IAJxzsrYwtR29_11360810654_1360810692

372: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/10 21:06:25 ID:qi3B5FuV0
@対局室外 

 対局室を最後に出た南浦を出迎えたのは、優希。 

優希「お疲れさまだじぇ、数絵」 

南浦「疲れたよ……慣れないことはするものじゃないな」 

優希「でも、カッコよかったじょ」 

南浦「ありがとう。そう言ってくれると……嬉しい」 

 先鋒戦、二人とも得意の場を打って奮闘するも、総得点はマイナス。 

 しかし、その表情は、笑顔。 

優希「じゃ、みんなのところに帰るじょ!」 

南浦「負けたのに帰るところがあるというのは、不思議な感覚だ」 

優希「それがクセになるんだじぇ?」 

南浦「ああ……悪くない」

前回
咲「え? どの学年が一番強いかって?」 
 

引用元: 咲「え? どの学年が一番強いかって?」

377: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/10 21:08:45 ID:qi3B5FuV0
@会場某所 

池田「お疲れさまでした!!」 

小走「おう、わざわざ出迎えに来てくれたのか。ありがとな」 

池田「小走さん……すごい闘牌でした……! まるでキャプテンを見てるみたいで!!」 

小走「よせよ、福路さんのほうが私よりずっと強い」 

池田「小走さんの強さ……何か秘訣はあるんですか?」 

小走「秘訣は……あるにはあるが、お前には教えない」 

池田「にゃっ? なんでですか!?」

378: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/10 21:09:56 ID:qi3B5FuV0
小走「未来の敵を強くしてどうする」 

池田「え……でも、小走さんは三年生ですよね?」 

小走「確かに、私はもうインターハイには出れない。が、大学に行けばインカレもあるし、その先だってあるかもしれない。そこでお前と戦うかもしれないだろう?」 

池田「そう……ですね。わかりました。あたしも……小走さんと……今度は敵として戦ってみたいです! 全国の舞台か……或いは、互いにプロになったときにでも!」 

小走「言うようになったじゃないか、負けたくらいでめそめそ泣いてたニワカが。私に勝てると思うのか?」 

池田「勝ちますよ。勝って、今日小走さんに取り返してもらった分を、きっちりお返しさせていただきます」 

小走「ふん、いい返事だな。そのときを楽しみにしているぞ。ま、とは言え今日が終わるまでは仲間だ。ともに胸を張って控え室に戻ろうっ!」 

池田「はいっ!」

379: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/10 21:11:17 ID:qi3B5FuV0
@対局室外 

豊音「わっ!? シロ、なんでそんなとこに座ってんの!」 

シロ「立ってんのがダルいから……」 

豊音「立ってるのはダルいのに、しっかり迎えには来てくれるんだね」 

シロ「そんなことより、何やってんの。最下位とか」 

豊音「えー? いや、みんな強かったんだってー」 

シロ「その気になればなんとかなったくせに……」 

豊音「んー? 私のこと、そんな高く評価してくれるの? ちょー意外」 

シロ「いや、そうじゃなくて」 

豊音「?」

380: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/10 21:12:27 ID:qi3B5FuV0
シロ「マイナスで控え室に帰るの……ダルいなって」 

豊音「えー!? そう思うなら初めから手加減無しでやればよかったのに!」 

シロ「そうだね……まさか豊音が負けるとは思ってなかったから……」 

豊音「当て擦り!? 私は最初から最後まで全力だったけどー」 

シロ「そうかぁ? もっとできることはあったように見えたけどなぁ」 

豊音「じゃあシロがやってみるといいよー。すっごいキツかったんだから」 

シロ「こっちだって大変だったよ」 

豊音「……ふふっ」 

シロ「なに?」 

豊音「いや。なんか、全国は広いなーと思って。ちょー楽しい。私、もっといろんな人と打ちたい。これからもずっと……」 

シロ「そ。頑張ってね」 

豊音「シロも一緒に打とう?」 

シロ「………………どうだかね。ダルいし」 

豊音「もー! シロそればっかー!!

381: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/10 21:14:07 ID:qi3B5FuV0
@会場某所 

透華「お疲れ様ですの」 

衣「うむ、疲労困憊。見ていてどうだった……? 衣は自分の麻雀を打てていたと思うか?」 

透華「もちろんですわ。あんな打ち方は衣にしかできませんの。ただ……南場に入ってから和了りがないというのは、少々衣らしさを封じられていた感じがしますわね。清澄と戦ったときでさえ、海底で親を蹴っていたというのに」 

衣「透華は、もっと衣に和了ってほしかったか?」 

透華「ええ。本気のあなたは、あんなものじゃなくってよ」 

衣「そうか……今の衣では、まだ透華の眼鏡にはかなわないか」 

透華「そうですわね。わたくし、もっと強い衣が見たいですわ」 

衣「いいだろう。それが衣らしさだというのなら、衣はもっと強くなってやる。特訓、特訓だっ!」 

透華「そうですわね。頑張ってくださいまし」 

衣「? 何を言ってる。透華も一緒に決まってるだろう」 

透華「と……そうですわね。わたくしたちは……家族ですものね」 

衣「……ずっと一緒にいてくれるか?」 

透華「ええ……ずっと一緒にいたいですわ」

383: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/10 21:17:19 ID:qi3B5FuV0
すばら「さあ!! 先鋒戦の熱もまだ冷めていませんが!! 間もなく次鋒戦を開始したいと思いますっ! 対局者は、対局室へ向かってください!!」 

@一年選抜控え室 

友香「あれ? こんなところに飲みかけのカップ……? あのー、これ誰のでー?」 

優希「ああ、たぶん鶴賀の幽霊っ子のだじょ」 

穏乃「ふんふん……間違いない! これはモモさんの匂いっ!!」 

憧「穏乃……お願いだからそういう野生児みたいな真似しないでくれない? 友達として恥ずかしい……」 

穏乃「えー!?」 

和「ついでに言うと、高校生にもなって年中ジャージはどうかと思います」 

穏乃「ええー!?」 

泉「というか、高鴨さん、インターハイのときから気になってたんですけど、そのジャージの中ってどうなってはるんですか?」 

南浦「あなた……!? それは触れてはいけないところ……!!」 

穏乃「泉さんっ! 見たいですか!? ジャージの中!! 実はまだ憧にしか見せたことないんですけど!!」 

憧「ちょっ!? なんか誤解を招く言い方しないでよ!」 

咲(穏乃さんたち、元気だなぁ……)

385: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/10 21:19:45 ID:qi3B5FuV0
@二年選抜控え室 

衣「む……!?」 

透華「ヤバげ……ヤバげですわ!!」 

玄「はわわわわ!!」 

尭深「…………!」 

灼「さっきまで普通にしてたのに……」 

憩「たぶんやけど……衣ちゃんと透華さんに当てられたんやねぇ」 

かおりん「えっ? みなさん、どうしたんですか? 恐い顔して。ねえ、みなさんがなんか変なんですけど…………って、あれ?」 

小蒔「………………」ZZZZZZZ

386: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/10 21:21:00 ID:qi3B5FuV0
@三年選抜控え室 

久「第一回、セーラに着せたい衣装ランキング~! ただしスカートの類は禁止よっ!」 

セーラ「ええっ!? いきなりなんやねん!!?」 

姉帯「じゃあ……袴っ!!」 

セーラ「お、おう。ま、それならええわ」 

美穂子「オーバーオールが可愛いかと」 

セーラ「可愛いかどうかは知らんけど、それなら持っとんで~」 

洋榎「スカートがダメなら、スク水一択やろな!」 

セーラ「アホっ、誰が水着でうろちょろするか!」 

哩「鎖……もしくは、荒縄」 

姫子「包帯ビキニもよかですよね」 

セーラ「」 

シロ(え……? 新道寺の人たち……え?)

388: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/10 21:22:28 ID:qi3B5FuV0
@混成チーム控え室 

小走「よろしい……ならばお見せしよう! 王者の指先を!!」 

怜「わあっ!? ホンマや!! 綺麗な指っ!! えっ、小走さんマメできひんの!? 小三から!? さすがやわ~。うち、病弱やからすぐマメできんねん」 

竜華「それ病弱やからやない。ただ指の皮薄いだけや」 

池田「むう……改めてよく見ると、確かに清澄の嶺上使いに似てるな……」 

照「…………」 

漫「あ、あの……蜜柑、一つもらってもええですか?」 

宥「うん。よかったらお茶とおせんべいもどうぞ。はわぁ……炬燵……暖かい……」 

末原「なんやこれ、あの二人がおらんなっただけで控え室がカオスやんけ」

389: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/10 21:25:13 ID:qi3B5FuV0
すばら「ではでは!! 全国選抜学年対抗戦、次鋒戦の開始ですっ!! 各チームのオーダーは以下の通りです!!」 

@一年選抜:大星淡(白糸台)・東横桃子(鶴賀学園) 

淡「じゃあモモコ、どこにいるかわかんないけど、予定通りに私が先に行くねっ!」 

モモ「任せるっす」 

@二年選抜:船久保浩子(千里山女子)・愛宕絹恵(姫松) 

Q「絹ちゃん、先がええ? 後がええ?」 

絹恵「せやなぁ……個人的には薄墨と被らんのがええなぁ」 

@三年選抜:薄墨初美(永水女子)・石戸霞(永水女子) 

初美「私が先に行くですよー。お互いそっちのほうが慣れた順番ですしねー」 

霞「ええ、お願いするわ。初美がリードしてくれれば、私は守るだけでいいものね」 

@混成:染谷まこ(清澄)・加治木ゆみ(鶴賀学園) 

まこ「なんじゃ、お前さんトコの一年と当たってしもうたのう。わしゃあ捨て牌が見えんとなんもできんけぇ、頼むわ」 

かじゅ「ああ……そちらも、魔物相手だが、健闘を祈ってる」

390: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/10 21:27:55 ID:qi3B5FuV0
@実況室 

すばら「各選手席に着き、いよいよ次鋒戦前半が始まろうとしていますっ!」 

初瀬「先鋒戦がとても長く感じましたが、まだ対抗戦は始まったばかりなんですよね」 

純「見所には事欠かねえ面子ばかりだから、見てるほうも疲れるよな」 

すばら「弘世さん、ずばり、次鋒戦前半の鍵となるのは誰でしょう!」 

菫「鍵かどうかはわかりませんが、やはりうちのバカが心配です」 

すばら「大星淡選手ですね!!」 

初瀬「大星選手……同じ一年生とは思えないですね」 

純「先輩から見てどうなんだ、あいつの強さってのは」 

菫「まあ、うちの大将を務めるだけの力があることは確かです。強さも申し分ありません。 
 しかし、この間のインターハイのように、力や強さを持っていてもままならない場面というものがあります……あいつには、そういう経験をもっとたくさん積んでほしいですね」

391: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/10 21:29:28 ID:qi3B5FuV0
すばら「なるほど。弘世さんは、大星選手の対抗馬になりそうなのはどなただとお考えですか?」 

菫「個人的には、清澄の染谷まこ選手を推したいです。もちろん、千里山の船久保選手もうちの誠子を相手にやってくれましたから、期待はしています。 
 ただ、両名とも、火力であのバカを上回るのはなかなか大変そうなので、対抗馬となるとやはり……」 

すばら「鹿児島県大会・最多得点記録保持者――薄墨初美選手ですね!!」 

初瀬「天江選手とともに、高火力選手と言えば名前の挙がることが多い方ですよね」 

純「だが……あの日焼け巫女の得意技は四喜和だろ? 大星淡とは相性が悪いんじゃないか?」 

菫「かもしれません。なので、ま、その辺りも一つ見所ということで」 

すばら「果たして勝利の女神は誰に微笑むのか!? 次鋒戦開始ですっ!!」

392: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/10 21:31:16 ID:qi3B5FuV0
@対局室 

西家:染谷まこ(混成チーム) 

まこ「(薄墨と大星は直に見たしのう……千里山の牌譜も当然チェック済みじゃ。ま、あとは出たとこ勝負じゃろ)よろしゅう」 

北家:船久保浩子(二年選抜) 

Q「(清澄と永水は反対側やったから、うち的には生で体感するんはこれが初めて。白糸台の大星も超重要人物やし……これは今後のためのええデータが取れそうや)よろしくです」 

南家:薄墨初美(三年選抜) 

初美「(先鋒戦と違ってインターハイ・ベストエイトのレギュラーがそろい踏みですかー。私ら永水としてはシード校の意地を見せないとですねー)よろしくですよー」 

東家:大星淡(一年選抜) 

大星「よろしくー」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

399: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/10 21:35:12 ID:qi3B5FuV0
@実況室 

すばら「始まりましたぁ! 次鋒戦! 起家・大星選手の第一打は……二索だぁ!!」 

 淡配牌:四四五七九①④⑧267南西北:ドラ⑧ 

井上「んな騒ぐようなことかよ」 

初瀬「でも、私なら、この配牌で二索はまず切らないですね。普通の人なら、一枚ずつしかないオタ風牌、もしくは、四筒でカバーできる一筒を切ると思います」 

菫「これはまた……淡にとってはよくない配牌ですね」 

すばら「至って普通の配牌な気がしますが、どの辺りがよくないのでしょう」 

菫「手の内に一つも役牌がないところです」 

すばら「いきなり意味あり気な発言が飛び出しました! これはもう早速その話をしてしまいましょうか!!」 

純「大星淡……あんたがシャープシューターなら、大星は白糸台の『七星《セブンスター》』なんて呼ばれているな」 

初瀬「七星……幸運の象徴である『セブン』と、天頂の象徴である『スター』。まさに、輝かしい成績を収めている大星選手に相応しい二つ名です」

400: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/10 21:35:59 ID:qi3B5FuV0
※という設定になっていますすいません。

402: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/10 21:38:25 ID:qi3B5FuV0
菫「私の二つ名も大概ですが……淡の二つ名もよく的を射ていますね。本当に誰が名づけたのやら。七星の星とはつまり、恒星を指します。 
 恒星とは、それそのものが光を放つ星……これは、それを三枚集めるだけで一役になる字牌の見立てです。そして、麻雀に使われる字牌は全部で七種類。 
 まさに、異常な引力で卓上の七星を引き寄せるあいつに、ぴったりの二つ名と言えます」 

初瀬「字牌を引き寄せる……見ていてわかりやすいオカルト現象ですよね」 

純「でも、ただ字牌を引き寄せるってだけじゃねえんだろ? 少し見てりゃ気付くことだが、阿知賀のドラ娘みたいに、決して大星は字牌を独占できるわけじゃねえ。ってか、そんなことが出来たら絶対負けねえしな」 

菫「ええ、井上さんの言う通りです。あいつの『引力』には大きく分けて三つの特徴があります。一つ目は、あいつの引き寄せる字牌は、配牌時に手の内にある字牌だけ、ということ」 

初瀬「二つ目は、なんですか?」 

菫「あいつの能力の発動――場の支配は、配牌後に始まる、ということ。ゆえに、配牌については完全なランダムです。当然、他家の手にも字牌は行きます。 
 例えば、この東一局、あいつの手に北が一枚あるわけですが、薄墨選手の手にも北の対子がありますね。この場合、どんなにあいつの引力が強くても、物理的に山から引ける北は一枚だけ、ということになります」 

純「次は、最後の三つ目だな」 

菫「三つ目は、あくまで『高確率で』字牌を引くだけであって、絶対ではない、ということです。 
 もっとも、この確率については、ほぼ確実に嶺上牌が有効牌になる宮永咲選手や、狙って海底を和了れる天江選手に比べると、という話であって、一般的な確率論はとっくに超越しています」

403: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/10 21:39:38 ID:qi3B5FuV0
すばら「すばらな説明ありがとうございました! これで、先ほどの『手の内に役牌がない』という発言の意味が理解できますね!!」 

初瀬「今の引力の話が本当なら、もし役牌があれば、大星選手はたった数巡で一役確定できるわけですもんね。 
 手の内にある字牌がオタ風牌ばかりというのは、確かによくない配牌と言えます」 

純「よくないねぇ……。で、そのよくない配牌が、ほんの目を離した隙にあの有様だが……」 

すばら「おおっとおおおおおお!! 大星選手!! 残していたドラを吐き出しましたあああ!! 捨て牌と手牌がとんでもないことになっていますっ!!」

405: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/10 21:42:57 ID:qi3B5FuV0
@対局室 

東一局・親:淡 

まこ(薄墨はまだ南家。当然……警戒したほうがいいのは大星淡じゃろな。インターハイ前に牌譜を並べてみたが……なんというか、特徴的な顔を持ったやつじゃったのう)タンッ 

Q(白糸台の七星……なんも知らずにデータを見たときはたまげたで。まず目を引くんは、第一打。まったくと言っていいほど字牌を切らへん。 
 四風子連打なんてルールがある麻雀や……それだけ字牌――特にオタ風牌は序盤に切られやすい牌。そんな一般論をこいつはあっさり無視する……)タンッ 

まこ(さらに驚くべきは……大星の和了る手役の種類じゃ。断ヤオと平和の和了率が異常に低い。確か一パーセント未満じゃったかの。どちらも麻雀に親しむものなら真っ先に覚えるべき役じゃ。 
 じゃが……こいつの字牌占有能力を前に……その常識は通用せん) 

Q(字牌占有能力と聞くと……なんや字一色・大三元・四喜和を連発する化け物かと思うたけど……それも微妙に違う。 
 こいつの厄介なところは……その能力の応用力や。字牌が集まる力を駆使した、大技から小技まで……実に多種多様な和了り)タンッ 

まこ(役牌のみ……チャンタに混一、対々、三暗刻……小三元と混老頭……字牌・刻子の絡む役を状況に応じて使い分けてくる。役牌のみで流したかと思えば、次の局には倍満を和了ったりの。 
 変幻自在に役を複合させて……こいつは役満に頼らんでも高火力を維持できる。もちろん……役満を和了らないってわけでもないから、更に性質が悪い)タンッ

408: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/10 21:45:16 ID:qi3B5FuV0
Q(字牌を暗刻で固められる分……一般人なら鳴いて混一やチャンタを狙うところを……こいつは門前で手を進められる。門前で進められれば、リーチやダマといった戦略も選べる。 
 あと注意すべきなんは……わりと多いケースなんやけど……ドラに字牌が来たときのドラ三率。これも脅威やで。ドラが役牌なら、それだけでもうインスタント満貫の完成やないか)タンッ 

まこ(じゃが……もちろん付け入る隙がないでもない。天江衣や宮永照よりは、咲や石戸霞に近い魔物……得意分野がはっきりしているタイプじゃ。大星の字牌占有能力は……どちらかと言えば対策が練りやすいほうじゃろな)タンッ 

Q(例えば……石戸霞が一色を独占すると、他家が二色で染まるのと同じように……大星が字牌を占有すれば、他家には数牌が多く回るようになる。要するに、大星の和了らない断ヤオや平和を、比較的こっちは狙いやすくなるんや。 
 やから、こっちも普段よりテンパイ率が高くなる。大星があまり役満を和了らないのは、ちんたらしとると他家にスピードで競り負けるってわかってるからやろな)タンッ 

まこ(まあ……だからこその和了りの幅広さなんじゃろう。大星は……大星自身の能力もそうじゃし……大星を相手にする他家の戦略も心得てる。安易に喰いタンで早和了りなんて狙おうもんなら、浮いたヤオ九牌を叩かれて終いじゃ。 
 こりゃあ……骨が折れそうじゃのう)タンッ 

Q(一応うちなりに対策は練ってきたつもりやけどな……それがどこまで通用するか……シュミレーションでは得られない結果がきっと見れる……データ派としてこんな嬉しいことはないわ)タンッ 

まこ(と……大星はここでドラ切りか……ぼちぼちヤバい感じかのう……!)タンッ 

Q(大星が速そうやな……うちが配牌のときから白と東を抱えとるから役満はあらへんと思うけど……この抱えた字牌のせいで手が重い……間に合わへんか……!?)

410: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/10 21:48:13 ID:qi3B5FuV0
 一方、淡。 

淡(……とかなんとか考えてんのかな。清澄と千里山の眼鏡ズはデータ派だったはず。ま、なにされたって最後には私が勝つけど。ってかもう張ったしね~) 

 八巡目・淡配牌:四四五七九南南南西西西北北:ドラ⑧:ツモ八 

淡(ほら……私はこんなにも牌に愛されてる。今回はたった三つ星だけど。でも……凡人はこんな手を張っただけでもすぐ騒ぐんだよなぁ……。 
 まったく……何がそんなにすごいのかわからない。こんな美しくもなんともない和了り……私にしてみればできそこないだってのに) 

 淡、小さく嘆息。 

淡「(ま、いいや。他家はまだ苦しそうだし、しょっぱい手だけどここはリーチしておこう)……リーチ」スチャ 

初美(おっと……さすがに速いですねー) 

Q(捨て牌からして明らかな染め手……しかもほぼ全てが手出しっちゅーんやから……ホンマに化け物やな……!) 

まこ「…………悪いのう、ロンじゃ。タンピンドラ一、3900」 

初美・Q「!?」

412: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/10 21:50:42 ID:qi3B5FuV0
淡「(ちぇー……清澄……張ってたか)……まぁいいけどさ……こんなのくれてやるよ……」 

まこ「なんじゃ、大星淡、染め手は好かんのか? それとも……役牌が一つもないのが気に入らんのか?」 

淡「はぁ……? いきなりなに言ってんの?」 

まこ「その捨て牌でリーチしてきたっちゅーことは、わりゃあ混一でも役牌がないってことじゃろ? ほんで、八巡目なら抱えとる字牌は三種類――南と西と北じゃな。大方、暗刻二つの雀頭一つってとこか。 
 三暗刻になっとるんじゃったらダマで満貫確定……四暗刻も見えてくるじゃろうし、単騎待ちに切り替えて誰かを狙い打ったってええ……どちらにしろさすがにテンパイ即リーはないの」 

淡「へえ……まるで見えてるみたいだね?」 

まこ「みたいじゃない。見えとるんじゃ。いや、見たことあるって言ったほうがええかのう」 

淡「そうなんだ……。で、それがどうしたの?」 

まこ「どうしたってほどじゃないんじゃが……ただ、混一はわしの好きな役での。が、当のわりゃあテンパっても溜息と来たもんじゃ。 
 ちぃーとばかし悔しいけぇ……こういうんはあんまり性分じゃないんじゃが……少し煽っとこうと思ってのう。どうじゃ……やる気は出たかの?」 

淡「っ――!!」 

 まこの挑発に、淡の顔色、急変ッ!! 

淡「はぁ!? なにそれ……? やる気出たって……それどういう意味っ!?」 

 淡、席を立ち、千点棒を四本、まこの目の前に叩きつける!

413: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/10 21:53:00 ID:qi3B5FuV0
淡「私がやる気出してないとか思ってるわけ? どっかの三年みたいに手ぇ抜いてると思ってるわけ? 心外だなー心外だよー?」 

 淡の長髪――脈動ッ!! 

淡「私はいつだって誰が相手だって全力1000パーセントで打ってんだよ。あんたらの牌譜だってインハイのときから頭に入ってるし、侮りも驕りも一切ないっ!」 

 何かを要求するように、手の平を対面のまこに差し出してみせる、淡。 

淡「清澄の二年生……私に勝てるもんなら勝ってみなよ。サッキーの先輩であり、菫先輩とタメ張ったあんたを私は弱いとは思ってない。けど……それでも……最後に勝つのは私だからっ!」 

 まこ、苦笑して、淡の手に百点棒を返す。 

まこ「ほうじゃの。今のはわしが悪かった。すまん。取り消すけぇ、勘弁してくれ」 

淡「そんなのは別にどうでもいいけど……。ってか、こっちこそ、気を悪くしたんなら謝るよ。ゴメンナサイ。 
 でも……染め手は苦手ってゆーか……こればっかりは美意識の違いってゆーか。ちなみに、染谷先輩……でいいんだっけ、好きな役満は?」 

まこ「緑一色じゃ」 

淡「オールグリーンね。いかにもって感じ」 

まこ「そういうわりゃあ好きな役満はなんなんじゃ?」 

淡「私の好きな役満は――」 

 淡、言いかけて、微笑。 

淡「この対局が終わるまでに……見せてやるよ」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ 

淡:94000 Q:109900 初:94600 ま:101500

415: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/10 21:56:21 ID:qi3B5FuV0
東二局・親:初美 

Q(清澄……大星をその気にさせるとは……なかなかわかっとるやん。手抜きのデータなんか取ってもしゃーないからな。 
 宮永照が抜けた来年……インターハイはこいつか宮永妹を倒さへんと千里山の優勝はまずない。本気モードの大星相手に色々試せる機会は有難いで)タンッ 

Q(うち調べのデータから見た大星対策……その一、当たる確率の高いヤオ九牌をさっさと切る。その二、手作りはスピード重視。その三、リーチはなるべく控える。 
 ま、これでひとまずトビは避けられるはずや。問題は……こいつに勝つにはどうしたらええか……)タンッ 

Q(守りにばかり徹しても……大星の火力なら五万点は確実に開く。それを埋めるためには……こちらからも攻めないとあかん)タンッ 

Q(大星の字牌占有能力……それは脅威やが……突き抜けた力は同時に弱点になる。変幻自在な大星相手にうまくいく確率は三割くらいやが……ここは敢えて……先制リーチで仕掛ける……!) 

Q「……リーチや」スチャ 

淡(速いね……千里山の眼鏡もタンピン系かな。でも、その程度の早和了りなら……恐くはないよ……!)タンッ 

Q「っ……! ロンやっ! リーチ一発赤一……5200!!」 

淡「んむ……!」 

Q手牌:二三四[五]六七①①①⑥⑦⑧南:ロン南:ドラ2・③ 

淡手牌:123一七八東南南白白白發:捨て南:ドラ2・③

416: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/10 21:59:33 ID:qi3B5FuV0
Q(ビンゴや……! 大星の字牌占有能力は阿知賀の松実玄と似たところがある。固まってくればくるほど手が窮屈になるんや。ただ……松実玄の場合はドラを捨てられへんのに対し、大星は字牌を平気で捨ててくる。 
 わりかし多いのが……既に暗刻になっているオタ風牌切り……他家に対して安牌である確率が高く……手放すことでむしろ役牌の暗刻を増やして高めを狙える一石二鳥の一打。 
 若干やけど……大星が先制リーチに対して回すとき……役にならない字牌の暗刻落としはやりがちなパターンや) 

淡(南単騎ときたか……そういう狙い撃ちは初めてじゃないけどねー。思い出すなぁ……部活の練習で菫先輩によく射抜かれたっけ。でも……先輩ならまだしも……普通の神経じゃ私相手にそんな薄い待ちでリーチはかけてこない。 
 ツモか私以外からの振り込みを期待して数牌の多面張にするのがセオリー。そうしなかったってことは……こいつも私に勝つつもりで打ってるってことだねー。上等だよ……!!) 

まこ(千里山の……さすがによく研究しとるのう。そのやり方はわしも考えとったが……実際にやるとなると恐ろしゅうて微妙なとこじゃな。が、どっちにしろこれで大星は字牌単騎を警戒してくるじゃろう。 
 となると……なかなか直撃を取りにくくなってくる。さて……どうしたもんかのう……) 

 強敵・大星淡を相手に、序盤から果敢に立ち向かう、まこ、フナQッ! 

 だが、次鋒戦前半――卓に潜む魔物は……一人ではないッ!! 

初美「みなさん、お楽しみのようですねー……」 

 風が巡り、死霊を引き連れ動き出す――悪石の巫女ッ!! 

初美「そろそろ私も混ぜてほしいのですよー?」ゴゴゴゴゴゴゴゴ 

 次局、薄墨初美、一度目の北家ッ!! 

淡:88800 Q:115100 初:94600 ま:101500

419: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/10 22:06:24 ID:qi3B5FuV0
東三局・親:まこ 

 七巡目 

まこ(来てしもうたのう……場決めをしたときから覚悟しとったが……役満の親っ被りだけは絶対にゴメンじゃ。東か北が来たら死守あるのみ。っちゅうか、薄墨相手に東・北を躊躇なく切るのは和くらいじゃろうて)タンッ 

Q(薄墨初美……東と北を晒して、手の内に南と西を引き込む……永水の四喜和使い。一番楽な封じ方は……大星が東か北を抱えてくれることやけど……果たしてそんな都合よく場が進むか……?)タンッ 

淡(さっきからちらちらとこっちを伺ってくるけど……もしかして私に期待してるんだったら今のうちに謝っとくよ……千里山の眼鏡。 
 笑えることに……私の手牌には風牌がたった一つしかないんだなーこれが。いつまで経っても寄ってくる感じはしないし……うん……これは面白いことになりそうだよ……)タンッ 

初美「カンですよー!」パララッ 

 初美、東、暗槓ッ!! 

まこ(暗槓じゃと……!? 北家になった途端にこれかい……大星並みの字牌占有体質じゃの……!!)タンッ 

Q(カンドラ表示牌は中――ドラは白やな。ってか……しもうた……! 考えたくあらへんから考えへんかったけど……これ……この河……想定していたパターンのうちで一番アカンやつやんけ……!)タンッ 

淡(眼鏡ズもそろそろこのヤバさに気付いてきたかな……! なんたって……あの暗槓とカンドラ表示牌以外……未だ場に一枚も字牌が見えてないんだからねー……!)タンッ 

初美(さあ……白糸台の七星……! どっちが速いか勝負ですよー!!)タンッ

420: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/10 22:09:07 ID:qi3B5FuV0
 初美、カンドラの白をノータイムでツモ切りッ! 

Q(だっ……薄墨……それは……!?) 

淡「ポンッ!」タンッ 

 淡、白鳴き、そして――、 

初美「それ……いただきですよー! ポンッ!!」タンッ 

まこ(なっ……! 大星がわざわざ北を吐き出した……!? こりゃ……最悪じゃ……!!) 

 鬼門に東と北を晒した、悪石の巫女ッ! 

 白を鳴いた、字牌占有能力者ッ! 

 そして、河に一枚たりとも見えない、字牌ッ!! 

まこ(この状況……薄墨が四喜和で……!!) 

Q(大星淡が……大三元……!!?) 

 次鋒戦前半・東三局――大荒れッ!! 

まこ・Q(この化け物どもが好き勝手暴れよって……!!) 

淡・初美(私が先に和了る……!!)ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ 

 そして――十四巡目ッ!!

423: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/10 22:11:17 ID:qi3B5FuV0
Q(この緊張感……一打ごとに軽く二、三回は死ねるでー……!)タンッ 

淡(三連星は揃ってるのに……やっぱり数牌は思い通りに来ないなぁ……!)タンッ 

初美(じれったいですねー……早くぶちかましてやりたいですよー……!)タンッ 

まこ(くっ……! あれこれ回してみたが……さすがに限界じゃ……これはもう……覚悟を決めるしかないのう……!!)タンッ 

 まこ、決死の非安牌・二筒切り――瞬間ッ!! 

??「ロンッ!!」 

 果たして手牌を倒したのは――!? 

Q「平和……1000や……!」パラララ 

淡・初美(先を越された……!!?) 

まこ(千里山……! 助かったわ……まさに値千金じゃ……) 

Q(ギリギリまでテンパイを維持して正解やったな……清澄なら差し込んでくれると信じてたで……!) 

 大星淡・薄墨初美、ともに役満和了ならずッ!! 

淡:88800 Q:116100 初:94600 ま:100500

427: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/10 22:16:42 ID:qi3B5FuV0
東四局・親:Q 

淡(ちょろちょろと……面倒な相手だな。いや……素直に強い……それは認めるよ。現に清澄は団体戦でうちに勝ってるわけだしね……弱いわけがないんだ……それは知ってた)タンッ 

淡(麻雀は……強くなればなるほど……勝つのが難しくなってくる。周囲のレベルも上がってくるし……目立てばマークされるようになって……対策を練られる。一対三みたいな状況だってざらにある。 
 でも……一握りの本当に強い人は……それでもなお……勝ち続ける)タンッ 

淡(私は……凡人とは違う。牌に愛された――選ばれた存在。だから……どんな不利な状況だって格下相手に負けるわけにはいかない。 
 策を練られたならその上を……打ち方を研究されたのなら新しいスタイルを……そうやって……常に過去の自分を超えて勝ち続けなくちゃいけない。それが……白糸台で……私がテルから学んだこと……)タンッ 

淡(来年になったらテルはいない……そうなったら……白糸台のエースは私だ。全国最強の高校のエース……一万人の頂点……テルと同じところまで上り詰めるには……力を持っているだけじゃダメ……ただ強いだけじゃ足りない。 
 私に求められるのはトップを取ること……! それも……テルみたく圧倒的な点差で他を突き放してのトップ……!!)タンッ 

淡(けど……この間のインターハイ決勝……私はサッキーに負けた。テルの妹……私と同じ一年生……私と同じ……テルの後を継ぐ資格を持った……牌に愛された存在……)タンッ 

淡(私は……まだまだなんだ……私はまだテルと同じ高みに届いていない。この間の大会でそれがわかった。 
 今のところはサッキーに一歩リードされてるけど……私はテルの後輩……テルと同じ血は流れてないけど……白糸台のチームメイトとして……テルから意思を受け継いでいるのはこの私だ……! 
 私は……もう誰にも負けない……! 頂点に立つまで勝ち続ける……! だから……こんなところで凡人相手に負けてられないんだよ……!)

428: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/10 22:18:45 ID:qi3B5FuV0
淡「……チーッ!」タンッ 

Q(大星が動いた……? しかも役牌ポンやなくて数牌のチー……これは安いか高いか両極端なパターンやな……また大三元でも張っとったらどないしよ……) 

まこ(鳴いてきたのう……こりゃあ……何をしても止められる気がせん……!) 

 六巡目 

淡「ツモ……中のみ……400・700」 

 淡手牌:五六七789東中中中/(一)二三:ツモ東:ドラ⑦ 

Q(東単騎……それが来るとわかってるからこその待ちやろな。大星やから可能な超早和了り。数牌は鳴いてテンパイに持っていき……能力をフル活用して字牌ツモ……オカルトなしでこのスピードについていくのは至難の業やで) 

まこ(さっきの大三元狙いから一転……こういう小技も使ってくるから大星は厄介なんじゃ。薄墨と違うて的が絞れん……しかも……仮に絞れたところでツモまではどうしようもできんしのう……) 

初美(また字牌ですかー。常時発動型の能力は応用が利いて羨ましいですよー。って……あれ……ひょっとして私だけ焼き鳥ですかねー?) 

淡(さて……次が最後の親番……東場はやり込められたけど……このまま私が黙ってると思わないでよね……!!)ゴゴゴゴゴゴゴ 

 淡、中と東の二つ星で和了り、南入――ッ!! 

淡:90300 Q:115400 初:94200 ま:100100

433: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/10 22:22:45 ID:qi3B5FuV0
南一局・親:淡 

 九巡目 

淡()タンッ 

初美(っと……ここで大星淡の河に字牌が出てきましたかー)タンッ 

まこ(大星……手出しの西か。見るからに筒子で染めてる感じじゃけど……ここで西を切ってきたっちゅうことは、暗刻落としで高めに切り替えたっちゅーことかの……) 

 まこ、手牌の端、捨てられずにいた一枚の東を一瞥。 

まこ(大星が東家じゃから鳴かれんように持っとったが……ここでこいつを切ればわしもテンパイ。大星の手に東がある可能性は高いじゃろうが……西切り後の今なら……この東を切っても和了られることはないはずじゃ) 

 まこ、長考。 

まこ(例えば……大星が三枚目の東を狙って、東の対子と西の暗刻を持った状態から、暗刻落としで西切りをしたのなら……たとえテンパイを維持していようと待ちは東・西のシャンポン。 
 西切りをした以上はフリテンで和了れん。最終的に大星は三枚目の東を手に組み込んで、西を雀頭……待ちを筒子に切り替えて和了るつもりなんじゃろう……) 

まこ(この卓の感じ……黙っとっても大星が和了りそうな気がする……千里山も薄墨も手が重たそうじゃし……ここはわしが動くしかないかの……!!) 

まこ「通らば……リーチじゃ!」 

 まこ、東切りリーチッ! 

 しかし――!! 

淡「そいつは通らないなー。ロン……! 混一發東……12000!!」 

まこ(なっ……東が当たり……じゃと……!? どういうことじゃ……!!?)

434: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/10 22:24:53 ID:qi3B5FuV0
淡「テンパイに気を取られて眼鏡が曇ったみたいだねー、清澄。読みが浅いよー?」パラララ 

 淡手牌:①①③④⑤東東西西西發發發:ロン東:ドラ二 

まこ(西の……暗刻……!? っちゅうことは槓子落としか……!? こいつ……暗槓してリーチでもよかったじゃろうに……わしが東を抱えてるのを見抜いて……わざわざ手出しのフリなんて小細工までして……! 完全にハメられた……!!) 

淡「さあ……一本場……!!」ゴゴゴゴゴゴゴゴ 

淡:102300 Q:115400 初:94200 ま:88100

437: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/10 22:27:36 ID:qi3B5FuV0
南一局一本場・親:淡 

 六巡目 

Q(マズいで……ここにきて大星が走り出した……どうにか突破口を掴まんと……後手に回ったら毟られる……!)タンッ 

 フナQ、自らの対策通りに、序盤はヤオ九牌切り――! 

 がッ!!! 

淡「ロンッ!」 

Q(はぁ!? 嘘やろ……もうテンパっとったん……!? いくらなんでも速過ぎやろ……!!) 

淡「七対混老頭ドラドラ……18000は18300!」 

 淡手牌:一一九99南南北北白白中中:ロン九:ドラ9 

Q(チートイ……!? 確かに……チートイなら字牌を暗刻にしなくていい分……少ないツモでテンパイに持っていけるんやろうけど……!! それにしたって六巡目で親ッパネって……どんだけやねん……反則やろ……!!) 

淡「二本場いっくよー……!」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ 

淡:120600 Q:97100 初:94200 ま:88100

439: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/10 22:28:08 ID:qi3B5FuV0
南一局一本場・親:淡 

 六巡目 

Q(マズいで……ここにきて大星が走り出した……どうにか突破口を掴まんと……後手に回ったら毟られる……!)タンッ 

 フナQ、自らの対策通りに、序盤はヤオ九牌切り――! 

 がッ!!! 

淡「ロンッ!」 

Q(はぁ!? 嘘やろ……もうテンパっとったん……!? いくらなんでも速過ぎやろ……!!) 

淡「七対混老頭ドラドラ……18000は18300!」 

 淡手牌:一一九99南南北北白白中中:ロン九:ドラ9 

Q(チートイ……!? 確かに……チートイなら字牌を暗刻にしなくていい分……少ないツモでテンパイに持っていけるんやろうけど……!! それにしたって六巡目で親ッパネって……どんだけやねん……反則やろ……!!) 

淡「二本場いっくよー……!」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ 

淡:120600 Q:97100 初:94200 ま:88100

441: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/10 22:32:11 ID:qi3B5FuV0
南一局二本場・親:淡 

 一巡目 

淡(♪)タンッ 

 淡、打、發ッ! 

まこ・Q(大星の第一打が字牌……!!? しかもドラの發!!?) 

初美(これはこれは……どういうことですかねー?)タンッ 

 数巡後 

淡(♪)タンッ 

初美(あれから……大星はずっと字牌切りですかー……一体何を考えてんですかねー?)タンッ 

まこ(大星……このまま字牌を切り続けるつもりじゃろうか……下手をすると今日二度目の流し満貫じゃが……防ぎようにも字牌は大星が根こそぎ引き寄せるんじゃから鳴くに鳴けん)タンッ 

Q(發發發北北って……どういう捨て牌やねん。普通のやつならものごっつい裏目っとるなー言うてネタになりそうな状況やけど……これ捨ててんのは字牌占有能力者の大星や……まさか流し満貫でも狙うとんのか……? 
 させへんで……鳴けんのなら……先に和了るまでや……!)タンッ

442: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/10 22:34:44 ID:qi3B5FuV0
 更に、数巡後――。 

初美(テンパイしてるのに和了れませんねー……さっさと誰か出してくださいよー)タンッ 

まこ(發發發北北南中中って……頭おかしい捨て牌しよってからに……こんな気持ち悪い河は初めてじゃ……)タンッ 

Q(大星……そんな字牌ばっか捨てて……普通に字一色狙うてもよかったやん……! うちはこんなパターンは知らんで……何を企んどる……!?) 

 そして……十一巡目ッ! 

淡「ツモだよっ。タンピンツモ……1300は1500オールねー!」パラララ 

まこ(大星淡のタンピン……!? こりゃあ……役満より珍しいもんを見たのう) 

Q(字一色を捨ててタンピンツモ……? って……これは……そうか……こいつそういうこともできるんやな……!!) 

初美(なるほどですよー……私の和了り牌を四枚も持ちやがってたですかー) 

 淡手牌:三四五678②②③④⑤⑤⑥:ツモ⑦:ドラ發 

 淡捨牌:發發發北北南中中東南

443: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/10 22:35:38 ID:qi3B5FuV0
 更に、数巡後――。 

初美(テンパイしてるのに和了れませんねー……さっさと誰か出してくださいよー)タンッ 

まこ(發發發北北南中中って……頭おかしい捨て牌しよってからに……こんな気持ち悪い河は初めてじゃ……)タンッ 

Q(大星……そんな字牌ばっか捨てて……普通に字一色狙うてもよかったやん……! うちはこんなパターンは知らんで……何を企んどる……!?) 

 そして……十一巡目ッ! 

淡「ツモだよっ。タンピンツモ……1300は1500オールねー!」パラララ 

まこ(大星淡のタンピン……!? こりゃあ……役満より珍しいもんを見たのう) 

Q(字一色を捨ててタンピンツモ……? って……これは……そうか……こいつそういうこともできるんやな……!!) 

初美(なるほどですよー……私の和了り牌を四枚も持ちやがってたですかー) 

 淡手牌:三四五678②②③④⑤⑤⑥:ツモ⑦:ドラ發 

 淡捨牌:發發發北北南中中東南

446: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/10 22:37:57 ID:qi3B5FuV0
まこ(考えたのう……大星。確かに……千里山と薄墨は序盤から張っとる感じじゃった。大星が普段通りに打っとったら……手が出来る途中で二人のどちらかに振っとったかもしれん。 
 こいつは字牌を切り捨てることで……手の内に数牌を溜め込み……千里山と薄墨の和了り牌を握り潰したんじゃ) 

Q(やけど……握り潰すって……第一打のときはなんの判断材料もなかったわけやんな……うちや薄墨の手がええなんてなんでわかったん……? 
 っちゅうか……もし仮にわかっとったとしてもや……やからっていきなりドラの發を切れるか? 
 そりゃ期待値を考えたら……きっとこのタンピンが正解なんやろうけど……やからって……こんなん人間にできることやあらへんがな……) 

初美(いくら私や千里山の手がいいって察知したところでですねー……普通に打ったら振りそうだってカンが働いたところでですねー……人間なら誰しも……自分がドラ三を和了ることとか字一色を和了ることとか……そういう可能性を捨てられないものなんですよー。 
 そういう人間らしい迷いを……こいつは配牌の時点で断ち切ってる。まったく……清澄の原村も大概人間離れした打ち手でしたけど……こっちもこっちでとんだ化け物ですねー) 

淡「これで……三本場だねっ……!!」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ 

淡:125100 Q:95600 初:92700 ま:86600

450: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/10 22:49:03 ID:qi3B5FuV0
南一局三本場・親:淡 

 五巡目 

まこ(大星……ここに来て次々に新しい顔を見せてくる。喜怒哀楽の表現も豊かなやつじゃが……麻雀にもそれが現れとる。どれだけ変幻自在なんじゃ……この一年……!)タンッ 

Q(さっきのタンピン……あんなんデータにないわ。こっちが自分をよく研究してると見るや……即座に打ち方を切り替える。 
 相手に合わせて対策を練り有効な手段を取る――それはなんもデータ派だけの特権やない……こいつは字牌占有なんてけったいな能力を持っとんのに……それに慢心せずうちらをよう見て考えて打っとる……こりゃしんどいで……!)タンッ 

淡()タンッ 

初美(むー……今回はドラが字牌ですか……とても嫌な感じがしますねー……)タンッ 

まこ(そういや……薄墨初美……今のとこ焼き鳥じゃが……点数はさほど大きく減らしとらん。北家の四喜和が目立つが……こういう地味な上手さはさすがシード校の三年っちゅうことかのう。この大星の連荘……薄墨なら……或いは……)タンッ 

Q(大星の捨て牌……また順調に染めてる感じやけど……中張牌の多さも目立つ……これはチャンタ・混老頭もありうるで……さっきの七対子のこともある……まだ序盤やけど張っとる可能性はあるし……ヤオ九牌はヤバそうや。 
 となると……比較的安全そうなんは……第一打から三連続で切り出してる筒子やろか……?)タンッ 

淡()タンッ 

初美(サンシャンテンで安牌がないですよー……だんだん凌ぐのも辛くなってきたですねー)タンッ 

淡「ロン……! 七対混一ドラ二赤一……24000の三本場は――24900ッ!」パラララ 

 淡手牌:[⑤]東東南南西西北北白白中中:ロン⑤:ドラ西

452: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/10 22:51:28 ID:qi3B5FuV0
まこ(これは……薄墨を狙い撃ち……!? その手なら余裕で混老頭を上乗せできたじゃろうに……第一打で四筒を切り出したのも……中張牌を出させるための目晦ましか……!!) 

Q(っちゅうか……大星は直前ツモ切りやったやろ……それで五筒が当たりって……薄墨を削るためにうちを見逃しやがったんか……こいつ……!?) 

初美(へえ……山越で私を狙い撃ちとか……そういうことまでしちゃいますかー……というか……順調に支配する字牌の数が増えてきてるですねー……これは次あたりに大爆発のパターンですかー?) 

淡(大成功~! やったねっ……これで直撃コンプリート!! 今回は六つ星だしいい感じに流れに乗ってきたよ……あとはダメ押しのトドメを刺すだけだね……!) 

 会心の一撃にほくそ笑む、淡。 

 しかし、その余裕は当然、他家の逆鱗に触れるッ! 

Q「なに笑うてんねんコラ。見逃しとは……一年坊主がナメた真似してくれたやんけ……! 
 セブンスターかマイセンか知らんけど……もうデータとかどうでもええ……箱入りの嬢ちゃんにはうちが世間の厳しさを教えたるわ……!!」ゴゴゴッ 

初美「勝負の途中で笑うとはいい度胸ですねー……そんなに私を直撃したのが嬉しいんですかー? まーべつにいいですよー……倍満なんて好きなだけくれてやるですよー……!!」ゴゴゴゴッ 

まこ(なんじゃ……どいつもこいつも麻雀は強くても中身は子供じゃな……負けず嫌いは嫌いじゃないがの……まるでうちの一年トリオと卓を囲んどるような気分じゃ……) 

淡「ふっふーんっ! そういうことは点数見てから言ってほしいよねー! そんなにトバしてほしいならお望み通り……! じゃんじゃんいくよー……四本場っ!!」 

淡:150000 Q:95600 初:67800 ま:86600

453: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/10 22:54:59 ID:qi3B5FuV0
南一局四本場・親:淡 

 四巡目 

初美(配牌からある字牌の処理が面倒ですよー)タンッ 

淡「ポンッ!」タンッ 

初美(中の明刻……東四局みたいな早和了りならいいんですけどねー) 

まこ(中を晒しただけじゃのに……それだけで役満気配が漂ってくる……なんだか手が縛られるような感じがするのう……) 

Q(難易度や確率で言えば……大星にとっての大三元はうちらにとっての清一と同じくらいや……そんなホイホイ役満を和了られたら敵わへんな……)タンッ 

 九巡目 

淡「……カンッ!!」ゴッ 

初美(白カンですかー……私も人のことは言えませんが……そんなに役満をチラつかせるとは……はしゃいでますねー?)タンッ 

まこ(さっきは槓子を落としてわしから直撃を取ったやつが……今度は大三元の黄色信号を灯す白暗槓じゃと……? 意味がわからん……)タンッ 

Q(げっ……!? テンパってもリーのみ確定のイーシャンテンで……よりにもよって發引いたで……) 

 フナQ、舌打ち。

455: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/10 22:58:55 ID:qi3B5FuV0
Q(大星の能力的に言えば……この中盤で引いた字牌は……大星の引力から漏れた字牌。要するに大星の手の中にない字牌ってことや。 
 けど……いくらデータが正しかろうと……中と白を晒しとる相手に生牌の發なんて自殺行為……よほどの確信がないと切れへん……) 

Q(役満か……うちは公式戦で和了ったことはないな。洋ちゃんが……今年鹿老渡の佐々野に清老頭ぶちかましとったけど……あの洋ちゃんだって……あれがインハイ初役満やったはず……) 

Q(せや……うちは小さい頃からあの洋ちゃんと雅枝おばちゃんとよう卓を囲んどったんや。大星淡……うち的ランキングでは今年のルーキーで一番ヤバいやつ……やけど……こんな字牌娘より……よっぽど洋ちゃんや雅枝おばちゃんのほうが恐いわ……!!)タンッ 

 フナQ、確信の發切りッ! 

淡(えええっ!? 嘘でしょ……!? 迷った末に發を切った……!! こいつ……さっきのリーチといい……どんだけ図太い神経してんの……!?) 

Q(なんやルーキー……意外そうな顔しよって。中と白を晒せば發は切れんと思うたか? 考えがヌルいで……! うちはホンマモンの役満を知っとる……一索と九筒を晒した上で役満気配を消しとった洋ちゃんの役満をうちは見とるんや……! 
 それに比べりゃあんたの晒しは中身のないハリボテ……そないなニセモンにビビるうちやないで……!!) 

淡(まぁいいか……別に大三元じゃないってバレたからって私の手が悪くなるわけじゃない……さっさと和了って五本場いっちゃうよー!)タンッ 

初美(發は通るんですかー……いや……さすがにこれで山越だったら笑えるですよー……)タンッ 

まこ(薄墨まで發切り……!? 張っとるんか!)タンッ 

淡(くっ……!! こっちもこっちでさっきの山越がまったく堪えてないとか……頭どうかしてるよっ!!)

459: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/10 23:02:33 ID:qi3B5FuV0
Q「ほな……リーチやッ!」スチャ 

淡(上家のリーチ……下家もテンパッてる可能性大……安牌はない。どうする……? 攻めるか……回すか……!?)タンッ 

Q「なんや……学習能力ゼロかいな、字牌使いッ!!」パラララッ 

 フナQ、悪い笑み……!! 

Q「ロンやっ! リーチ一発……カン裏二つごっそさん! 8000の四本場は9200ッ!」ゴッ 

淡(また……字牌単騎……!! このタコ眼鏡……やるじゃんっ!!) 

まこ(さすが北大阪の強豪・千里山のレギュラーじゃ……この度胸は同じ二年生として見習わんといかんのう) 

初美(あうー……そろそろ和了りたいですよー……) 

淡:140800 Q:104800 初:67800 ま:86600

462: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/10 23:07:38 ID:qi3B5FuV0
南二局・親:初美 

 四巡目 

初美(って……和了りたいと思ったらコレですかー。私は早く北家がやりたいってのにですよー) 

初美「ツモ……ツモのみ、700オールですよー」パララッ 

まこ(安っ……!) 

Q(しょぼ……!!) 

淡(だっさー!!) 

初美(む……なんか心の中で悪口を言われた気がするですよー……見てるですよー……北家になったら全員血祭りの刑にしてやるですからねー……)ゴゴゴゴゴゴゴ 

淡:140100 Q:104100 初:69900 ま:85900

464: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/10 23:09:47 ID:qi3B5FuV0
南二局一本場・親:初美 

 七巡目 

まこ(久しぶりに張れたのう……どうしたもんか……リーチするべきじゃろか……ダマのほうがええじゃろか……)タンッ 

Q(大星の連荘で忘れそうになっとったけど……ここで薄墨以外の誰かが和了ったら……二度目のアレが来るわけやんなー……)タンッ 

淡(さっきの直撃でいろいろ持っていかれたのかな……配牌の時点で星一つ……すっげー微妙な手だよ……)タンッ 

初美(さてさて……連荘なんかしたって親っ被りの危険が増えるだけで意味ないですからねー……ここはちゃっちゃと募金して先に進むですよー)タンッ 

まこ「……ロンじゃ。タンピン……2000は2300」パララ 

初美「はいですよー」チャッ 

淡:140100 Q:104100 初:67600 ま:88200

465: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/10 23:12:25 ID:qi3B5FuV0
まこ(差し込まれた……? 断ラスのくせに躊躇なく最後の親を捨てるとは……大した自信じゃのう) 

Q(あぁあー……これで薄墨が北家……愉快で素敵な第二次魔物戦争の始まりやんけ……!) 

淡(また来ちゃったか……別にいいけど……どうせ潰すから……!!)ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ 

初美(待ってましたよー……! ここが正念場ですねー……さあ……ぶちかますですよー!!)ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ 

 迎えた南三局、薄墨初美、二度目の北家ッ! 

 しかし、運命の悪戯か、神の気紛れか。 

 薄墨初美に配られた牌――その十三枚の中に、東はあれど北はなく。 

 代わりに北を手中にしたのは――!!? 

南三局・親:まこ 

 一巡目 

淡(来い……!!)ツモッ 

 字牌使い――大星淡、その驚異的な引力でもって、薄墨初美の条件付支配下にありながら、二枚目の北をその手に引き込むッ!!

468: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/10 23:19:40 ID:qi3B5FuV0
淡(あはっ……! 一巡目から来てくれるとはね……これで悪石の巫女は鬼門を晒せない……!! 他の風牌は私のところにはないけど……この二枚の北があればもう四喜和はない……! この局はもらった……!)タンッ 

 淡、嬉々として数牌切り。 

まこ(なんじゃ……大星の表情に余裕が見えるのう……まさか北か東を抱えとるんか……? しかし……こんなに連荘したいのにしたくない親番は初めてじゃの……)タンッ 

Q(大星が風牌を抱えたんやとすれば……薄墨の四喜和は封じられたはず。となると、第二次魔物戦争は大星の勝ち……? いや……どっちにしろ魔物どもの好きにはさせへんで。 
 清澄……点数的には辛いやろが……うちは全力で差し込まれ体勢とっとくで……頼むから連荘だけは勘弁な……!)タンッ 

淡(と……さすがに三枚目は来ないか……でも、今度は吐き出さないもんねっ……この北は雀頭決定ー!)タンッ 

初美(………………) 

 そして、薄墨初美が動かないまま、対局は中盤へ……!!

470: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/10 23:22:32 ID:qi3B5FuV0
 九巡目 

淡「ガンガンいくよー! リーチッ!!」スチャ 

淡(さあ……どうする悪石の巫女……! これでもう私の北二枚は何があっても場に出てこないよ……!! 最後の親で差し込みなんてふざけたことしちゃって……得意の四喜和はこれで封じた……!! この勝負……私の勝ちだ……!!) 

まこ(薄墨が北家のこの局でリーチ……!? 大星……やっぱり北か東を抱えとるんか。いや、どっちにしろ親のわしの危機は変わらずじゃが……) 

Q(しもた……先越された……! こっちはまだイーシャンテンやのに……討ち取るつもりがこれじゃ討ち取られるで……!) 

 淡のリーチに、動揺を隠せない、まことフナQッ! 

 しかし、むしろそれを待っていたとばかりに、動き出す、悪石の巫女ッ!! 

初美「まーた余裕の笑みですかー? 懲りない一年ですねー。さっき言ったはずですよー……勝負ってのはー…………最後まで笑っちゃいけないんですよー?」ゴゴゴゴゴゴゴ 

淡(なにこの感じ……!? 鬼門は封じたはずなのに……まるで勢いが衰えていない……!!? どーなってんの!!?)

474: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/10 23:28:47 ID:qi3B5FuV0
初美「『これ』を姫様たち以外に見せるのは初めてですよー……白糸台の七星……よーくその目に焼き付けるといいですー……北家の私に先制リーチを仕掛けた愚かしさ……猛烈に悔いればいいですよー…………カンッ!!」パラララッ 

 薄墨初美、東、暗槓ッ!!! 

淡(暗槓……!? いや、ポン以外で鬼門を晒すのにそういう裏技があるのは知ってるけど……! どっちにしろ北は私が二枚持ってる……どう足掻いたって北は晒せないはず……!!) 

初美「ところがどっこいですねー……今回は特別なのですー。サイの目が私に味方してくれてるんですよー。半荘で二度しか回ってこない北家で……十二分の一の確率でしか発動できない……これが私の超裏技――ッ!!」 

淡(サイの目って……今回は二の二だから……四だけど……って、左四ってこと……!? 北家で左四で暗槓……!!? まさか……そんな……そんなやり方で鬼門が開くの……!!!?) 

 親のまこが転がしたサイは――二の二の四ッ! 

 王牌となるのは東家の山の左三列と、北家の山の右四列ッ!! 

 そのうち暗槓によって捲られるのは――北家の山の右端ッ!! 

 それ即ち……山の北東――鬼門ッ!! 

初美「暗槓は即捲りですよー……そーれっ!!」 

 捲られたカンドラ表示牌は……三枚目の北ッ!!

475: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/10 23:31:13 ID:qi3B5FuV0
淡(ちょっ……!? 信じられない……!! カンドラで北を晒すとか……確かに……カンドラが鬼門の位置に来るのは左四のときだけだけど……!! 
 この反則的な超裏技……もしかして……あの配牌……私のところに北が舞い込んできたのはこの状況へ導くための罠……!? いやいや! ないない!!) 

初美「これで鬼門が開きましたよー……四喜和は当然無理っぽいですけどー……それでもドラ四確定ですからねー……!!」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ 

淡(この感じ……めっちゃヤバい……!! 瞬間最大風速はテルやサッキー並みかも……!? なのに……私はツモ切りしかできないなんて……!!) 

 そして、六巡後――!! 

初美「少し遅れたですけどー……私もリーチするですよー?」スチャ 

まこ(こんなんオリじゃ、オリッ!!)タンッ 

Q(無茶苦茶過ぎるわ……こんなんうちでもオリるで……!!)タッ 

淡(~~~~~~~~~~っ!!)タンッ 

 淡、苦渋の二筒切りッ!! 

 見逃す道理は――無いッ!! 

初美「それロンですよー!! リーチ一発混一三暗刻南ドラ四……裏四……!! 数え役満ですよー!!」ゴッ 

淡(ちょおおおおおおおおおおお!!!?) 

 薄墨初美――対抗戦・初役満ッ!!!!!

476: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/10 23:32:43 ID:qi3B5FuV0
淡(数え役満……!? 直撃……この私が……!!? くっ……そんな……連荘で稼いだ分が全部パーなんて……最悪だよ……!!) 

まこ(四喜和を封じられても数えで役満に持っていくんか……準々決勝の不発はなんじゃったんかってくらいの化け物っぷりじゃのう……) 

Q(げ……カン裏も北やったんかい。これ自動卓やで……なんやイカサマやっとんのと違うか……!?) 

初美(さあ……これで勝負はほぼ振り出しに戻ったですよー……!! あと一発……最後にぶち当てて逆転してやりますからねー!!) 

 波乱の次鋒戦――次局、オーラスッ!! 

淡:107100 Q:104100 初:100600 ま:88200

480: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/10 23:36:07 ID:qi3B5FuV0
@実況室 

すばら「決まりましたあああ!! 薄墨初美選手の四喜和ならぬ三喜和ッ!! トップ独走だった大星選手がまさかの大失点……!! これでまだまだ次鋒戦もわからなくなってきましたああああ!!!」 

菫「あのバカ……永水のことはインターハイ前にあれほど気を付けろと言っていたのに……」 

初瀬「これで大分平たくなりましたね。一時はどうなることかと思いましたが」 

純「さすがの大星もここまでか? ラス親じゃなかった分、他家は助かった感じかもな」 

菫「いや……あのバカには……まだとっておきがありますよ。一瞬で場をひっくり返すようなとっておきが」 

純「とっておきねぇ……。そういや、大星はまだ役満を和了ってねえな。この半荘では大三元テンパイが一度、それに二度くらい字一色を和了れそうなときがあったが……確かにあれをやられたらまた点差が開くぜ」 

初瀬「その気になれば簡単に役満を和了れるって……同じ人間とは思えません」 

純「けどなぁ……北家の薄墨の四喜和が警戒されてるように、大星が役満気配を出せば、東三局みたいに他家は流しにかかるだろ。いくらあいつでも、あの面子が相手じゃそんな思い通りには打てないと思うぜ」 

菫「それは……考えが甘いですね」

481: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/10 23:38:04 ID:qi3B5FuV0
すばら「甘い、とはどういうことでしょう?」 

菫「あいつの『あれ』は……流すとか潰すとか、そういう次元の話ではないんですよ。私でさえ、あいつの七星――『セブンスヘブン』は……止められる気がしません」 

すばら「セブンスヘブン……? 直訳すると、七番目の天国ですね」 

菫「ええ……七巡目の天国と言えばいいのでしょうか。ある条件が揃ったとき、淡は天国への七階段を昇り始めます。それを初見で……しかも個人で阻めたのは……私の知る限り照くらいのものです」 

すばら「大星選手! まだまだ底が見えません!! 次鋒戦もいよいよ大詰め!! 必殺技の炸裂はあるのかっ!!」 

菫(淡……お前が負けるとは思ってないが……清澄の染谷の動きには最後まで注意しておけよ。そいつは……あのインターハイ……クセを治した私の矢を一度も受けなかった強敵だ。 
 しかも……わかってるか……? この次鋒戦……染谷まこは……まだ眼鏡を外していない……!!) 

 まこを強く意識する、白糸台のシャープシューター!! 

 果たしてそれは買い被りか、正当な評価か……ッ!?

484: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/10 23:40:41 ID:qi3B5FuV0
@対局室 

南四局・親:Q 

Q「テンパイや」 

淡「テンパイ」 

初美「テンパイですよー」 

まこ「……ノーテンじゃ」 

 南四局、一人ノーテンでじわりと引き離されるまこ。 しかし、その力は点差ほど開いていないッ! 

 Q手牌:六七八②③④④⑥⑦⑧678:ドラ二 

 淡手牌:7899中中中白白白南南南:ドラ二 

 初美手牌:二二三三四四[五]五4[5]西西西:ドラ二 

 まこ手牌:①①①④④33455669:ドラ二 

まこ(危なかったのう……七対子か一盃口でテンパイ取るか迷うたけど……やっぱり四筒を切って正解じゃったの……) 

Q(なんやこれ……てっきり持ち合っとんのかと思っとったけど……うちらの手牌の中には互いの和了り牌がほとんどないやん) 

初美(最後まで出てきませんでしたねー。これは清澄にまとめて抱えられましたかー……残念ですよー) 

 まこ、ぎりぎりで他家をかわす、いぶし銀の闘牌ッ! しかし――!!

487: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/10 23:43:08 ID:qi3B5FuV0
淡(千里山と永水の手牌に私の和了り牌が一枚しか見えない……それも安めのほう……ってことは高めは清澄が持ってるのか……さすがだね。けど……それはそれで……望むところなんだよねぇ……) 

 それも……或いは魔物の手の平の上か!? 

淡(南一局の連荘のときに二つ星から六つ星まで見せることができた……でも……私にはもう一つ上があるんだよね。 
 よかったよ……こんな三つ星の倍満で終わらしたくはないなーって思ってたんだ。清澄……今私に振らなかったこと……後悔してももう遅いよ……!!) 

 魔物・大星淡――最高潮ッ!! 

淡(宣言通りに見せてやるよ……私の大好きな役満……この世で最も美しい……天に輝く七つ星を――!!)ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ 

淡:108100 Q:105100 初:101600 ま:85200

488: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/10 23:45:46 ID:qi3B5FuV0
南四局一本場・親:Q 

淡(あはっ……! やっと来た……待ってたよ……!!) 

 淡配牌:二三①①⑦3東南西北白發中:ドラ⑦ 

淡(南四局一本場でこれか……思い出すなぁ……テルと初めて対局したときのこと……!!!) 

 ――回想・白糸台高校麻雀部・四ヶ月前―― 

親善対局・南四局一本場・親:照 

照「……一本場……」コロコロ 

淡(め……!! めちゃくちゃ強おおおおおい!! 宮永照……強い強いとは思ってたけど……こんなに強いんだ!!? ホントに人間!!?) 

菫(上級生と新入生が手合わせする恒例の親善対局……照と戦ってオーラスまで辿り着いた人間は……去年はいなかったな。今年もいないと思っていたが……驚いた。 
 東一局の親倍ツモ……それに……東四局では早和了りで照の連荘を止めてみせた……まあそれは私が差し込んだからだが……いや……しかし……この異常な字牌の固まり方は……もうそういう力だということでいいのか……) 

淡(えーと……さっき12000だったから……次は18000だよね……? 直撃どころかツモでトんじゃうよ……! けど……この点差……宮永照が親だから……役満ツモればぶち抜ける……!! こい……私の七星……!!!)ゴッ 

 淡配牌:一二五五59東南西北白發中:ドラ8 

淡(来た来た来たーーー!!! これで七巡後には私が勝つ……!!! 一昨年と去年のインターハイで無敵を誇った宮永照に……今ここで私が勝つんだ……!!)ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

495: >>490菫先輩がトップという脳内変換をお願いします 2013/01/10 23:52:07 ID:qi3B5FuV0
菫(おっと……ここに来てまた一段と元気になったようだな……この大星とかいう一年……二度の和了りでは配牌から字牌を一枚も切らずに手を作った……それに……こいつは第一打でまったく字牌を切らない……加えて……時々だが私の手の中に普通に字牌が来ることがある。 
 以上三点から……こいつの引き寄せる字牌はいつも決まっているわけではなく……その場その場によって変化するんだと考えられる……まあ……妥当な線では配牌にある字牌を引き寄せるってところか……。 
 となると……仮に七枚の字牌全てがこいつの配牌に一枚ずつあった場合……最速で七巡後に……役満ツモか……) 

照(…………) 

菫(照……大丈夫か……? 次はインパチ……いくらお前でも七巡目までにハネ満は微妙なラインだと思うが……まあ……新入生に負ける照というのもそれはそれで見てみたいがな……) 

 四巡目 

淡(北来たー!!)タンッ 

菫(大星が手から五萬を二枚落としてきた……というか……さっきからツモった牌を手に入れて……捨て牌は迷うことなく手の左端から落としている……これは……やはり七巡目に大爆発コースか……とんだ超新星が入ってきたもんだ。 
 どれ……一応鳴いてズレるかどうか試してみるか……) 

菫「チー」タンッ 

 五巡目 

照()タンッ 

淡(ははーん!! チーなんて小細工は通じないよー!! 私の引力はブラックホール並みだもんねー!!!)タンッ 

菫(無駄……か。ズラしてもブレないとなると……やはりこいつより早く和了るしかない……ということか。が……私は現在喰いタン一向聴でこいつの下家……雀頭をポンできればなんとかなるかもしれんが……普通に打っては間に合わん……)タンッ

496: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/10 23:55:47 ID:qi3B5FuV0
 六巡目 

照「リーチ……」チャ 

菫(照……この対局が始まってから……初めてのリーチか……) 

淡(リーチとか関係ないよ……!! これで……テンパイだっ!!)タンッ 

照「ロン。リーチ一発三色裏二……18000は18300」 

淡「えっ……?」 

 照手牌:二三四五六七②③④2349:ロン9・ドラ8・9 

菫(照……萬子の一通と平和……それにドラの八索対子を落として……九索待ちか……ここで大星から九索が出ることが……つまりは一発と裏二で三飜上乗せされることが……最初からわかっていたからこその和了りだな。 
 まったく……今日こそ勝てると思ったが……相変わらずとんでもないやつだ……) 

淡「そ……そんなっ!!」ガタッ 

 淡、動転して立ち上がる。その拍子に露になる、手牌ッ! 

菫(げ……本当にあと一巡で役満だったのか……こっちもこっちでなんてやつだ……大星淡……) 

淡「ま……負けた……!! 私の……七星が……!!!」ウルウル

497: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 00:00:17 ID:8swLi4Yz0
 ――二ヵ月後―― 

照「……淡……インターハイ……レギュラーおめでとう……」 

淡「ありがとうございます、宮永先輩。これで……また一つ宮永先輩に近づけましたかね……私」 

照「そうかもしれない……でも……淡は……それでいいの?」 

淡「なにがですか……?」 

照「淡は……私みたいになりたいの……?」 

淡「それは……だって……宮永先輩は初めて私が心から負けたって思った相手ですから。先輩みたいになりたいと思うのは……当然だと思うんですけど」 

照「そっか……けど……来年は……私いないよ……?」 

淡「だからこそ……私は宮永先輩みたいになりたいんです。白糸台を背負って立つ……最強のエースになりたいんです。ダメですか?」 

照「ダメじゃないけど……ああ……ところで……レギュラー入り……頑張ったご褒美に……何かあげようか……(お菓子とか……)?」 

淡「えええっ!!? いいんですか!? じゃ……じゃあ…………テルって呼んでもいいっ!!!?」 

照「………………え?」 

淡「テルー! テルー!!!」 

照「えっと………………ま、いっか……」

500: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 00:02:26 ID:8swLi4Yz0
 ――インターハイ・団体戦決勝―― 

淡「わあああああああああああ!!!! ごめん……ごめんなさい……!!! まくられたよおおおおおおお!!!!!」ポロポロ 

照「淡……」 

淡「うううううう……ごめん……テル……勝てなかったよ……!!」ポロポロ 

照「うん……そういうこともあるよ……」 

淡「嫌だよ……!!! だって……テルは……テルなら……いつだって負けないもん……!!」ポロポロ 

照「わ……私は……」 

淡「ごめん……私……まだ全然弱い……!! テルみたいには勝てない……!! けど……私……絶対もっと強くなるから……!! テルみたいに強くなるから……!! 誰にも負けないくらい強くなるから……!! 
 それで……来年は……私が一万人の頂点に立って……そんでもって……絶対に白糸台を優勝させるから……!! だから……テル……見ててね……私……頑張る……!!」ポロポロ 

照「う……うん……」 

菫「おい……十分後には表彰式が始まるぞ。淡、それまでにもう少しまともな顔に戻しておけ」 

照「淡……ほら……涙拭いて……」 

淡「う……うん……ありがとう……」グズッ 

 ――――――

501: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 00:04:24 ID:8swLi4Yz0
淡(そうだよ……私は……こんなところで負けてられないんだ……!!)ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ 

淡(永水の四喜和使い……菫先輩とやりあった清澄の眼鏡……亦野先輩をボコボコにした千里山の眼鏡……この人たちが弱くないことは知ってる……けど……それでも……! 
 私はテルみたいに強くならなくちゃいけないんだ……!! 誰が相手だろうと蹴散らす……あんな風に負けて泣くのは……もう二度とゴメンだよ……!!)ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ 

淡(さあ……この世の天国を見せてやる……!!)ゴゴゴゴゴ 

 淡配牌:二三①①⑦3東南西北白發中:ドラ⑦ 

 淡、通常なら九種九牌で流してもおかしくはない配牌ッ!! 

 しかし……配牌時に手にある字牌を引き寄せる淡にとって、七種全ての字牌が手の内にあるこの配牌は、自身が最も好きな役満への六向聴ッ!! 

 七巡目で必ず役満を和了れる……絶好の配牌ッ!!! 

淡(流すわけがないよね……!! ほら、これが天国への一段目だ……!!)ツモッ 

 淡、東、ツモッ! 

 打、三索ッ!! 

淡(あと……六段……!!)ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

503: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 00:08:40 ID:8swLi4Yz0
 一方、対面のまこ、この最終局面に来て、淡の放つ何かが膨れ上がるのを察知ッ! 

 それは、同じ魔物・宮永咲をチームメイトに持つまこにとって、馴染み深い感覚ッ!! 

まこ(とうとう来たのう。春……咲が西カンからの四暗刻を決めたときみたいな……あの感じじゃ。大星の支配っちゅうのが……一層強くなったような気がする。こりゃあ……鳴いても無意味じゃろうな……) 

 まこ、迷いなく三索を切り出した対面を見て、溜息。 

まこ(十中八九……例の役満じゃろな。別にわざわざ見せてくれんでも知っとるっちゅうんじゃ。大星淡――七種の字牌を支配する魔物……その魔物が引き寄せる七つの星――その全てを手に含んで和了れる役は……国士無双を除けば、ただ一つじゃ) 

 字一色七対子……またの名を――大七星ッ!!  

まこ(大星の配牌に七つの星が一つずつ揃ったとき……この魔物は必ず七巡目に大七星を和了る。役満ツモじゃと……点数状況的には前局安めに振り込んどったほうがマシじゃったろうか。 
 どうじゃろう……微妙なとこじゃな。しかし……まさか本当にこの半荘で大星が大七星のチャンスを掴むとはのう……) 

 まこ、思わず、苦笑。 

まこ(まあ……もちろん……そういうこともあるじゃろうと……削られながらも温存しとった甲斐が……あったってもんじゃ……!!) 

 まこ、脱、眼鏡ッ!! 

まこ(さあ……こっからが本番じゃあ……! わりゃあ字牌をごっそり集めるけぇ……わしゃあ大好きな染め手を一度も和了れんかった……! 
 そのせいで大分点は取られてしもうたが……最後くらいは一矢報いんとのう。七巡目で和了るつもり満々みたいじゃが……そうそう思い通りに大七星なんぞ和了らせんぞ……!!)ゴッ 

 まこ、本気モードッ!!

505: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 00:11:03 ID:8swLi4Yz0
 他方、フナQと薄墨初美は――! 

Q(えらいこっちゃ……大星がめっちゃ嬉しそうやん……これ絶対例のやつやろ……親っ被りとか死んでも食らわんで……!) 

初美(んー……まあ役満食らったら食らったで霞になんとかしてもらうですよー。もちろんできることはしますけどー……私のこの手じゃ厳しい感じですねー。魔物退治は清澄か千里山に任せるですよー) 

 二巡目。 

淡(南……とっ!)タンッ 

 淡、ツモ、南、打、三萬ッ! 

まこ(ありったけのイメージを引き出すんじゃ……! 千里山も薄墨も大星も全国の上位ランカー……牌譜は片っ端から並べた……! 三人とも……捨て牌のクセっちゅうのか……よく見せる顔がそれぞれにある……!! 
 それらを重ね合わせて……混ぜ合わせて……現状を把握……!! その上で……わしに都合のいい顔に歪ませるんじゃ……!!!)タンッ 

 順調に字牌の対子を連ねていく、魔物・大星淡ッ!! 

 イメージを繋ぎ合わせ、細い綱を渡るように一打一打それを追いかけるまこッ!! 

 場が動いたのは――五巡目ッ!! 

まこ「ほいじゃ……リーチじゃ!!」スチャ 

 まこ、大七星一向聴の淡に対し、意地の先制リーチッ!! 

 場の緊張が一気に高まる……!!

507: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 00:14:15 ID:8swLi4Yz0
Q(清澄がリーチ……!?  この半荘で二度目……成立したのは初めてのリーチが……このタイミング……! なんや秘策があるんかいな……!?) 

まこ(策やら意味やらあればいいんじゃろうけどのう……! こんなのはハッタリ……ただ役がないからリーチしただけじゃ……!!) 

淡(ふん……! 一丁前にテルと似たようなことしちゃって……!! いいさ……止められるもんなら止めてみろ……!! 
 私だって……あれから成長してないわけじゃない……テルが相手のときは……左端から切るなんて間抜けなことをして手牌を読まれた……けど……今の私は……もうあの頃の私とは違う……!!) 

初美「それカンですよー!」 

Q・まこ・淡(!!!?) 

初美(ま、カン自体に意味はないんですけどねー……こんな鳴きで大星淡の大七星を止められるなんて思ってはいないですよー。 
 ただ……大星がどうとか清澄がどうとかそういうことじゃなくてですねー……私の個人的なプライドってやつですかー……このまま役満を和了っただけの三年みたいに思われるのは嫌ですからねー……一応私なりに三年生の威厳ってやつを見せとくですよー……!)タンッ 

まこ(今のカンはまったく予想できんかったの……っちゅうか……なんのつもりかと思ったらそういうことか……薄墨初美……なんじゃ……見た目通り子供みたいなやつじゃの……カンドラのこととか何も考えとらん……どんだけ負けず嫌いなんじゃ……) 

Q「(わけわからへん……! けど……とりあえずカンドラいただきや……!)……それ、ポンやっ!」タンッ 

まこ(おっと……ツモ飛ばされてもうたのう……) 

初美(千里山……この大星と清澄の一騎打ちみたいな状況で貪欲にカンドラを鳴いてくる……その図太さだけは魔物級ですねー) 

 そして……淡に六度目のツモが回ってくる……!!

511: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 00:18:56 ID:8swLi4Yz0
淡「リーチだのカンだのポンだの……さっきから煩いなぁ……!」ゴゴゴゴゴゴゴゴ 

 淡手牌:①東東南南西西北北發發白中:ツモ中:ドラ⑦・五 

淡「そんなことで私を止められると思ってるの……?」 

初美(思ってませんよー) 

Q(ちょっとやけど思っとる) 

まこ「もちろん……止めるつもりじゃあ……!!」 

淡「あっそう……! 止まらないけどね――!!」タンッ 

 淡、打、一筒ッ!! 

淡「清澄……約束通りあと一巡で見せてあげるよ。私の一番好きな役満をね……!」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

513: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 00:26:14 ID:8swLi4Yz0
まこ「ほうか……そりゃあ……残念じゃが、また次の機会にしてくれんか?」 

淡「……はぁ?」 

まこ「大星淡……わりゃあ強い。能力もそうじゃし、打ち方の柔軟さも、打牌のセンスも……ピカ一じゃと思う」 

淡「そうだよ……私は最強なんだから」 

まこ「じゃが……強過ぎることが弱点になることを……わりゃあまだ知らんようじゃのう……」 

淡「なに言ってんの……?」 

まこ「その捨て牌……三索、三萬、二萬、ドラの七筒に……一筒」 

淡「そうだよ。見ればわかる」 

まこ「わりゃあ強い……何が強いって……必ず字牌が寄ってくる己の能力を決して過信せんのが強い。白糸台でよう鍛えられとるんじゃろうな。わりゃあいつだって……万が一何かの不都合があったときに対応できるよう……きっちり保険をかけて捨て牌を選んどる。 
 それはこの半荘ずっとそうじゃった。例えば最初の東一局。わりゃあ染め手を狙いつつ……ドラをぎりぎりまで抱えとった。ドラを手に残しておいたほうが何かと応用が利いていいと思ったんじゃろう。じゃが……そういう周到さが……今回はアダになったのう……」 

淡「何が……言いたいの……?」 

まこ「その……使い勝手のいいドラよりも後に残した一筒……そりゃあ配牌のときに対子じゃったんじゃろ……? もしも他家が速そうなとき……字牌を捨てて一巡早く七対子混一混老頭を和了れるように最後まで取っておいたんじゃろ……? 違うか……?」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ 

 淡、動揺ッ!!! 

淡「そ……んな……!? でも……一筒は――!!?」

515: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 00:28:16 ID:8swLi4Yz0
まこ「ほうじゃな。千里山が二巡目に一枚捨てていて……しかも薄墨の二筒カンが壁になっとるから……完全に地獄単騎じゃのう……」 

淡「地獄単騎って……そんな……それは清澄の中堅の得意技……!!」 

まこ「安心せえ……久の悪待ちと違うて……わしの地獄単騎じゃどうせ裏も乗らん……!!」 

 まこ、手牌を倒すッ!! 

まこ「ロンじゃ……ッ!! リーのみ……裏乗らず……!! 1300は1600じゃ!!」ゴッ 

淡「う……嘘だよっ……!!? 私の七星が……そんな……!!!?」プルプル 

まこ「そういうこともあるのが麻雀じゃ。初心者相手に役満の親っ被りを食らったりの……勝負なんてままならんことばかりじゃて」 

 勝負を終え、まこ、眼鏡を掛けなおす。 

 クリアになった視界で真っ先に見えたのが、顔を真っ赤にして震えている大星淡の姿。 

淡「う……ううう…………!」ウルウル 

まこ「え……? ど、どうしたんじゃ……?」アセアセ 

 淡、堰、決壊ッ!! 

淡「うう……うわあああああああああああん!!」ボロボロ

516: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 00:30:10 ID:8swLi4Yz0
まこ(えええー!? 泣きよった!?) 

Q(いきなりどないしたん……!?) 

初美(びっくりですよー……!) 

 淡、目に涙を溜めて、しゃくり上げながら三人を睨みつける。 

淡「みんな……みんなして私を狙い撃って……ひっく……雑魚のくせに……!! でもでもっ! それでもトップは……ひっく……私だもんね……!! ザマーみろっ!! くや……悔しくなんか……ないもんっ!!!」ダッ 

 淡、逃走ッ!! 

 対局室に残された三人、バツが悪そうな顔で互いを見やる。 

まこ「ま、お疲れじゃ」 

Q「お疲れさんですわ」 

初美「お疲れですよー」 

まこ・Q・初美「………………(なんか気まずいっ!!)」 

 次鋒戦前半、微妙な空気のまま……終了ッ!! 

<結果> 
一位:大星淡+8600(106500) 
二位:薄墨初美+7000(101600) 
三位:船久保浩子-4800(105100) 
四位:染谷まこ-10800(86800)

521: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 00:33:16 ID:8swLi4Yz0
@会場某所 

 トップを取ったものの、自分の目指す麻雀とは程遠い結果に、泣きながら会場をさ迷う、魔物・大星淡。 

淡(うう……大七星が和了れなかったよ……数え役満なんて食らっちゃったよ……字牌単騎に二度も振り込んじゃったよ……ううううう……!!)フラフラ 

 大星淡、純粋得点、62200点ッ! 

 純粋失点、53600点ッ!! 

淡(こんなんじゃ……何も変わってない……!! 白糸台に入ったときから全然進歩ない……こんな弱っちい私なんかじゃ……テルに笑われちゃう……!!)ポロポロ 

 敬愛する先輩の普段はあまり笑わない顔を思い出して、更に涙がこみ上げる。 

 と、そこへ――。

525: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 00:34:48 ID:8swLi4Yz0
照「淡……」 

淡「えっ……? テルー……?」 

 廊下の角から紙袋を片手に現れる、宮永照。更に後方から、 

菫「なんだ……こんなところにいたのか」 

淡「菫先輩……」 

 実況室から駆けつけた弘世菫。続いて、 

尭深「…………」 

淡「尭深先輩……」 

 二年選抜の控え室を抜け出してきた渋谷尭深。ついでに、 

誠子「お疲れサマ」 

淡「選抜漏れした亦野先輩……」 

誠子「頬っぺたつねってやろうかお前」 

 観戦室から走ってきた亦野が合流し、全員集合する白糸台レギュラー陣。

531: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 00:39:30 ID:8swLi4Yz0
淡「どうして……みんな……私が負けたから……?」 

誠子「いや……どう見ても勝ってただろ」 

菫「くれぐれも他校の皆さんの前ではそういうこと言うなよ」 

淡「じゃあ……なんで……?」 

尭深「……心配した……」 

誠子「そうそう。様子見に来ただけ」 

菫「後輩が泣いてるんだ。駆けつけない先輩がどこにいる」 

淡「……よけーなお世話……」 

誠子「弘世先輩、こいつやっぱシメていいっスか?」 

菫「ああ、構わん」 

淡「えええー!? 暴力反対っ!! 麻雀で私に敵わないからって!!」 

誠子「なんか言ったかー!? お前の弱点は知ってるんだぞー? 脇腹だろー……? ここが弱いんだろー!!?」モミモミ 

淡「ちょっ……!! もうううう……いやあああああ……!!」ジタバタ 

 じゃれ合う淡、誠子。傍観する菫、尭深。チームメイトに囲まれて、笑顔を取り戻しつつある、淡。 

 そんな淡に声を掛ける、宮永照。

533: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 00:41:05 ID:8swLi4Yz0
照「淡……」 

淡「ん……なに?」 

 振り返った淡の頭に、優しく手を乗せる、照。 

照「あのね……淡」 

淡「うん……」 

照「淡は、私じゃない。私の真似は……しなくていいから……」 

 淡、俯いて、唇を噛む。  

淡「で、でも……! テルは私の目標だから……! 私もテルみたいに強くなりたい……! テルと同じ場所で麻雀をしてみたい……!!」 

 淡、恐る恐る、上目遣いに照の顔を伺う。 

淡「それも……ダメ……?」 

 照、なるべく柔らかい表情で、首を振る。  

照「もちろんダメじゃない。でも、淡には、淡らしく、淡のままで強くなってほしい。私のことを目指しても私には届かないし、私を超えることだって……できないよ?」 

 淡の目が、きゅうっと小さくなる。 

淡「照を……超える……?」

534: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 00:42:57 ID:8swLi4Yz0
照「うん……目標にしてくれるのは嬉しい。けど……私みたいに強くなりたいって……それじゃ私には勝てないんじゃないかな。私に勝てない人に白糸台は任せられないなぁ……なんて……ハハハ……」 

 照、らしくないことを言っているせいか、若干うまく笑えていない。 

照「とにかく……淡は私にないものいっぱい持ってるから。淡は淡の麻雀を打って……それで来年……全国で……団体戦でも個人戦でも一位になってみせて。それだったら……私の持ってる個人戦の優勝カップ……安心して……淡に渡せる……」 

淡「…………うんっ!! 頑張るっ!!!」 

照「よかった。じゃあ……指切り」 

 小指と小指を絡める、淡と照。それを微笑ましく見守る、菫、尭深、誠子。 

淡「ところでテルー、その紙袋はなに?」 

照「ああ……これ。小走さんの持ってきた大仏サブレと、加治木さんのリンゴクッキーと、末原さんのたこ焼きせんべい。美味しかったから……頑張った淡にあげようと思って」 

淡「わあああ!!? いいの!? やったー!!!」 

 全国屈指の魔物・大星淡。 

 しかしてその実体は、チームで唯一の、一年生レギュラー。 

 対局が終われば、その姿はどこの高校にでもいる、平凡な麻雀部員と変わりない。 

 良き先輩たちに愛されて、甘やかされて、あやされて。 

 すくすくと、ひたむきに天頂を目指すのだった。

536: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 00:44:58 ID:8swLi4Yz0
@会場某所 

かじゅ「お疲れ」 

まこ「ほうじゃな……最後までえろう疲れたわ」 

かじゅ「まあ……相手が相手だったからな」 

まこ「すまんの、大分削られてしもうた」 

かじゅ「すぐに取り返す――と言いたいところだが、あいにくこちらも余裕はない」 

まこ「じゃが、あんたなら消える後輩が見えるんじゃろ? その分だけマシじゃろうて」 

かじゅ「いや……どうだかな」 

まこ「ん?」 

かじゅ「いつもならぼんやりと見えている……というより見せてくるのだが……今日はそうではないようだ。同じ会場にいるのにまだ挨拶も交わしていない。特別観戦室にも来なかったしな。 
 チームが別々である以上、馴れ合うつもりはない……ということなのだろうか。なんにせよ……いつものようにはいかないだろう」 

まこ「弱気じゃのう。ま、あんたのおかげで混成チームはここまで来れたけえ、どういう結果だろうと誰も文句は言わん。好きなように打ってくれりゃええ」 

かじゅ「そんな風に言ってもらえると気が楽だよ。そうだな。せっかくの機会だ。全国レベルの麻雀を肌で感じてくるとしよう」 

まこ「おう、その意気じゃあ!」 

かじゅ「うむ……行ってくる!」

538: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 00:46:16 ID:8swLi4Yz0
@会場某所 

霞「お疲れ様。随分苦戦したみたいね」 

初美「字牌使いにあと一歩届かなかったですねー。後は任せるですよー」 

霞「そうねぇ……さすがに次鋒戦で守ってばかりじゃ、みんなに怒られちゃうかしら」 

初美「頼んだですよー。二年選抜はまだ姫様を温存してるんですからねー。こないだ天江衣と龍門渕透華がうちで暴れたせいで……今日の姫様は最高にヤバい状態ですー。取れるときに取っておかないとですよー」 

霞「ええ。姫様ったら、この次鋒戦が始まったときに一度寝に入ったみたいだから……きっと対局のときには二度寝状態になるでしょうしね」 

初美「よろしくですよー」 

霞「ふふ。苦手分野、いかせてもらうわ」 

初美(めちゃめちゃ楽しそうですよー……本当に苦手なんですかねー?)

539: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 00:47:27 ID:8swLi4Yz0
@会場某所 

絹恵「お疲れ~」 

Q「ごっつい疲れたでー。絹ちゃんもガンバってなー」 

絹恵「ハハ……まあできるだけやってみるわ」 

Q「なんや、絹ちゃんは洋ちゃんと違うて謙虚やなぁ。うちらの仲やん。隠さんで教えてな。なんや、秘策があるんちゃう?」 

絹恵「ええっ!? なんでわかったん!?」 

Q「長い付き合いやからな。で、何を狙っとん?」 

絹恵「そんなん見てのお楽しみや。別に秘策とか、必殺技とか、そんなんやないし、期待せんといて。うちは浩ちゃんみたいに上手くできる自信ないしな」 

Q「なんやーやる前から言い訳並べてたら勝てるもんも勝てへんで。洋ちゃんも見てるやろから、気張ってなー!」 

絹恵「おねーちゃん…………せやなっ!」

540: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 00:49:08 ID:8swLi4Yz0
@会場某所 

 チームメンバー同士、激励を交わして対局に臨む面々。 

 そんな中、一年選抜・東横桃子は、一人、集中を高めていた。 

モモ(先輩……先輩は……私がほしいって言ってくれたっすよね。あれは……どういう意味だったっすか……? 団体戦のメンバーがほしかったっすか……? 強い仲間がほしかったっすか……? 誰でも……よかったっすか……?) 

 インターハイ決勝を終え、引退するかに思えた、加治木ゆみ。 

 しかし、その決勝での打ち回しや、後の四校合同合宿において、かじゅはその力を認められ、少しずつモモを――鶴賀の枠を飛び出して麻雀をするようになった。 

 今回の対抗戦も、モモや香織の敵として、混成チームを率いている。 

 その中には、宮永照を筆頭に、全国のトップランカーがちらほらと。 

 憧れの先輩がどんどん遠くにいってしまいそうで、モモは、不安だった。

542: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 00:51:39 ID:8swLi4Yz0
モモ(私は先輩の特別なんだって……何があってもそれは変わらないんだって……ずっと思ってたっす。でも……それは私の勘違いだったんすね。先輩はもう……インターハイ決勝の頃の……鶴賀を引っ張っていた先輩とは違う。 
 あのときは……先輩にとって鶴賀が全てだったっすけど……今の先輩の周りにはたくさんの人がいる。私たちだけが知っていた先輩のすごさが……みんなに認められるようになった。それは嬉しいことっすけど……それ以上に……寂しいっす……) 

モモ(私はこれからも……先輩の傍にいたいっす。先輩と一緒に麻雀を打っていたいっす。先輩が……全国レベルの人たちや……プロの人たちと麻雀を打つようになっても……先輩の特別だけは誰にも譲りたくないっす。 
 私はいつまでも……共に戦う仲間として……先輩に『ほしい』って言われていたいっす。でも……きっと今のままの私じゃ……宮永照みたいな強い人たちに囲まれた先輩に……前みたいに見つけてもらえるかどうか……わからないっすよね……) 

モモ(だから……私は今日先輩に勝つっすよ……! 先輩だけじゃない……全国の強い人が相手でもトップを取るっす……! 
 同じ学校の後輩だからじゃなくて……他にメンバーがいないからじゃなくて……私だから『ほしい』って言ってもらえるような……そんな強い私に……なってみせるっす……!!) 

モモ(先輩……見ていてください……! 世界中の誰にも見つけてもらえなくていい……先輩にだけはずっと見ていてもらえるような……そんな私に……私はなってみせるっす……! そして……堂々と……先輩の前に立ってみせるっす……!!) 

モモ(そのときは……また……初めて会ったときみたいに……私を求めてくれるっすよね……先輩……?) 

 ステルスモモ、かじゅへの熱い思いを胸に、人知れず発進ッ!!

543: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 00:54:31 ID:8swLi4Yz0
@実況室 

すばら「おっと、弘世さん、お帰りなさいですっ!!」 

菫「お待たせしました」 

純「ったく、大星が泣き出した途端に走って出ていくとは、なんだかんだ言って後輩想いのいい先輩じゃねえか」 

菫「三年として、一年の面倒を見ないわけにはいかないってだけですよ。まあそれに、あんなんでもうちの大事な次期エース候補ですからね」 

初瀬「先輩後輩といえば、この次鋒戦後半、長野の鶴賀学園同士の対決が見られますね」 

すばら「三年の加治木選手と、一年の東横選手ですねっ!!」 

純「長野の個人戦を見る限りだと、加治木のほうが一枚上手って感じがするけどな」 

菫「対決……或いは、協力も可能ですよね。この対抗戦、今後も同じ高校の選手同士が重なることが出てくるでしょうが、その最初の例として、この二人がどういう戦い方をするのか、興味深いところです」 

すばら「さあ!! 場決めも終わり、各選手席に着きましたっ!! 次鋒戦後半……スタートですっ!!」

544: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 00:56:18 ID:8swLi4Yz0
@対局室 

東家:愛宕絹恵(二年選抜・姫松) 

絹恵「(鶴賀の二人はあんまりデータがあらへんかったけど……さすがに宮永咲や天江衣レベルってことはないやろ。とりあえず……当面のうちの敵は永水のおっぱいお化けや)よろしくです」 

西家:加治木ゆみ(混成チーム・鶴賀学園) 

かじゅ「(姫松の愛宕絹恵、永水の石戸霞……どちらも清澄と戦ったところを見ていた。 
 そのとき……私ならどう打つか……色々と戦略は立ててみたが、まさかこういう形で対局することになるとはな。あとは何より……モモのことが気になる……)よろしく」 

南家:東横桃子(一年選抜・鶴賀学園) 

モモ「(先輩……こうやって真っ向から敵として戦うのは……初めてかもしれないっすね。私……先輩に見てもらえるよう……最初から飛ばしていくっすよ……!!)よろしくっす」 

北家:石戸霞(三年選抜・永水女子) 

霞「(長野のお二人は……清澄や龍門渕の方々ほど異彩な感じはしないけれど……一筋縄ではいかなそうね。姫松さんのほうも……初美相手にしっかり打っていた人だし、要注意と。まあ……できることをやりましょう)よろしくお願いします」 

 次鋒戦後半――開始ッ!!!

546: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 01:01:02 ID:8swLi4Yz0
>>1です。三時には眠れたらいいなと思っています。まだ半分も終わってませんが、それまでどうぞお付き合いください。

547: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 01:01:19 ID:8swLi4Yz0
東一局・親:絹恵 

絹恵(浩ちゃんの言う通りや……やる前から弱気やったら……勝てるもんも勝てへん)タンッ 

絹恵(今日のうちのターゲットは決まっとる……永水の石戸霞……末原先輩がてこずった……一色独占のおっぱいお化け……)タンッ 

絹恵(おねーちゃんに認めてもらうには……麻雀で強くならへんとあかん。麻雀で勝たなあかんねん。言うても……さすがにおねーちゃんと戦うことになったらどうしようかと思うてたけど……この石戸霞ならちょうどええわ。 
 全国でもトップクラスの化け物……あの末原先輩が……おねーちゃんに認められてる末原先輩が……苦労してやっつけた魔物を……うちが倒す……!)タンッ 

絹恵(あのインターハイのあと……石戸霞や姉帯豊音の研究は末原先輩と一緒にやった……その成果を……今日は見せたるで……)タンッ 

絹恵(テンパイ……石戸霞……まだ動いてくる気配はない感じやな……なら……この親で稼がせてもらうで……!!) 

絹恵「リーチやっ!」 

 愛宕絹恵、打倒・石戸霞に向けて強気のリーチッ! 

 姉に認められたい――その思いを、一打に込める!! 

 しかし、本人の思惑とは裏腹に、控え室で見守る愛宕洋榎や末原恭子からは、絹恵のリーチはあまりに不用意に映った。 

 なぜなら、既に二巡前に下家がリーチをかけていて、絹恵はまるでそれが見えていないかのように、明らかな危険牌でリーチを放ったのだから……!!

550: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 01:04:30 ID:8swLi4Yz0
モモ「いいんすか……それ、ドラっすよ?」ユラッ 

 ゆらり……と影がその姿を現す――!! 

絹恵(え……!? なんや……これ……どういうことや……!?) 

 気付けば、絹恵の目に、初めて下家の捨て牌が見える。否、露になったのは、捨て牌だけでなく……!! 

モモ「ロンっす……リーピンドラ一……3900っす」 

 絹恵、動揺ッ!! 

絹恵「ちょ……! 嘘やろ……あんた、リーチ宣言はっ!?」 

モモ「したっすよ」 

絹恵「そんな……」 

 絹恵、混乱ッ!! 

絹恵(わ……わけがわからへん……! リーチしたとか絶対嘘やろ……いや……やけど嘘やったら審判が止めるか……? 
 いやいや……落ち着け、うち。仮にこいつが言う通りにリーチ宣言してたとしてや……うちの耳がそれを聞き逃したんだとしてや……それにしたって捨て牌が曲がれば……リー棒が見えれば……なんぼなんでもリーチには気付くはずや。 
 やのに……こいつの捨て牌は……今の今までずっと見えへんかった。それとも……見てへんかった……? いや……まさか……見られへんのか……? これからずっと……?) 

 絹恵、今一度、対戦者の情報を記憶の底から引っ張り出す。 

 長野・鶴賀学園・東横桃子。 

 奇しくもモモもまた、絹恵と同じ副将で――。

552: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 01:07:18 ID:8swLi4Yz0
絹恵(せや……! こいつ……どっかで見た顔や思うたら……長野の県大会で原村に勝っとったやつやん……! 
 あのときは原村視点で見とったから……別になんも気にならへんかったけど……言われてみれば龍門渕のが何度か今みたいな不用意な振り込みをしとった……! こういうことやったんか……? 
 けど……龍門渕が初めて振り込んだんは前半の終了間際やなかったっけ……? 序盤はこいつがリーチしてもみんなきちっとオリとったはずや……) 

 動揺を隠せないのは、何も絹恵だけではなかった。 

霞(全国には色んな人がいるのねぇ。大抵の不思議能力は……例えば清澄の宮永さんや遠野の姉帯さん……或いは初美のように……どちらかと言うと『場』に対して働きかけるパターンが多い。 
 対してこの一年生は……本人の特性が他者――『人』に対して働きかける。こういうのは……ツモをズラすとか……麻雀のルールの中でどうにか対応できるようなタイプの力じゃない。 
 昼間の空に浮かぶ月のように……暗闇で読む本のように……見えないものは見えない。よほど特殊な状況にならなければ……最後まで見破ることはできないでしょうね) 

かじゅ(驚いた……モモのやつ……いつの間にこんな消えるのが上手くなっていたんだ? 半荘一回だけなら私が有利と思ったが……これでは全く逆じゃないか。 
 信じ難い……普段のモモを知っていて……特に警戒していた私ですらこの東一局から見えないなんて……姫松や永水は当然見えていないだろう。モモのやつめ……一体何をした……?) 

絹恵(くっ……! うちは石戸霞を倒さなあかんっちゅうのに……こないな無名校の一年なんかにやられとったら……おねーちゃんに笑われてまう……! なんとか……なんとかせな……!!) 

モモ「さあ……これで私の親番っすね……!」ユラッ 

モ:110400 絹:101200 霞:101600 ゆ:86800

553: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 01:10:35 ID:8swLi4Yz0
東二局・親:モモ 

モモ(甘いっすよ……先輩。先輩に見つけてもらって……ありのままの私で戦っていた県大会のときとは違うんす)タンッ 

モモ(あの決勝で……清澄のおっぱいさんみたいに私が見える人もいるんだってことがわかった。 
 私は調べたっす……どうして清澄のおっぱいさんには私が見えたのか。四校合宿のときにそれとなく探ってみたら……おっぱいさんは『リアルの情報に惑わされない訓練』をしたっていうじゃないっすか。 
 リアルの情報に惑わされなければ……私のステルスは通じない。それはつまり……リアルの情報を断ち切ることができない人間には……私のステルスは見破れないってことっす……!)タンッ 

モモ(そして……リアルの情報を完全に断ち切れる人間なんて普通はいない。なら……一体周囲が私の何に惑わされているのか……それがわかれば……私はもっとうまく消えられるようになる。私のステルスには……まだまだ上があるって気付いたっす……!)タンッ 

モモ(影が薄いっていう特性だけを武器にしていた以前とは違うっす。街に出たり……先輩たちと打ったりする中で……私は私のステルスを……才能を……磨いたっす。それはもうただの才能じゃない……技術っす……! 
 技術は……訓練を積むことで……どこまでも進化する……!!)タンッ 

モモ(私が白糸台の大星淡と組んだのも……私のステルスを序盤から発動させるための布石っす……あんな目立つやつがさっきまでここで暴れていた……その光はあまりに強い……私の存在が掻き消されてしまうほどに……)タンッ 

モモ(さあ……先輩……! 先輩にも見せたことのなかった進化版ステルス……止められるものなら止めてみるっす……!!) 

モモ「……リーチっす……」スチャ 

 モモ、誰にも悟られることなく二度目の先制リーチッ! 

 その迷彩を見破れる者は……場に一人もいないッ!!

556: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 01:12:15 ID:8swLi4Yz0
絹恵(なんやこれ……ホンマに見られへん……! 目を凝らそうとしても……どうしても意識が逸れてまう。もう十巡目やけど……もしかしてまたリーチしとるん……?)タンッ 

かじゅ(練習のときでも何度か完全にモモを見失うことがあったが……未だに慣れないな。かと言って……後手に回ると手がつけられなくなる……どうにかしなければ……)タンッ 

霞(困ったわね……他家の捨て牌と……そこから予想できる手牌……それらを総合すれば消去法である程度鶴賀の子の手は推測がつくけれど……所詮は気休め程度。 
 攻撃モードに入れば捨て牌が見えようと見えまいと関係なくなるけれど……まだ半荘は始まったばかり……もう少しだけ様子を見ましょう……)タンッ 

 三巡後 

モモ「ロンっす……リータンピン……裏はなし。5800っす」 

霞(あらあら……上家が三筒だったから……スジで六筒と思ったけれど……こんなことなら九筒対子を先に崩せばよかったかしら……それなら2900で済んだのにね……) 

絹恵(防御が得意な石戸霞が振り込んだ……!? じゃあ……石戸にも見えてへんのか……なんちゅう一年やねん……鶴賀……東横桃子……!!) 

かじゅ(永水も姫松もやはり見えていないか……これは……ますます私が突破口を開かなければ……) 

モモ「……一本場っす……!」ユラッ 

モ:116200 絹:101200 霞:95800 ゆ:86800

557: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 01:14:31 ID:8swLi4Yz0
@実況室 

すばら「一年選抜・東横選手ッ! 開始早々の二連荘で一気にトップに立ちましたあああ!!」 

初瀬「なんだか他家が東横選手のリーチに対してあまりに無警戒に振り込んでいるように見えますが……一体何が起こっているんでしょう……」 

菫「まさかとは思うが……他家には東横選手のリーチが見えてないのか……?」 

純「ご明察。聞いた話だが、リーチはおろか、捨て牌もまったく見えなくなるそうだぜ。ただ……オレの聞いた話じゃ、対局の序盤は普通に見えるってことだったんだが……どうやらそうじゃねえらしいな。あいつ……県大会のときから進化してやがる」 

初瀬「捨て牌が見えないって……そんなの麻雀として成立しませんよ」 

純「だが、別にあいつはルール違反をしているわけじゃねえ。こうやってビデオ越しに見る分には、ただ他家が不用意な振り込みをしているなぁとしか思わねえだろ?」 

菫「捨て牌ごと存在を消す能力ですか……一見使い勝手がよさそうですが……使いこなすのは大変そうな気がしますね。 
 私のプレイスタイル的には欲しい能力ではありますが……例えば、清澄の竹井選手のように、捨て牌を見せることで相手を混乱させる打ち方を好む人にとっては、むしろマイナスに作用するかもしれません」 

純「だな。少なくとも、場を荒らしたいオレには向いてねえ能力だ。初瀬ちゃんはどうだ?」 

初瀬「私は……持て余す気がしますね。というか……もしそんな能力を使いこなせるんだったら……普通に打っても十分に強いんじゃないですか?」

558: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 01:19:32 ID:8swLi4Yz0
@対局室 

東二局一本場・親:モモ 

かじゅ(モモ……全国区の上級生を手玉に取るとは……大したものだ……)タンッ 

かじゅ(本来……ステルスそのものは……捨て牌が見えなくなるというインパクトほど……実際の勝負では脅威にはならない。 
 なぜなら……モモはステルスと引き換えに……鳴けないというハンデを負っている。ステルスを維持するためには……その特性上……門前で手を進めなければならない。 
 となると……鳴きを駆使して自由に打ち回せる他家のほうが……有利と言えば有利……)タンッ 

かじゅ(ただ……モモのテンパイ速度は……私よりもずっと速い。鳴けないハンデを背負ってもなお……デジタル最強の原村和と渡り合えるほどのスピードをモモは持っている。 
 その力だけでも十分にモモは全国区なんだ……ステルスとは何も消えるだけの戦闘機じゃない……機体の性能自体が……そもそも優れている。だからこそ……ステルスという特性が最大限に発揮される……)タンッ 

かじゅ(モモに惚れ込んだのは私だ。モモの強さは私がよく知っている。今更驚くようなことではない……モモなら……たとえ相手が全国五指の強豪・姫松でも……シード校の永水でも……十分に通用すると思っていた……)タンッ 

かじゅ(いいだろう……モモ。モモがモモの麻雀を全力で打つというのなら……私もそれに応えよう……!)タンッ

559: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 01:21:53 ID:8swLi4Yz0
 十一巡目 

絹恵(そろそろまたヤバいんちゃうか……? ちゅうか……こんな捨て牌の見えへんやつがおったら……フリテンが恐くておちおちリーチも掛けられへんやん……)タンッ 

モモ「(姫松の眼鏡さんと永水の超おっぱいさんはまだ私のステルスに対応できてないみたいっすね……悪いっすけど……その隙は見逃せないっすよ……!)……リーチっす……」スチャ 

かじゅ(モモの平均テンパイ速度を考えると……リーチがかかるとしたらそろそろか……先にツモってしまいたかったが……それもできそうにない。なら……やり方を変えるまで……!)タンッ 

霞(消える力……いくつか対策は思いつくけれど……一番簡単なのはツモってしまうことよね。他には……例えば、和了らせないこと……とか)タンッ 

かじゅ「ポン」タンッ 

モモ(先輩が動いた……何をしてくるつもりっすか……?) 

霞(さすがチームメイト……よく心得ているわね……そう……それも一つの手。そうね……これはいかが?)タンッ 

かじゅ(む……惜しいな) 

絹恵(永水が妙なところを切り出してきよったな……それにさっきの鶴賀の三年生のポン……はあ……なるほど……確かにそういう潰し方もアリやんな。いつまでも親で連荘されたら敵わん……そういうことなら……ここはあんたに任せるで……!)タンッ 

かじゅ「ポンだ……!」タンッ 

モモ(先輩……! まさか私にツモを回さないつもりっすか……!? 
 というか……永水の超おっぱいさんも姫松の眼鏡さんも……今わざと生牌を手から出したように見えたっすけど……さっきの先輩のポンを見ただけでもう合わせてきたってことっすか……? いくらなんでも空気読め過ぎっす……!) 

かじゅ(姫松も永水もこちらの意図を一瞬で理解してきた……驚異的な対応力だ。これが全国レベル……面白い……!)

561: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 01:23:05 ID:8swLi4Yz0
霞(さて……この辺りかしらね……)タンッ 

かじゅ「ロン……断ヤオ赤一、2000は2300」パラララ 

霞「……はい」チャ 

モモ(私の親がたった二回で流された……!? 三人とも私が見えていないはずなのに……先輩以外は初めての対局のはずなのに……もうステルス対策を練られている……!? 手強いどころのレベルじゃないっすね……上等っす……!!) 

かじゅ(的確な差し込み……有難いことだ。しかし……永水の石戸霞か……これは後が恐いな) 

霞(鶴賀さん……今回は特別よ。もちろん……この点棒は後できっちり返してもらうわ) 

絹恵(ひとまず親は流れたな……今ので少しヒントはもろた。見えへんもんはもう見えへんってことでええ……それならそれで戦いようはあるで……) 

モ:115200 絹:101200 霞:93500 ゆ:90100

563: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 01:26:21 ID:8swLi4Yz0
東三局・親:かじゅ 

霞(存在を消す力……それは便利そうだけれど……存在を消すということは……場から自分だけが切り離されるということ……つまり……少なくともテンパイまでは独力で手を進めないといけない……それははっきりとしたデメリットだわ)タンッ 

絹恵(消えとるほうは鳴きを入れられへんみたいやな……そんでもって……消えられとるほうはフリテンを警戒せなあかん。手牌にもよるやろうけど……待ちが多くてツモれる確率が高いんやったら……若干うちらのほうに分がある……)タンッ 

霞「ポン」タンッ 

絹恵(永水が仕掛けてきよったか。ここはうちも攻めるで……石戸霞は恐らく安手……多少の無茶は通せる……!)タンッ 

モモ(永水の超おっぱいさん……先輩みたいに私のツモを飛ばすつもりっすか……?)タンッ 

かじゅ(さっき協力させておいてなんだが……親は私……この場は譲れない……)タンッ 

霞「チー」タンッ 

かじゅ(チー……? となると……モモのツモを飛ばしに来てるわけじゃないようだな。狙いは……早和了りか……!!) 

絹恵「それ、チーや!」タンッ 

モモ(眼鏡さんも鳴いてきたっすか。早々にツモる気満々って感じっすね。確かに……さくさく鳴いて場を進められると……門前の私にはきついっす……)タンッ

564: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 01:28:00 ID:8swLi4Yz0
かじゅ(永水と姫松の早和了りについていくのは……上家がモモの私では難しいか。さっきの和了りでステルス対策のヒントを与えてしまったようだな……できれば……親っ被りにしても安めであってくれ……!)タンッ 

霞「あら……ツモだわ。断ヤオ赤二……1000・2000いただきます」パララ 

絹恵(しもたぁ……! 先越された……! ほぼ原点やし!! もうさっきからええとこナシやん!) 

かじゅ(ひとまず差し込み分を取り戻した、って感じの和了りに見えるな。他家を利用したり自ら和了ったり……このあたりのバランス感覚はさすがとしか言いようがない) 

モモ(何もさせてもらえなかったっすね。こういう風に打ち回されるのは……県大会ではなかったことっす。たまに練習で先輩が色々試してくるくらい。 
 この人たちは……私のステルスに対してもう対応し始めている……全国の壁はなかなか厚そうっすね……!) 

モ:114200 絹:100200 霞:97500 ゆ:88100

612: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 09:10:55 ID:yLD4VRRD0
東四局・親:霞 

かじゅ(永水も姫松も……ツモ狙いということだろうか。確かに、常にフリテンの危険が伴うモモ相手では……それが最も無難な対策だ。 
 しかし、ツモばかりでは……よほどの火力がなければモモのリードを削ることはできない。ここは……やはりモモから直撃を取りたいところ……)タンッ 

かじゅ(だが……私は原村和とは違う。デジタルの化身ではない……どちらかと言えばアナログ派だ。そんな私がどうやってステルス状態のモモから直撃を取るのか……ヒントは……個人戦でモモから鳴いてみせたという……魔物・宮永咲だ……)タンッ 

かじゅ(どういう理屈でモモのステルスを見破ったのかは知らないが……宮永咲はモモの出した槓材だけは見えたのだという……いかにも嶺上使いのやりそうなことだ。 
 無理矢理理屈をつけるなら……宮永咲にとって槓材は場で最も目に付く存在……その光がモモのマイナスの気配よりも勝ったから……見ることができたのだろう。モモのステルスだって完璧じゃない。どんなに影で覆い隠そうと……強い光は僅かな隙間から漏れてしまうものだ。 
 宮永咲にとって槓材は光……つまるところ……『ほしい』牌だったってことだ)タンッ 

かじゅ(どうやら……他の二人はステルスを見破ることを端から諦めているようだ。モモをいないものとして……出和了りにはフリテンの危険性が伴う……終盤になればいつ和了られるかわからない……。 
 そういう縛り……システムなのだと捉え……その中でどう打てば点を稼げるかを模索しているように思える……)タンッ

613: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 09:13:26 ID:yLD4VRRD0
かじゅ(もちろん……それが現実的で堅実的な戦い方だ。彼女たちは……そういう縛りの中でさえ……モモを上回れる自信があるのだろう。しかし……さすがに私には……ツモだけで他家を押さえ込めるほどの力はない。 
 ならば……モモから直撃を取る以外に……私に活路はない……)タンッ 

かじゅ(モモ……少しずつだが……こうして打っているうちにお前の気持ちは伝わってきたよ。モモは勝ちたいのだな。私だけじゃない……全国区の猛者相手に勝って……その成長した力を私に見せたいのだな。 
 そうすれば……そうしなければ……私の傍にいられない……そんなことを考えているのだろう。確かに……最近はモモの相手ばかりというわけにはいかなかったからな……寂しい思いをさせて……すまなかった……)タンッ 

かじゅ(モモの気持ちは受け取った……今度は私の気持ちを見せる番だ。モモ……お前は……私がお前から離れていくように感じたのかもしれないが……それで寂しかったのかもしれないが……私だって……寂しかったんだぞ……! 
 今こうして……ちゃんとお前と打てて……私はとても満たされている……! 私はやっぱり……お前が欲しいよ……モモ……!!)タンッ 

かじゅ(モモ……私はお前をいないものとして扱ったりはしない……お前はそこにいる……確かに存在している……! 私はお前を信じているんだ……! 
 見えなくても……気配がなくても……お前はいつだって私の傍にいてくれるって……信じてるんだ……!!) 

かじゅ「……リーチ」スチャ

616: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 09:17:17 ID:yLD4VRRD0
霞(リーチ……? どういうことかしら……同じ高校の先輩とは言え……彼女もまた……私たちと同じで東横さんを見失っているものだと思っていたけれど。 
 まあ……単純に待ちが広いからリーチをしたとも考えられるけれど……その……わざとらしいくらいに染め手を匂わす捨て牌……何か隠された意図がありそうね。まあ……ここは傍観させてもらいましょう。私はオリさせてもらうわ……)タンッ 

絹恵(鶴賀の三年生……序盤から見え見えの萬子染めやったけど……まさかリーチをかけてくるとは思わへんかったな。確かに……染め手なら多面張にしやすい……鶴賀の一年生相手なら……広い待ちでリーチってのもアリやと思う。 
 けど……何かおかしいで。やって……鶴賀の三年生は一年生の下家や……っちゅうことは……たとえ鶴賀の一年生が前巡に和了り牌を出しとって……それを見逃したとしてや……直後に自分のツモ番を経るんやから……ダマならうちや永水から直撃を取ることだってできる。 
 リーチしてもうたら……それができひん……純粋にツモに頼ることになる……何を考えとるんや……?)タンッ 

モモ(先輩がリーチ……? まさか……私のことが見えてるっすか……? いや……それはないっす。今の先輩に進化した私は見えない。見えるはずがないっす。 
 なら……迷うことはないっす。先輩がツモ狙いに行くのなら……私はそれより先に和了るまで……最高速で飛ばすっすよ……!)タンッ 

かじゅ(よし……計画通り……永水と姫松はこちらを警戒してくれている。当然だ。こんな見え見えの染め手でリーチをかけてきた者に対して……普通の人間なら萬子は切れない。それでいい。 
 この染め手……最初から永水と姫松が振り込んでくれるとは思っていない。この場で私の和了り牌を出すのが……ステルス状態で絶対に振らないと思い込んでいるモモ一人……そういう状況を作れれば……手はチャンタでも国士でもよかった。 
 とにかく……私の待ちが解りやすい状態でリーチをかければ……それで他家はオリるか回すかしてくれる。 
 それで十分……見えないモモから直撃を取ろうというのに……見えてる他家を見逃してフリテンになるなんて状況は嫌だったからな……悪いが……ここは私たちの一騎打ちの場にさせてくれ……!)タンッ 

 かじゅ、たった一人、モモから打ち出される可能性のある和了り牌を、じっと待つ。

620: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 09:26:24 ID:yLD4VRRD0
かじゅ(集中しろ……モモの全てを感じるんだ……五感から第六感まで……総動員してモモを見つけろ……! 
 あのとき……初めて会ったときには……どんなに欲しいと思ってもまったく見えなくて……我慢できずに叫んでしまったが……しかし……今の私なら……! お前と多くの時間を過ごした今の私なら……!! お前を見つけられる……!! 
 私は……きっと世界中の誰よりも……お前のことをほしいと思っているんだ……!! 蒲原は匂いでお前を見つけられる……宮永咲は槓材だけだが見破った……ならば……お前のことをこんなにも欲しいと思っている私に……お前が見つけられないはずがない……!!)タンッ 

モモ(テンパイ……! やっと先輩に追いついたっす……この巡目ならリーチをしてもいい……ただ……そうなるとこの溢れた萬子を切ることになるっすけど……いやいや……! 何を臆することがあるっすか……! 
 今の私は過去最高のステルス状態……たとえ先輩でも……私を見つけることなんてできないっす……! 真正面から突破するっすよ……!) 

モモ「……通らば……リーチっす……!」ユラッ 

 モモ、追撃体勢ッ!! 

 加速する戦闘機ッ!! 

 しかし、その加速は、モモ自身の迷いを振り切るための苦肉の策ッ!! 

 かじゅには見えているのかもしれない――その疑念を払拭するための、本来なら不必要だった加速ッ!! 

 それを見逃す、かじゅではないッ!! 

かじゅ(今……一瞬だが……空気が揺れた……? ほんの僅かだが……モモの気配が濃くなったような……!?) 

 かじゅ、モモの影の、揺らぎを察知ッ!! 

 その揺らぎから垣間見えたのは……微かな光ッ!! 

かじゅ「っ……! 見つけたぞ……!! モモッ……!!」パラララ 

モモ(なっ……!?) 

かじゅ「ロン! メンホン……裏なし……8000ッ!!!」ゴッ

621: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 09:28:15 ID:yLD4VRRD0
 勢いよく手牌を倒したものの、実のところ、かじゅにはまだモモの捨て牌がはっきりと見えたわけではなかったッ!! 

かじゅ「(これでチョンボだったら私はいい笑い者だ……!)さあ……モモ……捕まえたぞ……姿を見せてもらうか……!!」 

 明らかになる、モモの捨て牌。 

 横向きになったそれは――二萬ッ! 

 まさしく、かじゅの和了り牌……!! 

モモ「そんな……信じられないっす……!! 先輩……どうやって私を見つけたっすか……!?」ユラッ 

かじゅ「モモ……甘いな。私は……お前が思っている以上に……お前に惚れ込んでいるんだよ。たとえ見えなくたって……見つけてみせる……捕まえてみせる……! そして……この先もずっと……放すつもりはないからな……!!」 

 かじゅ、点棒を受け取ると見せかけて、モモの手を掴む。 

モモ「先輩……先輩は……私がほしいっすか……? こんな私で……いいっすか……?」 

かじゅ「ああ……いいに決まってる。世界中の誰もがお前を見つけられなくても……私だけはお前を見つけ出してやる。お前がステルスを進化させるというのなら……私も……私のレーダーを進化させて対応するまでだ。 
 モモ……私から逃げられると思うなよ……!!」 

モモ「……はいっ!!」 

 かじゅ、愛の力でステルスを撃破ッ!! 

 魔物・宮永咲でも成し得なかったモモへの直撃を達成――ッ!!

623: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 09:30:41 ID:yLD4VRRD0
霞(なるほど……あの染め手にはそんな意図があったのね。あのリーチ以降……場に萬子が出たのは……鶴賀の東横さんの今の一打が初めて。いくら彼女が影で覆い隠そうとも……その牌はあまりに目立ち……際立つ。 
 なんにせよ……これは私や姫松さんには真似できないわね。同じ高校で……親しい仲だからこそできる芸当……お見事ね) 

絹(鶴賀の一年生……いくら消えられる言うても……原村相手に一度は振り込んだ経験があるんや。どうしても……明らかに危険とわかっている牌を切るには……気持ちの面で無理が出てくる。 
 しかも……今回はその危険牌でリーチ宣言までしとるんや……普通の人間やったら……緊張や動揺を隠せないのが当たり前。鶴賀の三年生は……その隙をうまいこと突いたっちゅうか……そういう隙を見せるように仕組んだって感じやな。 
 さすがに……先輩のほうが一枚上手やったってことか) 

かじゅ「さあ……モモ、戦いはまだこれからだ! お前が強くなったのは認めるが……私もそう簡単にはやられんぞ!!」 

モモ「望むところっす……! 先輩……今日は最後まで思いっきり楽しむっすよ……!!」 

 モモ、かじゅ、和解ッ!! 

 次鋒戦後半、いよいよ南場へ突入――!! 

モ:106200 絹:100200 霞:97500 ゆ:96100

626: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 09:35:24 ID:yLD4VRRD0
南一局・親:絹恵 

絹恵(っちゅうか……ヤバいで……鶴賀の一年生に気を取られてるうちに気付けば南入……うちだけ焼き鳥やん。 
 対抗戦は前後半で人が代わるから……たった半荘一回しか戦えへん……実力に開きがなくとも大差がつく可能性がある上に……こうやって見たことのない能力を全開にされたらそりゃきっついわ。 
 しかもまだ永水の石戸が例の攻撃モードに入っとらん……この親……大事にせな……!)タンッ 

モモ(先輩……私……先輩が私のステルスを見破ってくれて……悔しいっすけど……本当はかなり嬉しいんすよ。 
 それは……もちろん先輩に見つけてもらえたことが最大の理由っすけど……それとはまた別に……嶺上さんみたいな……一時的にステルスを見破ってくる人用に考えていた技を……こうして先輩に見せることができるっていうのも……二つ目の理由としてあるっす。 
 先輩……私の成長が……進化版ステルスだけだと思ったら大間違いっすよ……! それを……今見せてあげるっす……!!)タンッ 

かじゅ(変だな……いくらさっきの和了りがあるとは言え……若干だが……モモの姿が見える。捨て牌もぼやけているが……集中すれば見えないこともない。 
 まるで天江が一旦支配を緩めたときのような感じだ……素直に好機とは思い難い……悪い予感しかしないな。モモのやつめ……まだ奥の手があるというのか……?)タンッ 

霞(妙ね……鶴賀の一年生が見えるわ。てっきり最後まで消えたままだと思っていたけれど……それとも……さっき先輩に一撃をもらったのが堪えたのかしら……? 
 いえ……この場に全国選抜として出てきた一年生が……たとえ長野の無名校の新人であろうと……そんなヤワな打ち手なはずがないわ……何か……仕掛けてきているのね……)タンッ 

絹恵(さあ……張ったで! タンピン三色ドラドラ……こないな絶好手……そうそう作れへん。親やしダマでぶちかます……今局からなぜか薄ぼんやりと鶴賀の一年生の捨て牌も見えとるしな……東一局の借りは返させてもらうで……!)タンッ 

モモ「……リーチっす……」ユラッ 

かじゅ(モモがリーチした……のが見えるなんてやはり有り得ないな。姫松も大きそうなのを張っている感じがする……ここはオリておくか……? しかし……オリるにしても何を切ったものか……) 

 かじゅ、しばし手が止まる。

627: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 09:39:04 ID:yLD4VRRD0
かじゅ(モモのリーチ宣言牌……はっきりとはわからないが……恐らくドラの四索……これは……姫松や永水にも見えていると思っていいだろう。なら……この四索に合わせて打つのが無難か。 
 それなら、モモには振らないし……仮に姫松の和了り牌でも……フリテンで私が振ることはない……)タンッ 

 かじゅ、モモに合わせ打つ四索切りッ!! 

 それが……モモの仕掛けた罠だとは、気付かないッ!!! 

モモ「引っかかったっすね……先輩……?」パラララ 

かじゅ(なん……だと……!?) 

モモ「ロンっす……! リーチ一発ドラドラ……裏は乗らず……8000……!!」 

かじゅ(バカな……! 四索単騎だと……!? しかし……四索はたった今モモが捨てたはず……!!?) 

モモ(驚いてるっすね……先輩……けど……いつから私のリーチ宣言牌が四索だと錯覚していたっすか……?)

 かじゅ、明瞭に見えるようになったモモの捨て牌を、今一度確認ッ!! 

 そして――驚愕ッ!!

628: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 09:41:37 ID:yLD4VRRD0
かじゅ「さ……三索リーチ……!!?」 

モモ「どうしたっすか……先輩? まさか……三索と四索を見間違えたとか……? まあ……確かによく似てるっすよね……半分は同じ柄っすから……」ユラッ 

 モモ、その影を、三索の上半分だけを覆うように、ゆらりと調整してみせる。 

絹恵(な……なんやねんこれ……!? 捨て牌が三索のようにも見えるし……四索のようにも見える……!? いくら捨て牌を消すのが得意言うても……部分的に消すとか……そんな細かいことまでできんのかいな……!! 
 っちゅうかそれ軽くイカサマちゃうん!?) 

霞(ただ……注意深く見れば……三索か四索か……どちらとも判断できないと気付くはず。 
 なのに……鶴賀の三年生は……この半分だけの三索の柄を見て……四索だと思い込んでしまった。それはきっと……この場に限っては……三索よりも四索の柄のほうが強く想起されるからなんでしょうね。 
 なぜなら……四索はドラ。それが手牌にあったのだから……鶴賀の三年生は……場が始まったときからずっと四索を気にして打っていたはず……その残像が頭に残っていて……三索という可能性に思い至れなかった……) 

かじゅ(モモのやつめ……ここまでステルスを自在に操れるようになっていたのか……!? しかも……それを応用してこの私に心理戦を仕掛けてくるとは……本当に強くなったな……!!) 

モモ(名付けて……ステルス限定解除ッ!! 先輩……甘いのは先輩のほうっすよ……! 一度見破られたくらいで地に墜ちるほど……私のステルスは安くないっす……!!) 

 モモ、直撃の分をすぐさま取り返し、親番ッ!!! 

モ:114200 絹:100200 霞:97500 ゆ:88100

629: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 09:45:07 ID:yLD4VRRD0
南二局・親:モモ 

絹恵(なんやねんなんやねんなんやねんなーもー!!)タンッ 

絹恵(ここはびっくり人間ショーの会場やないで! 雀卓や! 消える捨て牌か魔球か知らんけど……そんなホイホイ思うように場を進められてたまるかいな……!!)タンッ 

絹恵(しもうたな……石戸霞を意識し過ぎやったかもしらん。点数よう見てみいや、自分。鶴賀の一年生が断トツやん。 
 うちら二年選抜は次鋒戦始まったときは天江さんの活躍でぶっちぎりトップやったのに……それがここにきてほぼ原点……! 
 個人的な思惑はどうあれ……こんなに削られたんはうちの責任や……なんとかして取り返す……石戸霞を相手にするんはそれからでもええ……!!)タンッ 

絹恵(鶴賀の一年生……今度は完全に消えよったな……さっきみたいな奇策は一度っきり。やっぱりこいつは見えへんねん……見えへんのやったら……ツモればええだけの話やろ……!!)タンッ 

絹恵「リーチや……!!」スチャ

630: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 09:49:26 ID:yLD4VRRD0
モモ(強引に曲げてきたっすね……序盤みたいに鳴いて早和了りを狙ってくるんであれば……トップを守れそうだと思ったんすけど……そうはいかないっすか)タンッ 

かじゅ(姫松のリーチ……モモの上家にいるせいで……ダマでも常にフリテンの可能性が付き纏う。それならいっそリーチしてしまうというのは……点数状況的に正しい判断だろう……)タンッ 

霞(張り切ってるわねぇ。この姫松の愛宕さん姉妹は……アベレージも高いし……洋榎さんがうちの春を振り切ったように……多少不利な状況でもここぞっていうときに力を発揮してくる。 
 ここで彼女が和了るようなら……この先最後まで波に乗っていく可能性があるわね……いよいよ私も……守るばかりではいられなくなるかしら……)タンッ 

絹恵「……! ツモや! リーチツモ一発……のみっ!! 1000・2000やっ!!」パラララ 

モモ(薄っ!! よくそんな待ちでリーチしてきたっすね……!! ペンチャンで……しかも場に二枚も見えてるじゃないっすか……! けど……それを一発で持ってくるあたり……さすがは全国レベルっす。 
 この勝負……半荘一回で助かったのは……むしろ私のほうだったのかもしれないっすね……) 

かじゅ(これが全国レベルか……その強引さは見習わないといけないな。未知の敵が相手……その上……手はリーのみで待ちも絶望的……そんな逆境でも……全力で勝ちに来て……和了りをものにする。 
 姉の愛宕洋榎は無論スター選手ではあるが……妹のほうも……姫松で副将を務めるだけの器がある。最後まで気を抜けないな……!) 

絹恵(っしゃー! 少しやけど回復……!! もう一発……デカいのかませばトップ奪取もいけるで……!! 見ててや……おねーちゃんっ!!)

631: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 09:52:37 ID:yLD4VRRD0
霞(ふんふむ……さすがねぇ。初美を相手にプラスで終えただけのことはあるわ……堅実な上手さも……強引な突破力も兼ね備えている。これで二年生だというのだから……姫様や天江さんがいなければ……もっと注目されてもいい選手よね……) 

 霞、溜息ッ!! 

霞(なるべくなら……姫様を刺激してしまうこの力は……最後まで使いたくなかったんだけれど……) 

 霞、微笑ッ!! 

霞(鶴賀の消える一年生……その先輩の三年生……姫松の愛宕絹恵さん……みんな全力で戦っている……こちらも全力以上で当たらなければ……失礼よね……)ゴゴゴゴゴッ 

 直後、降臨する……最凶の神ッ!! 

 放たれる魔物のオーラッ!! 

絹恵(ちょ……間近で体感するとえらい禍々しいなっ!! 石戸霞の攻撃モード……この土壇場でやっとお出ましかいな……!! 恐ろしいけど……待っとったで……!!) 

モモ(この感じ……あの大将戦のやつっすか……!! あれをやられると……鳴けない私のステルスはむしろ不利……けど……それならそれで……ステルスに頼らず打ち勝ってみせるっすよ……!!) 

かじゅ(とうとう来たか……先鋒戦での龍門渕と天江衣……先ほどの大星淡と薄墨初美……今日は最初から最後まで魔物パレードが続きそうだな……!!) 

 姫松大将・末原をして永水で一番ヤバいと言わしめた怪物が……ついに顕現ッ!! 

 しかし、三者、慄きはするが、臆しはしないッ!! 

霞(さあ……これでもう待ったなし……私にもこれは止められない……しかも私はラス親……誰も何もできなければ……とてもひどいことになるわよ……?)ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ 

 次鋒戦後半――戦いは佳境へ突入ッ!! 

モ:112200 絹:104200 霞:96500 ゆ:87100

634: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 09:57:36 ID:yLD4VRRD0
南三局・親:かじゅ 

 十巡目 

絹恵(さてさて……一丁やったるで……! と……言いたいところやねんけど……マズいで……実際はこんな状態になるんかいな……! 絶一門……いざ目の前にしてみると壮絶やで……!! 
 末原先輩……コツはサンマや言うてはりましたけど……これは想像以上に厳しいですわ……!)タンッ 

モモ(永水の超おっぱいさん……フリテンの心配がない一色独占は私に対して有利とか思ってるんすかね。まあ……その通りっすけど。 
 でも……私はずっと……他家から無視された状態で麻雀を打ってきた。どんな状況でも門前で手を進めて他家を出し抜いてきたんす。 
 この絶一門……私にとってはむしろ来る牌が絞れて助かるっすよ……そりゃ……一色のほうが速いかもしれないっすけど……こっちだって……速度では負けられないっす……!!)タンッ 

かじゅ(石戸霞の一色独占……山牌の数が限られている以上……終盤になるほどその支配が緩やかになる……ならば……序盤はなるべく石戸霞の手を遅らせて……なおかつ速攻を狙っていけば……かわせなくもない。 
 そのために最も効率的なのは……姫松から鳴くことだ。そうすれば……石戸のツモはモモに行く……モモと石戸の二人に同時にブレーキを掛けられるはずなんだ……。しかし……それはあくまで机上の空論に過ぎないが……!)タンッ 

 三者三様、思惑、錯綜ッ!! 

 しかし……その力は、あまりに凶大ッ!! 

霞「……ツモです」パラララ 

絹恵(速っ……!!) 

モモ(くっ……間に合わなかったっすか……!) 

かじゅ(速い……だけじゃない……!! これは……!?)ゾッ

636: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 10:02:59 ID:yLD4VRRD0
 晒される手牌ッ!! 

 見事に染め上げられた役――それは他家の心をも絶望色に染めるかのよう……!! 

 魔物・石戸霞、希望という名の一色を他家から絶ち、静かに仕上げた和了りの形は、綺麗に並んだ、筒子の車輪……ッ!! 

霞「ツモ……門前清一タンピン一盃口ツモ……4000・8000」 

 霞手牌:②②③③④④⑤⑥⑥⑦⑦⑧⑧:ツモ⑧:ドラ7 

絹恵(はあっ……!? 高め大車輪やと……!? いやいやいやいや!! ありえへんやろがっ!! アホかこいつ……! そんなん実戦で初めて見たわ……ホンマに人間かいな……!!?) 

モモ(しかも……超おっぱいさん……八筒は三巡前に一回捨てて……そこから手替わりはしてないはずっす。ってことは……巡目的に私のテンパイを警戒して……この場は仕方なく五筒を待たずに倍満で済ませたってことっすか……!!? 
 化け物レベルが半端じゃないっす……どんだけっすか……!!) 

かじゅ(フリテンツモだと……!? いや……まあ……確かに一色独占している以上……フリテンツモはよくあることで……さほど珍しくはないのだろうが……それにしたってその手牌はいくらなんでも常軌を逸している……!! 
 恐らく……モモの動きが見えないから……この巡目で打ち止めにしたのだろうが……もし他家の手が苦しいと見れば……ここから八筒切りリーチで五筒を待ってもおかしくはなかっただろう。 
 ひとまず……モモのステルスが牽制になったおかげで助かった……のか……?) 

霞「では……ラス親……いかせていただきますわね……!」ゴゴゴゴゴゴゴ 

 石戸霞、一瞬にしてトップを奪い去るッ!! 

 果たしてこの差は開くのか、否かッ!! 

 次鋒戦後半オーラス……決着は間近ッ!! 

モ:108200 絹:100200 霞:112500 ゆ:79100

638: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 10:04:40 ID:yLD4VRRD0
@実況室 

すばら「すばら……すばらとしか言いようがありません……!! 三年選抜・石戸選手ッ!! 高め大車輪テンパイからのフリテンツモで倍満ッ!! しかもここからはラス親ですっ!!!」 

純「うちの透華や衣……それにさっきの大星や薄墨も大概だが……こいつもこいつで化け物過ぎるだろ……」 

初瀬「ちょっと……眩暈がします……」 

菫「この石戸選手が大将を務めてなお……勝ち上がったのは清澄と姫松ですからね……本当に全国はわかりません」 

純「姫松か……総合力で永水を下した南大阪の強豪。あの眼鏡ちゃんも……その姫松の一員なわけだが……あいつがどう動くかが、石戸霞を止める鍵になるかもな」 

初瀬「確かに、姫松さんは直に永水と卓を囲んでいるわけですからね。インターハイが終わって少ししか経っていないとはいえ……まったくの無策とは思えません」 

菫「楽しみなオーラスですね」 

すばら「さあ……! 石戸選手の強力無比な一色独占に他家はどう動くのか……!! 次鋒戦後半……オーラスですっ!!」

639: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 10:12:04 ID:yLD4VRRD0
@対局室 

南四局・親:霞 

絹恵(配牌はまずまず……逆に言うと……ここで仕留めな……次はいつチャンスが回ってくるかわからへん。 
 唯一永水と対戦経験のあるうちが……この石戸霞を止めなあかん。こいつに勝って……そんでもって……おねーちゃんや……末原先輩や真瀬先輩に認めてもらって……みんなに安心して卒業してもらうんや。 
 そのためには……まずはテンパイに持っていくこと……来る牌は二色……いつもより読みやすいはずなんや……頭フル回転でいくで……!!)タンッ 

 六巡目 

モモ(配牌からツモまで微妙っすね……どうしたもんっすか……これじゃまたごっそり持っていかれるっす。なんとなく……姫松の眼鏡さんが何か狙ってる感じがするっすけど……その意図は読み取れない。 
 だったらいっそ……ここは先輩に任せるのも一つの手かもしれないっす。先輩なら……私のパス……ちゃんと受け取ってくれるっすよね……!)タンッ 

 モモ、ステルス限定解除ッ!! 

かじゅ(っと……これは……突然モモの捨て牌が見えるようになったな。姫松と石戸霞は何も反応を示さないということは……私だけに見せているのか……? 
 なるほど……モモめ……さては手が重いのか……自分では石戸霞を止められないと見るや……躊躇いなくこの私を利用するとは。まあ……期待されているということだろう……先輩冥利に尽きる……!!) 

かじゅ「チーッ!」タンッ

641: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 10:14:30 ID:yLD4VRRD0
霞(ん……鶴賀の三年生が……消える一年生の捨て牌を拾った……? 私には相変わらず闇に包まれたままに見えるけれど。 
 なるほど……さっきまで対決姿勢だったかと思えば……今度は手を取り合っている……いいわね……先輩後輩って……微笑ましい)タンッ 

絹恵(石戸のツモがズレた……! これはラッキーや……うちがやろうとしてたことを鶴賀コンビが勝手にやってくれた。なんや……鶴賀の一年生は先輩だけに捨て牌を見せたんか……? 器用なことしよる……なんにせよ……これは千載一遇やで……!)タンッ 

モモ(これで……超おっぱいさんのツモは姫松に、先輩のツモが超おっぱいさんに回るっす……二人ともこれで手が遅くなる……先輩……今のうちっすよ……!!)タンッ 

かじゅ(わかっているよ……モモ……私だって伊達に天江衣と戦ってないさ……こういう特殊な場には……多少だが慣れているつもりだ……!)タンッ 

石戸(まあ……ツモをズラしてくる戦略は……何度か経験があるわ。けれど……私の色はまたすぐに私のところに戻ってくるのよ……なぜなら……)タンッ 

絹恵(今まで見られへんかった萬子……今局は初対面やな……けど……悪いな……こっちは筒子と索子で手を進めてきたんや……こんなん来ても邪魔なだけやねん……!)タンッ 

石戸「ポン」 

モモ・かじゅ(!!?) 

石戸(ふふ……たとえ他家に私のツモが流れたところで……みんな二色で手を進めているわけだから……まともに和了りを目指すならすぐに私の色は吐き出される……私はそれを鳴き返せばいいだけ。 
 簡単にツモ順を元に戻せる。まあ……数巡待てば……そんなことをせずともまた私のツモは染まるようになってるから……鳴かれたところですぐに追いつけるんだけれど。残念ながら……鳴くだけじゃ私を止めることはできないわよ……?)ゴゴゴゴゴゴ

642: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 10:16:48 ID:yLD4VRRD0
絹恵(石戸霞……順調に染めてるみたいやな……対してうちは……まだリャンシャンテン……このままじゃまたツモられる……せっかく巡ってきたチャンス……鶴賀コンビの思惑を潰してまで我を通したんや……それだけは勘弁やで……!!) 

モモ(姫松の眼鏡さん……なんで鳴かれるってわかってて超おっぱいさんの色を吐き出したんすか……!? ちょっとくらいは堪えてほしかったっす……!!)タンッ 

かじゅ(姫松の……当然……モモから私が鳴いたという不自然さには気付いているのだろうし……その意図も把握しているはず……それでも石戸霞に鳴かせたということは……姫松……さてはオリてないな……!!)タンッ 

霞(さて……このまま混一で待ちたいところだけれど……そうはいかないのがこの状態の辛いところよね……一度攻撃に回ったら……私にも制御できない……ひたすらに……容赦なく……高く高く手を進めていく……)タンッ 

絹恵(イーシャンテン……あとちょっとや……!! やけど……石戸霞ならもうテンパっててもおかしくない……なら……ずうずうしいかもしれへんけど……もう一回だけ時間稼ぎ頼むで……鶴賀の三年生……!!)タンッ 

かじゅ「……! ポンッ!!」タンッ 

霞(あら……?)タンッ 

絹恵(どや……石戸霞……! これであんたのツモは闇の中や……どうせしばらくしたら元に戻せるんやろうけど……これで鳴き返しは封じた……うちが張るまで三回くらい休んどれ……!!)タンッ 

モモ(今度はこっちに萬子を寄越してきたっすね……何を考えてるんすか……姫松の眼鏡さん……。けど……これは好都合っす……ステルス状態の私なら……萬子を切っても超おっぱいさんは鳴けない。この隙に和了っちゃってくださいっす、先輩……!!)タンッ 

かじゅ(姫松の……ここに来て私へパスを送るとは……時間稼ぎをしろということか……? まだ手が出来上がっていない……とか? いや……まあ……それならそれでいい。 
 すぐ横でモモが見ている以上……そちらにどんな意図があろうと……私は私で和了りを目指す……!!)タンッ

644: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 10:18:51 ID:yLD4VRRD0
霞(鶴賀の三年生が着実に手を進めてきてるわね……まあ……その二副露なら……さほど高い手にはならないでしょう。鶴賀の三年生が和了る分には……それはそれで構わないわ。問題は……姫松さんね……何が狙いかしら……?)タンッ 

絹恵(来たで……テンパイ……!!! ここが天下分け目の関が原や……!!! おねーちゃん……見ててや……! 私……石戸霞に勝ったるで……!!) 

絹恵「リーチやっ!!」スチャ 

霞(リーチ……?) 

かじゅ(姫松……動いてきたか……!!) 

モモ(少し嫌な予感がするっすね……ステルス状態にあるとは言え……この人もまた全国区の選手……清澄の嶺上さんみたいに……何かのはずみにステルスを見破ってこないとは言い切れない。 
 二色染めなら……待ちは筒子か索子……じゃあ……ここはせっかくなんで……超おっぱいさんから貰った安牌を使わせていただくっすよ……)タンッ 

 モモ、念には念を入れて、霞のツモを引き継いで手に入れた萬子を、一発回避の安牌として活用ッ!! 

 しかし――それが運命の分かれ道ッ!!! 

霞「それ……ポンです……!!」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ

645: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 10:20:39 ID:yLD4VRRD0
かじゅ(何……!? 石戸霞がモモから鳴いた……!!? バカな!!?) 

モモ(しまっ……この人も……嶺上さんと同類なのをすっかり忘れてたっす……!! 嶺上さんに槓材が見えるのと同じ……私の影に覆われた捨て牌を……この人は……色に反応して拾った……!! マズいっす……これでツモ順がまた元通りに……!!) 

霞(ごめんなさいね……鶴賀の消える一年生。一瞬だけれど……確かに……二色に染まったあなたの捨て牌の中で……私の色は光って見えたわよ……!)ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ 

 霞、これで二副露ッ!! 

 当然のように、テンパイッ!! 

霞(これで混一から清一断ヤオに手替わり……二、三巡で対々がつくだろうから……最大で8000オール……まったく……この身に宿る神様は……どこまでも貪欲で攻撃的ね……)タンッ 

 霞、打、西ッ!! 

 モモとかじゅの脳裏に過ぎる、前局の悪夢ッ!! 

 が――ッ!!!!

647: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 10:23:20 ID:yLD4VRRD0
絹恵「やっぱり……末原先輩の言うた通りやったな……!!」ゴッ 

 絹恵、姉を彷彿とさせる、今日一番の気迫ッ!! 

絹恵「永水の石戸さん……あんたの一色独占能力……普段の固い打ち方とは真逆の……超攻撃的闘牌……!! その化け物じみた能力の……唯一の瑕……うちの末原先輩はあの大将戦で見抜いてんで……!! 
 あんた……一旦そのモードに入ったら……自分の意思ではオリられへんのとちゃいますか……!!?」 

 絹恵、眼鏡に手をやって、確信の笑みッ!! 

絹恵「いくら強かろうと……そないな意思のない麻雀に負けるほどうちらは甘くないですわっ!!」ゴッ 

 絹恵、堂々とその手牌を倒すッ!! 

絹恵「リーチ七対ドラドラ……裏は乗らずで8000ですっ!!」パラララ 

 絹恵手牌:①①②②44668899西:ロン西:ドラ7・裏④ 

霞(こ……れは……!? 西単騎……?)

649: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 10:27:27 ID:yLD4VRRD0
 霞、息を飲む。 

霞(その西……最初から持っていた字牌で私に照準を定めたのかしら……? いや……違うわね。あのとき……鶴賀の二人が協力して……二巡だけ私のツモが彼女に回ったあのとき……一巡目でこの西を手に入れたのね。 
 そのあと……私が手の内の字牌を崩して清一に向かったのを見て……西が出てくると踏み……リーチをかけた。 
 お見事ね……確かに……普段の私なら……その少し不自然な捨て牌……七対子で字牌単騎もあると思い至れる。字牌を抱えたまま混一で流すこともできたでしょう。けど……この状態の私にはそれができない。 
 そこを的確に突いてくるとは……やはり……姫松さんは強いわ……愛宕絹恵さん……これで二年生なのだから……私たちが抜ける来年は大変よ……姫様……) 

絹恵(しゃー!! これでトップタイ……!! 裏が乗れば石戸霞や鶴賀の一年もまとめてぶち抜けたんやろうけど……それはさすがにおねーちゃんレベルの運が必要やろか。なんにせよ……うちが止めたったで……!! 
 鶴賀の二人がおらんかったら無理やったかもしれへんけど……うちが……あの石戸霞に一発食らわせたで……!! これで少しは……少しはおねーちゃんに近づけたかな…………どうかな……おねーちゃん……!!) 

かじゅ(最後は姫松に持っていかれたか……残念。結果は私だけマイナスか……せっかくモモにパスまで出してもらっておきながら……不甲斐ない。 
 しかし……モモとこうして真剣勝負ができたこともそうだし……全国レベルの高さも十分に感じることもできた……負けはしたが……悔いはない……!) 

モモ(最後の最後で並ばれてしまったっすか……一応私の獲得点数はプラスっすけど……個人成績で言えば順位は三位……序盤の不意打ちがあってもなお勝てなかった……普通の大会でまともにやりあってたら完全に撃ち落されてた感じっすね。 
 眼鏡さんと超おっぱいさん……全国でも屈指の強豪校のレギュラー……その実力は半端じゃないっす。私は……まだまだっすね……全国で勝ち抜けるほど強くはないっす。 
 けれど……この半荘で……その高みまでの距離が少しだけ掴めた気がするっす。来年は……行くっすよ……全国……!! そして……応援に来た先輩の前で……いっぱい活躍して……いっぱい褒めてもらうっす……!! 
 くー!! 負けてられないっすよっ!!)

650: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/11 10:29:08 ID:yLD4VRRD0
霞「では……お疲れ様でした」ペコリ 

絹恵「またよろしくお願いしますわ!」ペコッ 

モモ「こちらこそ……こんな私でよろしければ」ユラッ 

かじゅ「いい勉強になった。感謝する」ペコ 

 次鋒戦後半、互いに持てる力をぶつけ合い、四者晴れ晴れとした表情で、終了ッ!!! 

<次鋒戦後半結果> 
一位:愛宕絹恵+3100(108200) 
二位:石戸霞+2900(104500) 
三位:東横桃子+1700(108200) 
四位:加治木ゆみ-7700(79100) 

<次鋒戦前後半合計> 
一位:淡・モモ+10300(108200) 
二位:初美・霞+9900(104500) 
三位:浩子・絹恵-1700(108200) 
四位:まこ・かじゅ-18500(79100)