーラが……竜華が……フナQが泉が……千里山のみんなが……! みんなが見てくれとるんや……! みんなが見とんのやったら……! うちは……何度だって……無茶するわ……!!) 

 怜、第三の瞳、再び開眼ッ!!!! 

怜(くぅ……!!! これは……しんどいなぁ……!!!)クラッ 

 眩暈ッ!! 頭痛ッ!!! 吐き気ッ!!!! 

怜(でも……みんなが見てるから……!! うちは千里山のエースやから……!!! 最後まで……!! 全力で戦うねん……!! 行くで……トリプル…………ッ!!!!)ギュルギュルギュル 

 怜、三巡先へ――!!! 

 果たしてその意識は――!!?

23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 15:00:21 ID:yLD4VRRD0
怜(あ…………ぶなかったで…………!!!)フラッ 

 落ちずッ!! 

怜(ハハ……なんとか……戻ってこれた……!! うち一人じゃ……こんなことできひんかったな……みんな……おおきに……!!)タンッ 

 怜、七対子張り替えッ!!! 

 發を残して、九筒切りッ!!! 

 それからツモは巡り、二巡後ッ!!! 

怜「……リーチ……」フラッ 

セーラ(怜のリーチ……! 神代のメンチンをかわせる確信があるんか……!?)タンッ 

友香(園城寺のリーチ……!!! ってことは一発来るんでー!?)タンッ 

怜(神代は……和了られへんよ……うちが四巡目でテンパイしてから……手が進んだのは二回だけ……ほんでもって……さっきうちがトリプルで見た未来の中では……ずっとツモ切りばっかで和了らへん。 
 うちはずっと張っとるんやから……メンチンツモるんやったらその未来が見えるはず……それが見えへんってことは……たぶんやけど……神代はまだテンパイすらできてへんねん……!!!) 

小蒔()タンッ 

 神代の出した牌、当然、誰も鳴けずッ!! 

 この瞬間、未来は不確定から――確定へッ!!! 

怜「ツモや……ッ!! リーチ一発ツモ七対子……4000オールは……4100オールッ!!」パラララ

24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 15:02:11 ID:yLD4VRRD0
 園城寺怜、意地の二連続和了ッ!!! 

 親満ツモで、トップ神代との差を更に詰めるッ!!! 

 また、この和了りで個人成績は友香を抜いて二位浮上ッ!!! 

 だが……その猛追もここまで……!!! 

怜(あかん……この感じ……次からは……もう一巡先も見えへんな……)クラッ 

セーラ(怜……お疲れやな。さすが千里山の真エースはごっつう強いわ……! やけど……さすがにこれ以上は無理し過ぎ……ちゅうか……一人で張り切り過ぎや……ぼちぼち俺にも見せ場くれや……!!) 

友:110200 神:119300 セ:86500 怜:84000

25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 15:04:46 ID:yLD4VRRD0
南三局二本場・親:怜 

セーラ(神代小蒔がこの状態になってから……俺が和了ったんは……神代の親を流すためのザンクだけ……もちろん……このままで終わるつもりはない……)タンッ 

セーラ(この神代相手に……じっくり高い手を作るんは無謀……誰やってそう思う……早和了りせんと役満ツモられるんやから……安く早く手を作るのが当然や。 
 そら怜みたいに一発を狙って和了れるんやったら……安手でも今みたいに満貫に持っていけるんやろうけど……俺は怜やない……それは無理や……)タンッ 

セーラ(ただでさえ……俺は今断ラスやねん。ザンクなんかで刻んどる場合ちゃう……そもそも……麻雀は三、四局に一回和了れるか和了れないかのせめぎ合いや……その和了れる一回で……なるべく多く稼ごう思うんは……俺は普通の感覚やと思うんやけどな。 
 安いから和了りやすいとか……鳴いたから和了りやすいとか……まあそういう傾向もなくはないんやろうけど……期待値で言えば……俺は……和了れる一回を高めるほうが正解やと思う……いや、正解とかやないな……単純に……好きなだけや)タンッ 

セーラ(と……怜が鳴けるとこ切ってきたな……四巡目で鳴き三色テンパイ……流すには絶好の手や……) 

 セーラ、手牌の搭子に手をかけ、苦笑。 

セーラ(いやいや……ちゃうやろ。俺の打ち方はそうやないやろ……! そんなんで勝っても……オモロないわ……!)ツモッ 

セーラ「ほい来たでー……リーチッ!!」タンッ 

 セーラ、平和三色テンパイから、迷うことなくリーチッ!

26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 15:08:12 ID:yLD4VRRD0
セーラ(怜の未来予知か……神代のメンチンか……どうせ潰されるときは潰されんねん。そんなんに一々ビビって打っとったら和了れるもんも和了れへん。 
 俺は迷わへんで……! 未来も見えへんし……一色独占も無理やけど……俺は俺のプレイスタイルをけっこう気に入ってんねん。好きこそ物の上手なれってな。好きなように打って……楽しんで……その上で勝つ……!! それが俺の麻雀やっ!!) 

 二巡後 

セーラ「ツモやッ! リーピン三色ツモ……裏なし、2000・4000は、2200・4200!!」 

怜(セーラ……うちから鳴かずに……あくまで門前で手を高めて来た……しかも……うちが散々悩んだ神代相手にリーチするかどうか問題も……一切迷わずテンパイ即リー……。 
 ホンマ……セーラは高い手和了ることしか考えてへんなぁ……そのブレのなさが……最高にカッコええで……)

友香(さっきから……じわじわ削られてる感じでー? 結局……魔物相手に私だけ何もできてないし……これじゃあ見てるみんなもつまんないよね……次がオーラス……せめてもう一発くらいは和了って終わりたいんでー!) 

 次局オーラスへ向けて意気込む、劔谷・森垣友香ッ!! 

 しかし……その結果は――!? 

友:108000 神:117100 セ:95100 怜:79800

28: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 15:13:48 ID:yLD4VRRD0
南四局・親:セーラ 

 三巡目 

友香「ツモでーッ! ダブ南ッ! 500・1000でー!」 

セーラ「(げ……超走ってんなー……!? ゴットーでラス親流されてもうた……ま、そういうこともあるやんな……)ほな……お疲れさん。楽しかったで」 

怜「(三巡目ツモとか……んなアホな……そんなん何もできひんわ……)ご迷惑おかけしてすんまへんでした……よかったらまたよろしくです……ほな、おおきに」コホッ 

友香「(だあああああこれ悔しいんでー!! 結局何も……何もできなかった……! 千里山のダブルエースは神代相手でも自分の麻雀を打ってたっていうのに……私はこの様なんでー!! これが全国の頂……!! まだまだ……道のりは長いんでー!!) 
 お疲れ様ですっ! どうもありがとうございましたでー!!」 

小蒔「(あれ……私また対局中につかれてて寝ちゃってました……? 点が……増えてる……? けど……いつもに比べると増え方が若干少ないような気もしますね……これは……あとで何があったか霞ちゃんたちに聞いてみないとっ!) 
 え、えっと……すいません寝てましたっ! あ、ありがとうございましたっ!!」ペコリ 

セーラ・怜・友香(も……元に戻った……!) 

 中堅戦前半――終了ッ!! 

<中堅戦前半結果> 
一位:神代小蒔+8400(116600) 
二位:森垣友香+1800(110000) 
三位:園城寺怜+200(79300) 
四位:江口セーラ-10400(94100)

30: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 15:18:32 ID:yLD4VRRD0
@実況室 

すばら「森垣選手の超速攻ッ!! 一巡目にダブ南を鳴いてテンパイ……! そのまま三巡目にツモリましたああああ!! これにて中堅戦前半、決着ですっ!!」 

純「今の和了り……本人は納得してないみたいだけどな。オレは逆に驚いたぜ。あの場面……千里山の二人が奮闘した直後……熱くなっててもおかしくはない状態で、森垣は冷静に卓を見て、最善の結果を残した。 
 配牌イーシャンテンに助けられた形ではあるが、配牌イーシャンテンだったからこそ……一巡目で鳴いたことに意味がある」 

菫「そうですね。ともすると、門前で高めを狙えると……欲が出てしまうものです。待ちも広かったですしね。たとえ鳴かずとも序盤に和了れる確率は高い。けれど……森垣選手はただ速さだけを追求して……流すことを選んだ」 

初瀬「オーラス……森垣選手が流さなかったら……どうなっていたかわかりませんよね。麻雀でもしもの話をしてもきりがないですが……私は、配牌を見たときに、もうダメかと思いました」 

すばら「神代選手ですね。終わった今になって、流された側の手牌をどうこう言うのは失礼かもしれませんが……神代選手もよかったですからね、配牌。 
 あの場面……千里山のお二人は気付いてない感じでしたが、森垣選手はそれを察知したようでした。しかし……一体なぜ察知できたのかは、私にはよくわかりません」 

菫「それについては……初瀬さん、どう思います?」 

初瀬「えっ、私ですか? えっと……たぶんですけど……神代選手の第一打です。あの……ツモ切り一索」 

すばら「あの一索で……配牌の良し悪しがわかるものですか?」

31: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 15:19:03 ID:yLD4VRRD0
初瀬「えっと……九蓮が清一より格段に難しい理由の一つに……門前で1・9を暗刻にしないといけないことが挙げられます。神代選手の場合も……ランダムに一色を引き続けるわけですが……ここ数局を見る限り1・9はまだ一度も切っていませんでした。 
 配牌に1・9が二~四枚あるのを……中張牌で穴があるところを埋めつつ……じわじわ増やしていって……最終的にはテンパイ。 
 確率的に考えて、九種をランダムに引いていくわけですから、サイコロを千回振ったらどの目も同じくらい出るように、普通は1~9の各牌をまんべんなくツモります。麻雀は牌の数が限られているので、よりその傾向が強い。 
 そうなると、多くの場合、最後に待つのは三枚揃えなきゃいけない1・9になります。メンチンを一萬で和了った南二局一本場のケースも、やっぱり九萬待ちでした。 
 そんな神代選手が……不要牌はツモ切りするというルールで打っている神代選手が……第一打からいきなり一索をツモ切ってきた。あの一索切りで、神代選手の手に一索が三枚あることが確定するわけです。 
 残りがどうなっているかまでは……他家からは推測するしかありませんが、配牌がいいのだろうと考えるのに、あの一索切りは十分な判断材料だったと思います」 

すばら「なるほどっ!! 言われてみればそうですねっ!!」 

純「さすが偏差値70。論理的だねぇ。ま、オレならそんな細かいこと抜きに、もう見ただけでヤバい流れを感じ取るだろうがな」 

菫「森垣選手が果たして論理か直感か、どちらで危険を察知したのかはわかりません。 
 けれど、その危険を察知したまさに直後、彼女は園城寺選手から南を鳴きました。危険察知から行動決定に擁した時間は、ほんの一瞬です。驚くべき判断速度だと言っていいでしょう」 

初瀬「そうですね。私だったら……危ないかなって思っても、どうしようか迷っているうちに一枚目の南はスルーしてしまうかもしれません」 

すばら「というわけでっ!! 最後まで見ごたえたっぷりのすばらな中堅戦前半でしたっ!! 
 さて……ここでとうとう対抗戦も折り返しっ!!! 後半戦も楽しみですっ!! それではみなさん、後半戦開始までしばしお待ちをっ!! この対抗戦は実況の新道寺・花田煌と……」 

菫「解説の白糸台・弘世菫と」 

純「同じく龍門渕・井上純と」 

初瀬「晩成・岡橋初瀬で……」 

すばら「お送りしていますっ!!! すばらっ!!」

33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 15:24:27 ID:yLD4VRRD0
@会場某所 

莉子「友香ちゃーん!!」 

友香「莉子っ!? みんなも!? 一体どうしたんでー?」 

美幸「そんなの決まってるもー。頑張った友香を迎えに来たんだもー」 

友香「そんな……私、何もできなかったんでー。園城寺怜に当てたときは少し届いたかなって思いましたけど。神代小蒔があんなになって思い知りましたんでー。私はまだまだ……あの人たちには勝てません」 

澄子「そんなことないわ。友香は堂々の二位じゃない」 

友香「数字の問題じゃないんです。私は……本当に……何もできなかったんでー……」 

梢「友香……本当に……最後までよく頑張りましたね」 

 梢部長、大健闘した一年生の肩に、そっと手を置く。 

 それまで平静を装って笑っていた友香、部員の顔を見て安心したのか、顔は笑っているのに、目から涙が零れてくる。 

友香「うう……!! 部長……!!! みんな……!! 私……本当に……恐かったんでー!!」ポロポロ 

美幸「うんうん……あれは見てるだけでもきついもー。お疲れだもー。よしよし……」ギュッ

34: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 15:24:59 ID:yLD4VRRD0
友香「うう……! 本当に辛かったんでー……苦しかったんでー……!!」ポロポロ 

莉子「友香ちゃん……」 

澄子「友香……」 

美幸「そうだなもー……ありゃ人間じゃないなもー。けど……友香が必死で戦ってるのを見て……私らみんな……勇気をもらったもー。今日帰ったら……みんなでどうやったらあれに勝てるか考えてみようもー。 
 神代小蒔は来年もインターハイに出てくる……そのとき……あいつを倒せるように……一緒に頑張ろうもー」 

友香「美幸……先輩……!!」 

美幸「友香……私が間違ってたもー。インターハイのときは……チャンピオンみたいな人らは世界が違うって思ったけどもー……今日の友香を見て……みんなと一緒なら……まだ戦えるって思えたもー。 
 私らは来年いないけど……友香たちが全国で活躍するの……楽しみにしてるもー!」 

友香「は……はいっ……!! 頑張ります……っ!!!」 

莉子「友香ちゃん……私も……友香ちゃんに負けないよう頑張るよっ!」 

澄子「莉子は……とりあえず気絶しないようにするところからね」 

友香「莉子……澄子先輩も……応援ありがとうございましたでー!」 

梢「じゃあ……友香、私たちは最後まで観戦室まで見てますからね。他の一年生の皆さんと……いい機会ですから仲良くなってきなさい。友香がこれだけ頑張ったんです……勝てるといいですね、一年選抜チーム」 

友香「部長……! はいっ! ありがとうございますでー!!」

35: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 15:27:12 ID:yLD4VRRD0
@会場某所 

初美「姫様おつかれですよー! って……つかれてない?」 

小蒔「初美ちゃん……みんなも! お迎えありがとうございますっ!」 

霞「あら、小蒔ちゃん、つかれてないのね」 

小蒔「はい。なんだかそのようで!」 

巴「まあ……なんにせよお疲れ様です」 

はるる「」ポリポリ 

霞「どう、楽しかった?」 

小蒔「楽しかったよー!! みなさんびっくりするくらいお強くて……勉強になりました!」 

霞「そう、ならよかったわ」 

巴「じゃあ……まあ姫様はお祓いの必要がないってことで。私らは観戦室に場所に戻りましょうか、はるる」 

はるる「」ポリポリ 

初美「巴もはるるもお勤めご苦労様なのですよー」 

霞「小蒔ちゃん、チームメイトとは仲良くなれた?」 

小蒔「気が合いそうな方いっぱいいますっ! 奈良の松実さんとか、長野の妹尾さんとか! あと天江さんが可愛いったらなくてっ!! みなさんよくしてくださいます」

36: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 15:28:46 ID:yLD4VRRD0
霞「楽しそうねえ。小蒔ちゃんは対局も終わって役目を果たしたことだし、あとは、お友達をいっぱい作ってくるといいわ」 

小蒔「そうしますっ! では、また閉会式で!」ダッダッダ 

霞「ええ……またね」 

初美「姫様、楽しそうですねー。あんなに走って戻っていくなんて、よほど二年選抜の控え室は居心地がいいんですかー」 

巴「姫様に同年代の友達が増えるのは、いいことです」 

霞「そうね。ちょっと浮いてないか心配だったけど、杞憂だったわ」 

はるる「」ポリポリ 

初美「もうこれで姫様も私たちもあとは見るだけですからねー。気が楽ですよー」 

巴「二人もチームメイトと親睦を深めてくるといいよ」 

霞「そうね……今日のメンバーが集まることはもうないでしょうから、せっかくだし……対局が終わったあと、どこかで打ち上げがしたいわ」 

巴「カスミン、周りはみんな未成年なんだから、お酒はダメだよ」 

霞「私も……未成年だけど……?」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ 

巴「冗談よ冗談っ!! 冗談だから無闇にそれ降ろすのやめてええええええ!!!!」 

初美「あぁあ、せっかく姫様がつかれずに帰ってきたのに、仕事が増えたみたいですよー」 

はるる「…………」ポリポリポリポリポリポリ

37: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 15:31:05 ID:yLD4VRRD0
@会場某所 

 セーラ、怜に肩を貸して控え室へ戻る。 

 途中、対局室に向かう竜華と泉、それに駆けつけてきたフナQが合流。 

竜華「怜……! セーラ……!! よく生きて帰ってきたなぁ!!」 

怜「けっこうギリやったけどな……」 

セーラ「俺は全然ピンピンしとんでー!」 

Q「先輩は点数がズタボロですやん」 

セーラ「やかましいわっ!」 

泉「お二人とも、無事で何よりです」 

怜「泉も……次……頑張ってな」 

セーラ「泉も泉でえろう大変な卓に入ってしもたもんなー」 

Q「その通り。十万点持ちですけど……トバされても不思議やないです」 

泉「みんなして脅さんでくださいっ! ただでさえ……部長とガチで打つってだけでプレッシャーやのに……!!」

38: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 15:32:17 ID:yLD4VRRD0
怜「ハハ……ま、きっとトビそうになったら竜華が助けてくれるわ」 

竜華「できたらええけどな。泉、悪いけど、今回の面子が相手やと、うちも泉を庇っとる余裕ないで」 

泉「大丈夫です。自力でなんとかしてみせますよ」 

竜華「そら頼もしいわ」 

Q「泉は口だけは高一最強ですからね」 

セーラ「ほな、二人とも気張ってなっ! うちらは控え室で応援しとるわ。千里山魂見せたれよ!!」 

怜「竜華、泉を頼むでー」 

竜華「できる限りのことはするわ」 

フナQ「泉、泣くんやないでー」 

泉「もー! 先輩方ひどいですわー!」 

 ひとしきり談笑したところで、怜とセーラとフナQはそれぞれの控え室に帰っていく。 

 残された、竜華と泉。

40: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 15:33:38 ID:yLD4VRRD0
泉「あの……部長……」 

 五人でいるときは空元気で明るく振る舞っていた泉、多少緊張した面持ちで、先輩・竜華に話しかける。 

竜華「ん、なんや、泉。恐くなったんか?」 

泉「そらまあ……同卓するんが大阪三強の虎と竜と悪魔ですから……恐くない言うたら嘘になります」 

竜華「コラコラ。人をそんな魔物みたいに言わんといてや。うちも洋榎さんも憩ちゃんも、みんな普通の人間やて。さっきの神代小蒔みたいな無茶苦茶はせんよ。泉は泉の麻雀を打ったらええ。南北大阪の個人戦決勝にでも来たと思うて、楽しみや」 

泉「うちがセーラ先輩か園城寺先輩やったら……確かにそうですね。個人戦決勝ですか……わかりました。うちの力でどこまでやれるか……頑張ってみます」 

竜華「ほな……行くでっ!」 

 清水谷竜華、二条泉、出陣ッ!!

42: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 15:38:41 ID:yLD4VRRD0
すばら「ここから対抗戦は後半へと入っていきますっ!! 大熱戦かつ大接戦が続いておりますが、そんな中現在のところは116600点の二年選抜が頭一つトップに立っています! それを追うのは一年選抜・110000点、三年選抜・94100点!! 
 混成チームは未だ大きく点を稼いだのが小走選手だけというやや苦しい状況ながら、79300点でトップと37000点差と、一発が決まれば十分にひっくり返せる位置につけていますっ! 果たしてここから順位は動くのか否か!! 中堅戦後半、開始ですっ!!」 

@対局室 

東家:二年選抜・荒川憩(三箇牧) 

憩「ほな、みなさん、お手柔らかによろしくでーすっ」 

南家:三年選抜・愛宕洋榎(姫松) 

洋榎「ほんなら、うちは手堅く勝たせてもらうでー」 

北家:混成チーム・清水谷竜華(千里山女子) 

竜華「お手並み拝見、ってところやなっ」 

西家:一年選抜・二条泉(千里山女子) 

泉「(えっ!? なに? なんやこの流れっ!?)えっ……えっと……みなさん手強そうなんで…………頑張ります」 

憩・洋榎・竜華「オモロなっ!!!」 

泉(手……手厳しいっ!!) 

 中堅戦前半――開始ッ!!!

43: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 15:41:12 ID:yLD4VRRD0
@実況室 

すばら「これはまた、見事に大阪府の有力選手が集まりましたねっ!」 

純「オレはあんまり関西には詳しくねえから、多少説明がほしいけどな」 

菫「では、近畿地区担当の初瀬さん、お願いします」 

初瀬「私ですか!? え……えっと、そうですね。まず言っておきたいのは、この中堅戦後半は、事実上の大阪最強を決める戦いだということです。まさか、こんなところで竜と虎と悪魔の三強直接対決を見れるとは思いませんでした」 

すばら「竜に虎に悪魔ですかっ! 随分とまた物々しい通り名ですね!!」 

初瀬「物々しいどころか物足りないくらいです。あの方たちに関しては……通り名のほうが名前負けしている。それくらい実力のあるお三方ですから」 

純「竜ってのは……あれか。うちの龍と名前が似てる、千里山の黒髪ロングか」 

初瀬「はい。北大阪最強の高校を司る竜――千里山女子の部長にして大将・清水谷竜華選手のことです」 

菫「なら当然、竜と並び立つ虎は、姫松の彼女ということになりますね」 

初瀬「南大阪最強の高校を率いる虎――姫松の主将にしてエース・愛宕洋榎選手ですね」 

すばら「そして……白衣の悪魔なわけですねっ!」 

初瀬「彼女と対戦経験のあるプロの方が、雑誌の取材か何かでこう答えたそうです。『あれは天使なんかじゃない。むしろ悪魔的な何かだ』――と」

45: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 15:43:16 ID:yLD4VRRD0
菫「大阪府どころか、西日本最強と言っても過言ではないですよね」 

純「だな。全国一万人の頂点にもっとも近い存在……来年の日本最強候補筆頭」 

初瀬「二年連続全国個人戦二位――三箇牧・荒川憩選手」 

すばら「おおおお!! 聞けば聞くほど大阪三強対決と呼ぶに相応しい戦いですねっ!! すばらっ!!」 

純「となると……残りの一年坊が心配だな」 

菫「ええ。彼女も決して弱くはありませんが、まだまだ経験不足という感が否めません」 

初瀬「二条泉選手……大阪――ひいては近畿地区の一年生の中でトップクラスの打ち手です。インターミドルでも、原村選手に負けず劣らずの活躍を見せていました。 
 同学年の私から見れば、一年生で千里山のレギュラーになってみせた雲の上みたいな人ですが……三強が相手となると……苦戦は必死だと思います」 

純「ま、今回の学年対抗戦の趣旨には合ってるんじゃねえか? 同地区の最強と呼ばれる先輩どもに、初々しいホープがどこまで食らいつけるのか。見物だな」 

菫「そうですね。それに、一年生は成長の度合いが二、三年生とは段違いに速いものです。二条選手があのインターハイのときからどれだけ強くなっているのか。直に戦った私としては、非常に興味深いところです」 

すばら「さあああ! 大阪三強対決であり、大阪最強学年決定戦でもある中堅戦後半っ!! 東一局、第一打が放たれようとしていますっ!!」

48: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 15:55:49 ID:yLD4VRRD0
@対局室 

東一局・親:憩 

泉(北大阪の竜……南大阪の虎……そして、個人戦最強の悪魔……)タンッ 

泉(強いのは十分知っとる。清水谷部長とは部活で何度も対戦して……直にその力の差を見せつけられてきた。そして……その清水谷部長と互角にやり合う……南大阪の愛宕洋榎さん……もとい監督の娘さん。 
 と……そんな洋榎さんと清水谷部長の更に上を行く……南北大阪個人戦一位……全国では二位の……荒川憩さん……)タンッ 

泉(三人とも大阪屈指の化け物や……三強であり五指……大阪で麻雀打っとるやつやったらみんな知っとる。この三人に、セーラ先輩と園城寺先輩が加わって……それで大阪ドリームチームの出来上がりやってな)タンッ 

泉(自分が場違いなのはわかっとる。うちかて自分が弱いとは思ってへんけど……この三人と対等に戦えるステージにはおらんっちゅうのもよくわかる。この三強相手にまともに戦えるのは……今日の一年選抜やったら大星淡か宮永咲くらいやろ。 
 清水谷部長は魔物と一緒にせんでって言うてたけど……うちから見れば同じや。それくらい突き抜けてんねん……この人らは……)タンッ 

泉(まあ……最初から弱音ばっか吐いててもなんも始まらん。今まで見てきた対局の中で……この場が一番普通なはずなんや。神代小蒔や天江衣のような無茶苦茶な場を作る人はおらん。大星や松実姉妹みたいなツモに偏りのある人もおらん。 
 正真正銘……非オカルト同士の戦い。うちにやってチャンスがないわけやない。せやから……とにかくまずは……一つ和了ることや!)タンッ 

 六巡目 

憩「おっ、ツモや。ツモドラ一……1300オールいただきですわー」カチャカチャパラララッ 

泉(速い……!) 

洋榎(おー……さすがうちと五分で戦える数少ないやつの一人やな……やるやんけ) 

竜華(手始めに……って感じやな。まだまだ……これくらいやったら可愛いほうや) 

憩「ほな、一本場いっくでーっ!」コロコロ 

泉:108700(-1300) 憩:120500(3900) 洋:92800(-1300) 竜:78000(-1300)

50: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 15:59:48 ID:yLD4VRRD0
東一局一本場・親:憩 

竜華(泉……ツモ牌や場の偏りがないからゆうて……自分にもチャンスあるみたいな思っとったら……どえらい勘違いやで。この悪魔はな……憩ちゃんは……こういう普通の場で倒すんが一番しんどいんや。 
 まだ場に偏りがあるほうが……憩ちゃんの手が読みやすくなって楽……もちろん偏りがあろうとなかろうと憩ちゃんは悪魔的に強いけどな。全国二位っちゅうんは……そういう相手やで……泉……気ぃつけや)タンッ 

竜華(憩ちゃんのツモに偏りはない……洋榎さんやセーラみたいに強い引きを持っとるわけとも違う……もちろん……怜みたいに一巡先が見えるなんて超常現象は使えへん。やのに……この子は南北大阪で個人優勝できる。 
 みんな最初は不思議に思ったんや……なんでこんな一見して普通の麻雀を打つ子に勝てへんのやろって……やけど……一度対戦してみれば嫌でもわかんで……本当に……勝てへんのやからな……)タンッ 

竜華(高度に発達した技術は魔法と区別できひんみたいな言葉があるけど……憩ちゃんの麻雀はまさにそれや。宮永照の麻雀が殺人的なんやとしたら……憩ちゃんの麻雀は達人的。 
 純粋な技術力で言えば……憩ちゃんは宮永照の上やとうちは思う。その特徴は……一目じゃ気付きにくい。けど……気付いた瞬間に背筋が凍る……憩ちゃんは……半端やなく目がいいねん……)タンッ 

竜華(泉……さっきの憩ちゃんの和了り……ちゃんと気付いとるか……? 二巡目に手から六筒を落として……ペンチャンの三萬待ちで和了った憩ちゃんの打牌の不自然さに気付いとるか? 
 まあ……最初から手がよくて一萬と二萬があったんやったら話は別やけど……憩ちゃんは一巡目からずっとツモ切りをしとらん。 
 しかもあの安い和了りや……別に手を高めるために手出しを続けてたわけやない。憩ちゃんは単純に配牌が悪かったんや。たぶん……一萬と二萬……どっちか片方しか配牌になかったやろな。 
 やのに……憩ちゃんは受けの多い六筒を早々に落とした。染め手やチャンタを狙うでもなく、や)タンッ 

竜華(まあ……これだけで気付けっちゅうのもさすがに無茶やろか。もう二、三回見れば……たぶん思い知るやろ。大阪最強……全国二位の荒川憩……その悪魔的な闘牌。 
 うちも気付いたときはぞっとしたで……なんたって……憩ちゃんは絶対に裏目らへんのやからな……!)タンッ

52: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 16:03:43 ID:yLD4VRRD0
@実況室 

すばら「え……裏目らない?」 

純「そりゃどういう意味だよ、初瀬ちゃん」 

初瀬「いや……言葉通りの意味です。これは近畿大会が終わったあとにたまたま先輩から聞いた話なんですけど、荒川憩選手の打ち方の特徴の一つとして、ほとんど裏目らないという事実があるそうなんです」 

菫「まったく、ではなく、ほとんど、という言い回しが気になりますね」 

初瀬「ええ……荒川選手も裏目るときはあります。けど……それは裏目ったというよりは……面子を一つ落としてるって感じらしいんです。それをすることで……より高い手を和了っているんだとか」 

純「裏目らないのが事実なら大したもんだが……衣とか神代に比べると、イマイチすごさが伝わってこねえな」 

初瀬「えっと……先輩の受け売りなのであまりうまく伝えられないのが申し訳ないのですが。荒川選手の和了りは……ほぼ全て最速で手が作られているんだそうです。 
 具体的に言うと、荒川選手が和了ったときの手牌と捨て牌……それら全てを合わせて……作り得る和了りの形を探ってみると……七割方は荒川選手が和了った形のただ一通りしか作れないのだそうです」 

菫「テンパイ効率が恐ろしく良い、ということですね。ちなみに、最速でない残りの三割はどういったパターンなんですか?」 

初瀬「それは……打点を上げているパターンです。荒川選手が和了ったときの手牌と捨て牌、それら全てを合わせて、作り得る最高打点の和了りの形を探ってみると、それが実際に荒川選手の和了った形になっているそうなんです」 

純「つまり……あのナースちゃんはツモる牌が全て見えてるってことでいいのか?」 

すばら「ツモる牌全てって……それ、一巡先が見える園城寺さんより遥かにテンパイが速いってことになりますよね?」

53: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 16:06:37 ID:yLD4VRRD0
初瀬「事実として……そうですね。荒川選手のテンパイ効率は近畿地区でも群を抜いています。ただ……荒川選手のそれは……見えるとか見えないとか、そういうオカルトではないそうなんです。あくまで技術の範囲内。 
 しかし、その技術があまりに高度過ぎるので……結果だけ見ている私たちにはオカルトのようにしか見えないんだとか。 
 先輩は計算機を例に話してくれましたね。三桁かける三桁の計算を一瞬でやってのける計算機。それを見て、魔法だと思うか、技術だと思うか、どっちだって。そして仮に、タネと仕掛けしかない技術だと思ったところで、同じことを自分ができると思うかって。 
 荒川選手がやっているのは、そういう類の何からしいんです」 

菫「そう言われてみると、さっきの東一局の二巡目六筒切り……多少不自然な打牌だと思って見ていましたが、裏目らないと聞いた今では納得できます。確かに、荒川選手が和了ったとき、その手牌と捨て牌の中に四以上の筒子はあの六筒しかなかったですね」 

純「しかしなぁ……オカルトか非オカルトかは別として……絶対に裏目らない程度の力で、魑魅魍魎が跋扈する全国で二位になれるとは到底思えないんだが……」 

初瀬「もちろんその通りです。荒川選手は、裏目らないだけでツモは普通の人と変わらないので、例えばノーテンで終わることだってあります。井上さんの言うことはもっともだと思います。ですが……」 

菫「荒川選手の打牌の特徴は……何も裏目らないというだけではない……ということですね」 

初瀬「そうです。荒川選手のやっていることがオカルトなら……絶対に裏目らないオカルト、だからテンパイが速い、すごい――で終わる話なのですが、荒川選手のアレはあくまで技術なので……もっと別のこともできるんです」 

すばら「例えば……どんなことができるんでしょう……?」 

初瀬「えっとですね……麻雀のゲームに、他家の手牌を晒した状態にするって設定がありますよね。確か、フルオープンモード。荒川選手の場合……速ければ三巡、遅くとも六、七巡目までには、そのフルオープンモードに入ります」 

純「他家の手牌が透けて見えるのか? それも……三家全て……? 速ければ三巡でって……どんな技術だよ……あの風越の女も相当だが……あいつにだってそこまで速く正確には見えねえはずだぞ。もしそれが本当なら、下手なオカルトよりよっぽどひでえな……」 

菫「他家の手が透けて見えるのであれば、振り込むことはまずありませんし、たとえ先制リーチをされたとしても……いくらでも打ち回すことができますね」 

すばら「おおお!! ここで千里山女子・清水谷選手がテンパイっ!! これはリーチを掛けるでしょうかああ!?」

55: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 16:10:37 ID:yLD4VRRD0
@対局室 

 八巡目 

竜華(憩ちゃんが相手なら手は筒抜けやと思って間違いない。直撃を取るのはかなり厳しい……となれば、憩ちゃんが親のこの局は、ツモで憩ちゃんを削るチャンス……強引にでも行くで……!) 

竜華「リーチや!」スチャ 

憩(お、来よった来よったー。こっちはまだリャンシャンテン……ま、こっからやろな)タンッ 

洋榎(おーおー。調子づいとんなー)タンッ 

泉(清水谷部長のリーチ……荒川憩も洋榎さんも際どいところを切ってきた……安牌が増えたのは助かったけど……二人ともオリてへんっちゅうことやんな)タンッ 

竜華(憩ちゃんは怜とはちゃう……故意に一発をズラしたりとかはせえへん。やけど……憩ちゃんが一緒やと和了りにくくなるんは確かや。特に出和了りがしにくい……なんでかっちゅうと……)タンッ 

憩(清水谷の竜さんはなんや無理してるみたいやな。ほな……のんびり回すとしましょかー)タンッ 

洋榎(む……それは通るんか。やったら、こっちはとりあえず残しやな)タンッ 

泉(二人とも切り込んでいくな……清水谷部長の手が読めてるってことやろか。これは……うちもベタオリやあかんな……幸い道は二人が作ってくれとる……負けてられへんで……!)タンッ

56: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 16:12:31 ID:yLD4VRRD0
竜華(三人ともオリる気配がない……まあ……憩ちゃんがそう誘導してるんやから……そうなるやろな。洋榎さんは上家の憩ちゃんを見て捨て牌を選んどる。泉は二人を見て選んどる。洋榎さんも泉も憩ちゃんの影響下にあるねん。 
 うちの和了り牌を見抜いとる憩ちゃんが道を作れば……洋榎さんも泉も回しやすい。うちの和了り牌を掴んでも……そう簡単には出さへんやろ。やって……危険牌を出さなくてもテンパイにとれるように……憩ちゃんが安全な道を作ってくれとるんやからな。 
 やけど……それは憩ちゃんの切り開いた道や……当然……先にゴールするんは……憩ちゃんやで……!)タンッ 

憩(おっ、イーシャンテン~。受けを広くすると振り込んでまうから、この場はここやろなー)タンッ 

 十四巡目 

憩「ツモやっ。ピンツモ、700オールに一本付けでよろしくです~」カチャカチャパラララ 

竜華(三枚しかないうちの当たりを一枚持たれとる。それ……普通に手広く打っとれば途中で振っとったやん。参ったわ……完全に見透かされとる) 

洋榎(二連荘か。ま、安いし別にええやろ) 

泉(清水谷部長がかわされた……!? これが全国二位の悪魔……荒川憩さん……!!) 

泉:107900(-2100) 憩:123900(7300) 洋:92000(-2100) 竜:76200(-3100)

57: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 16:16:41 ID:yLD4VRRD0
東三局二本場・親:憩 

 十巡目 

竜華(張った……! タンピン三色ドラ一赤一……絶好球や。やけど……リーチかけるとさっきみたいに打ち回される。 
 憩ちゃんを削りたいのは山々やけど……洋榎さんも今回手が良さそうやし……勝負しに来てくれはるんやったら出和了りも無理やないやろ……ここはダマで通すで……!)タンッ 

憩(おっ、大きいの張りましたねぇ。リーチしてこんってことは……洋榎さんから出てくるのを待っとるんやろか。 
 やけど……清水谷の竜さん……悪いですけど……お二人とも……互いの和了り牌持ち合ってはりますよ。そのまま待つんやったら……今回もウチがいただきですわ)タンッ 

洋榎(ぶちかましたんで~)タンッ 

 五巡後 

憩「タンピンツモ赤一……2600は2800オールやでー」カチャカチャパラララ 

竜華(またかいな……!!) 

洋榎(ふーん……) 

泉(ぜ……全然テンパイできひん……!!) 

泉:105100(-4900)憩:132300(15700)洋:89200(-4900)竜:73400(-5900)

58: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 16:18:55 ID:yLD4VRRD0
@実況室 

すばら「さ……三連続和了……!! これは……不思議です……!! 清水谷選手も愛宕選手も決して悪くない手牌でしたし……ミスらしいミスもなかった……!! なのに……気付けば荒川選手がそれに追いついて追い越してしまう……!! 
 これは……どういうことなんでしょう、初瀬さん!?」 

初瀬「えっ!? いや……急に振られても……私もちゃんと解説できるほど荒川選手のことをよく知っているわけじゃないですし……」 

純「本当に魔法を見ているみたいだな。無理な鳴きを入れてるわけでもねえ、何かのオカルトで他家に圧力をかけてる様子もねえ。なのに……気付けば常に荒川憩が場をリードしてやがる」 

菫「よくよく見ると……いくつか普通では有り得ない打牌をしているときがあります。それによって他家の手をコントロールしているような感じがしますね。 
 ただ……あくまで個人の技術のみで打っている荒川選手がどうしてそんな打牌ができるのかと言われると……うまく説明できる気はしません」 

すばら「こ……困りました……! どなたか、荒川選手に詳しい方をお呼びするのがいいでしょうか!?」 

小走「その必要はないっ!!」ドンッ 

 王者、再登場ッ!!!

59: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 16:24:32 ID:yLD4VRRD0
初瀬「先輩っ!? なぜ!?」 

小走「ニワカに解説はできんよっ! パートツー!!」 

すばら「というか、いつの間に!!?」 

小走「王者とは常に己のあるべき場所を知っている。それだけのことだッ!」 

純「まーた呼んでもいねえのに来やがったな……」 

菫「小走さん……小走さんなら、あの荒川憩の打ち筋について解説ができるんですね?」 

小走「ふふ……任せてください、弘世さん。では、一つ一つ解きほぐしていくとしよう。魔物退治ならぬ悪魔祓いの時間だ!」 

すばら「お、お願いしますっ!」

60: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 16:26:42 ID:yLD4VRRD0
小走「まず、みなさんお気づきだろうか? 荒川憩は配牌後……理牌をしない!」 

純「そんなんとっくに気付いてるよ。和了るときになってやっとカチャカチャ牌を並び替え始めるよな。で、それがどうかしたのか?」 

小走「荒川憩は理牌をしない。では、荒川憩は、本来なら理牌しているときに、何をしていると思う?」 

初瀬「他家の理牌が終わるのを待ちつつ、自分の手牌をどうやって和了りにもっていくか考えているのでは?」 

小走「甘いな、初瀬。理牌をせずともミスなく対局を続けられるようなやつが、自分の手牌についてあれこれ考えるのにそんな時間をかけると思うか? 
 大体、仮にそうだとしても、それなら普通は理牌するだろう。そっちのほうが絶対に速いし、考えやすい」 

初瀬「じゃあ……荒川選手は自分の手牌は見てないんですか?」 

小走「見てるよ。一瞬だけな。配牌を開けたそのときに、さーっと一瞬だけ手牌を眺めているだろ。それで終了だ。 
 確か……清澄の原村和が第一打で少し悩むクセがあったはずだが……恐らくその時間で原村がやっているだろう計算を、荒川憩はあの一瞬で終わらせている。 
 その……驚異的な計算速度……かの有名なラプラスの悪魔の如き知性――情報処理能力……それが、荒川憩の技術を支える力の一つだ」 

純「荒川憩の計算能力が悪魔レベルに高いのはまあいいとして……話が本題から逸れてるぜ。あいつが理牌をせずに何をしてるのか、その答えはなんなんだ?」 

小走「荒川憩は、他家が理牌しているのを見ている」 

菫「他家の理牌を観察して……手の良し悪しなどを読んでいるということですか?」 

小走「そんなところです。しかし……あの悪魔の目が見ているのは……何も良し悪しだけじゃない。荒川憩は、他家の理牌を見ただけで、誰の手にどの牌が何枚ずつあるかを六割以上は把握できる」

61: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 16:29:19 ID:yLD4VRRD0
すばら「六割って……! そんな……そんなことが……可能なんですか? 個人の理牌のクセとか……触らずの十四牌とか……そういうのは確かにありますけど、理牌を見ただけでそこまでわかるものでしょうか?」 

小走「理牌のクセ、触らずの十四牌。そうだな、そういうのも、荒川憩が他家の手を見るのに参考にしていることの一つだな」 

初瀬「え……? 他に……何があるんですか?」 

小走「心拍数や血圧、発汗、体温といったバイタルの変化。それに表情の変化や、牌を追う目の動き――どの牌を何秒見たか、どの牌を一番多く見たか、どの牌とどの牌を見比べていたか。 
 それに……牌に触れたときにどういう身体反射を起こしたか……とかも見ているだろう。とにかく……荒川憩はそういった……人間が意識的無意識的に起こしてしまう僅かな変化を、一つ残らず見尽くしている」 

純「見尽くしているって……なんだよそれ。そんなんオカルトと大差ねえだろ。まあ……心拍数やら血圧やらはわからんでもねえよ。そりゃ、良い手がくれば誰だって興奮して緊張するだろうし、悪い手ならその逆だろう。 
 それはいいとして……一体なんなんだよ、牌に触れたときの身体反射って……」 

小走「実際の医療現場で研究されている、立派な技術の一つだよ。例えば、阿知賀の松実宥じゃないが、人は寒色に触れると体温が下がり、暖色に触れると体温が上がるという。 
 それに、例えば白と東では、彫り込みの有無から、指が牌に触れる面積も、感触も、大分違ってくるな。もちろん、誰もが普段はそんなこと意識せずに打っている。 
 しかし、そういう僅かな違いに対しても、人間の身体っていうのは無意識レベルで反応してしまうようにできているんだ」 

菫「無意識レベル……ですか。それは、我々が人間である以上、どうしようもない変化ですね」 

小走「その通りです。荒川憩の悪魔の目をもってすれば、手牌なんて隠している意味はない。なぜなら、他ならぬそれを見て触っている人間が、まるで鏡となったかのように、知らず知らずのうちに全てを荒川憩に見せてしまっているのだからな。 
 まあ……そこでいくと、荒川憩が、唯一個人で勝れない相手である宮永照を『ヒトじゃない』と表現したのも頷けるものがある。案外チャンピオンは本当にヒトじゃないのかもしれん。 
 逆に言うと、ヒトである以上、荒川憩の目から逃れることはできないということだ」

62: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 16:31:29 ID:yLD4VRRD0
すばら「えっと……荒川選手は他家の理牌を観察しただけで、もう他家の手が読める、と。ということは、同じようにして、他家の打牌を観察すれば、もっと色々なことがわかりますよね。今度は実際に見える牌も出てくるわけですから」 

小走「当然だ。ゆえに、初瀬が最初に言った通り、荒川憩は速ければ三巡、遅くとも六、七巡でフルオープンモードに入る。 
 もしこれがネット麻雀で、純粋に捨て牌だけしか見えないのであれば、さすがの荒川憩もそんな神業――悪魔の所業と言うべきか――はできないだろうな。 
 なんというか、宮永照をオカルトの頂点、原村和をデジタルの頂点とするなら、荒川憩はアナログの頂点だろう。ヒトを観察し、ヒトと触れ合うナースだからこそできる芸当だ」 

純「ん……待てよ、今のでフルオープンモードの仕組みはわかったが……あいつはツモが見えるって言ってたな。それは……どうなってんだ?」 

菫「荒川選手の計算能力が原村選手のそれを遥かに凌ぐというのなら、いわゆるカウンティングでしょうか。他家の手牌が透けて見える荒川選手なら、どの牌が山に残り何枚あるのかを、実際に計算することができるでしょう。 
 なら、最も確率がいいように手を進めていけば……当然、テンパイ効率は高くなる。あたかもツモる牌がわかっているかのように」 

初瀬「しかし……カウンティングって……結局は確率に頼ることになるんですよね? でも……荒川選手は『絶対』に裏目らない……それは計算だけじゃ説明できない気がします。 
 似たようなことはデジタル最強の原村さんもやっていますが……原村さんは裏目ります。その差はどこにあるんでしょう」 

小走「そう……初瀬の言う通り。いかに荒川憩の観察能力と計算能力がズバ抜けていようと……山牌の並びまでは見えない……絶対に裏目らないというのはあまりにオカルトじみている……そう思っていた時期が……私にもあったよ」

63: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 16:33:21 ID:yLD4VRRD0
すばら「ええっ!? それ……つまり、荒川選手には山牌まで透けて見えるってことですか!?」 

純「いや、完全にオカルトだろ……それ。山牌は全自動卓がランダムに並べてるんだぜ? ヒトが触れているわけじゃないなら、荒川憩の悪魔の目とやらも機能しないんだろ?」 

小走「そうだな、そう考えるのが妥当だ。しかし、荒川憩は悪魔である前に……ナースなんだよ」 

菫「それが……何か?」 

小走「みなさん、ナースになる人間が備えているべき資質として……最も重要な要素はなんだと思う? 私は……博愛だと思う」 

初瀬「博く愛することですね」 

小走「博打を愛する、とも読めるな……まあそれは閑話休題。ところで、荒川憩は……あれほど麻雀が強いのにもかかわらず……名実ともに宮永照に次ぐ打ち手であるのにもかかわらず……あの天照大神とやらの仲間には入っていない。 
 『牌に愛された子』……だったか」 

菫「そうですね。荒川選手は……その強さは申し分ありませんが、照や淡のような……まるで牌に慕われているかのような和了りはしません」 

小走「そうなんだ。まさにそう。荒川憩は、牌に愛されてはいない。けれど……荒川憩はナースだ。博愛だ。そして……その博愛主義は……何も人間へ向けられるだけじゃない……」 

初瀬「ま……まさか、荒川選手は……!」 

小走「そう。彼女は……いわば『牌を愛する子』なんじゃないかと……私は思う」

65: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 16:35:43 ID:yLD4VRRD0
純「で、だからどうしたんだよ……?」 

小走「わからないか? 愛するということは、その対象の個性を認め、受け入れるということだ。人間を愛するように牌を愛するということは……個々の人間を見分けられるのと同様……個々の牌を見分けられる……そういうことにならないか……?」 

すばら「ガ……ガン牌……!!? 荒川選手は……ガン牌をしているんですか!!?」 

小走「それは故意に傷をつけたりして特定の牌に目印をつけるイカサマだろうが。荒川憩のそれは違う……彼女はきっと……牌の個性を感じ取っているんだ……いや……もしかすると自動卓の個性すら感じ取っているのかもしれない。 
 牌や卓といった無機物すら、彼女にとってはヒトと同列に愛せる何かなんだ。そこには個性があり、カルテに載るようなクセや特徴がはっきりと存在する。 
 だから……たとえそこに積まれているだけでも……『牌を愛する子』荒川憩にとって、それは診察を待つ患者の列みたいなものなのかもしれない」 

純「愛とか言い出したら……そりゃオカルトになっちまうような気がしないでもないけどな。オレだって……牌は見えねえが……流れは見える。それは、案外……場を愛しているからなのかもしれねえぜ?」 

小走「いや……すまない。確かに、愛を引き合いに出すのはいかにもオカルト臭いな。ならば、一応科学的なことも言っておこう。 
 理論上……例えば十円玉を投げたりサイコロを転がしたりするとき……裏と表がでる確率、一から六の目が出る確率が……完全に同率になるということはありえない。彫りの違いが重心の違いとなり、確率に影響する。 
 麻雀牌だってそうだ。マイクロ単位で測れば、完全に同じ牌などはどうやってもありえない。その違いは確実に確率に影響する。 
 自動卓が牌を並べるのだって、さっきは簡単に『ランダム』なんて言ってくれたが……完全なるランダムというのがいかに厄介なものであるかをわかっていないようだな。それはあくまで……人の目から見ていかにも乱雑であるというだけだ。 
 ただ……荒川憩の持っているのは悪魔の目……ああやってアナログの牌でアナログな麻雀を打っている以上……常人にはランダムに見える場の中に……なんらかの規則性を見出していてもおかしくはない」

66: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 16:37:11 ID:yLD4VRRD0
純「いや、おかしいだろ。そこまで行けばオカルトと何も変わらねえよ」 

小走「だから、初瀬が最初に言っただろう? 高度過ぎる技術は魔法と区別がつかない。荒川憩がやっているのは、高度過ぎる技術を駆使した何か。それを技術と呼ぶかオカルトと呼ぶかは……人それぞれだとな」 

純「だったらオレはオカルトでいい。要するに、あのナースちゃんは、他家の手牌が見えるし、山牌も見える。そういう麻雀をするってことだろ」 

小走「ふん、ニワカが。甘いな、甘過ぎる。その程度の認識で勝てるのは、さっきの神代小蒔のような人外を相手にしてるときだけだ。荒川憩は……人間だ。それも……悪魔的な人間。能力を見破っただけで勝てるほど……二年連続全国二位の称号は安くない」 

初瀬「ど……どんな風に悪魔的なんですか……?」 

小走「まあ……見ていればわかるよ……」 

すばら「それでは見守るとしましょうっ!! 荒川選手の三連荘で、東一局三本場ですっ!!」

68: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 16:41:33 ID:yLD4VRRD0
@対局室 

東一局三本場・親:憩 

泉(まずいで……三連荘はさすがにマズい。何があかんかったのかわからへんけど……荒川さんは清水谷部長と洋榎さんを相手に回してなお走っとる……それだけでもう十分レッドゾーンやで……なんとか止めな……!)タンッ 

竜華(泉……焦ったらあかんで……! それこそ憩ちゃんの思う壺や……憩ちゃんは手牌だけやない……人の心まで見抜いて翻弄する。それこそ悪魔のようにな。 
 みんな……憩ちゃんに弄ばれとると気付かないまま……いつの間にか魂を喰らわれとんねん……!)タンッ 

憩(いやいや……清水谷の竜さん……そんなピリピリせんでも大丈夫やて。ウチかてなんも全部が全部思い通りにできるわけやない……ただ……見えるだけや。 
 ウチは……ただちょーっとウチのやりやすいように他人を誘導してるだけやねんて……それで……もし誰かが破滅したとしたら……それはやっぱりその誰かが自分でそうなっただけで……ウチのせいやあらへんよ。ウチはなんもしとらへん……)タンッ 

泉「ポ、ポンッ!」タンッ 

泉(發……特急券……! これで連荘を蹴る……!) 

竜華(憩ちゃん……泉に鳴かせよったな……何が狙いや……!)タンッ 

泉「そ……それもポンで!」タンッ 

竜華(なっ……!!? 泉に何かしとるんやと思うたら……うちも手の平の上やったんか……!!)タンッ 

憩(手の平の上ってなんやねん……ウチが不要牌を切ったらあの子が鳴いた……竜さんが不要牌を切ったらあの子が鳴いた……それだけのことやんな……)タンッ 

洋榎(ポンポンとツモを飛ばされんのは面倒やなー。ま、うちの勢いはそんなことでは殺されへんけどなー。さあ……ぼちぼち和了るでー……!)タンッ 

泉(よし……! ドラが入った……これで……ドラが重なってくれば發ノミやったんが満貫も見れんで……!)タンッ

69: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 16:45:28 ID:yLD4VRRD0
 五巡後 

泉(イーシャンテン……發ドラ二……悪くないんやけど……あと一歩が重いな……あれから鳴くチャンスもあらへんし……)タンッ 

竜華(テンパイはできたけど……なんや憩ちゃんが静かなんが不気味やな……それに……洋榎さんが力を溜めとる感じがする……ここはリーチするんは危険かもな……)タンッ 

憩(さて……そろそろやんな……)タンッ 

洋榎「ほな行くで~、リーチやっ!」スチャ 

憩「それポンやー。一発消し~」タンッ 

洋榎「地っ味やなー。ま、さっさとツモを回してくれておおきにっ!」 

 洋榎、ニヤリと笑って手牌を倒す。 

洋榎「ツモッ! リーピンツモ……裏々や! 2000・4000は2300・4300やで!!」 

憩(っと……裏々やと……? 愛宕の洋榎さんはホンマ怪物やでー。こういう天に味方されとるようなタイプは苦手やわー) 

洋榎「なんや……思惑とちゃうみたいな顔しとんなー?」 

憩「ん、ウチ、そんな顔しとりました?」 

洋榎「しとったしとった。自分、他家がリーチかけてきても滅多にオリひんしな。どうせ一発消して回して先和了ろーとか思っとったんやろ」 

憩「ま……それくらい誰だってやりますわ。ベタオリばっかや勝てへんでしょ?」

70: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 16:47:22 ID:yLD4VRRD0
洋榎「ははっ! それが甘いっちゅーんや! 誰がリーチかけとると思てんねん!? うちこと愛宕洋榎やで!! うちがリーチかけたら太閤さんでもベタオリやねんっ! 
 回して先に和了ろーなんて、そんなんどこぞの竜には通じたかもしらへんけど、うちには通じひんな。一緒にしてもろたら困る――格が違うわっ!!」ドンッ 

憩「言いはりますなー。ま、肝に銘じておきますわ」ニコッ 

竜華「いや……ちょっと待ちや、洋榎さん。誰と誰が格が違うて?」ゴゴゴゴ 

洋榎「えっ……? あ……いや、だ、誰やろなー……あははー」アセアセ 

竜華「どないしよっかなー。洋榎さんがまーた対局中に相手のことおちょくってはりましたーって監督に言うてまおかなー。監督はマナーに厳しいからなー」 

洋榎「そ……それだけは堪忍やっ! 竜ちゃん……仲良く麻雀しようや! なっ!?」 

竜華「ふふ……やっぱり素直でええ子やね、洋榎さんは。さすが監督の愛娘や。行儀もええし礼儀もわきまえてはりますなー」 

洋榎「せ……せやなっ! やっぱり対局中のマナーは守らなあかんよなっ! これ終わったら清澄の久とかにもキツーく言うておくわっ!! いや~インターハイの準々決勝はひどかったな~。宮守のちっこいのがずーっとキリキリしてはったわー……」 

泉(えっと……部長は洋榎さんに強くて……洋榎さんは荒川憩さんに強くて……荒川憩さんは部長に強いん……? なんやねん、その三竦み……) 

泉:102800(-7200) 憩:128000(11400) 洋:98100(4000) 竜:71100(-8200)

71: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 16:52:16 ID:yLD4VRRD0
@実況室 

すばら「愛宕選手の満貫ツモが決まりましたあああ!! これで荒川選手の連荘はストップ!! 愛宕選手の親番ですっ!!」 

小走「ほらな、まさに悪魔のような闘牌だったろう?」 

すばら「えっ!? 一体どこがですか? 第一、荒川選手は満貫の親っ被りを食らってますよ……?」 

菫「しかし、序盤の泉選手の二つの鳴き……あれによって、愛宕選手がツモるはずだったドラの対子が泉選手に流れました。荒川選手があそこで發を切らなければ、愛宕選手の手はドラドラで二飜ほど高くなっていたはずです」 

純「それに、あのナースちゃんの第一打もまた怪しいな。いきなりの四筒切り。チャンタ系を匂わす一打だ。それを見て、愛宕は浮いていた一索を落とした。あとあと振り込まないように捨てたんだろう。 
 だが……愛宕の手にはその後二索と三索が入ってきた……もしあそこで一索を残していれば、三色もついていたな」 

初瀬「ドラは九索でしたから……愛宕選手のあの手なら……うまくいけば平和純全帯三色ドラドラになりますね……倍満確定です」 

すばら「そ……それらが全部計算尽くだったんですか……!?」 

小走「荒川憩は恐らく、配牌の時点でこの局はどうやっても愛宕に先を越されるだろうと見切った。だから、できる限り安く親を流そうと……第一打から画策したわけだな。それも、荒川憩自身はぴくりとも動かずにだ。 
 自分は仕事をせずに場を思い通りにコントロールする……まるでマクスウェルの悪魔のようじゃないか。エントロピーを凌駕している」

72: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 16:55:26 ID:yLD4VRRD0
すばら「し……しかし! もし荒川選手にそこまで正確に山や手牌が見えているのであれば……自分が連荘することも可能だったんでは!?」 

小走「その辺りが荒川憩の絶妙なところだな。多少無理をすれば……愛宕の手を潰して自分が和了るように仕向けることもできたんだろう。しかし、荒川憩は決して無理をしない。悪魔の目を持っていながら、彼女はその力に呑まれないんだ。 
 強い力という劇薬の副作用をよく知っているんだろう。天江衣や大星淡のように平気で無茶をしてくる輩とは一線を画している。荒川憩は……常に最高を目指す打ち方はしない……それは能力に縛られることを意味するからな」 

菫「常に最高を目指さないというのは……照と好対照ですね。照は常に最高を目指す。その辺りが、一位と二位を分ける差なのかもしれません」 

純「そこでいくと、今の愛宕のような打ち方が荒川憩にとっては一番堪えるのかもしれねえな。他には目もくれず、持てる力をフル活用して和了る力強い闘牌。 
 荒川憩は、そういう元気っ子っつーのか、病気とは無縁の健康優良児が相手だと……基本的には放っておくことしかできないって感じだ。 
 今だって、愛宕は純全帯と三色ドラドラを削られながらも、リーチツモ裏々でただの平和を満貫に押し上げた。ああいう何をやっても動じない強さを持ったやつは……オレも苦手だな」

73: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 16:57:18 ID:yLD4VRRD0
初瀬「あの……ところで、荒川選手は愛宕選手のリーチ宣言牌を鳴いてますよね? あれは……一体どんな意図が? 
 そのまま普通に続けていれば、愛宕選手は和了り牌をツモらずに、泉選手が愛宕選手の和了り牌を掴みます。それを泉選手が一発目から切り出すとは思いませんが……泉選手が後々振り込むにせよ、流局するにせよ、荒川選手は無傷なわけですよね? 
 どうして……それまで自ら動くことのなかった荒川選手が……あの場面であんな鳴きを入れたんでしょう」 

小走「いいところに目をつけたな。さすが私の後輩だ」 

初瀬「あ、ありがとうございますっ!!」 

菫「小走さんには……あの鳴きの意図がわかるんですか? 私にはどうにも、理が通らないような気がしますが……」 

小走「さあ……実は、私にもわかりません」 

純「なんだよ、しゃしゃり出てきたからにはちゃんと解説しやがれ」 

小走「無茶言うな……私はいたってノーマルな一般人だ。客観的なデータを色々と考察することはできるが……さすがに人ならざる者の心までは読めんよ。 
 さっきの神代とはまた違った意味で……荒川憩という悪魔もまた……人の価値観では動いていない可能性がある。一体荒川憩が何を狙っているのか……最後まで見れば……あの悪魔が何を考えてあんな鳴きを入れたのかも……わかるのかもしれんな」 

すばら「まだまだ荒川選手の底は見えないようですっ!! がっ! 勝負は始まったばかり、大阪の竜虎が黙っているとは思えません!! 東二局の開始ですっ!!」

76: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 17:02:48 ID:yLD4VRRD0
@対局室 

東二局・親:洋榎 

 九巡目 

憩(これはこれは……竜虎激突って感じやろか。となると……鍵になるんは千里山の一年生やね。あの子がどう動くか……それによって今後の打ち回しも変わってくる……ここは一つ……その器を量らせてもらいましょ)タンッ 

洋榎(テンパイ……っと。どないしよっかなー……いつもならガンガンリーチにいくところやねんけど……。 
 千里山の大将は……口うるさいのはともかくとして……打ち筋もオカンに似たとこあるからなー……不用意にリーチかけるんは危険や……困ったわ……どうにもやりにくくてしゃーないなっ!)タンッ 

泉(洋榎さん……この巡目で中張牌を手出し……張っとるんやろか? ただ……うちもそれを鳴けばテンパイに取れる……。 
 やけど……親を流すとか……そんなことばっか考えてても勝てへん……他家の親は安手で流して自分の親で連荘して稼ぐ……なんて戦略は……この面子相手には通用せんやろな。せっかくできたイーシャンテン……大事にせな……!)ツモッ 

憩(おっ……鳴かなかったんやね。さっき江口さんも似たようなことやっとったけど……ええ判断や……それが正解やで……) 

泉(張った……! よし……これなら押せる……いつまでも先輩ら相手に黙っててもラチが開かん……思いっきり前傾で行くで……!) 

泉「リーチですっ!」スチャ

77: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 17:04:52 ID:yLD4VRRD0
竜華(泉がリーチか……っと、とりあえずツモ切り安牌やな)タンッ 

憩(これで……勝負ありかな……よう頑張ったね……千里山の一年生)タンッ 

洋榎(リーチかいな……ま、そんなんに振り込むうちやないで~)タンッ 

竜華「ロン。タンピン一盃口ドラドラ赤一……12000」 

洋榎(げー! しもたー!!!) 

竜華(なんやその顔……微塵もテンパイ気配感じ取ってへんかったんかい……洋榎さん、油断しすぎやわ) 

洋榎(とか思われとったらどないしよー!? うっわー……やってもうたー! 一生の不覚やでこんなん!)ズーン 

竜華(よし……これでとりあえずプラスや。泉の頑張りを潰してしまったんは申し訳ないけど……卓についた以上は敵同士……一位は譲れへんよ) 

泉(清水谷部長……綺麗な手を張ってはりましたか……なかなかどうして敵わへんっすわ……) 

憩(竜虎対決はひとまず竜に軍配やね……千里山の一年生もちょっとばかしやりよるようやし……最後まで楽しめそうやんな……ほな……ウチもまだまだ行かせてもらうでー!) 

泉:101800(-8200) 憩:128000(11400) 洋:86100(-8000) 竜:84100(4800)

78: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 17:08:48 ID:yLD4VRRD0
東三局・親:泉 

泉(親番か……稼ぐとしたらここやろな……ここまでうちは焼き鳥……わかっていたことやけど三人とも強過ぎる……まったく思うようにいかへん……まるで……あのインターハイの準決勝みたいや……) 

泉(あのインターハイ……うちら千里山はまさかの準決勝敗退やった。 
 姫松もそうやったな……新設校の阿知賀と清澄に負けた大阪の強豪……試合が終わったあと……けっこう地元の新聞や雑誌なんかに叩かれたんや……監督が……色んな人に頭下げてんの……うち……見てしもうてん……)タンッ 

 ――回想・千里山女子麻雀部・二週間前―― 

泉「監督ー、部室の掃除終わったんで稽古日誌と鍵を返し……」 

記者「いやー残念ですわー。うちらも決勝に行くもんやとばかり思ってましたからー」 

雅枝「ほんに申し訳ありません。私の力不足で……」ペコ 

泉(あれは……週刊雑誌の人か……インターハイ前にも取材に来とった……) 

記者「あーいやいや! 監督さんが頭下げるようなこと違いますよ。一年生をレギュラーにせんとあかんかったような苦しい状況で、監督さんはよう戦いましたわ」 

泉(一年生……レギュラー……うちのことか……) 

記者「ほなら、穴は別の記事で埋めますわ。千里山さん……まあ、三年生が抜けてまうと厳しいかもしらんですけど、今後も応援させてもらいまっせ!」

79: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 17:12:56 ID:yLD4VRRD0
雅枝「おおきに。せやけど……すんません、私の聞き間違いかもしれませんけど……今、一年生がどうとか言わはりませんでした……?」ギロッ 

記者「えっ!? ああ、いや、これは申し訳ない。そういう書き方をしてるところもね、あるってだけの話ですわ! 千里山さんがインターハイに一年生を使うことは珍しいもんですからっ!! 
 なんや……ホンマはもっと強い上級生がおったのに……大会前に調子崩したんちゃうかー、ベストメンバーやなかったんちゃうかーって……」 

雅枝「言うてることがようわかりませんね……一年生がレギュラーでもベストメンバーな学校はいくらでもありますけど……」ゴゴゴ 

記者「い、いやっ! やけど、千里山さんはほら、超名門やから! そんな……こないだまで中坊やった新人をレギュラーにするなんて……白糸台とか清澄みたいな例外でもなければ、そこらへんの層の薄い学校のやることやし……」 

雅枝「一年生がレギュラーになるんは層の薄いことになるんですか……?」ゴゴゴゴゴゴ 

記者「え……! えっと……そういう分析をしてはったプロもどっかにおったってだけの話で……!! 
 その……昔の千里山では一年生がレギュラーになることなんてまずあらへんかったですし……最近は少子化で……なかなかええ選手ばかりに恵まれるっちゅうんが難しくなったんかもしらんなーって……そんな話を……」 

雅枝「どこのゴミプロがそんなこと言ってたんや!!! 今すぐそいつをここに連れて来いや!!!!」バァン 

記者「ひ……ひいいいい……!!!?」

80: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 17:16:10 ID:yLD4VRRD0
雅枝「そんなふざけた記事を書いてたとこがあったとは知りませんでしたわ!! ほな……自分らんとこにはちゃんとしたこと書いてもらわんとあきまへんなっ!! 監督の私が責任持って明言しますわっ!! 
 今年の千里山はなんの不手際もアクシデントもない、完全なベストメンバーです。コラっ! ちゃんとメモ取らんかい自分!!」ゴッ 

記者「す……すいません……!!」 

雅枝「そのベストメンバーの中に一年生が混じっていたことについては……純粋にあの子が他の二、三年生の誰よりも強かったからです。たとえ昔の千里山におってもあの子はレギュラーやったでしょう。 
 今回の結果は全て……監督の私の力が至らんかったのが敗因です。選手らはようやってくれたし、私はあの子らが昔の千里山より弱いなんて思ったことはありません。今年の五人は千里山の歴史の中でも最高クラスのチームやった。 
 その中でレギュラーを勝ち取った五人や……五人を支えた部員たちを……層が薄いだの弱体化だの……そんな風に分析しはるナメたプロっちゅうんがおるんやったら……!! どこの誰やろうと関係あらへん……!! 私が直々にシバいたりますわ!!!!」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ 

記者「は……はい……!! こ……このまま記事にさせていただきます……!!」 

泉(か……監督…………) 

 ――――――

82: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 17:24:07 ID:yLD4VRRD0
泉(監督……普段は礼節にうるさい監督が……外部の人に食ってかかるとこなんて初めて見たわ……ホンマにびっくりしたで……) 

泉(やけど……記者さんの言うてたこと……そういう風に世間が捉えとることは……もっともやと思う。 
 一年がレギュラーになるようなチームは層が薄い証拠……昔の千里山ではそんなことありえへんかったって……言い方はそんな直接的やなくても……そういう表現をしてる新聞や記事はたくさんあった……) 

泉(そら……ショックやったで……うちは千里山で一年生レギュラーになれたことを誇りに思っとった……それが……層が薄いからや言われるなんて……実際……試合に負けてしもうたんはうちが大負けしたせいやからな……やけど……せやけど……! 
 せやけど……! 先輩方はみんな必死に戦っとったのに……うち一人がダメやったせいで……!! 千里山のみんながダメやったみたいに言われんのが……悔しゅうて……悔しゅうて……!!)タンッ 

泉(あのとき……監督が言い返してくれて……少しだけ……救われた気分やった……。 
 やけど……同時にまた別の悔しさがこみ上げてきたわ……やって……あんな剣幕で言い返すくらい……我を忘れてキレてまうくらい……監督はうちらに期待してくれてたってことやもんな……やのに……その期待に……うちは応えられへんかった……)タンッ 

泉(船久保先輩の言ってはった通りなんや……うちは結果を残せてない……千里山のレギュラーとしても……一年選抜としても……何一つ自分は誰かの期待に応えられてへん……!)タンッ 

泉(頑張らな……! メゲてる暇はない……うちは勝たなあかんねん……! 相手が大阪最強やろうと……誰やろうと……! 今回は一年選抜の看板背負って……大阪で唯一の一年としてここにおんねん! 
 同じ近畿の森垣さんは園城寺先輩やセーラ先輩……その上神代小蒔まで相手にしとったのに……プラスで帰ってきた。他の一年生かてそうや……みんな全国区の化け物と戦って……ここまでプラスで繋いできた……! 
 その大事な点棒をうちが落とすわけにはいかへん……! 何より……うちが……うち自身が勝ちたいって思うねん……! 一年選抜のためにも……千里山のためにも……負けるわけにはいかへんのや……!!)タンッ

84: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 17:26:09 ID:yLD4VRRD0
 十二巡目。 

憩「ロン、断ヤオドラ三……7700や」カチャカチャパラララ 

竜華「……はいな(あかんな……ちょっとでも無理を通そうとするとこれや)」 

泉(清水谷部長のリーチが……また撃ち落された……!? これで荒川憩の一人浮きかいな……うちが手も足も出ん部長と洋榎さんを相手に断トツやと……!? くっ……まだや……まだまだ……勝負は終わっとらへん……!!) 

泉:101800(-8200)憩:136700(20100)洋:86100(-8000)竜:75400(-3900)

86: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 17:29:44 ID:yLD4VRRD0
東四局・親:竜華 

 七巡目 

憩「リーチ……」スチャカチャカチャ 

洋榎(お……珍しい。リーチ掛けてきよったな……)タンッ 

泉(リーチ……っちゅうことは……まさか高いのか……? それとも他に何か狙いが……?)タンッ 

竜華(憩ちゃんがリーチを掛けてきた。なら……張り替えで狙い撃ちされる心配はない……親やし……泉の手前……やっぱ攻めるで……!)タンッ 

竜華「うちも追っかけリーチやっ!」スチャ 

憩「(竜さん攻めてきはりますね……けど甘いですわ……それも計算済みです)なんで三筒やねーん」タンッ 

洋榎(三筒は通るんか……なら……)タンッ 

憩「そら通らんなー。ロンや。リーピン……裏一……3900」パラララ 

洋榎「む……(六・九かいな……ふん……後ひっかけなんてセコい真似しよって……こんくらいすぐに取り返したるわっ!)」 

竜華(憩ちゃん……まさかうちのリー棒を誘い出したんか……!? それに洋榎さんから六筒を引き出すために……後ひっかけになることも見越してのリーチ……? 
 いや……それだけやない……憩ちゃんには裏一まで見えてたのかもしれへんな……だとしたらホンマ悪魔やで……この子……!) 

泉(洋榎さんまで……!? 嘘やろ……いくらなんでも……! これが……全国二位……!? 宮永照に最も近い打ち手……宮永照でなければ勝てない悪魔……!! どうすれば……どうすればこの人に勝てんねん……!!?) 

泉:101800(-8200) 憩:141600(25000) 洋:82200(-11900) 竜:74400(-4900)

87: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 17:32:45 ID:yLD4VRRD0
@実況室 

すばら「圧倒的いい!! 荒川選手!! 他家をまったく寄せ付けませんっ!! 個人成績ではプラス25000の一人浮き……!! 全国二位の力をまざまざと見せ付けていますっ!! 
 果たしてこのまま荒川選手が走りきるのか……!? それとも他家が待ったをかけるのか……!! 勝負は南場へと移りますっ!!」 

小走「ま、さすがの荒川憩ってところだな」 

純(ってか、こいつこのままここに居座るつもりじゃねえだろな……) 

菫「しかし、他家もこのまま黙っているとは思えません。千里山の清水谷選手も、姫松の愛宕選手も、同地区の荒川選手とは個人戦で何度もぶつかっているはずです。これが初手合わせというわけではない。 
 今は翻弄されているように見えますが、実力はそれほど開いていないでしょう。荒川選手もそれはわかっていると思います」 

初瀬「しかし……山や手牌を透視できる荒川選手を相手に、どうやって勝つつもりなのか……私には対策が思いつきません」 

純「だが、小走先輩曰く荒川憩のあれはあくまで悪魔な技術なんだろ? 完全に牌が透けて見えてるわけじゃない。見落としもあれば見間違いもあるはずだぜ」 

小走「そういうことだ。果たして……悪魔に食らいつくのは竜か虎か……それともここまで見せ場のない一年生か……今後の展開が楽しみだな」 

すばら「さああ!! 中堅戦後半っ!! 南入ですっ!!」

89: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 17:37:11 ID:yLD4VRRD0
@対局室 

南一局・親:憩 

洋榎(まさか南入時点でうちがラスとはな……やってくれるやんけ。ま……いつもいつも楽勝やと張り合いもあらへん……たまーにこないなオモロい相手がおるから……麻雀はやめられへんのや……)タンッ 

洋榎(三箇牧の荒川憩……うちは南大阪やから……インターハイの予選ではぶつからん……南北大阪か近畿大会……もしくは全国の個人戦で当たるくらいやな……)タンッ 

洋榎(千里山はな……北大阪やけど……オカンがおるせいかちょいちょい練習試合を組む。お互い強豪同士……顔合わせと手合わせは年中行事みたいなもんや。 
 清水谷の竜ちゃんは……その千里山ん中でもいっちゃん苦手な相手やわ……ピーク時の竜ちゃんは止まらへんしな……ホンマに……あれを見たときは千里山と地区が違うてよかったと思うたわ……)タンッ 

洋榎(それに比べると……荒川憩はうち的にはそんなに面倒な相手やない……普通に打っとれば二回に一回は勝てる……勝率は五分五分……三箇牧にいたっては負ける気がせん。これくらいのハンデは……ちょうどええで……!!)タンッ 

洋榎(ま……そら強いのは認めとるけどな。個人の成績は向こうのほうが上やし。やけど……荒川憩かて周りが言うほど完璧やない。 
 見透かしたような打ち方をしはるけど……それやって中盤からや……序盤ならまだ穴がある……針の穴みたいな小さい穴やけど……それを見抜けへんうちやない……今からそこに大きいのをブチ込んだるわ……!) 

洋榎「リーチやっ!」スチャ

90: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 17:39:16 ID:yLD4VRRD0
泉(速っ……まだ五巡目やで……!? さすが洋榎さんやな……点差も相手も関係なく……常に強い……この安定感は見習いたいとこやわ……!!)タンッ 

竜華(洋榎さん……どんな状況でも楽しそうに打ちはるなぁ。全然打ち方がブレへん……それでいて強いんやから言うことナシやわ。うちは考え過ぎなんやろか……憩ちゃんを意識し過ぎて少し手が弱っとるような感じするわ。 
 さっきからちょいちょいリー棒で損しとったから……ここは大人しくダマでええかな思うてたけど……泉が見てる前でそんなヒヨった麻雀は打てへんよな……!! じゃあ……何度でも攻めとこか……!!) 

竜華「うちもリーチやっ!」スチャ 

泉(ぶ……部長も張ってたんですか!? ツモ切りリーチって……それじゃ前巡から……!? もしかして……荒川憩さんが独走してるように見えてたんはうちだけなんか……!!? 
 この場……この三人……ほんのちょっと何かの刺激が加われば……簡単に均衡が崩れる……!!!) 

憩(ここで竜虎の同時リーチかいな……ホンマに……常人離れしたテンパイ速度やで……こんな序盤にそないな大きい手を張るとか……一瞬でも隙を見せたら取って食われてまうな……さて……どないしようか……) 

 憩、長考。

91: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 17:43:28 ID:yLD4VRRD0
憩(姫松の洋榎さん……この人は……全国の中でも宮永照に匹敵するポーカーフェイスやわ。宮永照は単純に見て取れる情報量が少ないから……ウチの目でも捉えきれへんのやけど……洋榎さんはその逆。読み取れる情報量が無駄に多い。 
 それも玉石混交……虚実入り乱れや……手牌が読めんのもそうやし……はっきり言って何考えとるのか全然わからん。何も考えとらんのかもしれへんけど……何も考えとらん人に負けるようなウチやない。 
 きっと洋榎さんには洋榎さんなりの思惑があるんやろうね。実際……ウチらは公式戦で五分五分なわけやし……) 

憩(見えるところから察するに……洋榎さんの手はチャンタ系や……ドラの一筒を配牌から抱えとんのは見えとる……第一打も迷わず手出しの赤五筒やしな……リーチチャンタドラ三……それだけでもうハネ満やん……) 

憩(千里山の竜さんは……赤含みの平和手で萬子の高め一通……こっちは和了り牌が見えとる……一・四萬や。振り込むことはまずない。竜さんは少し心配性のきらいがあるからな……どちらかと言えば考えが顔に出易いタイプ……ウチから見れば戦い易い相手や。 
 ただまあ……団体戦のときにたまーに見せるヤバさが半端ないけどな……あれはウチら三箇牧が千里山に勝てへん理由の一つや……今日は比較的落ち着いてるほうやからええけど……本気になった竜さんの相手はウチも気が進まへんで……) 

憩(このままオリれば……竜虎の食らい合いになるやろ。 
 それもそれでええけど……山の具合もよさそうやし……ウチもあと数巡すれば無理なく追いつける。その頃にはもっといろんなもんが見えとるやろうし……この一発さえ凌げば……二人をかわして連荘することが可能や。 
 大丈夫……結果はほとんど見えとる……あとは……進むだけや……)タンッ 

 憩、確信の四筒切りッ! 

 その――直後ッ!!

92: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 17:49:59 ID:yLD4VRRD0
憩(あ……しもた……これ……ヤバ……!!?)ゾッ 

 憩、誤算ッ!!! 

洋榎「フフ……なんや……さっきの忠告をもう忘れたんか? この愛宕洋榎がリーチをかけたからには……どこぞの竜でもあらへん限り……ベタオリせなあかんってな……!!」ゴゴゴゴッ 

憩(そんな……そこ……よりにもよってそこで待つんかいな……!!?) 

洋榎「三年生からの貴重なアドバイスを聞かへんからそういうことになる。自分の弱点はそれや。どこまで見えてんのか知らんけど……どないな状況になっても自分は絶対にベタオリせえへん。必ず回して様子を見る。 
 それがわかっとれば裏をかくのは簡単や。なんも……手牌が透けて見えるんは自分だけやないで……ロンッ!!」パラララッ 

 洋榎手牌:①①①④123789南南南:ロン④:ドラ① 

憩(あ……ありえへんやろ……っ!! いや……そらこの手みたいに……ドラや役牌が絡んで十分に高い手なら……リーチかけて……チャンタと見せかけた中張牌単騎とかは確かによくあることやけど……! 
 それにしたって普通の人間やったら赤五筒を残すやろ……! せやったらツモで倍満も狙える……やのになんで残したのがその隣の四筒やねん!! 
 しかも……それ配牌からずっと持っとったやつやん……っちゅうことは……あの第一打……両面搭子崩しの赤五筒切りだったってことやんな……? 嘘やろ……洋榎さんからは微塵も迷いが読み取れへんかったで……? そないなことができるんか……? 
 普通の人間やったら……いくら迷彩のため言うても……理に反する打牌をしたらその揺らぎが絶対に見えるはずや……やのに……洋榎さんからはそれが全く見られへんかった。いくらポーカーフェイスや言うても……それは人間の生理から逸脱しとる……! 
 まさか……このヒトも……ヒトやないんか……!?)

93: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 17:52:07 ID:yLD4VRRD0
洋榎「なんや……そんなびっくりせんでもええやんか。まるでうちがけったいな超能力でも使ったみたいやん……ちゃうちゃう。そんなんやない……ただ……うちは確信してただけや」 

憩「確信って……ウチが四筒を持っとるっちゅう確信ですか……?」 

洋榎「わかっとらんなー、自分。そうやない。うちはうちが勝つっちゅうことを信じとるだけや。どうせ勝つのはうちなんやから、何を一々迷う必要があんねん!!」ドンッ 

憩(自信て……!? ええええっ? それだけ!!? 赤五筒を捨てようと……両面搭子を崩そうと……自分なら和了れるって……そういう自信があるからどんな一手だろうと迷いなく打てる……!? んなアホな……!!!) 

竜華「…………洋榎さん、何か忘れとらへん?」ギロッ 

洋榎「おおおっと!! せやせやっ!! お喋りに夢中で裏を捲るの忘れとったわー……ホンマ堪忍なー……ほな……今ちゃっちゃと点数申告しますんでー……」ペラッ 

憩(は――!? もう……大した自信やな……ホンマに!!) 

洋榎「ハハ……ほーれ見てみい、全国二位。うちにかかればざっとこんなもんや。リーチ一発ダブ南ドラ三裏々……16000ッ!」 

憩(うっわー……信じられへん……! まさかここまで見越しての赤五筒切りやったとは思わへんけど……ただの自信家で終わらないんが洋榎さんのすごいところやね……! ちゅうか……久しぶりに大きいの食らったなー……!!) 

洋榎「どや……思ったより痛いんちゃうかー?」ドンッ 

竜華「…………洋榎さん、次、親やろ?」ギロッ 

洋榎「せ、せやったな!!! 決め台詞でカッコつけとる場合ちゃうなっ!! よっしゃー……さっさとサイコロ回すでーっ!!」コロコロ 

憩(っちゅうか……清水谷の竜さん……洋榎さんにはグイグイいきはるよねー……なんでなん……?) 

泉:101800(-8200) 憩:125600(9000) 洋:99200(5100) 竜:73400(-5900)

96: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 17:57:00 ID:yLD4VRRD0
南二局・親:洋榎 

竜華(まったく……洋榎さんは強いのにホンマ余計な一言が多いんやから……お目付け役としてしっかり躾けんとな……監督によーく見張っとくよう言われて来とるわけやし……)タンッ 

竜華(まあ……マナーのことはさておき……今ので洋榎さんはプラス収支で個人成績では二位浮上。うちはというと……マイナス収支の三位やな。 
 混成チームも……トップの二年選抜とは五万点差……いくら宮永照が控えてる言うても……さすがに厳しいやろ……これは……助っ人として参戦したからには……取り返さなあかん……)タンッ 

竜華(何より……この場は大阪最強を決める戦いやねん。姫松と千里山……それに三箇牧の戦争や。千里山の部長である自分が……後輩の泉の前で……負けるわけにはいかへんのや……!)タンッ 

竜華(ごちゃごちゃ考えるんは対局が終わった後でもできる……! やけど……勝った負けたは対局後にどうにかできることと違う……! とにかく和了ること! それを今やらんでいつやるねん……! 
 大体……負けっぱなしは……性に合わへんのや……!!)ゴゴゴゴッ 

憩(っとっとっとー……ここに来て本気モードでっか……こうなると竜さんは誰にも止められへんなー)タンッ 

洋榎(千里山の竜ちゃん……ようやくお目覚めかいな……とんだお寝坊さんやなっ!)タンッ 

 十四巡目 

竜華「ツモや。小三元發中ツモ……三暗刻……赤一。4000・8000や」パラララ 

憩(高め大三元……阿知賀の玄ちゃんとはまた別のドラゴンやね……これを鳴かずに和了ってくるんやから頭痛いわ……) 

洋榎(うわっ……親っ被りでマイナスにされてもうた! これやから竜ちゃんの相手は嫌やねん!!) 

泉:97800(-12200)憩:121600(5000)洋:91200(-2900)竜:89400(10100)

97: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 18:03:05 ID:yLD4VRRD0
 火花を散らす三強ッ!! 

 その力は完全に拮抗し、予測は悪魔ですら不可能ッ!! 

 ただ……その一方で……じわじわと追い詰められている者が一人……!!

99: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 18:05:06 ID:yLD4VRRD0
南三局・親:泉 

泉(これは……本格的に泣きそうやで……さっきから心臓が痛いわ……なんや目も霞んできたし……)タンッ 

泉(もう……自信もなんもないで……うち……どんだけ弱いねん……さっきから一つも和了られへんし……削られていく一方やし……とうとう原点割れてもうたし……最後の親番やっちゅうのに……手はぐずぐずやし……)タンッ 

泉(強いって……なんやろな。わからへん……どうやったら……この人たちと対等に戦えるのか……全然わからへん。来年のインターハイやって……もう敵は白糸台や臨海……永水や姫松だけやないねん。 
 清澄と阿知賀やって……抜けるのは三年生が一人だけ……きっとまた勝ち上がってくる。 
 そのとき……千里山の二年生として……うちはどうやって戦えばええんや。清水谷部長も……セーラ先輩も園城寺先輩もいなくなってもうて……再来年になったら……船久保先輩までいなくなってまう。 
 そしたら……千里山を引っ張らなあかんのは……うちや。やけど……こんな弱いうちが……二年経ったくらいで……本当に今の三年生みたいになれんのやろか……わからへん……なんもわからへんよ……もう……)タンッ 

泉(やけど……不思議やな。ハハ……こんな絶望的な状況やけど……なぜか戦意はまだ失っとらん……あのインターハイの負けが……支えになっとるんやろか……)タンッ 

泉(あのときに比べれば……まだ……まだうちは頑張れる。なんでかわからへんけど……そんな気がする……最後まで……全力で……うちは戦うで……!!)タンッ 

泉(大阪三強……ゆくゆくは千里山の三年になるうちが……立たなくちゃいけない頂や……! メゲんな……! ビビんな……! 食らいついたる……!!)タンッ

100: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 18:06:36 ID:yLD4VRRD0
 九巡目 

洋榎「リーチや……!」ゴゴゴゴゴッ 

泉(また先を越された……!? やけど……これ以上は点をやれへん……!! どうにかして……かわして……和了るんや……!!)タンッ 

 三巡後 

泉(来た……テンパイ。どうする……洋榎さんのリーチもある……ダマで通すか……? やけど……あのインターハイでは……それは通じひんかった……!!) 

泉(あの人ら相手に……ダマもなんもなかった……完全に読み切られとった……策を練れば潰され……強引に行っても跳ね返され……賢く打ち回しても射抜かれた。 
 ホンマ……何をやっても歯が立たへんかった……今日やって……そういう人らを相手にしとる……このままやったら……きっと今日も負けてまう……!!) 

泉(やけど……セーラ先輩は言ってくれはった。負けても……うちには来年再来年がある……! そこでリベンジしたらええねんって……言ってくれはった……!!) 

泉(リベンジするためには……今のままじゃあかん……もっと力をつけなあかん……そのためには前に進まな……!! 
 壁にぶつかっても……乗り越えるなり回り道するなりして……!! ズタボロに負けても……見苦しくても這ってでも……先へ先へと進んでいく……!! そうやって……今より上を目指していくんや……!!) 

 泉、真っ向勝負ッ!! 

泉「リーチですっ!」スチャ

102: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 18:10:05 ID:yLD4VRRD0
竜華(泉……!!)タンッ 

憩(おっ……来よったねー……)タンッ 

洋榎(ほほう……うちを追っかけるとは……生意気な一年やなぁ)タンッ 

泉(一発……ツモったる……!!)スッ 

 洋榎がツモ牌を切り、泉が一発をツモろうとした――直前ッ!!

103: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 18:11:05 ID:yLD4VRRD0
憩「それ、ポンや……!」タンッ 

泉(なあ……っ! うちの一発が……消された……!?) 

竜華(憩ちゃん……!? なんやその鳴き……ただの一発消しやとは思えへん……何が狙いや……!?) 

洋榎「なんや……まったまた……ナイスアシストやで……全国二位!!」 

 洋榎、高笑いで手牌を倒すッ!! 

洋榎「ツモや……! リーピン赤一ツモ……裏一……2000・4000ッ!」パラララ 

泉(くっ……また……持っていかれた……!!) 

 泉、こみ上げる涙を堪え、前を向くッ!! 

泉(いやいや……! これくらいで歩みを止めたらあかん……!! うちは……まだ一つも和了れてないけど……振り込んでもおらへん……! ボコスカやられてる感じがするわりに……点数はまだ倍満で立て直せる範囲……! オーラス……勝負や……で…………?) 

 泉、前を向いた先に見えたのは、悪魔の微笑ッ!! 

憩()ニコニコニコニコニコ 

泉(ちょ……ま……待て……! 今の……荒川さんの鳴き……なんや……東一局三本場でも似たようなことがあったな……!? 洋榎さんのリーチに……荒川さんが宣言牌をポンして……直後に洋榎さんがツモ……!?) 

 直後、涙の次にこみ上げてきたのは、圧倒的な恐怖ッ!!

104: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 18:16:24 ID:yLD4VRRD0
泉(ま……まさか……!? そういうことなんか……!? 嘘やろ……そんなこと……狙ってできるんかいな……!! 一局だけならまだしも……この半荘ずっと……!!? 
 やって……うちは……普通に……普通以上に打っとったつもりやで……!! 清水谷部長やって……洋榎さんやって……なんも変わったことはしてへんかったはず……不自然なところは一切なかった……やのにこの結果……!? 
 それもこれも……悪魔の計算の上やったんか……!!!?) 

憩(へえ……気付いたんやね。対局が終わるまでは気付かへんと思っとったんやけど……なかなか勘のええ子やな……ただ……その脆そうな心……ぽっきりいかへんとええけど……)ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

泉(う……うちはこないな化け物と戦ってたんか……!? こないな悪魔に……勝つつもりやったんか……!!? 
 こんなん……こんなんもう……勝ち負けとか……そんなやない……目指すとか追いつくとか……そういうんでもない……あかん……あかんあかん……なんで対局中に気付いてしもたんやろ……無理や……心……折れた…………) 

 泉の頬を、一筋の涙が伝う。 

 それは、残っていた勇気を根こそぎ奪うような、冷たい涙……。

105: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 18:18:46 ID:yLD4VRRD0
 しかし――ッ!! 

竜華「アホッ! 泉ッ!! 自分なに泣いてんねん!!」 

泉(え……? 清水……谷……部長…………?) 

竜華「しっかりせえやっ! まだ対局は終わってへんで! なんも結果が出たわけやないのに涙なんか流すなやっ! 泉はうちらの何を見てきてん!!」 

泉「部長…………」 

竜華「セーラやって負けたことはあるねん。怜やってインターハイではチャンピオンにボコられとったやろ。うちやって何度も負けたことあるわ。やけど……うちらはみんな……負けて強くなってるんや! 
 インターハイのあと……言ったはずやろ。勝つことよりも負けることのほうが……自分を強くしてくれる。やから……泉も辛いやろうけど頑張れって。もう忘れたんかいな!?」 

 泉、涙を拭って、首を振る。 

泉「忘れてません……! 忘れるわけがありません……ッ!!」 

竜華「やったら……対局中は下を向いたらあかん。まだ勝負は終わってへんねん。メソメソするんは終わったあとでええやろ。うちらみんなで慰めたるから……それまではしっかり前向いて闘うんや。わかったな!?」 

泉「は……はいっ!!」 

 泉、竜華に鼓舞され、再び前を向く。そこにはやはり、天使のような、悪魔の笑顔。 

憩「ふふ……ええ先輩がおってよかったね……?」ニコッ 

泉「そら……うちは千里山ですから……ええ先輩しかおりませんわ!!」 

 目に光を取り戻した、泉。 

 と、そんな泉の肩を姫松の虎がいきなり叩く。

106: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 18:20:56 ID:yLD4VRRD0
泉「痛っ!? えっ!? ひ、洋榎さん!?」 

洋榎「しっかりせんかい一年坊! 自分、オカンに鍛えられてんのやろ。やったら最後まで気張れや。ヘタレと麻雀打ってもオモロないねん。今ちょっとだけうちのツキ分けたったから……最後に一発かましてみい!!」 

泉「あ……ありがとうございますっ!!」 

竜華「洋榎さん……おおきにな……」 

洋榎「ええってことよ、竜ちゃん。千里山にはいつまでも姫松のライバルであってもらわへんと、うちの後輩も育たへんからなっ!!」 

竜華「せやなっ! せやけど……うちの可愛い一年生に肩パンしたことについては……監督に報告させてもらいますわ」ゴゴゴゴゴ 

洋榎「ちょ!? ええええっ!? 励ましや励まし!! 姫松流のスキンシップやて!!!」 

憩「みなさん仲がよろしくて羨ましいでんなー……三箇牧も混ぜてほしいですわー」 

洋榎「なに言っとるんや、自分。そないなことは北大阪で一位取ってから言うんやな!」 

憩「これは耳が痛いで……ほな、来年頑張りますわ」ニコッ 

泉「来年……負けませんよっ!」 

憩「おおっ……ひよっ子が言いはりますなー。これは楽しみやわ……」 

竜華「ほな……オーラスやで! 今んとこ個人トップはうちやからな! 三強対決はこのまま千里山がいただきやっ!!」 

洋榎・憩・泉「負けへんで(ませんよ)っ!!」 

泉:92800(-17200) 憩:119600(3000) 洋:100200(6100) 竜:87400(8100)

109: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 18:23:07 ID:yLD4VRRD0
南四局・親:竜華 

竜華(っちゅうわけで……ラス親やんな。チーム的には連荘したいとこやけど……点数状況的には一発でひっくり返る接戦や……憩ちゃんと洋榎さん相手にどこまでいけるか……ま、やってみんとわからへんか……!)タンッ 

憩(さて……オーラスや。しんどかった半荘もこれでおしまい。楽しんでいこかー……!)タンッ 

洋榎(しゃ~トップまくったんで~!)タンッ 

 テンポよく第一打を切り出す三強。 

 だが、泉のところで、一度流れが止まる。 

泉「…………失礼します」スゥ 

 泉、深呼吸。 

 それは、図らずも、自身が強く意識する一年生、原村和を彷彿とさせる。 

泉(これが……逆転できる最後のチャンスや……清水谷部長かてこの面子相手に連荘は厳しいやろ……) 

泉(最後まで……全身全霊……全力前傾や。いつまでも先輩を頼りにしてばっかではあかん……あのインターハイも……この半荘も……うちにはどっか……先輩らがどうにかしてくれるっちゅう甘えがあったんやろな……) 

泉(先輩らは頼もしいけど……もうすぐ卒業してまうんや……そしたらうちにも後輩ができんねん……助けてもろうてばっかではあかん……まずは……自分一人の力で闘えるようになること……それが……この人たちに近づく第一歩や……!!) 

泉(この一打……甘えと一緒に捨てたるで……! 周囲から見ればなんの特徴もない平凡な一打やけど……うちにとっては大きな一打や……!!)ゴッ 

 泉、決意を新たに放つ、第一打ッ! 

 その別人のような覇気に、三強は揃って笑うッ!!

110: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 18:24:56 ID:yLD4VRRD0
竜華(ええ顔になったやん……泉。そうやで……そうやって……強くなんねん……!!)タンッ 

憩(纏う空気まで変わった感じやねー……ほな……ウチも全力でお相手したるで……覚悟しいやー……)タンッ 

洋榎(ま……やっと一人前ってとこやろな……やけど……そんなんはまだまだ……うちの相手にはならへんでっ!!)タンッ 

泉(難儀やわ……! 全然……こんだけ気張ってもこの人らには届く気がせえへんな……!! やけど……やからって……うちは諦めたりはせん……!!!)タンッ 

 九巡目。 

泉「リーチです……!!」スチャ 

洋榎(おっ……逆転手張ったか……こりゃ直撃されたら引っくり返るかもわからんな)フフフ 

竜華(泉……よう頑張ったな……きっとみんなも喜んでんで……!)タンッ 

 泉、死力を尽くしてのリーチッ!! 

 しかし……その壁は厚く――高いッ!! 

憩「ツモや。断ヤオ赤一ツモ……1000・2000。ほな、これで終いですわ~」カチャカチャパラララ 

 全国二位、白衣の悪魔、荒川憩ッ! 

 泉渾身の一撃を難なくかわし、電光石火のツモ和了ッ!! 

 それも……ただのツモ和了りではなく――!!

111: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 18:31:34 ID:yLD4VRRD0
竜華(憩ちゃん……! 泉のリーチ宣言牌を見逃して……同巡にツモ和了りやと……!? 
 確かに……ただ泉を直撃するだけじゃ……断ヤオ赤一で2600……個人成績で洋榎さんやうちにあと一歩届かへん……せやったらリー棒含めて5000点稼げる同巡ツモのほうがええって判断なんやろうけど……まさか……この見逃し……そういうことなん……?) 

洋榎(なーーーー!! うちが三位!? 三位やとーーー!? な……なんちゅうこっちゃ……!!!) 

泉(あちゃー……やられてもうた……パーフェクトにやられてもうたわ。どこまで計算尽くやねん……ホンマ悪魔やわ。これで荒川さんは……うちを蚊帳の外に追いやることに……成功したっちゅうわけやんな。 
 こんなん……気付かへんほうが幸せやったかもしらん……なんたってこの半荘……うちは誰からも和了れへんかっただけやなくて……誰にも振り込まへんかったんやから……。 
 ただただ三人のツモで削られ続けるだけの半荘……完全な蚊帳の外……同卓しとったのに……全力で打っとったのに……三強対決に混ざることすら……うちは許されへんかったっちゅうことや。 
 こないなことを……部長と洋榎さんがおる中でやってのけて……しかも最後には二人まとめてまくっておしまいや……半端ないで……ホンマモンの悪魔としか思えへん……) 

 泉、小さく溜息、肩を落とす。 

泉(これが……全国二位か。そんでもって……その全国二位を相手に2000点差まで迫る部長と……倍満の直撃をかませる洋榎さん……この三人が大阪の天辺か……! 高い……高いで……!!) 

 圧倒的な力の差に押し潰されそうになるも、泉、自らを鼓舞ッ! 

泉(うちも……いつか同じ高みに立ったる……!! 来年……再来年……うちが大阪三強に名乗りを上げたる……!! 
 この人らの後輩として……この人らと直に打った生き証人として……激戦区・大阪のレベルを下げるような真似は絶対にできひん……!!! うちも……まだまだ……強くなるんや……!!!)

113: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 18:34:40 ID:yLD4VRRD0
 そんな泉に、憩、笑顔で声をかける。 

憩「ごめんなー、一年生。可愛い後輩は谷底に突き落とすのが三箇牧流やねん。堪忍してやー」ニコッ 

泉「いえ……勉強させてもらいました。ありがとうございます」ペコッ 

憩「ま、言うても見所ある子にしかこないなことせえへんのやけどなー。自信持ってええでー、自分。谷底に突き落とされた自分は獅子の仔や。ゆくゆくは王になる器やねん。それも……もうその片鱗が見えとるようやしなー。 
 こりゃ来年も千里山を倒すんはしんどそうやわー」 

泉「片鱗ってそんな……買いかぶりですよ。うちは最後まで何もできひんままでした」 

憩「そんなことあらへんよ。インターハイのときはなんや牙も爪も生え揃っておらん赤ん坊やと思うてたけど……あれからちゃんと成長してたんやな。自分の牙は……ちゃんとうちらに届いてんで?」 

 言って、憩は千点棒を指の間に挟んで見せる。 

 それは、たった今しがた、泉から奪ったリー棒。 

憩「点数に影響するからリーチなんてさせるつもりなかったんやけどなー……なんや自分、ちょこちょこ頑張りよるから、計算がズレてもうたわー」 

 中堅戦後半、二条泉、和了りなし、振り込みなしッ! 

 完全なる蚊帳の外――しかし、その奮迅は、悪魔の計算を一時的に上回ったッ!! 

 半荘で、都合三度かけた、意地のリーチッ!!! 

 それは和了りには至らなかったものの、突き立てた牙と爪は、三強にそれぞれ一本ずつ――確かに届いていたッ!!!!

116: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 18:39:51 ID:yLD4VRRD0
憩「早く谷底から這い上がっておいでやー、千里山の一年生。そしたら来年のインターハイ府予選……北大阪の決勝で……ウチが直々に……今度はちゃーんと真正面からお相手したるわ。 
 今日よりもーっとひどいことしたるから……今からその牙と爪……しっかり研いでおくんやねっ!」ニコッ 

泉「望む……ところですっ!!」ゴッ 

 憩、泉、交わす握手。そのやりとりを複雑な表情で見守る、竜華 

 自分のいない来年へと進み出す、北大阪の後輩たち。二人を見つめる竜華の目は、羨望と、希望を湛えていた。 

竜華「泉……来年も再来年も、千里山をよろしくなっ!」 

泉「はいっ……! うち……頑張りますっ!!」 

 一方、三強対決に敗れた格好になった、南の虎こと姫松・愛宕洋榎は……。 

洋榎(ま、次やったらうちが断トツやろっ!!) 

 開き直っていた。 

憩「ほな、楽しかったですー。またいつかこの面子でやりたいですわー」 

洋榎「いつかと言わず今夜でもええでっ! 負けたままでは終われへん!」 

竜華「ハハ……こないな疲れる対局は一日一回で十分やわー」 

泉「部長の言う通りですわ……また姫松さんとの合同合宿でご一緒できたら、よろしくです」 

洋榎「なんやなんやー! どいつもこいつも勝ち逃げかいなー!!」 

 中堅戦後半――終了ッ!!!

117: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 18:42:42 ID:yLD4VRRD0
<中堅戦後半結果> 
一位:荒川憩+8000(124600) 
二位:清水谷竜華+6100(85400) 
三位:愛宕洋榎+5100(99200) 
四位:二条泉-19200(90800) 

<中堅戦前後半合計> 
一位:小蒔・憩+16400(124600) 
二位:怜・竜華+6300(85400) 
三位:セーラ・洋榎-5300(99200) 
四位:友香・泉-17400(90800)